2008年10月03日

北海道警察v.s.北海道新聞 第18回(20.8.21) 続・新聞が警察に屈した日 暴露された裏工作?の記録<3>

筒抜けになっていた道新の内部調査

 道警裏金問題取材班(本件被告の佐藤一ら8人)のメンバーは、会社側の方針が「調査委員会の内容を道警に伝える」とのことであったため「情報源は複数の現職警察官であり、情報源が特定される」と反対、このため調査委員会の設置は見送られたが、編集局に調査チームができた。メンバーは、H報道本部長、編集局次長等3人であった。

 調査チームによる取材班のメンバーに対するヒヤリングが行われた。
 ヒヤリングは1人1回ずつ行われ、取材源を明らかにするよう求められたが「情報を社内に止め、道警など外部には一切漏らさないという保障がない」という理由で答えていない。
 ところが、道新の調査内容が佐々木に筒抜けになっていた。


◎面談メモ(平成17年12月15日 自動車安全運転センター 道新道警記者クラブキャップK)

佐々木 ・12月中旬まで待て、と言うことだったが、何時までもダラダラとおかしい。社内事情はあるにしても、これは対外的なものだ。相手がいることを忘れないでもらいたい。
・上旬とは20日までだ。21日に記者会見をしたいと考えている。今日、この後、(記者会見の)会場を予約しようと考えている。

 〜以下省略〜

K ・それをやられたら、今までやっていることがぶっ飛ぶ。よい方向に持っていこうとしているのにダメになる。・私の腹(命?)をかけて、前向き必ずやる。まず、泳がせ捜査(道新の捏造疑惑記事)でケリをつける。そのことで、佐々木さんの事も(捏造記事であることが)自ずと見えてくる。分かってもらえるようになる。・泳がせ捜査(記事の調査)も佐々木さんから要求されている項目のうちの1つに入っている。・泳がせ捜査記事の検証記事でも、その点(佐々木さんの記事に関する調査結果も入れた記事にして)触れるようにする。・私はすべてをかけてやる。Hもすべてをかけている。2人とも。一心同体になっている。〜中略〜・(調査委員会の調査に対して)自分の見たまま、記事の生成過程を話した。自分なら、真実でないものは記事に書かないと話した。2時間くらい、一番長時間(調査委員会の)聴取を受けた。・(泳がせ捜査記事が事実であるかどうかということについて)自分を負けにするようなら会社を去る。他社へ行ってから、この問題を書くと(会社に)言ってある。

佐々木 私の考えをHに伝え、その返答を持ってきて欲しい。

K 今すぐ伝える。今日午後5時位までに、Hの話も持ってくる。

以上


◎連絡メモ(平成17年12月15日 道新道警記者クラブキャップK)

K Hによく話した。Hは、佐々木さんのいうのもわかる。キッチリやるからと伝えて欲しいとのことだった。佐々木さんの残り7つの記事も段階踏んで必ず俎上に載せて検証づけする。うやむやにしないことを約束する、ということだった。

佐々木 わかった。それなら記者会見の場所の空き状況は確認したが、昼にKの話があったので予約はしなかった。佐々木さんの残り7つの記事も段階を踏んででもケリつけるというのならわかったから、その旨、Hさんに伝えてくれ。〜以下 省略〜秘密はわかるが、それはその旨明確に言ってくれれば守る。毎日、報道が数社来て、「いつだ」「どうなっている」と言うこと(質問)には、「わからない」と答えている状況だ。

以上


◎面談メモ(平成17年12月21日 自動車安全運転センター 道新道警記者クラブキャップK)

K(キャップの話)
○年内に第1段階として(「泳がせ捜査」の調査結果を出したい)と考えている。〜以下略〜常識的には(12月)28日位までにしないとならない。
○第2段階(の佐々木さんにかかわる4本の記事の調査)は年明けになる。
○第1段階で本人達が(「泳がせ捜査」の結末をつけても、佐藤、高田が捏造記事の責任をとらせて解雇されるなど会社を)辞めてしまうと、第2段階の調査のネックになるのは確かだが、(その場合でも調査の)方法はある。他の班員も残っている。〜A記者もいる。〜(Aは調査で詰問すれば)すぐ落ちる。(捏造であることを認める)
○ (高田昌幸、佐藤一)の2人が辞めるかどうかも(第1段階の調査では疑問(だ)。40歳を過ぎてどうやって食っていくのかと言うこともある。
○ 第一段階で(の調査結果を検証記事にするとき、その中で)、その(泳がせ捜査記事が捏造であるという)指摘は○佐(佐々木さん)からもされていることを明確に出す。(S(注 元道警方面本部長)、Y(注 元道警生活安全部長)にも(この人たちにかかわる記事についても調査するという)メッセージが必要だから(その記事の調査をしていることが分かるように本人に当たるなどの調査を)やれという要求を(会社に対して)した)
○(H報道本部長)は今、どこかに隠れて(この捏造記事問題の謝罪記事作りの)作業していてなかなか会えない。Hはこれにかかりきりだ。

佐々木 (12/12)の(道警の)7人の(不適正経理問題での)不起訴の(道新の)記事を見ると、(不起訴ということは)検察庁が独自に処分を決めたのに、自分(道新)の考えに沿わないことは一切認めないと言う書き方をしている。(道新が)社長、編集局長、報道本部長のラインで(泳がせ捜査記事で道警に)謝罪の意思を固めたということは(このような独善的な書き方をみると)大きなギモンだ。〜(真摯に調査するかどうかと)信用できない気持ちになった。

K
○それは最も(注 「もっとも」の誤記か?)だ。あれでもHと私(K)で(記事の内容)を随分変えたのだが。
 〜中略〜
○(調査と謝罪のやり方について)局長、H、Kの3人で極秘に詰めた。(それに対して)今はY(編集総務)1人が強硬に(調査、謝罪)について反対していて大きな障害になっている。謝罪記事は、(道新の第)一面で先ずはっきりわびて、社会面の2ページ(2枚の全ページを使った)見開き、広告無し(広告を掲載しない)で詳細に検証記事を書いて検証をやる。これは、(事前に)外に漏れると(これに反対する勢力から)潰しが入ってきておかしくなるので極秘にしている。
○局長は自分(の、記者管理や記事のチエック)が甘かったといって(高田昌幸と佐藤一に捏造記事を書かせないようにするべきだったのにこれができなかったという)管理の失敗を認めており、(管理責任上)苦しい立場に立ってしまっている。「覚せい剤130キロ(が泳がせ捜査の失敗で道内に流入した)なんておかしいと思わなければならなかった」「道警が裏金問題を調査し、返還を決めた後も彼らの暴走を止められなかった」と反省している。
○(編集)局内の一部は編集局長を守って社長に辞任してもらうか、局長に責任を取ってもらってこの問題の収拾をはかるかなどという考えも出ている。これは、10日以上前にやっている。

佐々木 (調査回答の)期日を示せ。秘密は厳守する。

K
○今日、Hに会うので話す。
○自分ははっきり(正しい対応を)やる。(それが出来なければ私は)腹を切りと言っている通りだ。
○黒は黒と認めて謝罪しないと(道新は今の腐った状態から)再生できない。

佐々木 黒を黒としないと、社内に捏造精神を残してしまうことになる。(そのようなことをするなら)道新は、何十年か先に破滅する(だろう)

以上

 ここで出てくるY(編集総務)は、Hの前任の報道本部長で、高田昌幸以下の道新取材班のメンバーは「道新、最後の良心」と信頼し、尊敬して止まない上司であった。ところが、Yは病に倒れ、平成18年6月に論説委員に転出、入退院を繰り返し、平成19年10月に亡くなってしまう。裏金取材班の記者たちはその後ろ盾を失った。
 取材班のメンバーは今でもYのことが話題になると涙ぐむ。Yのジャーナリスト魂は彼らの中にしっかりと残されている。


道新の「おわび記事」と社内処分

 道新は、ついに平成18年1月14日道新第2社会面に「『泳がせ捜査』記事の社内調査報告」なる記事を載せた。
 そこには「裏づけ取材不足」、「『組織的捜査』確証得られず」という見出しがあった。
 この「おわび記事」について道新の新蔵博雅編集局長はこうコメントしている。
 「社内調査の結果、全体として説得材料が足りず不適切なものであったとの結論に達しました。疑いを裏付ける続報を展開し得なかった力不足についても率直に反省しています」
 同日の毎日新聞には、道警本部の岩田満広報課長の「当該記事の訂正も行なわれておらず、道民の誤解を解くものとはいえない」とのコメントが載った。

 道警は道新の「おわび記事」に納得せず、総務部長名で記事の訂正と削除を求めた。
 一方、佐々木は、1月17日、Hに対して、「14日の記事は謝っているとは全く思えない、HとS(編集局長)から、直接お聞きしたい」と電話している。(平成18年1月17日 電話録取書)さらに、道新に対して1月18日「捏造疑惑記事の一部についての調査結果及びその他の捏造記事等の調査状況の説明要求状」なる文書を発出している。
 道警と佐々木の執拗な追及は続いた。


◎面談記録(平成18年1月19日 ホテル喫茶店 道新道警記者クラブ キャップK)

佐々木 どうも。日頃のご努力には、随分評価しています。それで、ちょっと厳しいことを言うけど、KさんとかHさんには信頼は依然おいてますから。その前提で聞いて欲しい。〜中略〜まず、これを読んで欲しい。今日、届くはずだから。昨日出したから。(注 佐々木が道新に発した「捏造疑惑記事の一部についての調査結果及びその他の捏造記事等の調査状況の説明要求状」のこと)言いたいことはわかるでしょ。言わんとしている事は。非常に信頼で繋がっているから。だけど、おかしいんじゃないか。

K おかしいと言われるのは、道警にも言われています。道警にも説明できないんだもん、うち。

佐々木 それでね、おととい17日に電話したんですよ。

〜中略〜

佐々木 H氏と30分ほど話して、あの記事なんだと。ふざけているじゃないかと、何も謝っていないと。それでね、裏切られたから。信頼している、まだ。だけど裏切られた。これ以上あれだったら、信頼もはずれてくる、という感じの事まで言ったんだ。厳しいこと言ったんだ。

K うちの部長キレたんだって?

佐々木 キレたのかな?

K かなり頭に血が上がったみたいだよ。

 〜中略〜

佐々木 あれは人を馬鹿にしている話だ。

K そこはね、編集局の幹部達の間で、やっぱり意見の違いがあった。足引っ張る奴いっぱいいるから。俺なんかも、彼らのターゲットになったから。俺も今も集中攻撃あびているんだから。

佐々木 わかるから。今あなた方がうかぶから。ちゃんと。

K 俺もHさんもできる限り。

佐々木 2人(注 HとK)は今、逆になるから。今。

 〜中略〜

K ここは勝負どころだし、〜中略〜あの掲載記事ね、謝っていないと友善さんは言うけど、お詫びしに行くと言う事は、詫びを入れてるわけでしょ。

佐々木 タイトル上はな。

K 内容は、友善さんが言われた通り、僕だって不満がある。ただし、詫びを入れるという、組織が詫びを入れるというとこまで持ってきた。

佐々木 そういう意味では、たいしたもんだよ。それはわかるよ。

 〜中略〜

佐々木 〜前略〜Hさんに伝えてほしいんだわ。どういうことか。このまま行って、誠意があることを期待している。そして、きちんとやってもらえる事を期待しているけれども、それがあまりにも望めない、あるいは状況だったら、2月のいずれかの段階で、私が判断した決断した時期に提訴するかもしらん。その心は持っていると。

K わかりました。

佐々木 一気に行くから。

 〜前略〜去年からHさんは、裁判は避けたいと。そして裁判を避けるために、自分がやると。だから、待ってくれと。

K わかりました。

佐々木 言って、道警を待たせたんですよ。だから俺のもそっちに進むことはしなかった。

K 情勢は変わったでしょ、その時から。

佐々木 情勢は変わった。

 〜中略〜

K 友善さん、弁護士さんとも相談しておられるんですか?

佐々木 している。 勝訴の見込み、持ってる。

〜以下 省略〜


◎電話メモ(平成18年1月20日 道新道警記者クラブ キャップK)

 〜前略〜

K 今までと違って、(Hが)弱音一辺倒になっている。

佐々木 (調査して分かった捏造の事実を社内で)全部出してやればいいのではないか。(捏造記事ではないといって抵抗している社内の勢力も調査結果を全部出すことで捏造記事であるという事実がはっきりすれば抵抗ができなくなって)一気に流れが変わるだろう。流れを変えるため(H、K、佐々木の)3人で会談しよう。

 〜中略〜

K (社内で捏造記事だろうという見方が強くなってきて)潮目変わった感じだが,Hまいってきている。社内で支える人が、おっかなびっくりで居ないのさ。(高田昌幸と佐藤一)の2人に聴いた(事情聴取)ら(記事は捏造だという)答え(が)出た。泳がせ捜査記事も(そして、佐々木さんにかかわる4つの)指摘の記事も(佐々木さんからの抗議や質問に、記者との直接のやり取りについてまで高田昌幸と佐藤一、道新が)全く対応できず(そのことによって)捏造だと言う答えが出た。(捏造だということは)局長も社長も判っている。それが、(社内全体に)出たら編集局が真っ二つになる。ここで、(H報道本)部長が倒れたら、誰が始末するのか。(真実を隠さず)にはっきりさせる対応に(するべきだ。)(H)は他人(高田昌幸と佐藤一)のことで、自分(H)が失敗して自分(H)がやられるのならたまったものじゃない。(と言っている)(相手が)Kだから(気を許して)愚痴言った。

佐々木 (泳がせ捜査や問題の記事に関する)調査結果を(社内全体が分かるように)出してやれ。

 〜中略〜

K (平成18年1月14日の道新の「おわび」記事で)詫びを入れたことだけでも(高田昌幸と佐藤一の)2人は腹切りもの。(2人は)社(道新を)出されたら(解雇されたら)どうにもならない。(それなのに)2人は騒ぐし、陽動作戦(をやっている。)(2人の)目玉を抜いてかかとで踏みつぶしたい。

 〜以下省略〜


 平成18年2月1日 「道新」朝刊に「北海道新聞社の編集局長ら処分」という見出しのベタ記事が載った。
 「北海道新聞は31日、道警と函館税関による「泳がせ捜査失敗疑惑」を報じた記事をめぐって1月14日に「おわび」を掲載した問題で新蔵博雅常務・編集局長を減給するなど合わせて7人の処分を決めた。編集局長以外は、当時の報道本部長と編集局次長が減給、紙面化に携わった当時の報道本部次長、記者3人がけん責、当時の編集本部員1人を戒告とした。」


◎面談記録(平成18年2月7日 ホテル喫茶店 道新報道本部長H)

佐々木 14日のおわび記事見てさ、1月のね。あのお詫び記事と調査結果報告。ガクッときましたよ。何だこれと。電話でも言ったけど、実際結果的には、対道新という形で考えた時には、許せない。裏切りだと。あるいは、読者の側から見れば、言葉の魔術使っている。そう思いましたよ。ペンのプロの方はそう思いませんか。

H 分かりづらいという部分はあるんですけど。

佐々木 ものすごく分かりづらい。だから、これなら詫びる必要があるのかっていう感じになっている。 詫びなくてもいいだろうと、これなら。お辛いのはわかります。〜中略〜K氏が言うんだわ。話聞いてやってくれって。ああいうのが出たあとで、もはや会う必要がないんでないのかとも言ったんだけれど、いやいや色々あるんだって、話聞いてやってくれという話で。

H あの記事について、どう評価する、あるいは、はっきりいって、立場が違うと取り方が違うと思うんですよ。

佐々木 そうだよね。

H それは、分かっている中で、ああいう記事出したわけですけど、我々には考えがあるんですよ。それを、理解していただけるかどうか非常に難しいなとは思ってます。率直に言うとね。ある程度、はっきり言うと、道警との〜(注 以下意味不明省略)

佐々木 そう、今日。今日が回答期限ですよね。二者択一、私は迫ったんですよね、社長に。2者択一ですよ。望ましい方向は、自らやる事がいいと私は思うよと。だけども、どっちでもいいぞと。こういう言い方だよね。

H それね、わかりましたと。それで、私の方で、うちの局長、来週お会いしたいと。

佐々木 私に?来週?

H しかるべき時期に。お互いの都合のよい時期に。それはどうですか?

佐々木 だから、会うにしてもどういう目的や内容

H 〜前略〜それが結果的に裁判になるなら裁判になったでしかたがない。その前にやれることはやろうという事です。我々としては。その中で、佐々木さんの真意は何なのか、これを局長聞きたい。そういうことです。

佐々木 なるほど。真意は何なのかって、俺、文書に全部入れてる真意なんだよね。

 〜以下中略〜

佐々木 Hさんも一生懸命やって、本当にご苦労さんだね。〜中略〜この人こそはさ、本当のジャーナリストじゃないかなと思って、俺はみている。

H それはきちっとお話し合いがついた後でならいいですけど、まだ途中ですから。

佐々木 今までの姿勢がさ、俺は評価してますよ。それに何とか力になろうとしてるKもね。たいしたもんだよ。相当逆風食っていると思うんだよ。Hさんも。2人とも。

〜以下中略〜

H 何とかよい方向行きましょうよ。

佐々木 だから、収め方を、やっぱりぎりぎりな所になるにしてもね、合意に達する方法がないのかって事なんだ。〜以下略〜

H それは、事前に言ってありますから。局長に。

〜以下省略〜

 Hの申し出により、道新の役員で編集局長のSと佐々木の会談が行われる。この話し合いについては、交渉継続中は公表しないことで合意している。会談は、平成18年2月14日、2月23日、4月10日の3回にわたり行われたことになっている。会談には、報道本部長Hが立ち会っている。その内容については、別に明らかにする。


◎面談メモ(平成18年3月3日 道新道警記者クラブ キャップK)

佐々木 (道新は)函館税関と道警からの(泳がせ捜査事実が)不存在(という内容の)(情報公開)文書を入手したが、これ(情報公開文書)が信用できないから「法に基づく泳がせ捜査はなかったと言うことが確認できなかった」というなら、その旨を(平成18年1月14日付道新の「おわび」と「社内調査報告」記事に)明記しなければ検証記事にならない。ただの報道記事でなく、検証記事なのだから。(読者に対する)重要事項不告知だ。(このやり方は、日刊新聞紙発行部数)123万部の(道新の読者にたいする対応の)ごうまん(だ)。道新の書き得体質もここに極まれりだ。(だから、私は平成18年)2月15日に(平成18年1月14日付けの道新の「おわび」と「社内調査報告」記事は、重要事項を伏せているからその意味では捏造の疑いが極めて強いという)記者会見をした。

K その通りです。そのあたりは、近々にはっきりさせる予定です。(今週末か来週にも・・・)

以上


◎電話メモ(平成18年3月16日 道新道警記者クラブ キャップK)

佐々木 泳がせ(捜査記事の事実関係を再度記事にするための道新の検討結果は)どうなったのか。

k 今の状況はこうなっている。
3/16 16:00 (S)道新編集局長は(道警の)■■広報課長に対し、(泳がせ捜査についての事実に関して、事実関係をこのあと道新の記事にすること、また、道警に対する回答は)「捜査した形跡はなかった」という回答より踏み出さないと回答し、(■■広報課長との話し合いは)決裂した。〜(道新側が)時間をくれということになった。〜対応者 S(編集)局長、Y(編集)総務、H(報道本)部長
◆3/16 17:30(道新の)Tデスク、Kキャップ、Mサブキャップが、編集局長に会い、今までの調査結果で(泳がせ捜査について)記事に書いた事実はないという調査結果を示し、これでも(道新は捏造だということを)否定していくのか。それなら、我々は道警(記者)クラブから引き上げる、と詰め寄ったところ(S編集)局長は、「分かった」と(返答)し、道警に対する回答文(として泳がせ捜査の事実はなかったいうことを認める趣旨の記事)をKキャップが書けということになった。〜(このときの道新幹部の対応者は)局幹(編集局幹部)〜編集局次長以上を指すようだ)全員(S編集)局長、Y総務、H(報道)本部長他局幹全員 3/24(3月24日)までに(道警に回答した上で)、記事化か(記事化すると思う)

佐々木 (道新に)コンプライアンスがあることを示すべきだ。(コンプライアンスは)新聞社の命だよ。

K (泳がせ捜査記事は事実と異なることが調査の結果判明したのだからそれを真実として素直に認めるべきだと)強く言っている。

以上


◎面談メモ(平成18年3月23日 自動車安全運転センター 道新道警記者クラブキャップK)

佐々木 (道新が記事に書いた)泳がせ捜査の捜査事実の有無の方はどうするのか。私の記事ともリンクするから。と聞いたところ、

K 今日2時半に道警広報課長のところへ回答を持ってくることになった。今日、〜中略〜S局長室に入り、週刊現代(4月1日号「新聞が警察に屈した日」〜原田宏二)の記事があろうとなかろうと、道警に、(平成17年3月13日付道新記事の「道警と函館税関泳がせ捜査失敗」という記事に書かれた)事実はなかったことを回答し、それを記事にしろと強く言った。(高田昌幸と佐藤一の)捏造記者をとるのか、我々真面目にやっている記者をとるのか、どっちなんだ、と迫ってやった。捏造記者を守るというなら、我々の首を切れ、道警記者クラブから引き上げるから、どこへでも飛ばせ、と言ってやった。それで、今回、(道警に調査結果の)回答を持って行くことになった。

以上


◎面談メモ(平成18年3月28日 レストラン 道新編集局報道本部次長T)

 (「泳がせ捜査」記事について調査した結果、取材ペーパーはあるが、必要な裏付けもなく記事を書いた根拠はなかった。)

T 1月14日の記事ですべてを縛ってしまった。あのような記事を出してしまったから対応の幅がなくなってしまった。3月25日(土)の道警への回答記事も、だから、1月14日の範囲のものになってしまった。
・ 裏付けなどが必要なものなくて記事にしている。自分が来てから、自分も改めて調査したが、必要な裏付けがなくて書いている。
・ 「泳がせ捜査」だって、捜査員と話したというペーパーがあるが、その捜査員の話だって、稲葉はこんな奴だという人物評価の話であって、泳がせ捜査があったなどと言っていない。函館税関だって取材に行っていない。
・ 佐々木さんについての記事だって真実相当性がないと思う。自分は経営企画室で裁判の担当をやっていたが、真実相当性があるということは、相当のしっかりした根拠を持ったものでなくてはならない。彼らはわかってないのだろうと思う。
・ 裁判に耐えられるのかと思う。
・ 上の方は事の重大性を全く知っていない。取り返しがつかなくなることを知らない。政治記者しかいないために、社会面の裏付けの重要性を分かっていない。
・ なぜ今までのような対応をしてしまったのか。自らの首を絞めた。
・ 民主党のガセネタ(メール)対応と全く同じだ。

 〜中略〜

T どのような事が要求になるのか。裁判を回避できる条件は(何か)。
佐々木 3点セットだ。
謝罪・・・(その事実の)記事化。
本の回収。
名誉毀損の慰謝料請求だ。
 この3つに応じることはないだろう(道警への対応でも分かるとおり)から裁判になる。
・今の道新は自浄能力もないし、社長も局長も何もリーダーシップや、管理ができていない。呆れた会社だと見ている。

T その通りだ。

 〜中略〜

佐々木 とにかく道新の中はあまりにもおかしくなってしまっているから、そちらで何もできないなら、こちらからやりますから。

T そうして欲しい。裁判をやるなら、4月中にして欲しい。今、この問題に責任ある人達がいる間に提訴して欲しい。社長、局長は自分に責任がくるので、保身から高田、佐藤を切れないでいる。彼らの暴走を止められなかった責任も大きい。道新は、前に(新聞)協会賞もらってから、長く開いていたことで、協会賞を欲しかった。それで、彼らにやれやれと暴走させていた。これが裏目に出て取り返しがつかない事態になった。高田は、天皇になっていた。紙面づくりの当直で当番制の編集局長代理役の編集主幹も高田には負けた。そんな所へHさん身動き取れないので、札幌へ来た。H、私の2人とも(この記事の問題とは)関係ないんだけど。

 〜中略〜

T 泳がせ捜査記事の調査(記事)の調査記事でも、都合の悪いのは全部隠しちゃって。

 〜中略〜

佐々木 1月14日が謝るチャンスだった

 〜中略〜

T 稲葉の名前は(裁判で)出ていますよ。それが何か証言だと。

佐々木 それが(泳がせ捜査が)あったという話にはならないよ、何も。

T いいフリこかないで、原田本人がこんな本を出したということは事実だから、(その本の中に)こうしたくだりがあった、とそれだけ、本が出版されたという紹介を書けばよかった。

佐々木 それでいい。

T いいフリこいた。(原田の本の出版照会のはずの記事が、泳がせ捜査が会って、大量の覚せい剤と大麻が道内に流入したというような記事にしてしまった)。

〜中略〜

T 裁判は来月あたりですか。その作業、対応やらされるのは私です。(佐々木さんから道新に対して)文書をいくら頂いても、最初は木で鼻をくくった対応でしたが、今は(回答)できなくなった。

佐々木 出せなくなったのかい。

T もう(裁判)起こして頂いても。(裁判)やるんだったら早めにやって頂いた方が(よい)

佐々木 道新は要請に応じられないんでしょう。

T それ(裁判)回避できる条件は。

佐々木 3点セットだ。謝罪すること。4つの事実につて事実でなかったと言うことを認めて謝罪すること。本を以後、売らないこと。損害賠償すること、の3点セット。

〜中略〜

T この問題何とかしないと会社が滅びる。私は、社の方が大きな問題があり、(佐々木さんに)「何とか収めて欲しい。」とは言わない。何とか社を正すべくやって欲しい。道新は最後の最後までスキあらば逃げようとして、醜いばかりであり、新聞社として情けない。捏造問題で佐々木さんと何らかの交渉をしようと考えていたが、社の姿勢を見て、その気になれない。

〜以下省略〜

以上

 <4>に続く。

 ※なお、第11回口頭弁論での被告佐藤一、原告佐々木友善の証言は、現在取り纏め中なので近く登載する。

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北海道警察v.s.北海道新聞 第18回(20.8.21) 続・新聞が警察に屈した日 暴露された裏工作?の記録<2>


道警等が違法捜査を明らかにするのか?


 この泳がせ捜査失敗事件は事実無根だと主張する道警と本件原告の佐々木は、何を根拠にそう主張しているのだろうか。

 佐々木は、平成16年10月以降、本件被告の高田昌幸、佐藤一に対して「書籍掲載記述に対する謝罪等要求状」を送るなど、記事の内容が事実ではないとして、平成18年3月までに28回にわたり道新に対して調査、謝罪、被害の拡大防止を求めたとしている。
 道新が道警の圧力に屈し「おわび記事」を掲載するやそれに呼応するように、佐々木も平成18年1月18日付け文書で「捏造疑惑記事の一部についての調査結果及びその他の捏造記事等の調査状況の説明要求状」なる文書を道新に送ったほか、平成18年2月6日には道警に対し、道警銃器対策課と函館税関が 2000年4月頃に合同で捜査した覚せい剤事件の内容が分かる書類の情報開示請求し、函館税関にも同様の情報公開の請求をしている。

 つまり、佐々木は違法捜査を実施したとされている当事者の道警と函館税関に尋ねたところ、両機関ともそうした事実ないと否定したから、泳がせ捜査の事実はないとし、それを記事にした道新の「泳がせ捜査失敗記事」は捏造だと言っているのだ。
 道警等が、果たして違法捜査を明らかにする事を期待できるのか?
 警察の隠蔽体質と道警が置かれていた立場を考えるとはなはだ疑問である。

 情報公開に関しては、北海道情報公開条例第10条より、実施機関(道警)は開示することにより、人の生命、身体、財産又は社会的な地位の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれのある公文書は「非開示情報」としている。
 仮に情報開示請求しても通常は「これらが明らかになると、犯罪を企図する者において警察の捜査手法等の分析が可能となり、捜査活動に支障が生ずるおそれがある」との理由で開示されないのがほとんどだ。
 佐々木の情報開示請求に対して、道警は「北海道警察本部銃器対策課と函館税関2000年4月ころに合同で覚せい剤取締法違反事件の捜査をしている事実がないことから、実施機関においては、対象公文書の作成又は取得をしておらず、保管、管理はしておりません。したがって、本件開示請求にかかる公文書は不存在であります。」と通知している。
 道警の立場からすれば、当たり前と言えば当たり前の回答である。
 先に述べたように、道警や函館税関が重大な違法捜査に関する文書を保管するはずがない。
しかも、既に道警の最高責任者である道警本部長は、違法な捜査はなかったと道議会で明言している。
 議会対応と情報開示を主管していた元道警総務部長が、こんなことを知らないわけがない。
 警察庁はじめ道警や函館税関が泳がせ捜査の存在を否定したから、それだけで泳がせ捜査は事実無根だとするのはあまりにも、警察の実態とはかけ離れた短絡的な論理ではないか。

 著者が入手した資料によると、佐々木は平成18年2月15日にこの問題に関する記者会見を行っている。
 佐々木は、この記者会見の冒頭で、「泳がせ捜査失敗記事は捏造であって、道新はそれを指摘されますと今度は偽装した捏造の調査報告記事でそれを否定したということであります。社内報告記事の問題については1月18日付けの文書で道新に具体的に指摘して説明要求をしていますけれど、1ヶ月近くも経ってもこの要求に何の反応もないということでございます」とした上で、泳がせ捜査失敗記事が捏造だとする根拠として、道警に情報開示請求したところ、捜査をしている事実がないことから実施機関(道警)において対象公文書を作成しておらず保管管理はしていない、函館税関はコメントで(泳がせ捜査失敗)記事の中で否定している、函館税関は道警の照会に対してそのような捜査は実施していないと回答している、警察庁長官も衆議院内閣委員会で道警からそういう事実はないと報告を受けていると明確に答弁している、などを挙げている。

 参加した記者達からは、様々な質問が飛び交ったようだ。
 何故、今日のこの記者会見を開いたのか。道警の主張を代弁しているように思える。泳がせ捜査が法に基づかないものはなかったということだが、大量の覚せい剤の件ついて、稲葉証言が事実でないとしてもいいものか疑問が残る。等々である。

 佐々木はこうした指摘に対して、「(泳がせ捜査の)中身をよく承知していないし、警察官でない立場でああだこうだ言うことは差し控えたい」といった、曖昧な答弁を繰り返している。(稲葉元警部が上申書を裁判所に提出したのは平成15年3月17日の論告求刑の裁判当時、佐々木は道警本部総務部長の立場にあった。)
 このほか、記者会見では記者達から在職中の裏金疑惑に関する質問が浴びせられたようだ。
 佐々木はそれに対して「様々な対応も道警がされて出された結論ですから、立場を離れた者として言及を差し控えたい」などと答え、自らの責任について明らかにしなかった。

 記者会見では、曖昧な答弁に終始した佐々木ではあるが、甲第84号証のなかでは道新幹部に対し「泳がせ捜査失敗記事」は事実無根だと厳しく追及している。
 その様子を甲第84号証から拾ってみる。


泳がせ捜査失敗記事に関する道新と佐々木との交渉


 標題の(  )内は、面談等の日付、場所、相手方である。膨大な文書のため一部省略したところはあるが、原文はそのまま掲載した。(注・・・)は筆者の説明である。


調査委員会の立ち上げまでの経緯


◎面談メモ(平成17年9月22日 自動車安全運転センター 道新道警記者クラブキャップK)

 道新Kキャップが(自動車安全運転センター 注 佐々木の勤務先)執務室へ訪ねてきて面会した。(〜Mから聞いたらしい。(M 道新の道警記者クラブM記者)に対し、原告に対する記事についての道新の調査とその結果の(私に対する)報告の動きが鈍いと(私=原告)が話したこと(平成17年9月22日付M記者との会話の覚書)を聞いたことから説明に来た。)

K もう少し待って下さい。来週月曜日の26日午後4時から、佐藤一(注 本件被告でKの前任者)を呼んで、いわば査問委員会をやることになっている。そこには、5人が入り、私も入れと言われている。入るのは、H報道本部長、Y編集局総務(前報道本部長)、Kデスク、私(K)の5人です。そこで判ってきますから。27日まで待って下さい。

佐々木 あまり動きが悪いなら、私は公開質問に入ろうと考えている。公開質問は、道新と道新委員会(読者と道新委員会)と双方に対して同時に出すことにしている。(私に)先に公開質問されたら、格好が悪いと言うなら早く、(調査を)やってほしい。

K 26日(佐藤一記者を呼んで調査を)やるので(調査結果の回答を)27日まで待ってほしい。

以上


◎面談メモ(平成17年9月27日 自動車安全センター 道新道警記者クラブキャップK)
○Kキャップの説明

(1)昨日午後4時から2時間半にわたり佐藤(一)記者から(泳がせ捜査の)記事の根拠について説明を求め聴取した。この席でH本部長から「この記事(泳がせ捜査記事)は完全に負けだな」と言うと、佐藤は、「記事は、取材に基づいて書いたもので捏造ではない」と話した。
 H本部長から、覚せい剤130キロの根拠は?大麻2tの根拠は?と詰められると、説明に窮し、「もう少し取材させてもらってから、記事が正しいことを説明させてもらいたい」と言ったためH氏は「今月一杯時間をやるから(記事を書いた)根拠を説明せよ」と言って時間を与えた。
 この事情聴取の際、H氏が「この記事はこちら(道新)の完敗だな」「指摘に対して、説明がつかない」と言ったことに対して、佐藤は、「無視すればいい」「裁判に訴えるなら訴えさせればいい」などと主張した。
 これに対してH氏は「「立場にある人(原告)からの指摘や、道警というれっきとした組織からの指摘にたいして無視して済むものではないだろう」とたしなめた。

(2)H本部長は、早急に調査し、結果を出さなければならないとしたが、いつまでという期限は示さなかった。Kの受けている感触として、又、(K)自らの考え方としては10月一杯くらいがメドになると見ている。
 ※ Y編(集局)総務は何も発言しなかった。(前報道本部長)

(3)佐々木さんにかかわる(記事の)問題は、同時並行して調査、解明していくことにした。
○(この調査の結果についての)Kキャップの見方(について次のように話した。)
・この会合を持つにはH氏は、社長、編集局長、各役員には了承を取り付けているものと思われる。
・佐藤の捏造は明らかだが、佐藤が追加材料を示したいと言っているので、言い分を塞がないようにするため、時間を与えたものである。(捏造記事であるから)追加材料が示せるはずはないが、この間に、本人自らが覚悟を決め、非を認め、道新の(今後佐藤に対してとろうとしている)対応に対し、納得させるためのものでしかないと思う。
・この後の間に、Kキャップとしては、(泳がせ捜査)記事が、事実ではなかった(そのような捜査の事実はなかった)、(記事に)真実相当性はなかったという材料を集めることになる。
・(調査が)これほどまでに時間がかかったのはあまりにも遅すぎた(道新の対応であった)
 〜中略〜(注 Kがこの問題に関する社内の状況を説明している)
 (高田昌幸からは、〜中略〜泳がせ捜査に関する記事が間違いないという上申書を取ってある。→(捏造記事についての言い逃れができないように)高田の逃げ道を塞いだ。)

(4)(調査の)節目にはHから(佐々木さんに)報告します。
(5)(今後)どのように道新が対応するか、佐々木さんの納得を得られないものではダメなので、(佐々木さんと)事前に話し合うようになる。
         
私(佐々木)から→(これらの話に対して次の点を要請した。)
1 調査(確実な調査を早急にすること。)
2 謝罪(調査結果に基づいて謝罪すること。私だけでなく私が指摘している他の疑惑記事の書かれた関係者に対しても謝罪すること。)
3 検証(捏造記事に関しての検証を行うこと。)
4 処分(捏造記事について責任ある道新の関係者を処分すること。)
5 改善策(捏造記事防止について改善策を立てて実行すること。)
(これらのこと)は、(道新としてやるべき)最低のセットになるので十分考えて欲しいと注文(した。)

以上

 佐々木は、平成17年10月18日、菊池育夫道新社長以下7人に対して「最後通告書」なる文書を送り、これまでの要求についての最後の回答期限を平成17年11月8日とするとし、期限経過後には、公開の場における事実関係の解明のための行動に移る旨を通告した。


◎面談メモ(平成17年10月21日 自動車安全運転センター 道新道警記者クラブキャップK)

K 来週月曜日(10月24日)に役員会を開いて調査委員会を立ち上げるが、それで社内的に(このことが)オープンになる。社外に伝わるかもしれないが、積極的には出さない。
 麻薬捜査(覚せい剤の「泳がせ捜査」)と佐々木さんから指摘されていること(「警察幹部を逮捕せよ」「追及・北海道警『裏金』疑惑」という書籍の記事)の両方を一緒に調査し、(その結果を検証)記事にすると思う。

〜以下中略〜

 今の段階でこれを知っているのは、役員10人位と経営企画室10人位とHと自分だけだ。これが知れると(社内から)妨害が出たりして支障が生じるので秘密になっている。
 佐々木さんからの(平成17年10月18日付の)最後通告書昨日見ました。

佐々木 あれはHさんの前向きな対応が、反対勢力によって潰されそうになっているのではないかと思ったこと、時間も経ちすぎていることなどから出した。捏造記事は絶対許さんというあなたたちの行動は立派だ。だから、ある意味、あの文書はHさんに対する支援にもなるだろうとの思いも込められている。

K (最後通告の回答期限になっている)11月8日と言うのは動かないのか。

佐々木  基本的に最後通告だから動かない。

〜以下 省略〜

以上


◎面談メモ(平成17年10月24日 自動車安全運転センター 道新道警記者クラブキャップK)

K H(報道本部長)さん、岩田さん(道警広報課長)と話して、時間がなく社(会社)に戻った。(Hから)時間がなく(佐々木さんに道新の取り組み現状の説明できないので)申し訳ないので(Kから)伝えて欲しいと言われて来た。

 〜中略〜今日、常務会(役員会よりも上の機関で構成は)5人位。社長、常務などで、調査委員会を作り、(調査委員会を設置することを決めて)早急に調査することを決定した。ここ2,3日に調査委員を選任する。

※組合〜500万円の広告局の(横領金の)私的流用をなぜ退職前なのに調査しなかったのか。
  役員〜道警との緊張関係の中で道警に(道新に対して捜査に)入られたくなかった、との対立。

以上


◎面談記録(平成17年10月28日 ホテル喫茶店 道新報道本部長H)
(注 道新報道本部長Hと佐々木の面談は、平成17年8月25日に続いて2回目である。)

佐々木 何ですか、あの500万の話は。(注 道新東京支社の元営業部長が事業活動資金約500万円私的に流用していた事件、道新は社長等役員を減給処分とした)

H 次から次へと話は尽きないです。

 〜中略〜

佐々木 やっぱり道新は、チエック機能と自浄能力を高めないといけない。

H たがが緩んでいるんですよ。

佐々木 緩んでいると私も感じるね。あまりにも。

H あまりにも野放図にやらせ過ぎだ。

佐々木 野放図だと思うよ。野放図すぎる。

H 上の事情を下は。

佐々木 知っていない。そんな感じだな。

H 組織として、きちんと成り立っていないんですよ。

佐々木 組織としての動きになっていない。

 〜以下省略〜

(注 以下、佐々木の最後通告の取り扱い、調査委員会の設置等について話し合いが行われている)


◎面談記録(平成17年11月7日 ホテル喫茶店 道新報道本部長H)

佐々木 騒がしくなってきたようですね。疲れますね。

H いろんなところからいろんな球が飛んでくるので。この前お約束したとおり、(注 調査委員会の)メンバーが決まって、具体的に始めてますから。〜中略〜メンバーは、編集外勤担当であるSというのと、私と報道本部の編集員3人です。基本的には

佐々木 編集員の人はなんておっしゃるの?

H Oです。それは、これまで佐々木さんに、11月8日までに名前を出して、調査をやると言ったが、私は約束を守りました。

佐々木 わかりました。それであればですね。スケジュールは?

H スケジュールは約1ヶ月。

 〜中略〜

H ちゃんと、キッチリと言ったことはやっていますから。

佐々木 そうですか。やっぱりHさんだね。この前非常に曖昧だったのは、なかなか難しい議案だったのだろうと。だから強い意志があっても、言えないのだろうなと。自信が持てない。

H 言ったことはやりますから。ただし、どうなるかはわからないことは言えませんから。はっきり言って。

佐々木 そういう気持ちできちんとしなくちゃいけないと思って、ああいう話だったのだろうと推測していました。

H やっぱり、やるということは、会社の組織としてやるということですから、私個人が何とかということではありませんから。組織として動こうという事です。

 〜中略〜

佐々木 本人にも通知したの?

H 通知しました。

佐々木 通知した、2人とも。

H 今日会います。これから。

 〜中略〜

佐々木 そうですか。わかりました。それならあと1ヶ月目途に。実はこれ差し上げますけど、これは(11月9日ホテルガーデンパレスにおける記者会見の記者クラブへの案内文書)無効になります。使いません。(記者会見の予約を)キャンセルします。ただ、(記者会見の予定の)当日の朝まで(予約したままにして)取っておきます。

 〜中略〜

H はっきり言えば、前任者とは、その時、問題が起きたとき、きちっと対処すればここまでこじれなかったんですよ。

〜以下 省略〜


 ここまでの経緯をみると、道新道警記者クラブキャップKの発言は、調査委員会を立ち上げる前に「泳がせ捜査失敗記事」は捏造であると決めつけていることが分かる。この日、佐々木とHは、週刊新潮とクォリティ(月刊誌)の取材対応について、「具体的な内容については、道新とやりとり(交渉)中なので話はできません」と対応することで、双方が合意している。11月10日付けの毎日新聞には、「北海道新聞が、内部調査に着手したことが9日分かった」旨が報道された。

 <3>へ続く。


cefh at 01:53コメント(0)トラックバック(0)北海道警察v.s.北海道新聞 

北海道警察v.s.北海道新聞 第18回(20.8.21) 続・新聞が警察に屈した日 暴露された裏工作?の記録<1>

 道新裁判の第10回口頭弁論が、平成20年7月14日に札幌地裁で開かれ、証人芦刈勝治元道警本部長、中原洋之輔(道警裏金取材班サブキャップ)が証言台に立った。

 それぞれの証言については、このホームページ「北海道警察VS北海道新聞」で紹介したが、第10回口頭弁論で原告側から「甲第84号証」として、訴訟を提起するに至るまでの原告佐々木友善(以下 佐々木)と道新幹部とのやり取りに関する文書が証拠申請された。
 これに対して、被告側は証拠能力に問題があると異議を申し立てたため裁判所が判断することになった。
 提出された文書は、平成17年8月25日から平成18年4月27日までの35回にわたる佐々木と道新関係者との面談等の記録である。
 文書には「面談記録」、「面談メモ」、「電話メモ」、「電話録取書」と標題がつけられている。長いものでは41ページに及ぶ。
 内容からみて、「面接記録」は録音したものを書き起こしたもので、「面談メモ」、「電話メモ」、「電話録取書」は佐々木が相手との対話をメモしたものとみられる。
 これから何回かに分けて、いくつかの観点からこの文書を出来るだけ原文のまま引用して道新裁判とは何なのかを考えてみる。(文中敬称略)

 この文書に登場する人物は、作成者で原告の道警元総務部長佐々木と道新の当時の編集局長S、編集局次長兼報道本部長H、報道本部次長T、道新道警記者クラブキャップK、同サブキャップMの5人である。

 佐々木は、提訴に当たっての記者会見で「40回に及ぶ文書でのやり取りと並行して道新幹部との面接による直接交渉などは約50回に及んだが、昨年(平成17年)7月から本件提訴直前までの11ヶ月間にわたって、道新の最高幹部らによって執拗な提訴を断念させるような働きかけがあった」と語っている。
 従って、そうした交渉があったであろうことは既に知られていたが、その内容が明らかにされたのは初めてである。
 ただ、両者の面談等の全てが明らかにされたものかどうかは不明である。

 ここで、読者に念のためにお断りしておくが、「甲第84号証」に登場する人物が語ったとされる内容が真実かどうかは分からない。
 第11回口頭弁論でもこの内容に関する証言が行われている。
 本件被告佐藤一は、自らが関係する部分に関して「そうした事実はなかった」と否定する趣旨の証言をしている。

 仮に「甲第84号証」の記述が真実だとすれば、ここまでして道新上層部か訴訟を回避しようとしたのは何故か、取材現場の責任者である道警記者クラブのキャップが、元道警総務部長佐々木に取り入ろうした本当の理由は何かなど素朴な疑問が湧く。
 いずれにせよ、こんなことで新聞が権力の監視という使命が果たせるのかとの危惧の念を抱かざるを得ない。

 「泳がせ捜査失敗記事」の問題は、この「甲第84号証」のなかに度々登場している。
 この問題は、佐々木が提訴した名誉毀損事件とは直接の関係はない。
 また、佐々木が既に退職していることから、この道警と道新の問題にどのような立場で道新を追及しているのかも必ずしも明確ではない。
 この問題は、道警によって道新幹部による金にまつわる不祥事と巧みにリンクされた。
 そして、佐々木の動きと道警の動きは、水面下で連携しているようにみえる。
 筆者は、佐々木も自らの問題に関する道新との交渉でこの問題が、道新の弱点とみて突破口として使ったのではないかと推測している。

 道新内部には、連続して発覚した幹部の金にまつわる不祥事、一連の道警裏金疑惑報道で悪化した道警との関係修復を図りたい勢力の台頭等、社内に動揺と混乱がみられ、道新はそこを道警と原告佐々木の2方面から執拗に突かれたのだ。


道警の泳がせ捜査失敗記事とは何か

 道新は、平成17年3月13日朝刊に、道警銃器対策課と函館税関が2000年4月ごろ、「泳がせ捜査」に失敗、香港から石狩湾新港に密輸された覚せい剤約130キロと大麻約2トンを押収できなかった疑いがあることが、複数の当時の捜査関係者らの証言で12日、分かった。」とする記事(以下、「泳がせ捜査失敗記事」)を掲載した。
 この記事には、「道警と函館税関が事実関係を否定した」と記載されていた。
 道警は「事実無根」であるとして、道新編集局長(新蔵博雅)に対して総務部長名(永井達也)で質問状を発し訂正、謝罪を申し入れていたが、道新は平成18年1月14日朝刊に「社告」と社内調査報告に基づく記事(以下「おわび記事」)を掲載し、31日には編集局長以下関係者7人を減給等の処分を行ったと発表した。

 道警と道新との確執については、このホームページ「第15回 北海道警察VS北海道警察 新聞が権力に屈した日」と題して、道新上層部が、幹部の金にまわる不祥事をめぐり、道警の恫喝に屈していく経緯について述べたが、その間の道警と道新とのやり取りの中で、道新の東京支社元部長の業務上横領事件とその事後処理をめぐる問題に関して、当時の道警の岩田満広報課長が道新の道警記者クラブキャップのK記者を通じて、捜査に着手する意向を道新の上層部に伝えたことを示す「広告横領事件関連取材メモ」が存在したことも判明している。

 道警はこの「おわび記事」に納得せず、重ねて「泳がせ捜査失敗記事」の削除と説明等を求めたため、道新は道警総務部長に対して、「泳がせ捜査」は麻薬特例法等に基づき手続きが厳密に定められ、実施する場合は多数の捜査員が必要となるが、道警および函館税関がともに、その手続きや捜査体制をとった形跡がなく、少なくても法的な裏付けのある組織的な泳がせ捜査は無かったと推認された、と平成18年3月24日付け文書で回答している。
 これに対して道警は、同月28日「大量の覚せい剤や大麻が道内に流通しているのではないかという道民の不安を解消するものではなく納得できない。公正で正確な報道を強く申し入れる」との文書を同社(道新)に出した。
 ただ、「不信感は残るが、不十分ながらおわびを出したことなどを総合的に考慮した」(道警幹部)と、従来の抗議文の形はとっておらず、回答も求めていない。(平成18年3月29日 朝日新聞)

 つまり、「泳がせ捜査失敗記事」の問題は、当事者である道警と道新の間では事実上の決着がついた。

 この「おわび記事」で道新の新蔵博雅編集局長はこうコメントしている。
 「社内調査の結果、全体として説得材料が足りず不適切なものであったとの結論に達しました。疑いを裏付ける続報を展開し得なかった力不足についても率直に反省しています」
 つまり、「おわび記事」で新蔵博雅編集局長は、取材不足を詫びているのであって、泳がせ捜査と称する違法捜査が事実無根であったと詫びているのではない。

 さらに、平成18年3月24日付の回答文書の内容もよく分からない。
 そもそも、この「泳がせ捜査」は極めて違法性の強いところから、麻薬特例法が求めるような手続きの対象になるような代物ではない。それ以前の問題だ。
 筆者が捜査の責任者だったら、少なくても、捜査が失敗した時点で、関係した当時の捜査員に箝口令を敷き、関係書類全てを焼却する。
 そんなことは警察内部では常識だ。この違法捜査は重罪である。
 関係した幹部や捜査員、Sと称する暴力団関係者も自らを窮地に陥れてまで秘密を漏らすことはない。
 追及されれば死を選ぶ。実際に2人が自ら死を選んだ。

 警察官であれば、口を開けば稲葉元警部と同じ運命を辿るであろうことは誰でも判る。
 稲葉元警部は上申書で「泳がせ捜査の失敗は結局関係者全員が秘密とすることにより、闇に葬られました」と語っている。
 組織的な泳がせ捜査は無かったと推認されるような形跡が何時までも警察に存在すると考えるのは全くのナンセンスである。


曽我部司氏の著作等にみる泳がせ捜査の真相


 稲葉元警部が、覚せい剤の営利目的所持で起訴された約93グラムの入手先を話し始めたのは、平成15年2月24日の第4回の公判である。それは弁護人の質問に答える形で行われている。その証言を要約すると次のようなものであった。

 平成12年の4月か5月にけん銃を摘発する目的で、IというS(スパイ〜協力者)を使って、覚せい剤に関するおとり捜査を、道本の銃器対策課が実施した。
 事件の報告は、当時の稲葉元警部の上司である銃器対策課長、指導官、次席、補佐(警部)に報告していた。このほかにこの捜査を知っていたのは元銃器対策課の上司Nだ。(当時、稲葉元警部は銃器対策課の警部補〜係長であった。)
 この捜査は銃器対策課が主宰である。
 自分が所持していたとされた覚せい剤は、初回に(最初に)密輸入した1部であり、ほかはIが処分したが、(物がどこからきたのか、量はどの位かは)「ばくだいな量です。量は言えません。
 その目的等については「最終的な目的はけん銃でした。ですから、方法として、1回目、見逃す、2回目見逃す、3回目(けん銃摘発)に着手するという感じ、そういう方法です」と証言している。

 稲葉元警部は、この方法を覚せい剤の摘発を目的とする「泳がせ捜査」と説明し、麻薬特例法に基づくコントロールド・デリバリーとしているようだが、そもそも、この手法は警察等が輸入された覚せい剤等を発見した場合に、その場で直ちに検挙することなく、十分な監視の下にその運搬を継続させ、関連被疑者に到達させてその者らを検挙する捜査方法であり、麻薬特例法第4条により、警察が検事に申請し、関税長が必要と認めたときに行われる。

 従って、稲葉証言に「(事件を)見逃す」とあるように、麻薬特例法による「泳がせ捜査」ではないことは明らかである。それどころではない。

 稲葉証言が事実だとすれば、銃器対策課の協力者である暴力団関係者Iらと銃器対策課の共謀による覚せい剤密輸(覚せい剤取締法第41条、1年以上の有期懲役)あるいは、不法輸入(麻薬特例法第6条 死刑・無期又は10年以上の懲役)に該当する犯罪である。
 当時は1丁でも多くけん銃を挙げろとの警察庁の大号令の下、全国警察でけん銃の摘発競争が展開され、数多くの違法捜査が発覚している。
 稲葉証言によると、道警銃器対策課も首なしけん銃の摘発等(けん銃の不法所持者を知りながらけん銃だけを摘発する手法)の違法な捜査でけん銃摘発の実績を上げるために血道を上げていた。
 つまり、けん銃摘発のためには「何でもあり」であった。
 この「泳がせ捜査」と称する違法捜査もそうした中で行われたと思われる。

 稲葉元警部は、さらに平成15年3月17日の論告求刑公判で裁判長に上申書を提出し本人が読み上げた。以下に関係する部分のみを引用する。

 「営利目的所持の覚せい剤についても入手経路を上申させていただきますが、入手先は香港であり、到着港は石狩新港であります。公判でお話しした様に、最終的な目的をけん銃とした泳がせ捜査の初回の物(ブツ)の一部です。公判では申し上げませんでしたが、この泳がせ捜査は税関と合同で実施した捜査であり、警察と緊密な連携により実行されました。私は着手して間もなく、当時の上司に足かせをはめました。物の受け皿会社を直近上司O(補佐)の頭文字を取り、OK商事としました。これらは全て裏付けが取れます。以上の泳がせ捜査の失敗は結局関係者全員が秘密とすることにより、闇に葬られましたが、皮肉にも私の事件によって露見したことになりました」

 この上申書でも、彼は莫大な量の覚せい剤の具体的な量について言及してはいない。
 また、大麻のことについても何も語っていない。

 こうした稲葉証言の真偽が大問題となってくるが、道警や検察は稲葉元警部が証言した覚せい剤の入手先の捜査も銃器対策課の数々のけん銃摘発にまつわる違法行為の追及を行う気配もなかった。
 道警としては、組織的な違法捜査が行われ、多量の覚せい剤を流入させてしまったことは絶対に認めるわけにはいかない。
 マスコミ各社の報道は、稲葉元警部の女性問題等のスキャンダル報道が目立ち、彼を悪徳警察官にまつり上げ、彼個人の犯罪として終わらせようとする道警の思惑どおりの報道に終始した。

 筆者が記憶する限り、マスコミ各社の多くは、彼が公判で証言した銃器対策課の数々のけん銃摘発にまつわる違法捜査や泳がせ捜査失敗証言に注目することもなかった。
 こうしたマスコミ各社の姿勢に、道警や函館税関は稲葉証言を黙殺した。
 泳がせ捜査に関与したとみられる元銃器対策課の幹部や協力者の1人が自殺、暴力団関係者のIは所在不明になっていたほか、当時の銃器対策課の幹部が真相を語るおそれはないなど、この事件がこれ以上明らかになることはないと判断したのだろう。
 当時の上原道警本部長も早々と平成15年2月19日、道議会で稲葉証言のような事実は把握されなかったと答弁した。これが道警の公式答弁となった。
 平成15年4月21日、懲役9年、罰金160万円の判決が出た。

 稲葉元警部は控訴することなく刑に服した。
 稲葉事件は、道警の思惑どおり稲葉元警部の個人の犯罪として終わりを告げるかにみえた。

 ところが、平成15年9月、札幌のノンフィクション作家曽我部司氏による「稲葉事件の深層北海道警察の冷たい夏」が出版され再び稲葉事件が大きな反響を呼ぶことになった。
 マスコミ各社がこの道警のスキャンダルにおそれをなし沈黙を守る中で、曽我部氏は稲葉事件の取材を続け、次々と稲葉事件に関する著作を著す。

 月刊現代(平成16年9月号)「北海道警察が闇に葬った大スキャンダル」、月刊現代(平成18年4月号)「迷走する北海道警『覚醒剤スキャンダル』の核心」、平成19年2月「警察腐敗と覚醒剤汚染の源流へ」(株式会社エクスナレッジ)である。

 曽我部氏は、稲葉元警部の周辺にいたとみられる数多くの暴力団関係者、覚せい剤の密売人や常習者、警察関係者等々の取材を通じて稲葉証言を裏付けている。
 さらに「OK商事」という囮捜査のためにでっち上げた会社が実在していたことや石狩湾新港に入港した外国船籍の貨物船の入港記録を徹底的に調査し、その結果を明らかにしている。
 曽我部氏は、著書の中で平成16年3月4日に(稲葉証言によれば道警のSで、泳がせ捜査に関与したとされる)暴力団関係者Iがある弁護士事務所に現れ、稲葉証言に合致する話をしたとする情報があったことも明らかにしている。

 曽我部氏は、「警察腐敗と覚醒剤汚染の源流へ」でこう書いている。
 この事件を曖昧な形にして幕引きを図ったのは、上級幹部警察官や検察官の保身のためなのだ。その曖昧さによって、執行機関は自らの弱みを多くの「悪」に利用されることになる。「悪」に一度弱みを握られたら、徹底的に利用されてしまう。そこに、呆れ返るほどの不作為が生まれる。

 筆者(原田宏二)は、平成17年3月、「警察内部告発者」(講談社)の中で、稲葉元警部が平成16年6月、稲葉元警部の親族を介して、事件の真相を筆者に伝えてきたことを書いた。
 彼は、その中で家宅捜索で押収された約100グラム(実際には約93グラム)の覚醒剤の出所について説明した。
 それが香港から入れた130キロの一部であること、このブツのあとコンテナーいっぱいの大麻2トンも密輸していることなど、上申書では明らかにしなかった事実も明らかにしている。

 その後も稲葉元警部は、筆者に他の元上司らが何と言おうとも、130キロと2トンは事実であるとしたうえで、その量は129キロと2トンで現物も見ている。(差し引きの)1キロの中から自分の犯罪事実になった約93グラムが出ていると伝えてきている。
 さらに、この泳がせ捜査の事実を知っている幹部等の関係者やその言動、この事件に関わった税関職員、協力者の数、泳がせ捜査の実施時期、密輸の手口、荷受人等についても詳しく説明している。

 この問題については、いずれ時期が来れば稲葉元警部が自身の口から明らかにすると思うので、今の時点で明らかにするのは控えるが、曽我部氏のこの問題に関する著作の記述と稲葉元警部の話は大筋で合致しており、密輸入したとされる覚醒剤の量、偽装の方法等細部でもおおむね合致していることだけは明確にしておく。

 筆者は、曽我部氏とこの問題について情報を交換したことは一度もなく、曽我部氏の著書の内容を稲葉元警部に知らせたこともない。
 となるとこれは単なる偶然なのだろうか。
 ちなみに、稲葉元警部は筆者の著書も読んではいない。
 筆者は、刑に服している稲葉元警部が、虚言を申し立てる理由もないことや直接問題に関わった当事者しか知らない具体的な暴露もあり、稲葉元警部の証言は真実であると確信している。
 確信する最大の理由は、道警が稲葉元警部の所持していたとされる覚せい剤約93グラムの出所に関する追及捜査をしなかった点にある。

 稲葉証言を黙殺し、曽我部氏による覚せい剤130キロ密輸疑惑の真相に迫る著作にも沈黙していた道警にとって、平成17年3月、筆者の「警察内部告発者」(講談社)発売とほぼ同時期に、道新が「泳がせ捜査失敗記事」を掲載したことは、一連の裏金疑惑報道によって、道民の信頼を失い大きなダメージを受けていたこともあり、この問題の再燃は致命的だと判断したに違いない。

 <2>へ続く。

cefh at 01:51コメント(0)トラックバック(0)北海道警察v.s.北海道新聞 

北海道警察v.s.北海道新聞 第17回(20.7.26) 第10回口頭弁論 北海道警察VS北海道新聞(その2) 道警裏金取材班 中原洋之輔記者の証言

 平成20年7月14日の第10回口頭弁論では、芦刈勝治元道警本部長に続いて、午後3時42分から、北海道新聞の道警記者クラブサブキャップだった中原洋之輔記者(以下「中原」)が証言台に立った。中原は、本件の被告ではないが、平成15年11月に発覚した道警裏金疑惑について、被告の佐藤一道新道警記者クラブキャップら8人の記者とともに、道警記者クラブサブキャップとして道警の裏金疑惑追及の最前線で活躍した記者である。以下(  )内は、筆者注。

<まず、被告道新代理人見野弁護士(以下「見野」)が、中原の陳述書の内容、中原の道警裏金取材班の中での立場を確認>

見野 佐々木氏が「わかるでしょ、理解してよ」と言ったのを聞いたというが。

中原 全くその言葉通りかというと、記憶が薄れているので…。

見野 時期はいつだったか。

中原 2003年11月末だったと記憶している。

見野 どういう会合だったか。

中原 道警幹部とマスコミの懇親会だった。

見野 時間は?

中原 勤務時間が終わってからなので、6時過ぎだったと思う。

見野 参加していたのは誰か?

中原 広報課長や次席らだ。

見野 芦刈本部長は?

中原 参加していたと記憶している。

見野 報道関係者は?

中原 全国紙や民放テレビなど、各社がいたと思う。全国紙というのは、朝日、読売、毎日。ただ、「誰」という部分については覚えていない。

見野 佐々木氏の発言を聞いた場所は?

中原 (記者)会見室に入ってすぐの、ひな壇のそばのところだ。佐々木は左側の壁を背にして言っていた。私は佐々木の正面にいた。テーブルを挟んで向かい合っていた。

見野 ほかに同席者は?

中原 2人ほど記者がいたと思うが、どこの社の誰かは記憶にない。

見野 佐々木氏の服装は覚えているか。

中原 覚えている(以下、服装を説明)。

見野 なぜ、そんなに覚えているの?

中原 発言が重要だと思ったので、その情景も記憶していました。その年の11月23日、テレビ朝日の「ザ・スクープ」が裏金問題を取り上げ、その直後の懇親会だったため、「どうなんだ」と申し向けたところ、その発言があった。

見野 どんな様子で話していたか。

中原 朗らか、というか笑顔だった。顔が赤らんでいたので、酒を飲んでいたようだった。敵対していたとか、そういうのではなく、和やかな空気だった。

見野 その発言を聞いて、どう思ったか。

中原 氏名の偽造を認めたということで、大変だと思った。この話は高田(本件被告高田昌幸)、佐藤(本件被告佐藤一)、●(道新道警記者クラブの記者)に早速連絡した。口頭かケータイでだ。

見野 今の話は後に記事にしたか?

中原 ハイ。12月31日付紙面で「本音を吐露した」という内容で記事化しました。

見野 佐々木氏の発言は重要な内容だったわけだが、記事化に1ヶ月かかったのはなぜか。

中原 酒の場での発言を即座に字にした場合、どうなるのかを考えた。すると、全面否定される可能性が高い。なので、「公の場で認めさせる」ことを第一に考えた。それともう一つの理由がある。警察とマスコミの関係だ。事件事故の取材は警察が大きな情報源となり、早い話が警察頼りになっている。もし、警察との関係が悪化すれば、事件事故の取材は一切できなくなる。そういうことを考えた。

見野 では、その酒の場の話を1ヶ月後に書いたのはなぜ?

中原 裏金問題が発覚してから1ヶ月間の、警察組織内の揺らぎを読者に伝えようと思った。そこで、ほかの幹部の発言も交え、記事化したものです。佐藤をはじめ高田とも打ち合わせ、記事を作成しました。

見野 ところで、佐藤からも、「佐々木が『わかるでしょ、理解してよ』といった」というのを聞いているか?

中原 聞きました。場所は道警本部2階の記者室か2階の廊下で。時期は12月の中旬から末にかけての頃だったと思う。私が佐々木氏から聞いたことと同じ内容だと感じた。

見野 では、芦刈本部長が「ぼくも終わりかな」という言葉を発したのを聞いたか。

中原 聞きました。場所は道警本部2階の記者会見室で。道警とマスコミとの懇親会の場で。芦刈本部長は肘掛けのないいすに腰掛けていた。自分は向かい合って座っていた。他社も2人くらいいた。

見野 どんな流れでその話を聞いたのか。

中原 旭川中央署の裏金問題が発覚したこともあり、「大変ですね」と声をかけると、遠くの方を見つめてそういうコメントをされた。

見野 芦刈本部長が佐々木氏を「よくも下手をうったな」と叱責したらしい、という話を聞いたことがあるか。

中原 あります。佐藤から聞きました。場所は記者室か2階の廊下で。日付は失念したが、「調査と答弁しないで」記事の件で、芦刈氏がそんなことを言ったらしいと。

見野 その話を聞いてどう思ったか。

中原 道警内部も混乱しているな、と感じた。

見野 佐々木氏の「いやいやどこまでやられるかと思ったよ」発言について聞いたことがあるか。

中原 佐藤に聞いた。佐々木氏が退職したあとの4月だったと思う。話は佐々木氏が退職した話をしていて、その流れで。佐々木氏もこの数ヶ月、さまざまな対応に追われ、その重責から解放されてホッとしたんだろうな、と思った。

見野 よくその話を覚えていたね。

中原 自分も佐々木氏からいろいろ聞けないかとアタックしていたが、全然聞けなかった。自分には話さないことを佐藤には話すのだな、と思ったので。

見野 「わかるでしょ、理解してよ」という佐々木の言葉を佐藤からも聞いている?

中原 ハイ。12月31日の記事をまとめるにあたり、佐藤と打ち合わせる中で聞いた。その「わかるでしょ」という言葉は、佐々木さんとの会話の中での「合いの手」のようなもの。
それ自体に意味があるものではない。佐々木さんが何を理解してほしかったのかを考える必要があった。それは何かというと偽造領収書というものの存在だ。これは裏金問題の核になる問題だ。「マスコミだって協力者の名前を出せないこともあるでしょ。警察だって捜査協力者の名前を出せないんだ。わかるでしょ」と、理解を求めてきた。佐藤の話も同じ趣旨だったし、自分が体験した状況も同じ趣旨だった。当初、私は裏金システムの複雑さをすべてわかっているわけではなかったが…(以下、メモ漏れ)。

市川 道新の裏金問題取材班には、現職警察官やOBがかなり協力しているようだが。

中原 ハイ。大勢の方が協力してくれた。裏金は「作る人」と「使う人」が分かれている。「作る人」は下の地位の人。「使う人」また管理する人は上の地位の人。私たちは下の地位の人や下の地位の人の気持ちがわかる人から話を聞くことができた。

市川 たとえばどんな話が聞けたか。

中原 すべてを語るのは取材源の秘匿にも抵触するので、差し支えのない範囲で2人の話をしたい。一人は会計畑のOBの方だ。この方に取材し、素直に「裏金のシステムについて教えてくれ」と聞いた。その方は「稲葉事件の背景にも裏金問題がある。道新さん、この問題を徹底的にやる気があるのか。中途半端にしかやらないのなら、私は話さない」と言われました。その方はその後も何度もお会いし、様々な話をしてくださった。もう一人、この人は刑事畑の人だ。その人の手帳には日付のところに数字や名前がびっしり書かれていた。それは何かと聞くと「架空領収書に書いた名前と金額だ」とおっしゃった。30年以上の刑事経験でずっと、そんなことをされていた。何でそんなことをやっているのかと聞くと、「私が刑事だからだ」と言われていた。

市川 公安の刑事に尾行されたことは?

中原 直接の経験としてはないが、OBの方から「気をつけた方がいい」と言われたことはあります。

清水弁護士(被告高田昌幸、佐藤一の代理人。以下「清水」)
2003年11月、「ぼくも終わりかな」という話を芦刈さんから聞いたと言うことだが、道警本部長というのは警察庁のキャリアの中では「アガリ」のポストだ。ミスしたからといって、出世の道から転落することはないわけですが、そういう状況の中で芦刈さんの発言を聞いたということ?

中原 ハイ。

清水 その状況でのその発言、どう受け止めたか?

中原 これから大変な事態になりそうだと。そのことについて、漠然と感じておられたのではないか。これまでの仕事の中で、裏金問題について対処したことなどないでしょうし、未知の仕事が待ち受けているわけですから。

大谷昭宏(補助参加人 以下「大谷」) 道警の道庁に対する裏工作の話だが、私は記者として「オフィシャルな話」、つまり公的な話と考えるが、あなたはどう思うか?

中原 公的なものと考える。

大谷 では、「これでぼくも終わりかな」というのは、私は雑感の話と考えるが、あなたはどうか。

中原 その通り、同感です。

(もう一問、やりとりあったが、メモ取りきれず)

斎藤弁護士(原告代理人以下「齋藤」) 芦刈さんは懇親会の場で「ぼくももう終わりかな」なんて言ってないと言っている。そっちの方が正しいのではないか?

中原 私は聞いておりますので、芦刈さんの証言が間違っていると思う。

斎藤 ではその懇親会ですが、キャップ懇ですか?

中原 はっきり覚えていない。当時、マスコミと警察幹部との懇親会はいろいろあったから。キャップ懇だけでなく、25日会、忘年会、花見、歓迎会など。クラブ総会も懇親会の一つになる。

斎藤 では、25日会だったのではないか?

中原 私の記憶の中では、道警との懇親会だった、としかお答えできない。

斎藤 こちらは、証人がキャップ懇に出席するはずがない、と主張しているのだが、あなたは時折、代理出席していたというが。

中原 当然、代理出席することもあった。

斎藤 では、12月31日の記事について伺う。先ほども聞かれていたが、どうして1ヶ月も記事化が遅れたのか。この時期は道新はスクープに躍起になっており、取材即記事化という方針だったのではないか。

中原 スクープに躍起だったという根拠はなんですか。それを示されないとわからない。

斎藤 高田の陳述書によると、「取材内容は取材が終了次第、極力早く伝えるように指示していた云々」とある。これはまさに「取材即記事化」ではないか。

中原 それは記憶がぼけないうちに報告せよ、というだけのことです。

斎藤 では、芦刈さんのその時の姿勢について教えてください。

中原 私の正面に芦刈さんがいました。少し左を向いており、話し方はゆっくりとしていました。視線は私を見る、というより、遠くを見るような感じでした。

斎藤 あなたの陳述書によると、「私に話しかけた」とある。芦刈さんは遠くを見て話したんですよね。これは矛盾していますよね!<傍聴席から失笑>

中原 私は今、真っ正面の裁判長の方を向いてお話ししており、斎藤さんの方を一切向いておりませんが、斎藤さんの質問に答えております。<傍聴席、大笑い>

斎藤 道警最高幹部は誰か、との道警からの質問に、道新は「課長以上が幹部だ」と答えているが、これはあなたも関与して答えたものか。

中原 記憶にございません。ただ、その回答は少々、不正確ではないかと思う。

斎藤 では、その時期に芦刈さんはそれほどせっぱ詰まっている状況だったと思うか?

中原 そうは思わない。ただ、このような形で裏金問題が発覚し、それに対処するなんていうのは、芦刈さんにとっては初めてのことでしょう。不安とプレッシャーを感じているのだろうと思った。

斎藤 11月29日の朝刊で「裏金を全面否定」の記事が出ている。これは28日の記者会見を受けた記事だが、そのあとの懇親会で「終わりかな」を聞いたんでしょ。それはキャップ懇じゃないの?

中原 おそらくそうではないかと思うが、会合の名前まで覚えてはいない。

斎藤 キャップ懇には何回出たことがありますか。

中原 少なくとも1回は代理出席した記憶がある。

斎藤 それがそのキャップ懇じゃないの?

中原 その会の名称ははっきり覚えていない。

斎藤 それがあなたの論理なんだ。ふーん。

中原 意味がわかりません。

斎藤 まあいい。質問を変えます。佐々木氏の「わかるでしょ、理解してよ」発言は、道警が裏金を全面否定していた中で、それと矛盾する発言でしょう。大スクープじゃないですか。何ですぐに記事を出さなかったんですか?

中原 先ほども申し上げました。警察とマスコミの関係からそんなに簡単に行くものじゃないんです。

斎藤 しかしその後、公安委員会の席で佐々木氏が偽名領収書の存在を認めたことを、議事録で発見し、それを佐々木氏に取材して翌日に記事化しましたね。

中原 これは公安委員会という公的な席での公式発言を受けて書いたものだ。議事録も残っており、その発言は否定できないからだ。

斎藤 しかし、大スクープだったわけですよね?

中原 先ほどもお答えしたとおりだ。

斎藤 公安委員会の発言を受けた記事を、朝日新聞が後追いしている。つまり、大スクープだった証だ。ところで、前年11月の発言は他社の報道があったか?

中原 確認はしていない。

馬場(被告道新代理人馬場弁護士) さっきから大スクープ、大スクープといっているが、それはそっちの主観でしょ。こっちは大スクープだなんて認めてない。以後、その表現は控えて頂きたい。

斎藤 では、その重大な発言を他社はなぜ書かなかったんでしょうか。

中原 他社の判断までこちらは関知しない。

斎藤 そんな発言などなかったからではないか?

中原 そんなことはありません。発言はありました。

斎藤 では、その懇親会でその場に同席していた他社の記者はどこの社の誰ですか?

中原 明確な記憶が残っていないので答えられない。

斎藤 しかし、佐々木から訴訟前に道新に出した質問状の回答で、一度も「中原」とは答えてこない。

中原 そのことについては、その回答書を書く責任者ではないので、わかりかねます。

斎藤 会社から問い合わせはなかったのか?

中原 聞かれたとは思うが、明確な記憶はない。

斎藤 道新から佐々木に対し、2通の回答書が出されているが、会社から問い合わせを受けたのはその時期か。

中原 そうだと思う。

斎藤 2005年12月の山本哲史さん(注 一連の裏金疑惑報道時の道新編集局報道本部長)からの回答書によると、25日会で聞いたとある。それについてどう思うか。

中原 回答書をさっと見て確認したが、11月下旬、という時期については間違いないと思った。重要な事実に誤りはない、と考えます。

斎藤 25日会で複数の記者が、とあるが、誰のこと?

中原 私と佐藤だと思う。

斎藤 佐藤はキャップ懇に出席してないんですよね。矛盾していないか?

中原 いえ。複数の記者が聞いているが、場所は別のところだ。

斎藤 訴訟前、道新は「25日会で佐藤が聞いた」といい、訴訟後はキャップ懇で中原だという。主張を変更していると思いませんか?

中原 佐藤の記憶がはっきりと整理されただけの話だ。少なくとも、私は佐々木からその話を聞いている。ただ、きちんと確認するべきだったとは思う。

斎藤 「いやいや、どうなるかと思ったよ」発言について。佐藤は佐々木の職場である自動車安全運転センターに出入りしていた、というが本当か?

中原 本人からそう聞いた。

斎藤 佐々木の同僚は、陳述書で「佐藤を見たことがない」といっているが。

中原 私は佐藤から「行っていた」と聞いていますので。

斎藤 佐藤の陳述書では「庁舎内ですれ違うことも多かった」という。とても通っていたとは思えないんですけどねぇ。

中原 私は、佐藤が行っていたと認識していた。

斎藤 佐藤陳述書を見てもなお、頻繁に通っていたと思うか。

中原 そうとも思うし、そうではないとも読める。評価はできない。

竹田裁判長 伝聞のことですので、あまり細かく聞いても意味がないと思いますが。

斎藤 しかし、裁判長。芦刈証人の尋問の際はそんなことをおっしゃらなかった。<傍聴席失笑>

斎藤 ところで、道新からの回答書に登場する、「佐々木と旧知の記者」とは誰か。

中原 それは回答書を書いた人に聞いてほしい。

斎藤 では、なぜこの期に及ぶまで、道新はあなたの名前を出さなかったのか。

中原 会社がそう判断したからでは?

斎藤 では「ジャーナリストの良心を持ち続ける北海道新聞記者」からの手紙について聞きます。

馬場弁護士 異議あり。それについて、こちらは証拠能力を否認し、争っている。

竹田裁判長 まず、質問を聞いて、判断しましょうか。どうぞ。

斎藤 この手紙にはいろいろ(以下、メモ漏れ)。

中原 その手紙は怪文書です。怪文書の内容について答えたくない。そもそも、その怪文書は内容の誤りが多数含まれている。

斎藤 あなたの陳述書によると、佐々木がトイレであなたに「道新さんも大変だね」と呼びかけているが、あなたはその時何をしていましたか。小便をしていたと書いているが。

中原 その時、おしっこがでていたかでてなかったかということか?

斎藤 そういうことを聞いているのではなく、おしっこをしてたかどうか。

中原 しっこの準備をしていた。<この辺、質問と回答の度に傍聴席の失笑がわく>

斎藤 まあ、それはいいです。しかしその時、佐々木氏とあなた方との関係は完全に決裂していたのではないか?

中原 そうでもないです。

斎藤 しかし、以前の取材で佐々木氏の自宅に赴き、大変無礼な取材をしたというではないですか。

中原 無礼かどうかはともかく、取材したことは覚えています。

斎藤 佐々木さんは無礼な取材を受けたので、以後2度と口をきかないようにしていたとおっしゃってますが。

中原 私の陳述書をよく読んでほしいが、親しげに話しかけたとは一切書いてない。からかうような目つきで話しかけた、と書いています。

斎藤 しかしですね(メモ漏れ)。

竹田裁判長 そこはいいです。要は、佐々木さんは話しかけることもしなかったと言ってるけど、それを聞いてもあなたの記憶に変わりはありませんか、ということ。

中原 ありません。

斎藤 トイレでは何分くらい、話をしていたのか。

中原 ストップウオッチを持っていたわけではないので、わかりません。そもそも、ずーっとおしっこをしていたとお思いですか? おしっこを途中で止めたとか、そんなことをおっしゃるんでしょうか?

斎藤 にしても、いろいろ質問したといいますが、そんな短い時間でそんなに質問ができるものでしょうか。

中原 手洗いに行ってるときも質問したかもしれませんし、手短にいくつかのことを聞くことは私にはできます。

左陪席鈴木裁判官 佐々木氏の重要な発言だったということですが、そのときの取材メモは残っていないのか。(一問目の質問のやりとりがメモ漏れ。2つめのやりとり)

中原 メモは取っていましたが、紛失してしまいました。

左陪席鈴木裁判官 いつごろ、そのメモはなくしたのか。

中原 そのころ、道警裏金問題を巡るさまざまな報道があったので、その中でメモを紛失しました。

竹田裁判長 あなたは「わかるでしょ、理解してよ」という言葉が一字一句間違いがないかどうか、という明確な記憶はないが、協力者の実名が書けないのはわかるでしょ、理解してよと。そういうことを言っていたのを聞いた記憶があると、そういうこと?

中原 そういうことについて理解を求めてきた、ということです。

竹田裁判長 あなたの中で裏金問題と偽名領収書というのは問題としては同じなのか? 裏金っていうのは、支出してないものを支出したことにして会計検査をごまかして自由に使えるお金を作るっていうのが、普通にいう裏金だと思うんだけど、それと、領収書に実名を書かず、仮名を使ったり偽名を使ったりね、そういうのと裏金問題とは、私がストレートに聞くと一緒の問題ととらえられないんですよね。

中原 当時はすでに、道外でも警察の裏金問題がいくつか出ておりました。そこでもそうですが、裏金を作る際にはまず、偽名領収書を作るところから始まっています。そして、それをもって適正に支出したかのように見せかけて、裏金をプールするというわけです。ですから、裏金作りの大前提として、まず偽名領収書の作成があり、その先に裏金の存在があると見ておりました。

竹田裁判長 名前の出せない人に渡したお金がある、という話が出たときに、あなたの中で「偽名領収書=裏金作り」という認識があなたにあった訳ね。

中原 すべてがそうだとは思いませんでしたが、(メモ漏れ)。

竹田裁判長 あなたがそう聞いたとおっしゃるから聞くが、「理解してよ」とは何を理解してほしかったととらえたの? 佐々木さんの文言は「名前の出せない人もいるでしょ、理解してよ」という風にもとらえられるけど、それはいいの?

中原 ハイ。しかし、その先にある…(聞き取れず)。

竹田裁判長 で、そのことをもって「裏金作りが必要なことを理解してよ」というのは違うと思うんですが、あなたがその時思った「理解を求めた」とは、裏金の必要性か、それとも偽名領収書の必要性、どっちだと思うか?

中原 後者だと思う。

竹田裁判長 以上です。ご苦労様でした。

<中原の尋問は、午後5時20分終了 その後の日程調整が行われた。>
 当日、予定されていた被告の道新道警記者クラブキャップだった佐藤一に対する質問は時間切れで行われなかった。
 協議の結果、次回8月18日の口頭弁論では、被告佐藤一と原告佐々木友善の2人を尋問することになり、被告道新編集局報道本部次長だった高田昌幸の尋問は9月29日午後1時30分より行うことが決まった。

cefh at 01:44コメント(0)トラックバック(0)北海道警察v.s.北海道新聞 

北海道警察v.s.北海道新聞 第16回(20.7.23) 第10回口頭弁論 北海道警察VS北海道新聞(その1)芦刈勝治元道警本部長が証言

 第10回口頭弁論が平成20年7月14日午後1時30分から、札幌地裁5号法廷で開かれた。
 当日は、道警の裏金疑惑が発覚時、北海道警察の最高責任者として、その対応にあたった道警元本部長の芦刈勝治氏が証言台に立つとあって、開廷前から傍聴を希望する市民約120人が列をなしたため、傍聴者の抽選が行われた。
 芦刈氏は、原告の佐々木友善元道警総務部長とともに、道警の裏金疑惑発覚時に議会等で裏金の存在を完全否定したが、後に不正経理を認めて謝罪したこともあって、その証言が注目された。
 原告席には、原告代理人斎藤弁護士、原告佐々木友善はこれまで傍聴席へ着席するのが常であったが、今回初めて原告席に着席した。
 被告席には、北海道新聞社の代理人の馬場、見野両弁護士、被告高田・佐藤の代理人清水弁護士、補助参加人の代理人安田、市川両弁護士、講談社と旬報社代理人弁護士が着席したほか、被告の高田昌幸、佐藤一、補助参加人であり原告でもある宮崎学、大谷昭宏の両氏が着席した。
 傍聴席の特別傍聴席には、道新の経営企画室等のいつもの顔ぶれ、記者席も今回は報道各社の記者で満席。
 満席の傍聴席(58席)には、いつもの道警OB7〜8人の顔があった。

 まず、裁判官が異動したため裁判所の更新手続きが行われ、原告(佐々木友善)側から甲84号証以下が提出された。
 これは、原告佐々木と道新関係者との提訴に至るまでのやり取りを記録した文書(面談記録)等とされ、その内容の一部が既に週刊新潮に掲載されている。
 この文書の取り扱いをめぐって以下の抜粋のようなやりとりがあった。以下、(  )内は筆者注。

竹田裁判長 甲84号証(面談記録)は信用できないとして、証拠能力に欠けるとの意見が被告道新から出ている。テープの抜粋でなく、テープそのものとそれを起こしたものを今後、出されるということ?

斎藤弁護士 その通り。(後日に)出します。

竹田裁判長 被告側としては84号証の中身の信憑性について争う考えですね。

馬場弁護士 その通り。今回のものが違法収集されたものではないか、あるいは都合のいい部分だけ抜き出していないか、ということ。

竹田裁判長 被告側からもこれについては「証拠能力がない」という書面が出てますので、原告側はそのテープの取得状況について補足していただきたい。

斎藤弁護士 いや、3ページを見ていただきたい。当日の交渉の中で、「この交渉については後日、外部に開示することもある」ということを原告は道新側に申し向けており、それを道新側も認めている。証拠能力に問題はないと見ているが、それ以上のことについては後日、書面で主張したい。

竹田裁判長 なるほど。この会話についてまずい、ということを道新側もわかっていた、ということね。では、この証拠についてはそれぞれの主張が出そろった段階で取り調べることにしたい。

斎藤弁護士 この証拠はずいぶん早く出しており、反論の機会は十分あったはず。すぐに採用することを求める。

竹田裁判長 今回の尋問で使うの?

斎藤弁護士 使います。

竹田裁判長 では、この場では取り調べた扱いとしますが、証拠能力について争いがあるので、それを前提にします。証拠として採用するかどうかは、それぞれの主張がそろった段階とします。では、証人調べに入ります。

<芦刈勝治氏が証言台へ。一同起立し、宣誓する。午後1時47分>

清水弁護士(以下「清水」)(講談社文庫本を示す)この本を読んだことがありますか。

芦刈勝治氏(以下敬称略「芦刈」) 少しは読みました。

(以下、本に沿って略歴を確認。現職が新日鉄顧問であることも確認)

清水 松橋忠光さんを知っているか。「わが罪はつねにわが前にあり」という本は読んだことはあるか。

芦刈 松橋さんは存じている。 (本について)はい、(読んだ)。

清水 旭川中央署の裏金問題が発覚したあと、11月28日に定例記者会見を行ったという記事があるが、本部長の定例記者会見というものを行っていたのか。

芦刈 月に1回行うことにしていた。

清水 文庫本には、定例会見は事前に記者クラブで質問をとりまとめ、それに答える形である、と書かれているが、これについては?

芦刈 すべての会見がそうだったかどうかは覚えていない。

清水 その場での自由な質問は受け付けなかったか?

芦刈 一切受けなかったかどうかについては、覚えていないが、その場での質問に答えたことはある。

清水 テレビや写真撮影には応じなかった、との記述があるが。

芦刈 基本的にテレビやカメラは入っていなかった。

清水 なぜか。

芦刈 それは特に(…聞き取り不能)。ただ、(裏金問題の)調査報告の際はテレビカメラを入れた。

清水 その時は本部長から積極的にカメラを受け入れたっていうこと?

芦刈 たぶん、そうだった。

清水 文庫本には、裏金調査の中間報告の際、カメラを冒頭のみに制限し、記者クラブが反発した、とあるが?

芦刈 定例会見とは別の会見ですよね。それで?(かなり横柄な物言い)

清水 (質問繰り返す)

芦刈 その件について、私は承知していない。(記者クラブが会見を拒否しようとしたことについては)覚えていない。

清水 記者会見以外で、ある事案について1対1での取材を受けていたか。

芦刈 まず、なかった。

清水 裏金問題について、会見以外で取材を受けたことは?

芦刈 たとえば、道議会終了後に議場の廊下を歩いていると、記者が寄ってきますので、その時に取材に応じたことはある。ぶら下がりと言われているやつだ。

清水 旭川中央署の問題を取り上げた「ザ・スクープ」(平成15年11月23日に放映されたテレビ朝日の報道番組、この番組がきっかけでマスコミ各社の道警裏金疑惑報道が始まった。)は見たか。

芦刈 自宅で見たと思う。家内がいたかどうか、ちょっと定かではない。近くに道警の人間はいなかった。

清水 番組終了後、何らかの対応をしたか。

芦刈 はっきり思い出せない。

清水 1996年に(警視庁の)赤坂署で裏金問題が発覚し、裁判にもなったが、知っているか。

芦刈 覚えていない。

清水 1999年に警視庁の銃器対策の関連で訴訟になったことは?

芦刈 いや、(聞き取り不能)

清水 (赤坂署の訴訟の話を書いた本を示し)この本を読んだことは?

芦刈 ない。

清水 参考人呼出簿の内容が架空だった、という事件だ。警察では話題になっていたと思うが?

芦刈 当時は地方に勤務していた。担当外のことは関心を持たないので。

清水 この事件は結局、訴訟の途中で警察側が認諾、つまり自ら負けを認めた事件だったが。

斎藤弁護士 異議あり。この質問は本件と関係ありません。

清水 これからわかるから。

竹田裁判長 当時の本人の認識の状況を聞いてるんでしょ。問題の発言をするかどうかの背景として。わかりますが、簡潔にお願いしますね。じゃ、続けて。

清水 架空呼出簿の事件を考えると、その名簿が真正かどうかは、担当捜査官や受け取った人など名前が出ている人に聞けばわかることだと思うのですが、どう思うか?

芦刈 その当時に担当者がどういう対応をしたか、承知していない。

清水 あなたは道警裏金問題が発覚した当初、「不正はない」といっていたが、どう確認していたか。

芦刈 当初は問題の文書を受け取ってなかったので…。

清水 じゃあ、なぜ問題の書類を精査していないのに「不正はない」と断言されたのか。

芦刈 当時の監査担当者に話を聞いたら、「問題が出た事案はなかった」と答えたため、それを信用して「問題ない」といった。

清水 なぜ「文書にでている人に当たれ」といわなかったのか。

芦刈 当時の監査担当者に聞くのが一番、と考えたから。

清水 同様の問題が発覚した高知県警では、監査委員が文書中にでた本人に当たってますよ?

斎藤弁護士 異議。本件と関係ないと思います。

竹田裁判長 そこからさらに本件につながっていくんでしょ?

清水 つながります。最後までちゃんと聞いてよ。

芦刈 当時はその手法をとらなかった。道警の原則は適正捜査を行っているのが大前提。だから、監査で問題がなければ、会計上の問題はない。当時はそう判断しました。

清水 当時、高橋はるみは「中途半端ではかえって不信感を招く。きちんと説明されはどうか」と発言されているようだが?

芦刈 その言葉はよく覚えていない。

清水 12月9日の朝刊で「8日の知事の要請を受け、道民に説明する意志はあるか」との質問に対し、広報課の政田課長が「議会で答弁したとおりなのでご理解を」となっているが?

芦刈 覚えていません。申し訳ないですね。

清水 その後、「調査すると答弁しないで」と要請、の記事が出たが、この中で原告は電話をかけた行為については認めている。その発言については「報償費は適正に執行されている。本部長が議会で述べたとおり」などとなっている。そのやりとりは承知しているか?

芦刈 具体的には把握していない。うーん。彼から「そんなことは言ってない」と聞いた覚えはあります。

清水 この報道はその日に読みましたか。

芦刈 (一般論として)その日に読むこともあるし、忙しいときは家で読むこともある。

清水 その記事が出る2日前に、佐々木氏と佐藤(本件被告の佐藤一)がこの記事を出す出さないでやりとりをしているが、それは知ってるか。

芦刈 記事と前後して、伺っていたと思うが、記事が出る前に聞いたかどうかはちょっと覚えてない。

清水 こうした議会対策の内容を事前に聞いていたか。

芦刈 それはない。記事を見て「あっ」っと思ったほどなので。

清水 では、問題の「叱責されたらしい」について。原告側は「芦刈氏に確認すればいいのに、それをしなかった」と主張しているので伺う。2004、05年の当時、記者からある個別の事案について、単独での取材に応じたことはあるか。

芦刈 当時だけでなく、まずそういうことはなかった。

清水 では、退職した警察関係者から、記者がこういう事案で取材に行くから受けてくれ、といわれたことは?

芦刈 それは、どうしても頼まれたりとか、ことと次第によってはあり得るかもしれないが…(聞き取り不能)

清水 鈴木巌氏の人事の件について、(芦刈 同姓同名の知人がいるので確認しますが、函館方面本部長をやってた人のことですね?)そう。当時、総務部長人事が難航しているという記事が出ましたが。

芦刈 (前半聞き取れず)本命視された人がどうしたこうしたかは…ただ、その人事は国家公安委員会人事ですので。

清水 これは誤報だ、ということで原告は問題にしているのだけども。

芦刈 人事の話については、国家公安委員会のものなのになぁ…と(以下聞き取れず)。

清水 原田宏二さんが会見で裏金作りの実態を暴露された。その後斎藤邦雄さんも出てきている。これについては本部長としてどう受け止められたか。

斎藤弁護士 異議。それは関係ないですよね。それに時間も過ぎている。

清水 一連の対応がどうだったかというのは、大いに関連するでしょ。道警としてはそれまで「不正はない」というスタンスだったが、お二人はそうではないという立場で出てこられた。それの修正を余儀なくされましたよね。

芦刈 原田先輩の発言、そして…(聞き取り不能)、また住民監査請求でも「疑念が残る」と指摘を受け、これは重く受け止め、ちゃんと襟を正そうと対応していったわけです。 (以下、ぼそぼそとしていて、ほとんど聞き取れず)

清水 終わります。

<速記交代>

市川弁護士(以下「市川」) 補助参加人代理人の市川から質問します。旬報社の本の「叱責されたらしい」の部分を読んでどう思ったか。

芦刈 佐々木さんが本を持ってきて、その部分について話したことはある。「これはないよね」と話した覚えがある。

市川 実際に怒ったとかそういうことはなかったのでしょうか?

芦刈 その記事についてだが、末尾に本人のコメントで「言ってない」と言っているし、それがある以上、怒る必要がないわけです。だから怒っていない。

市川 本の記述を見てどう思った? 怒りましたか?

芦刈 へええええ。という感じ。

市川 その後、佐々木さんは裁判を起こすことを相談されたか?

芦刈 うーん。言ってないことを書かれているよねと話したかな。

市川 あなたが「私の辞書に『下手を打つ』なんて言葉はない」と言ったというが。

芦刈 まあ、日本語として「下手を打つ」という言葉があるのは知ってますよ。その程度です。

市川 では、「調査すると答弁しないで」記事について。その記事に間違いはありますか?

芦刈 佐々木さんが「答弁しないで」といった部分は違う。記事上でも、佐々木さんが「そんなことは言ってない」と否定している。

市川 そのことは佐々木さんを呼んで確認したのか。

芦刈 記事上で事実上、否定されているので、私は放っておいた。で、彼の方から報告に上がってきたのだと思う。

市川 どうして報告に上がってきたと思うか。

芦刈 自分のことについて書かれているので、報告に来たのかと思ったのかなぁ…いや、よく覚えてない。すいません。

市川 どんな報告だったか。

芦刈 記事に書かれた話は一切言ってない、という報告だった。

市川 電話については認めているわけだが、道庁と彼がやりとりしたこと自体の報告は受けたか?

芦刈 いや、この件については「言った言わない」のことしか印象に残っていない。

市川 問題になっているのは道警の予算執行上の話だ。道警にとっては重要な部分だと思うのですが。(ハイ)当然、道庁と意見交換なりすると思うのですが。

芦刈 当時、公安委員会からも「よくわかるように説明を」といわれているので、道警の考えを説明して…(聞き取り不能)。

市川 議会答弁の中身は総務部も交えて詰めるわけですね。(ハイ)当時「出所不明の文書について答えられない」と答弁されているが、これも総務部か?

芦刈 会計の問題なので、会計課も交えて調整している。その席には総務部長も入っている。また、一般論ではありますが、当然警務部長、警務課長もいると思います。

市川 道庁とのやりとりの窓口で、むこうに道警の意向を伝えるのは誰か。具体的にやりとりするのは?

芦刈 実務では総務部長、あるいは総務課長ですね。

市川 副知事に連絡したのは総務部長ではないか?

芦刈 そういった報告は受けてない。

市川 すると、本部長の報告や指示なく、(道庁側と)やりとりする可能性もあると。それを不思議とは思わないのか。

芦刈 その辺はちょっと、わからない。

市川 最終的に道警は不正経理があったことは認めるが、最初の報道の時点では本当に知らなかったのか。

芦刈 ハイ。当時の議会答弁の時は(不正経理の存在について)露ほども知らなかった。今となってはお恥ずかしい限りだ。

市川 内部調査や監査の結果では、裏金の存在について所属長は認識しており、スムーズな予算執行のためにやむを得ないものと理解していたとある。原告の佐々木氏は所属長経験者だ。当時、裏金の存在を知っていたはずの佐々木氏に「なぜちゃんと言わなかったのか」と聞いたことはあるか?

芦刈 監査を終えた以降に佐々木さんにその話を聞いたかどうか、ということであれば、それは聞いていません。

市川 この監査委員の監査結果によれば、平成12年以前と13年以降でずいぶん、様相が違う。これはどうしてか知ってるか?

芦刈 警察改革により、予算の機動力を高めるため、捜査諸雑費制度が導入されたことによるものだ。

市川 つまり、裏金の存在を認めた調査結果は、あなたにも推認できたのではないか。

芦刈 いや、本当に自分にとっては衝撃的な内容だった。

市川 私からの最後の質問だが、「下手を打つ」という言葉について、これは警察でよく使われる用語ではないのか?

芦刈 いや、日本語として承知しているが、警察用語かどうかはわからない。

市川 では、あなたがその言葉に当たることを言うとすれば、どんな言葉を使うか?

芦刈 「まずかったよね」ですかね。「ここはまずかったよ」というような言い方だと思う。

市川 佐々木氏にそういう言葉を言ったことは?

芦刈 うーん。ちょっと覚えはない。

市川 終わります。

安田弁護士(補助参加人代理人 以下「安田」) では、佐々木氏にそんなことを言っていない、という根拠は?

芦刈 日本語として「下手を打つ」という言葉があるのは理解しているが、私はそんな言葉遣いはしないし、なんといっても佐々木さんは地方のトップであり、自分にとっては大先輩。場合によっては尊敬語を使わなければならないと思っていたほどだ。そんな乱暴な、下品な言葉は使わない。

安田 それは、あなた固有の事情を説明しているだけであって、客観的にはそうは思えない。

芦刈 そもそも、前提となる発言が確認できていませんので。

安田 裏金発覚当初、不正はないと確認されていたが、調査する必要性はどう考えていたか。

芦刈 ないと思っていた。

安田 道議会でも「調査する必要はない」と答えている。覚えているか?

芦刈 覚えている。

安田 その記事の中で佐々木氏が言っているとされる言葉と、あなたの議会答弁は一致しているではないか。

芦刈 それは別の話だと思う。

安田 では、「調査と答弁しないで」記事についてどう思ったか。

芦刈 本人が否定しているので、その程度だと思った。

安田 普通に考えてみてください。この記事は「道警から道庁に行った口止め工作を、道庁幹部から漏れてしまった」という内容の暴露記事だ。

斎藤弁護士 <安田は芦刈に歩み寄り、肩に手を置くなどして質問していた>
ちょっと! 証人に(なれなれしく)触らないでください。

安田 ハイハイ。で、この裏工作の暴露記事についてどう思ったか。

芦刈 そうはいっても、本人が否定してるからいいか、と思ったが。

安田 その辺(の芦刈の気持ち)がよくわからないんですよね。終わります。

宮崎学氏(補助参加人 以下「宮崎」) 一点だけ伺いたい。「下手を打つ」というのは一般的には囲碁の用語だ。警察の隠語でもあるようだが。

芦刈 私は、その言葉は普通の日本語であり、警察の隠語ではないと思う。もっとも、私は警察社会にしかいたことがないので、一般社会ではどういう扱いの言葉なのかは承知していない。

宮崎 佐々木友善氏はマスコミ対応という点で、まさに下手を打っていたのではないか?

芦刈 特にそうは思わなかった。

馬場弁護士(道新代理人 以下「馬場」)「調査と答弁しないで」記事が問題になっているが、この記事は平成15年12月12日夕刊だ。この日、あなたは旭川に出張している。これは、公用車で行ったのか。

芦刈 多分そうだと思う。(ここから少し、聞き取りづらく、省略)

馬場 道新が道警に関する記事を多く書いていたから、道新がどんなことを書いてくるか、興味がありましたか?(ハイ) ではできるだけ早く、道新を入手しようとしていましたか?

芦刈 ハイ。

馬場 では、佐々木氏からこの記事について報告を受ける前に、当該記事は読んでいたのね?

芦刈 ハイ。

馬場 記事は道警に不利な内容だ。どんな気持ちで読んだのか?

芦刈 まあ、見出しの大きさや内容はともかく、本人は否定していますのでね。

馬場 あなたは佐々木氏の反対コメントがあるから問題はない、と考えた。しかし、一般人が読んだら、どう思うか考えなかったのか?

芦刈 はあ。(以下聞き取り不能)

講談社代理人弁護士(以下 「講談社」) 本部長と佐々木氏は1日に何度、会っていたのか。

芦刈 数は多くない。

講談社 「調査と答弁しないで」記事について報告を受けたのはいつか、覚えてないか。

芦刈 そうですね。

講談社 その記事では、道警の複数の幹部が佐々木氏の発言を認めていますが、それには関心がなかったのか?

芦刈 ハイ。

市川 もし、その時期に知事が「調査する」と答弁していたら、どうしたか?

芦刈 それは、知事の意向に従ったと思う。

<被告側質問は終了 原告代理人の質問>

斎藤弁護士(原告代理人 以下「齋藤」) 佐々木氏を叱責した、という事実について取材を受けたことはあるか。

芦刈 ございません。

斎藤 大晦日の記事で、道警最高幹部が「これでぼくも終わりかな」とつぶやいた、とありますが、これを中原記者に言った覚えはあるか。

芦刈 ありません。

斎藤 記事中に出てくる「最高幹部」とは誰だと思った?

芦刈 本部長である私だと思った。

斎藤 この「最高幹部」はだれか、確かめたことはあるか?

芦刈 ある。旭川方面本部長にも聞いたが、そうではないと確認した。

斎藤 道新側に確認をとったか?

芦刈 広報課を通じて聞いてみた。道新からは「課長以上が幹部だ」との答えが返ってきた。

斎藤 「終わり」ということは辞職とかそういう状況になると思うが、当時のあなたはそこまで追い込まれた状況だったか?

芦刈 いいえ。そういう状況ではなかった。

斎藤 一連の問題が終わったあと、国家公安委員会から訓戒処分を受けましたね。

芦刈 ハイ。一連の問題で速やかに調査をする必要があったのに、対処が遅れたことで、結果として国民の信頼を失墜した、という理由でした。

斎藤 不正経理を隠蔽したとか、そういうことではないね?

芦刈 ハイ。

<原告代理人質問終了 裁判官が質問>

竹田裁判長(以下「竹田」) 「調査と答弁しないで」記事は佐々木氏から報告を受ける前に読んでいたというが、記事そのものの内容について調査を命じたことはないのか。
芦刈 ありません。

竹田 佐々木氏から自発的に報告に来たのか。

芦刈 と思います。特段、呼び立ててはいない。

竹田 広報課長らを通じて、記事の真偽を調べさせたこともないか?

芦刈 ハイ。

竹田 これ以外でも、何か問題が起きたときに調べさせたことはあるか。

芦刈 そういうこともあった。

竹田 今回の件ではどうだったか?

芦刈 調べるほどのことでもないと思った。


<この後、休憩、午後3時42分から、北海道新聞道警記者クラブサブキャップだった中原洋之輔氏が証言台に立った。>

中原氏の証言内容は、第16回 第10回口頭弁論 北海道警察VS北海道新聞(その2)
で登載する。

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北海道警察v.s.北海道新聞 第15回(20.7.11) 新聞が権力に屈した日<下>

道新は誰にお詫びしたのか

 道新はどうして「おわび」などを掲載したのだろうか。そして誰にお詫びしたのか。
 この「おわび」記事について道新の新蔵博雅編集局長は、こうコメントしている。
 「社内調査の結果、全体として説得材料が足りず不適切なものであったとの結論に達しました。疑いを裏付ける続報を展開し得なかった力不足についても率直に反省しています」
 そもそも、1年近く前の記事について、当の道新が今になって何故「おわび」を載せなければならなかったのか、理解できる読者はいないだろう。
 道警は、銃器対策課の数々の違法捜査をヤミに葬った。
 ロシア人船員のけん銃不法所持事件をめぐる捜査員による組織的な偽証事件に見られるように、偽証をしてまでも違法捜査を隠蔽しようとするのが道警のやり方であった。
 「覚せい剤130キロの密輸事件」などをいまさら道警が事実を認めることなどはありえない。当時の捜査員は口をつぐみ、証拠となる覚せい剤などは散逸している。
 ヤミからヤミへ葬られたのだ。
 新蔵編集局長のコメントに「説得材料が足りず不適切」とあるが、どんな説得材料を集めることができるのかを具体的に明らかにするべきであろう。
 この記事を取材した記者たちは、長い間の取材を経て合理的に判断して、真実だと確信して記事にしたと聞いている。
 編集局長はじめ上層部もそれを知っていたはずだ。
 この「おわび」は何のために掲載されたのか。道新は誰に「おわび」したのか。読者ではない。どう読んでも「おわび」の相手は道警だろう。
 平成18年年1月14日の毎日新聞には、道警本部の岩田満広報課長の「当該記事の訂正も行なわれておらず、道民の誤解を解くものとはいえない」とのコメントが載った。
 道警は、道新の「おわび」に納得せず、記事の訂正と削除を求めた。
 権力機関を監視することがその使命であると自負する新聞が、警察に「おわび」するのはいったいどういうことなのか。
 道新は、「おわび」を書くより、道警がヤミに葬ったけん銃摘発をめぐる数々の違法捜査を自らのペンで暴きだし、その実態を道民の前に明らかにするのが先決ではないのか。
 私には、不可解なことばかりである。


北海道新聞の社内調査とは何だったのか

 道新の「おわび」は、一連の道警の裏金報道とは表面上無関係のように見える。
 社内の一部には、道警との対立を快く思わない社員もいたし、取材班が一連の裏金報道で数々の賞を受賞したことへのやっかみもあり、「泳がせ捜査失敗疑惑」の記事は捏造でないか、あるいは、取材が杜撰だったのではないかといった声もあったようだ。
 この記事を書いた記者たちは、取材着手から記事化まで3ヶ月強を要し、現職警察官や暴力団関係者からの直接取材も行なったと説明している。
 道新は、一体どんな内部調査を行い、記事を書いたとされる記者たちは、これにどう対応したのか、メディア各社の報道と道新の内部資料を基に、検証してみた。

 道新の取材班の一連の裏金報道の記事については、その都度、道警から多くの抗議がなされていた。
 「泳がせ捜査失敗疑惑」の記事も平成17年3月下旬以降、道警から「事実無根」の抗議が繰り返され、記事の訂正、削除を求めてきた。
 道新はその都度、文書で「問題はない」と回答していた。
 これらの回答は、その都度編集局幹部の了解を得た上で行なわれていた。
 その後、「道警が名誉毀損で提訴するらしい」との話が道新に伝わってきた。
 記者たちは、そうした訴えは現実には起こせないことや取材の経過、記事の組み立て、取材源等を再度、会社側に説明した。
 その上で、道新としては「もし、道警が訴訟を起こしてきたら、そのときは受けて立つ」ということが共通の認識となった。
 事実、道警は現時点(平成20年7月10日)でも訴訟は起こしてはいない。

 ところが、平成17年9月になると編集局幹部の間から「取材現場も困っている。年内には決着したい。道警に謝るか、紙面で謝るかのどちらかではないか」という趣旨の意向が漏れ始めた。
 このころには、編集局幹部から、「道警が『裏金報道は書かれても仕方がないが、泳がせ捜査は事実無根。この記事で北海道新聞がけじめを付ければ、関係を正常に戻す』と言っている」旨の話もあったという。
 いったいここでいう「道警と北海道新聞の関係の正常化」とは何を指すのか。
 先に述べた虚構の"信頼関係"の上に立った癒着関係に戻るということなのか。


「調査内容は道警に伝える」

 7月の異動で交替した道新上層部は、何故、それまでの方針を変えたのか。
 こうした、道新内部の動きは、10月に発覚した東京支社の元部長による広告営業費流用事件の事後処理の動きと見事に連動している。
 この事実は、東京支社では5月に、本社経営企画室では8月には既に知っていたからだ。
 10月に入ると情勢は緊迫度を増してきた。
 「道警の提訴が近い」という話が編集局内で出始め、「調査委員会を作る」という話が浮上する。
 道警から道新へ具体的にどんな圧力があったのかは分からない。
 しかし、道新が次第に社内調査をせざるを得ない状況に追い込まれて行ったのが分かる。
 取材班のメンバーは、会社側の方針が「調査委員会の調査内容を道警に伝える」とのことだったため、「この記事の情報源は複数の現職警察官であり、道警に調査内容を伝えると情報源が特定される。『正常化』を優先するあまり、報道機関としての役割を放棄することになりかねない。」などと反対した。
 「調査委員会」の設置は見送られたが、編集局に調査チームができた。
 メンバーは、編集局次長、先のH氏など3人である。
 道新は、道警に対して「調査に着手した」と連絡した。


道警を信用失墜させた中心人物の奮闘

 このことは、11月10日付の毎日新聞が、次のように報道したことで分かる。
 「北海道警の不正経理問題や稲葉圭昭元警部(服役中)の不祥事に関連した北海道新聞社の一連の報道を巡り,道警と道警元総務部長佐々木友善氏(61歳)に『ねつ造された記事がある』と指摘された同社は、内部調査に着手していることが9日分かった。同社は取材した記者らに事情を聴き、12月上旬をめどに調査結果をまとめる見込み」
 朝日新聞も、その日の夕刊で「北海道新聞社が記事の内部調査『ねつ造』指摘受け」と後追いする。
私は、この記事を読んで不思議に思った。
 佐々木氏は、平成15年11月に発覚した道警の裏金問題について、当初「不正経理の事実はない」と全面否定した当時の芦刈勝治道警本部長の側近の1人で総務部長のポストにあった人物である。総務部長は、議会対策を担当する総務課、予算執行の中枢である会計課、メディア対策の窓口の広報課の最高責任者である。
 いわば、裏金問題の対応をめぐり道警の信頼を失墜させた張本人でもあるのだ。
 佐々木氏は、警備・公安部門での勤務が長く、平成16年3月に道警を退職している。
 あとで述べるように、佐々木氏の北海道新聞に対する執拗な追及はその後も続いている。
 道警と道新の問題に何故、道警を退職した人物が登場するのか、その真の理由はヤミのなかにある。


取材源の秘匿を巡って


 11月になると、調査チームによる取材班のメンバーに対するヒヤリングが始まる。
 取材班に対するヒヤリングは1人1回ずつ行なわれたが、ほぼ全員が取材経緯の個別質問には応じていない。
 ヒヤリングでは、取材源だった複数の道警現職捜査員の属性、暴力団関係者の氏名などの明かすように求められたが、「情報は社内にとどめ、道警など外部には一切、漏らさないという保証がない」との理由で答えていない。
 彼らは、ヒヤリングの席で「社内のみの完全に閉じられた作業なら、社員として当然、取材経過をきちんと話す。それは社員としては当たり前だ」と再三伝えているという。
 私は、このことを知って心配になった。
 一連の裏金報道の取材で、私も取材班に協力をしたことがある。
 なかには、現職の警察官と係わりのある取材もあった。
 それが、社内のみとはいいながら、担当記者以外に知らされることもありうるとは思ってもいなかった。
 私が、取材に応じたのは担当記者を信頼したからであって、道新上層部を信頼したからではなかった。
 これでは、以後、道新の取材には協力はできない。

 12月20日、私のところへ道新の調査チームのH氏から「泳がせ捜査関連の問い合わせについて」と題するメールが来た。
 当初、H氏からは会って話を聞きたいということだったが、口頭で話したことがどのように受け取れとられるか不安であったので断っていたのだ。
 問い合わせの内容は、私の著書『警察内部告発者』の記述に関すること、稲葉元警部の上申書や文章を読んでどのように感じたか、聞かせて欲しいということだった。
 私は、なんと意味のないことを聞いて来るものだ、とバカバカしかったが回答した。
 その内容を紹介する。( )内は筆者注釈
 「私は、それまでの在職中の体験から、稲葉事件については、道警は稲葉個人の犯罪にして上層部の関与は絶対に明らかにしない、と確信していました。マスコミもその線で報道しましたね。検察の捜査もその線で終わるだろうと思いました。小樽事件(けん銃摘発事件の偽証事件)の対応や検察の冒頭陳述はその現れでした。警察も検察も組織防衛最優先の捜査に終始しました。だから、稲葉の証人になり、けん銃捜査の情報管理や捜査費の実態を事件の背景として証言しようと思ったのです。
 稲葉は、最初は全て自分の腹に納めて終わりにしようと思っていました。2人(稲葉の上司と協力者)の死を知り考えが変わりました。自分の責任は認めるが、道警はその非を認めてやり直して欲しいと考えていました。道警はそれを無視しました。
 130キロの話は本当だと思います。曾我部レポートにもありますし、稲葉にはこれを暴露して何の利益もありませんでした。それに、彼は公判でも肝心なとことはまだ隠しています。
 その後、彼が私にこのことを話したときには、私はまだ本(「ホイッスル・ブロワ− 警察内部告発者」のこと)を書くことは決めていませんでした。無論、私のほうから彼に聞いたわけでもありません。そして彼は、これが本に出るとは知りませんでした。彼は、私にでたらめを話す理由は何一つありません。
余計なことですが、道警と同じような対応をされることのないようにお祈りします。」


北海道新聞は道警に何を伝えたか

 「おわび」記事と記者たちの処分の根拠になった道新の調査チームによる調査は、本当に必要であったのか、そして調査は適切だったのだろうか、大きな疑問が残る。
 道新が十分な調査を行なわないままに「おわび」記事を掲載し、関係者を処分したのではないかとして、不満や疑問を持っている社員も多い。
 道新は、調査結果を道警にどのように伝えたのか。真相はヤミのなかである。
 これまで取材に協力した人たちの立場はどうなるのか。私もその1人として不安を覚える。
 本来は関係のない「道新社員の不祥事、事後処理の不手際」が「道警の泳がせ捜査失敗疑惑記事の訂正要求」の取引材料に使われて、道新が「おわび」記事を書いたとするなら重大な問題である。
それを裏付けるように、平成17年12月に入ってから、私のところに、「道警から北海道新聞に対して『(広告費問題で)特別背任で北海道新聞を強制捜査する』と伝えられた」という複数の情報があった。
 しかし、その後そうした捜査が行なわれた様子もない。
 あれは、ガセネタだったのかと思っていたところ、最近になってこれを裏付ける資料を目にすることになった。


「広告横領事件関連取材メモ」が存在

 私が、目にしたのは「広告横領事件関連取材メモ」と題するA4版の2枚の文書である。
 平成17年11月17日と同18日、作成者は道警クラブ・Kとなっている。
 Kなる人物は、前出の佐藤一道警担当キャップの後任者である。
 もう一人の登場人物は、岩田満・道警総務部参事官兼広報課長(平成16年3月27日付け異動で交替)、場所は道警本部広報課長室、方法は面談、一対一、内容(完オフ)となっている。その内容の一部を紹介する。

[17日付メモ]

岩田 「お宅の広告局の問題で、(中略)事情を聴く可能性が出てきた。道警内外から『なぜ、あの案件を触らないのか』との声が出てきている。Hさんに内々に伝えてほしい」(筆者注 H氏とは、前出のH氏と同じ人物でKの上司に当たる。その後、北海道新聞の調査チームの一員となり、筆者に問い合わせのメールを送ってきた人物である。)

K 「決定事項か」

岩田 「いや、(中略)部長クラスで明日、会議を開いてお宅の案件についての対応を決める流れになっている」

K 「事情を聴く可能性は何%ぐらいある?」

岩田 「全く読めない。当然、うちと道新の間にはこの問題以外の問題もあるから、政治的な判断もある」

K 「事情を聴くとしたら?」

岩田 「経営企画室がまず、最初になるだろう」

K 「時期は?」

岩田 「やるとしても週明け以降になる」

K 「本格捜査に入る可能性もあるのか」

岩田 「話を聴いてから出ないと、その辺は判断できないでしょ。ただ、捜査するとなると、関係先にガサを入れることになる。役員室だとかも当然対象になる。ところで弁済の方はどうなっている。」

K 「当人が今月初めに500万円を返したと聞いている」

岩田 「後は退職金の問題か?そもそも特別背任や背任は立件が難しいと思うが、うちにはアンチ道新がたくさんいるから。その点がきれいになれば,うちが事件化しようにも手をつけられなくなるのだろうけどな」


 この「取材メモ」を私なりに解釈してみた。
 道警の意向の伝達先は、編集局報道本部の責任者H氏、そのH氏は前任の経営企画室の責任者のときに広告問題の処理などに当たっていた。刑事事件となれば関係者の一人になることが予想さる人物だ。事件が背任ともなれば社長の刑事責任も問われかねない。

 私が得た情報によると、あわてた道新は役員会を開いて、既に支払った退職金2,500万円を社長以下11人の役員が負担することを決めたという。これも、道警による事件化を避けるためではなかったか。道新が、いかに道警の捜査を恐れていたかを物語っている。


[18日付メモ]
岩田 「昨日の話、道新のしかるべく人に事情を聴くことが決まった」

K 「時期は?そして、聴取先はどこになるか」

岩田 「今日決ったところだから具体的には決っていない。時期は来週以降になる。で場所は未定」

K 「会社に捜査員が来る?」

岩田 「その辺は考える。近くのホテルを取るとか」

K 「案件は?」

岩田 「広告問題全般という感じかな」

 このやり取りが事実だとすると、明らかに道新の東京支社元部長の業務上横領事件とその事後処理をめぐる特別背任などの事件に関して、道警の岩田広報課長が道新のサツ回りキャップのK記者を通じて、捜査に着手する意向を道新の上層部に伝えたことになる。
 K記者が、道警の真意を掴もうと必死で質問しているのがよく分かる。

 私は、在職中に捜査二課長として、同様の知能犯事件を数多く捜査してきた。
 しかし、捜査対象の関係者に捜査方針をあらかじめ知らせたことはない。
 そんなことをしたら、地方公務員法違反(守秘義務違反)に問われかねないし、相手方に証拠隠滅の機会を与えるなど捜査にも支障が生じる。
 とくに、道警の裏金疑惑に関しての一連の報道をしている道新に対して、こうしたことを道警が行なったとなれば、捜査権の濫用との謗りを受けかねない。
 ちょうど、このやり取りの時期の直前には、道新では調査チームによる「泳がせ捜査失敗疑惑記事」の調査が開始され、関係者からのヒヤリングが行われていた。
 つまり、このやり取りは、本来は関係のない道新の「広告営業費問題をめぐる不祥事」と「泳がせ捜査失敗疑惑記事」が道警の手によって1つにされたことも示しているのだ。
 そしてそれが、平成18年1月14日の「おわび」記事につながったであろう事は想像に難くない。

 ところで道警は、道新の広告費問題の捜査を開始したのだろうか。
 道新は捜索を受けたのか、関係者が逮捕されたのか、道新の関係者に聞いてもそんなことはなかったという。
 現時点(平成20年7月10日)でもない。
 これでは、道新と道警は取引したのではないか、と指摘されても仕方がないのではないか。

 平成18年3月24日、道新は「泳がせ捜査失敗疑惑記事」に関する道警の訂正・削除要求に対して「基本的には1月14日朝刊のおわび記事で説明した」、削除要求については「同社のデータベースで、記事の末尾に『注意事項』としておわびと調査報告の記事があることを明記している」と回答した。
 何のことはない、恥の上塗りをしたのである。
 これに対して、道警は3月28日「道民の不安を解消するものではなく納得できない。公正で正確な報道を強く求める」とする文書を道新に出した。
 道民の不安を解消云々は、明らかに問題をすりかえている。
 道民が不安を感じているのは、道警の裏金疑惑がヤミに葬られたことであって、「泳がせ捜査失敗疑惑」ではない。


元道警総務部長佐々木友善氏が記者会見


 道新に対する攻撃は、別のところからも始まった。
 平成18年2月15日、突如、前述した元道警総務部長佐々木友善氏が、札幌市内で「泳がせ捜査失敗疑惑」記事に関して記者会見を開いて「1月18日に文書で北海道新聞に対して説明を要求したが、何の対応もない。今回の北海道新聞のおわびと社内調査報告自体がねつ造の疑いが極めて強い」と述べた。
 佐々木氏は記者の「法的措置は考えているのか」との質問に「(道警の裏金問題に関して)書籍が2冊発行されていて、その中に4箇所ほど私にかかわる存在しない事実について書かれている。道新の記者による記述だが、訴訟になるかどうか今は分からない」と答えた。
 ところが、佐々木氏は平成18年5月31日、一連の道警の裏金問題の取材や記者の発言などを素材にした「追及・北海道警『裏金』疑惑」(講談社文庫)、「警察幹部を逮捕せよ」(旬報社)に事実とは違う記述があり名誉を毀損されたとして、北海道新聞と講談社、旬報社と記者2人を相手取って札幌地裁に慰謝料や謝罪広告の掲載を求める訴えを起こした。
 この訴訟は、佐々木氏によれば個人の立場で行うものだとしているが、原告訴訟代理人にはこれまで道警関係の訴訟でしばしば道警側の代理人を務めたことのある札幌市の齋藤祐三弁護士らが担当することになっている。
 幹部の不祥事を隠蔽しようとしてジャーナリズムの根源的な使命である「権力の監視」を放棄した道新上層部。
 道警の道新潰しはまだ続く。

 ついでだが、道新の金にまつわる不祥事はこの後も続いた。
 平成18年6月に函館支社の販売部次長(40歳)が販売経費1,580万円、本社事業局員(33歳)がイベント売上金620万円を着服したとして懲戒解雇になったのである。

 今回の問題で取材班の記者たちは、じっと押し黙ったままで何も語ることはなかった。
 会社側のやり方に正面からは抗議する社員はほとんどいない。
 陰で批判しているのがせいぜいである。
 道新には、もはやジャーナリズムは存在しないのか。
 新聞社が単なる"株式会社"に過ぎないのなら、記者もただのサラリーマンになるのは当たり前で、何の不思議もない。

 彼らは、この問題で騒ぎたてても何の得にもならない、と判断しているのだろう。
 警察組織とは違って新聞社は「言論の自由」を叫ぶ組織である。労働組合もある。
 社内からモット声が上るのではないかと思っていた。しかし、そんなこともなかった。
 閉鎖的な体質、物言えぬ組織、道新と道警は本当によく似ている。
 道民を欺き信頼を失った道警。そのずっと先には、現職時代に裏金システムを知りながらわが身可愛さに告発できなかった自分がいる。

 道新も、今、読者の信頼を失おうとしている。

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北海道警察v.s.北海道新聞 第15回(20.7.11) 新聞が権力に屈した日<上>

 平成20年7月14日に予定されている第10回口頭弁論では、証人 芦刈勝治元道警本部長、中原洋之輔(道警裏金取材班サブキャップ)、佐藤 一(道警裏金取材班キャップ)が証言台に立つことになっている。道新裁判は山場を迎えるが、その前に北海道新聞(道新)と北海道警察(道警)の間に何があったのかを再確認しておきたい。

 「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二は、週刊現代(平成18年4月1日号)に「新聞が警察に屈した日」と題して、道新が道警に不祥事にツケ込まれてお詫び記事を掲載した経緯等を、当時の道警の岩田満広報課長と道新の道警記者クラブのキャップのK記者とのやり取りが書かれた「取材メモ」をもとに明らかにした。このほか、雑誌「世界」(平成18年6月号)にも、道新と道警の「手打ち」をめぐって「これはジャーナリズムの自殺だ」と題して投稿した。以下の文章は、これらの中から抜粋したものである。


北海道新聞取材班の奮闘

 私(原田)は、平成16年2月10日、記者会見を開いて道警が長年にわたって続けていた裏金システムを告発した。
 当初、かたくなに裏金システムの存在を否定した道警もついに組織的な裏金つくりを認め、9億6,272万円を北海道と国へ返還して幕引きを図った。
 告発の1年後、平成17年3月10日には、告発の一つのきっかけにもなり、拳銃摘発対策を背景とする稲葉事件、警察の裏金システムの実態、権力構造としての警察組織の実態などを明らかにした『ホイッスル・ブロワー 警察内部告発者』(講談社)を出版した。
 その序文にはこう書いた。
 「地元紙の北海道新聞が道警相手にペンで戦いを挑み、敢然とキャンペーンを張ったことで、ついに、この税金(公金)不正使用は白日の下に晒されることになった。中央の大新聞やテレビがいまだに、こうした警察のスキャンダルに腰が引けているのを思えば、巨悪を追い詰めた地方ジャーナリズムの爽やかな勝利、大金星だった。」
 事実、道新「道警裏金問題取材班」(以下、取材班という)は、日本新聞協会賞、JCJ(日本ジャーナリスト会議)大賞、菊池寛賞等を総なめにした。
 巨大な権力、警察を相手にする私にとって、メディア、とりわけ地元の道新の取材班が書く記事は心強い味方であった。


「権力に歯向かう記者はろくな新聞記者ではない」

 私のメディアに関する知識といえば、警察に在職中、サツ回りの記者との付き合の中で体験的に得たものくらいしかない。しかもそれは、今から10年も前のことである。
 そんな私に最近のメディアが抱えている問題を知る良い機会を与えられた。
 平成17年7月4日、東京で開かれた「メディアはなぜ追及できないか」と題するシンポジウムにパネリストとして招かれたのである。
 私が参加したのは、そのうちの「警察・検察報道の裏側」であった。
 私も警察の裏金問題追及でメディアが果たした役割や、いまだに警察の裏金問題が地方の問題にとどまっている現状、道警による取材班に対するバッシングなどについて話をした。
 私は、メディア関係のパネリストがどんな話をするのか、興味深く聞いていた。

 美浦克教氏(共同通信社会部・新聞労連委員長)はこう語った。
 「新聞社が、どんどん単なる「会社」になっている。今、全国各地の新聞社でものすごい合理化が始まっている。それによって経営トップをはじめとして、ジャーナリズムというものが社内で語られることが少なくなった。社会部でいえば、事件があったときに警察が動くかどうかが特ダネとして評価されるという構図がずっと続いていた。その習い性から抜け出せないので、紙面は旧態依然としたニュースしか出すことができない。それが現状ではないかという気がする」

 北村肇氏(元毎日新聞社会部・週刊金曜日編集長)はこう語った。
 「なぜ書けないかというと、警察の悪口を書いてしまったらネタが取れなくなる。社会部から追われて自分のやりたい仕事ができなくなる。だから書けない。しかし、今はそれだけではなく、権力に歯向かう記者はろくな新聞記者ではない、という雰囲気がいくつかの全国紙にある。
 理由のひとつは、会社の上層部、つまり経営構造が、ほとんど政治部と経済部に握られている場合が多いことである。何かを批判したとき、批判を潰そうとする体質は、社会部と警察担当記者にもあるが、政治部・経済部記者の方がさらに大きいと実感している。」


警察と記者クラブ "信頼関係"という癒着構造


 警察の裏金システムが、何時始まったかは分からない。
 昭和59年には警察キャリア官僚だった故松橋忠光氏(故人)がその著書「わが罪はつねにわが前にあり」で、裏金づくりが中央から全ての都道府県にわたる全警察組織で行なわれていると明らかにした。
 平成年代には警視庁、長崎県警、熊本県警、愛知県警などでも発覚している。
 しかし、いずれも一部のメディアが断片的に取り上げただけで、疑惑追及の大きな流れにはならなかった。
 平成12年以降になると、情報公開の波に乗って市民オンブズマンの先進県宮城県で県警の捜査用報償費の執行に関する情報開示訴訟が提起され、また香川県でも県警が架空請求によって裏金をプールしていた疑惑も表面化した。
 平成17年7月、全国のメディアに先駆けて高知新聞が、県警の裏金疑惑のキャンペーンを展開した。
 その年の11月、テレビ朝日の番組「ザ・スクープ」による道警旭川中央暑の捜査用報償費の不正支出疑惑が報じられたことをきっかけに、道新の道警裏金疑惑キャンペーンが始まり、警察の裏金疑惑は、静岡県警、福岡県警、京都府警へと飛び火し、更には愛媛県警の現職警察官仙波敏郎氏による内部告発と続いた。


大手メディアの罪

 こうして全国の警察に連綿と続いてきた裏金システムについて、一部のメディアが単発的に報じただけで、何故か本格的な追及をしなかった。
 しかも、メディアは、警察官などの匿名、実名の内部告発や市民オンブズマンの活動を受けて、はじめて報じたものがほとんどである。
 メディアは、警察の裏金問題を報じることをタブー視してきたのだ。
 メディアだけではなかった。
 警察権力をチエックするべき公安委員会、知事、議会も、警察の裏金システムの全貌を明らかにすることには極めて消極的であった。
 そのこともメディアは報じることはなかった。
 そうした意味では、メディアは二重の罪を犯していることになる。
 平成15年11月、北海道から全国に広がるかに見えた警察の裏金疑惑は、道警が3億9,000万円の使途不明金など疑惑の肝心な部分を明らかにしないまま9億6,272億円を返還し、発覚した全国の警察でもトータルで12億800万円を返還し幕引きを図ろうとしている。
 明らかになったのは、氷山のごく一角に過ぎない。
 またもや、警察の裏金システムは、真相を明らかにされないままヤミに葬られようとしている。
 この間、警察の裏金疑惑でキャンペーンを展開したのは、高知新聞、北海道新聞、愛媛新聞と一部のテレビ局であった。
 中央紙といわれる大手のメディアは、警察の裏金問題は、地方の問題として腰を引いたままであった。
 これは何故か、全国警察の頂点に立つ警察庁の思惑と一致している。
 何故、メディアは警察の裏金疑惑を地方の問題で終わらせてしまうのだろうか。


記者クラブ 記者と警察の癒着の場

 警察には、上は警察庁から各都道府県警察、主要警察署まで記者室を取材拠点とする記者クラブが置かれている。
 「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」によると、「記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』である」とされる。
 そのなかで、日本の報道界は情報開示に消極的な公的機関に対して、記者クラブという形で結集して公開を迫ってきたという歴史がある。
 国民の「知る権利」と密接に関わる記者クラブの目的は、現代においても変わらない、と強調している。
 しかしながら、記者クラブの弊害を指摘する声も強い。
 その一つは、記者クラブを介しての記者と警察の癒着である。

 道警担当キャップとして、取材班の記者たちを引っ張った佐藤一氏は、先のシンポジウムでこう語っている。
 「警察の裏金問題をやるかやらないかというのは、警察からの事件・事故情報をもらうかどうかというところで判断を迫られる。(中略)市役所や町役場などで何かあったときは、かなり集中的に批判できるのに、警察に対してはちょっと手ぬるいところがあって、それは自分の反省でもあった。今回、裏金の問題が出てきたときに、ようやく自分でもそういう立場でやれるんじゃないかと個人的に思った」
道警の裏金疑惑を追及するなら警察から事件・事故情報がもらえなくなることを覚悟しなければならない、と佐藤一氏は語っているのだ。
 記者クラブの記者たちは警察発表や記者会見に頼り、その内容をまとめるだけが仕事になりがちだ。
 道警記者クラブは、道警本部庁舎の2階にある。加盟しているのは、新聞社、テレビ局、通信社19社である。記者クラブの対応窓口は警察の広報課で、記者クラブの部屋の直ぐ隣にある。各社の取材体制を見ると、道新は8人、それに対して東京読売新聞などの中央紙やテレビ局はその半分以下である。無論、紙面の量の差はあるにしても発生する事件・事故の数は同じである。体制が弱いほど、警察発表の内容が、真実かどうかを確かめることがおろそかになり、次第に警察の情報コントロールに支配され惑わされやすくなる。

 それだけではない。北村肇氏や佐藤一氏が指摘するように、警察の悪口を書けば警察からネタがもらえなくなるのだ。
 そして、警察発表とおりの記事を書いていれば、それが誤逮捕であっても冤罪であっても責任を問われることはない。犯人逮捕の記事は、メディアによる事実上の即決裁判に等しい。現場で記事を書いている記者たちには、警察発表に何の疑いも持たなくなっているのではないか。私は、警察の捜査の実態をつぶさに知っている。自らも何度も失敗した。決して、無条件で信用できるようなものではないことだけは言っておきたい。


メディア対策は不祥事対策

 警察のメディア対策は、基本的には不祥事対策である。
 警察の不祥事をいかにしてメディアに隠すか、警察の不祥事はメディアに報道されてはじめて不祥事になる。
 メディアに登場してしまった不祥事は、警察官個人の資質の問題として、組織的な背景やその責任を隠蔽し、警察組織のダメージを極力抑えることがメディア対策の要諦である。
 稲葉事件報道は、その典型だ。
 稲葉元警部は、覚せい剤の密売に手を染めた悪徳警察官としてのみ報道された。
 メディアは、当初、その背景にあった裏金システムや銃器対策課の数々の違法捜査には全く触れもしなかった。こうしたやり方は、警察官の不祥事報道に共通している。
 かくして、悪徳警察官が誕生するのだ。
 記者クラブのもう一つの問題は、その閉鎖性だろう。
 記者クラブが、加盟している特定の新聞社・テレビ局などだけに取材を独占させることから、閉鎖的だとの批判がある。
 平成17年7月に舩川輝樹週刊現代副編集長などが警察庁と記者クラブ加盟15社を相手取り、警察庁庁舎内で行なわれる警察庁長官記者会見に出席し質問することを妨害してはならない、との仮処分申請を東京地裁、同高裁に申し立てたが却下され、最高裁に特別抗告したことは記憶に新しい。

 道警の記者クラブの場合には、記者クラブに加盟するのには2社以上の推薦で、クラブ総会で議決することが必要とされる。
 記者クラブとの窓口になる道警広報課は、道警の記者クラブに加盟していないメディアには基本的に対応しないという姿勢を貫いている。記者クラブの閉鎖性は、情報コントロールを狙う警察としては、願ってもない好都合なことである。
 警察記者クラブと警察との関係は、持ちつ持たれつの"信頼関係"というベールに包まれた癒着関係である、と言っては言いすぎだろうか。
 都道府県警察で培われた警察キャリア官僚とメディアとの"信頼関係"は、そのまま中央レベルに持ち込まれる。
 こうして、警察庁上層部と中央のメディアは太いパイプで結ばれることになる。


道警記者クラブで何が起きたのか

 平成16年3月には、私が北海道議会総務委員会に参考人として招かれ、道警で長年にわたって続いていた裏金システムについて証言したほか、元弟子屈暑の次長齋藤邦雄氏が裏金の実態を証言するなど、道警の裏金疑惑の追及は一気に盛り上がりをみせ、メディア各社の報道は熱気を帯び情勢は騒然となった。
 これに危機感を持った道警は、3月29日付けの異動で記者クラブを主管する広報課の体制を一新した。
 広報課長には、過去に次席や指導官(いずれも警視ポスト)として広報課に籍を置いた経験があり、北海道新聞に太いパイプがあるとされる岩田満氏を配置し、巻き返しを図る体制を作った。
 平成17年4月には、警察庁は、道警の議会対策をはじめ予算や広報を主管する総務部長に前警察庁広報室長の永井達也氏を配置した。
 それまで総務部長ポストは道警地方幹部の最高ポストになっていたが、6年ぶりに警察庁キャリアが就任したのである。
 警察庁がいかにメディア対策、つまりは北海道新聞対策を重視していたかを物語る人事であった。


道警の執拗な嫌がらせ

 道新の取材班は、道警担当キャップ佐藤一記者ら8人が、通常の事件・事故の取材をしながら裏金問題の取材を進めていた。
 メンバーの誓いは「本気でやること」、「続けること」だった。
 予想したとおり、道警の執拗な嫌がらせが始まった。
 道警は、事件・事故の発表の際、関係者の年齢や細かい住所を省いて会見し、道新の記者にだけは補足取材に答えない、といった嫌がらせをしてきた。
 ときには、道新の記者がいるのを見つけると「出て行ってくれ」と発表の場所から退席するように求められたこともあるという。
 道警本部の広報課に顔を出すと「何しに来たんだ」と露骨に言われ、道警にとって厳しい報道をしたときなどは、2〜3時間がんがん同じことを繰り返して言われたようだ。
 取材班の記者たちは、それまで取れていたネタが入らなくなる。
 道警の兵糧攻めが始まり、再三にわたり「特オチ」をするようになったという。
 記者たちは、それでも取材の手を緩めなかった。
 道新の取材班が書いた警察の裏金問題に関する記事は実に1,400本を越えるという。


不祥事が続発する北海道新聞

 道警の広報体制の一新に合わせるように、平成17年3月以降から7月にかけて、道警の裏金疑惑追及で取材班を引っ張っていた高田昌幸報道本部次長をはじめ佐藤一道警担当のキャップ、サブキャップなど主要なメンバーが1人またひとりと異動になる。
 しかも,異動先は、札幌の本社から遠く離れた東京支社である。高田昌幸氏は、現在ロンドンに駐在する。
 私は、このときの北海道新聞の人事異動を不審に思った。
 本人たちの希望もあってのことだろうが、5月末に北海道監査委員の確認監査結果が判明したとはいえ、まだ、道警の裏金疑惑の全貌が解明されてはいないのにどうしてだ。
 これで取材班は、事実上骨抜き状態になった。
 7月以降、「道新」の道警裏金問題に関する記事は激減した。
 道新も裏金報道から手を引こうとしているのか。取材陣だけではなく上層部も交替した。
 平成17年7月、道新の取材の中枢である編集局報道本部本部長にH氏が就いた。
 彼は前任の「経営企画室」では、次に述べる広告問題、訴訟対策、対外折衝などを担当していた。
 室蘭支社営業部次長の事件など、一連の不祥事の処理でも報道対応や警察との連絡に当たっていたという。
 H氏は、道警のサツ回りキャップの経験もある。
 道新と道警が"信頼関係"にあった時代のサツ回りの責任者で、当時の広報課指導官が岩田満広報課長であった。
 こうした一連の人事は、道新上層部の考えを暗に示している。
 道警人事に合わせるような道新人事。そして、それには重大な伏線があった。
 道警の裏金疑惑を追及していた道新の内部では、とんでもないことが起きていたのだ。


北海道新聞、上層部の不祥事を隠蔽

 東京読売新聞の記事を読んでみよう。
 「2004年5月27日、北海道新聞室蘭支社営業部次長(55歳)が、広告の売り上金約6,000万円を着服していたことが発覚し、道警の捜査4課等に逮捕された。この次長は、暴力団との関係も取りざたされ、広告売り上金による裏金つくりが部内の"公然の秘密"となっていた可能性がある、と道警はみている。道警は、道新の菊池育夫社長からも任意で事情聴取した。」
 この次長は、平成17年3月札幌地裁で懲役4年の実刑判決を受けた。
 ところが、道新の金をめぐる不祥事はこれだけでは終わらなかった。
 平成17年10月、道新は「今年6月に退職した東京支社元広告部長が営業広告費約500万円を私的に流用し、飲食費などに当てていた。元部長は弁済の意思を示しているので、刑事告訴はしない」と発表した。
 あるマスコミ関係者によると、道新では外部に迷惑をかけた事件でなく、本人が弁済を約束したので、あえて公表する必要がないと判断していたが、マスコミ他社の取材があったため、あわてて公表したという。
 これは、幹部の不祥事を隠蔽したといわれても仕方がない対応であった。
 道新の不手際はまだ続いた。これも東京読売新聞の記事を読んでみよう。
 「北海道新聞社は、元部長の退職後に流用が発覚したと説明していたが、広告局では退職前から流用を把握していたことが判明した。同局は、不祥事を知りながら同部長を依願退職させ、弁償も求めていなかった。」
 同紙はさらに、道新経営企画室の話として「広告局では5月の連休前に、疑惑が浮上して調査を行い、元部長も事実を認めたが、退職金の出る依願退職を申し出て、6月末に退職させてしまった。8月に経営企画室に内部告発があって、一連の経緯が判明した」と伝えている。
 「北海道新聞東京支社の元部長が広告営業費500万円を私的に流用した問題で、元部長に支払われた退職金2,000万円について、同社役員が穴埋めすることを決め、労働組合に伝えていたことがわかった」
 こうした道新の内部処理のやり方は、本来、刑事事件となる可能性のある事件を刑事告訴することなく内々に不問に付し、懲戒免職にすべき事件を依願退職にして退職金も支払うなどあいまいな形で処理した、と指摘されても仕方がない。
 本来支払うべきではない退職金を支払うことは、道新上層部による特別背任罪の疑いも出てくる。
あわてた、菊池育夫社長ら11人の役員がこの2,500万円を負担することになったという。
 連続する道新幹部の金にまつわる不祥事と道新上層部の不手際を、道警が見逃すはずはなかった。


北海道新聞の「おわび」と社内処分

 平成18年2月1日、「道新」朝刊に「北海道新聞社の編集局長ら処分」という見出しのベタ記事が載った。
 「北海道新聞は31日、道警と函館税関による「泳がせ捜査失敗疑惑」を報じた記事をめぐって1月14日に「おわび」を掲載した問題で新蔵博雅常務・編集局長を減給するなど合わせて7人の処分を決めた。編集局長以外は、当時の報道本部長と編集局次長が減給、紙面化に携わった当時の報道本部次長、記者3人がけん責、当時の編集本部員1人を戒告とした。」
 処分された当時の編集局報道本部次長高田昌幸氏以下の現場の記者たちは、一連の道警の裏金報道の記事を書いた記者である。
 権力機関からの攻撃から守られるべき彼らが、何故、道新に処分されなければならないのか。そこには、一連の道警裏金報道をめぐる道警とのバトルと道警の恫喝に屈したとしか思えない道新上層部の不可解な対応がある。


北海道新聞 社内調査報告

 平成18年1月14日、道新第2社会面に「『泳がせ捜査』記事の社内調査報告」なる記事が載った。そして、「裏づけ取材不足、「『組織的捜査』確証得られず」という見出しも目に入った。「泳がせ捜査失敗疑惑」記事とは、平成17年3月13日の「道新」朝刊の記事のことである。
 内容は、「道警の銃器対策課と函館税関が2000年4月ころ、(けん銃摘発を目的とした)泳がせ捜査に失敗し、香港から石狩湾新港に密輸された覚せい剤130キロと大麻2トンを押収できなかった疑いがある」とするものだった。

*解説「稲葉事件」
 この「泳がせ捜査」については、冒頭に述べた拙書『ホイッスル・ブロワー 警察内部告発者』の中でも触れた。だからこの記事は私にも無関係ではない。ここで平成の刀狩と稲葉事件について説明しよう。

 平成4年、警察庁は全国の警察にけん銃の摘発を徹底するように大号令をかけた。
 平成の刀狩である。平成7年には国松警察庁長官がけん銃で狙撃されるや、それはピークに達し、平成14年稲葉元警部の逮捕をもって終わりを告げた。
 この間、けん銃摘発のノルマに追われた都道府県警察は、けん銃の所持者を秘匿してけん銃だけを押収するという「首なしけん銃」の摘発という手法を編み出した。
 さらには捜査員が、ヤクザからけん銃を買うといったとんでもない違法捜査にまでエスカレートしていった。
 その結果、長崎、愛媛、群馬、兵庫県警などで、次々とけん銃摘発を巡る違法捜査が発覚し、現場の刑事たちが職を追われた。
 これはおそらく氷山の一角であったろう。道警も例外ではなかった。
 稲葉元警部は、道警の銃器対策課のエースともてはやされ、道警のけん銃摘発の実績を一人で背負っていた。
 稲葉が所属していた銃器対策課では、捜査費が裏金に回されていた。
 刑事は、捜査に必要な費用をいわば自前で工面しなければならなかった。
 捜査協力者を保持していく資金に窮した彼は、覚せい剤密売に手を染めるうち自らも使うようになり逮捕された。
 彼は、実刑判決を受け服役中である。
 稲葉元警部は、自らの裁判で銃器対策課のけん銃摘発をめぐる数々の違法捜査について証言した。
 「130キロの覚せい剤の密輸」は、覚せい剤などの密輸を何回かわざと見逃し、最後にはけん銃を摘発するといった違法捜査である。
 当時の上原道警本部長は、稲葉元警部の証言について道議会で「そのような事実は把握されなかった」と否定した。
 彼はこのけん銃摘発を目的とした「泳がせ捜査」については、平成15年3月3日付で札幌地裁に提出した「上申書」でも詳細に述べた。
 自らの罪を認め服役した彼には、虚偽を言い立てる動機がない。
 稲葉を部下に持ったことがあり、その人となりを知っている私は、彼の話は本当だろうと思ったし、今もなおそう思っている。
 この問題については、私だけではなく、「北海道警察の冷たい夏」(講談社文庫)の著者である曾我部司氏が「北海道警が闇に葬った大スキャンダル」(月刊現代04年9月号)でも明らかにしている。
 同氏は、このやらせ捜査の実態を広範囲な現地取材により裏付けたと語っている。
 その曾我部氏も「闇に葬った」と指摘しているのだ。
 今となっては、証拠をもってこの事実を裏付けることは極めて至難なことではある。
 だからといって「泳がせ捜査の失敗疑惑」が、事実無根であったとは思えない。
 しかも、事実無根を立証する責任は道警側にある。

 <下>へ続く。

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北海道警察v.s.北海道新聞 第14回(20.1.22) 第9回口頭弁論 北海道警察VS北海道新聞

 第9回口頭弁論が、平成20年1月21日午後2時から、札幌地裁8階5号法廷で開かれた。
 原告席には、斎藤隆広弁護士のみで、原告佐々木友善は原告側の傍聴席の最前列に着席。
 被告席には、北海道新聞の代理人馬場正昭弁護士、被告佐藤・高田の代理人清水勉弁護士、被告佐藤一記者、補助参加人宮崎、大谷代理人の代理人市川守弘弁護士、旬報社、講談社のそれぞれの代理人弁護士が着席した。
 傍聴席は、総勢約60人。北海道新聞からは道新経営企画室、編集局幹部ら。
 道警OB多数。道警OBのなかにはいつものメンバーのほか、見慣れない顔ぶれが大勢いた。
 取材の記者は5人。
 
 まず冒頭で、裁判所から弁論更新手続き(裁判官1人が異動のため。)、その後、補助参加人が証拠申出書(証人申請)を提出。内容は前回提出した「証人申請」と同一で、前回は「反訴・原告」として提出したが、念のため「本訴・被告補助参加人」の立場で提出し直したとのこと。(芦刈勝治氏、原田宏二氏、稲葉圭昭氏ら10人の証人尋問を求める内容)

 竹田裁判長 まあ、併合されていますからどちらでも良いのですが、念のためにというご趣旨ですね。

 ここで、原告(佐々木友善)側が第7準備書面を陳述。元部下の現職警察官(警視)2人の「回答書」や、道警OB(鈴木巌 元道警函館方面本部長)の新しい陳述書、原告佐々木友善の妻の陳述書なども証拠として添えた。
 さらに、原告佐々木友善、被告高田昌幸、佐藤一、元サブキャップの計4人を証人申請した。

◎原告の第7準備書面は、全106ページにわたるもので、大きく2つの項目に分かれる。

●道警OB鈴木巌の新しい陳述書に基づく主張
 同氏が問題視する「道警中枢"機能まひ"総務部長人事も混迷」記事とその後の被告佐藤一の対応について、被告佐藤が陳述書で反論したことに対し、再反論する内容だ。

<1> 同記事は事実と異なる。そもそも鈴木は前年8月に退職を申し入れ、翌1月には退職発令日の内示を受けており、鈴木が総務部長への人事を拒否するなどあり得ない。
<2> 同記事で鈴木は名誉を毀損され、精神的苦痛を受けた。(註 同記事には鈴木の実名、役職などは一切掲載していない)
<3> 同記事について、北海道新聞はどの関係者に取材したかを明らかにしていない。こちらが捏造と指摘する以上、道新は取材源の説明責任がある。それをしようとしないのは、捏造記事を盛り込み、名誉棄損の傷口を広げた。そして、原告佐々木は、鈴木と同様の被害にあっている。(ここまで10ページ)

●前回被告側が提出した、佐藤、高田、元サブキャップの陳述書に対する直接の反論。それぞれの陳述書を細かくブロック分けし、ブロックごとに認否や反論を行っている。
<1> 記述中の瑣末な見解の相違をとらえ、元部下の証言や怪文書の内容などを交えて持論を展開し、 「内容虚偽の供述である」と結論。
<2> 記述中で被告側の一部の主張変更に対し「これまで3年間のやりとりで一度も言っていない事実が出たのは驚き」「記憶の混交というのは不合理な弁解で逃げ口上」「サブキャップはキャップ会には出席できない。それなのにサブキャップがキャップ会に出席し、私の話を聞いたなどというのは作り話だ」などとし、「こうした主張の変遷は非合理で、信用できない」と締める。
<3>「私は酒に強い。だからビール1、2杯で酩酊して口を滑らせることはない」「トイレで小便をしながら話をしたというが、排尿障害でもない限りそんなに長く小便をできない」などとし、陳述内容を否定する。

 このいずれかの論理で90ページ以上にわたり、持論を展開した。

 なお、主張内容自体は従前通りだが、「北海道新聞の報償費疑惑報道の『(北海道知事が道議会で疑惑を)調査と答弁しないで』道警幹部が道に要請」記事について「誤報である」という新しい主張をした。
 また、「この本(文庫)は、道警の組織的裏金作りを問題としており、特定個人を糾弾する本ではないのは明らか」との被告側主張に対し、「原告や原告所属組織を悪者として扱い、警察を退職した人間に関する事実無根の記述を含む本。名誉棄損は明らか」と論理をすり替えている。
 なお、この準備書面では、被告や補助参加人の「原告は、道警に在職中に裏金を受け取ってきた。 裏金の存在を熟視し得た立場なのに、公の場で事実と異なる発言を繰り返していた。納税者に向かって組織的裏金作りを隠蔽し続けてきた。このような訴えを起こすくらいなら、まずはその現職時代の過ちを反省し、納税者に謝罪すべきだ」などの指摘については、一切反論していない。

 ここで、裁判長と被告、原告代理人とのやり取りがあった。

竹田裁判長 被告側にうかがいますが、これ以降の補充主張の予定はありますか。

馬場弁護士 ありません。

竹田裁判長 それでは次回以降、人証調べ(証人尋問)に移りたいと思います。本件は、双方とも「書籍に記述されたこと」に関しては争いはありませんので、問題点は書かれた内容が真実か、真実相当性があるかという点だと考えます。原告さんはここまで「そんな事実はない」と主張され、被告側は真実という。ここまでで書証の調べは終わりましたが、裁判所としては記載事実があったかなかったかに絞って、人証調べをしたい。

清水弁護士 ちょっと待って下さい。今回の原告の書証について認否を表明したい。鈴木巌の陳述書、道警幹部2人の回答書、妻の陳述書などを「不知」とさせていただく。

竹田裁判長 成立そのものは争わないと言うこと?(それらの書類が偽造文書である、という弾劾をするか否かを聞いている)

清水弁護士 その主張内容については、「当方は知りません」ということです。

竹田裁判長 わかりました。ところで、これまでに多数の人証申請が出ていますが、どなたにどの範囲でうかがうか、どれだけの時間聞くかを、記載事実があるまでの経過ではなく、記載事実そのものの真実性を重視して判断したいと思っています。つきましては、双方の人証申請についてご意見があるのなら、ご準備いただきたい。次回期日を進行協議とし、人証調べ期日も1回ないし集中審理で行う方向で調整したいと思っていますので、ご意見は事前に書面で提出してください。

斎藤弁護士 それは証人や時間についてということか。

竹田裁判長  時間、内容、順番も含めてです。

旬報社代理人 はっきり言いますと、今回の人証申請でもっとも難しいのは、芦刈さんの部分(被告代理人) だと思う。芦刈さんを呼ぶかどうかを裁判所で決めていただければ、ほかの証人は通常の判断でも良い。進行協議をやるまでもないでしょう。

竹田裁判長  被告さんの中で一致している証人さんについて、裁判所は「調べない」というつもりはありません。ただ、補助参加人の人証申請があまりに多く、範囲も広いよう
ですので。いずれにせよ、双方の意見を出してもらった上で、裁判所として採否を判断し、期日を指定したいと思っています。

 次回期日は、3月10日午後4時から進行協議(非公開)と決定。

 ここで市川弁護士が発言。

市川弁護士 今回出された原告の書証の認否について後日、書面を出します。

竹田裁判長 分かりました。

<閉廷>

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北海道警察v.s.北海道新聞 第13回 第8回口頭弁論 北海道警察VS北海道新聞

 第8回口頭弁論が、平成19年11月12日午後2時から、札幌地裁民事第一部5号法廷で開かれた。
 原告席には、いつものとおり原告佐々木友善の代理人齋藤隆広弁護士のみ、原告佐々木友善は被告側の傍聴席の最前列に着席。
 被告席には、北海道新聞の代理人馬場正昭弁護士等、旬報社の代理人弁護士、被告の佐藤一記者とその代理人清水勉弁護士、本訴の補助参加人で反訴の原告大谷昭宏とその代理人市川守弘弁護士。
 傍聴席には、道警OBが20数人、北海道新聞からは経営企画室のメンバーら4人、「市民の目フォーラム北海道」の会員が数人、見慣れない人物が数人、その他で約30人、取材の記者が数人。

 まず、冒頭に被告北海道新聞側は、被告佐藤一記者、被告高田昌幸デスク、元道警サブキャップの陳述書を提出した。

◎佐藤記者の陳述書は14ページにわたるもので、警察の裏金とは何か、から始まり、今回の裏金報道の経過と道警側の反応、その中での原告佐々木友善の立場を詳述した。
●佐々木友善が「捏造」といっている記述(摘示事実)について、いずれも裏金問題の本筋と直接関係のない「エピソード」の域を出ないものだが、いずれも必要かつ十分な取材を踏まえていることを指摘。
●そうしたエピソードを社会に知らせることも裏金問題の実情を伝える一助となり、公益性にも叶うものだと断言。続いて、それぞれの摘示事実について取材経過を明らかにし、「いずれの記述も真実である」と述べた。

◎高田デスクの陳述書は11ページにわたるもので、道警裏金報道の意義、経過、その中でのデスクとしての取材へのかかわり方、2冊の本の出版経緯などを詳述。むすびの文章で、原告佐々木友善の今回の訴訟対応を痛烈に批判した。
●佐々木氏は当時、道議会や監査請求、各政党の調査団によるヒアリングなどの場で、事実と異なる発言を続けるなど、納税者に向かって、組織的裏金づくりを隠し続けた。
●在職中には種々のしがらみがあり、本当のことを言えなかったのだとしても、道警退職後にこのような訴訟を起こすくらいであれば、佐々木氏は蛮勇を奮って、まずは過去の行為を反省し、虚偽の発言を公式の場で繰り返してきたことを納税者に謝罪すべきだったのではないか、と感じる。
●もちろん、佐々木氏の指摘する記述は、十分な取材に基づいて行われており、捏造の謗りを受けるいわれは、全くない。
●また、一連の裏金報道やこれらの書籍は、いずれも、長年にわたって道警を蝕んでいた裏金問題を問題にしたもので、裏金問題発覚当時、佐々木氏をはじめとする道警の要職に就いていた方々が新聞記事や書籍に再三登場するのは、その役職ゆえのことであり、それ以上でも以下でもない。道警幹部の個人的評価を貶める意図などあろうはずがない。

◎元道警サブキャップの陳述書は4ページに及ぶもので、主に裏金報道当時のキャップ佐藤一記者とのやりとりを記した内容。

ここで、竹田裁判長から発言があった。

竹田裁判長 被告さんではこの陳述書提出をもって、これ以上は明らかにしないということ?

被告側弁護士 はい。

竹田裁判長 では、これを前提に、原告さんの方で今後の主張なり立証なりを検討してください。

斎藤弁護士 わかりました。

 その後、被告補助参加人(反訴原告)の宮崎、大谷両氏から準備書面1枚を陳述と、10人の証人尋問を申請した。

◎準備書面は、これまでの宮崎、大谷側からの主張について反応があまりないが、自分たちのこれまでの主張については今後立証を進める、という内容。

◎申請した証人と立証趣旨は以下の通りである。

1 元道警本部長芦刈勝治
 裏金報道当時、道警本部長としてどのような対処の方針を持っていたか。いかなる指示をしていたか。指示に基づく総務部長佐々木友善の対応はどうだったか。
2 被告・佐藤一
 本件記事の取材経過、「泳がせ捜査失敗」記事の取材経過、同記事の訂正の経過、2冊の本の発行経緯。
3 被告・高田昌幸 
 本件記事の取材経過、「泳がせ捜査失敗」記事の取材経過、同記事の訂正の経過、2冊の本の発行経緯。
4 原田宏二
 道警本部総務部総務課長当時、部下であった原告佐々木友善が裏金を受け取っていた事実。道警総務部が議会工作をしていた事実など。
5 稲葉圭昭
 道警銃器対策課勤務当時の泳がせ捜査の実態、「泳がせ記事」が虚偽でも捏造でもなく、真実であること。
6 道新前編集局長
 「泳がせ記事」が捏造でもないにもかかわらず、なぜ「お詫び記事」を出したか。
7 道新記者(前道警キャップ)
 当時の道警本部広報課長岩田満とのやりとりを書いた「メモ」の経過。
【注 このホームページ 北海道警察VS北海道新聞 第3回(19.3.7)道警の恫喝と道新のお詫び記事にある「道警泳がせ捜査関連メモ」のこと】
8 補助参加人・大谷昭宏
 本の作成経過と、佐々木友善の「捏造」発言で受けた精神的苦痛。
9 補助参加人・宮崎学
 本の作成経過と、佐々木友善の「捏造」発言で受けた精神的苦痛。
10 原告・佐々木友善
 平成15年12月ごろの道警総務部長としての任務の内容、道議会への工作内容、その成功の可否。 

これについて竹田裁判長が発言。

竹田裁判長 この証人申請ですが、これは道警裏金問題そのものの立証もやるということ? 裁判所としては、原告が「捏造」と主張する記載事実の有無が焦点だと考えていますが。

市川弁護士 もちろん、裏金問題そのものをここで立証するつもりはありません。記載事実の真実相当性についての、こちらのこれまでの主張を立証するつもりです。原告はこれまで、こちらの主張に対する反論をしないため、その主張をそのまま、(証人尋問で)立証したいと思っています。

竹田裁判長 真実性や記事の公共性についておっしゃるんでしょうけど、(大谷、宮崎の反訴の部分については)そこは大きな争点とは考えていない。原告は今後(反訴について)主張予定はありますか。

斎藤弁護士 従前通りです。

竹田裁判長 では、こちらとしては必要があると判断した範囲で(証人尋問を)やります。そもそも、友善の「捏造記事」との発言があったかなかったか、その発言が相当だったか、公共性があったか、(大谷、宮崎の)社会的信用度を低めたかを重視する方向ですので。

斎藤弁護士 ところで、今回提出の被告3人の陳述書の内容は今後、主張として援用されるのか。

馬場弁護士 陳述書はあくまで証拠だ。(ここで竹田裁判長が割って入り、馬場弁護士の言いたい意図を噛んで含めるように説明「陳述書はあくまで、こういう風に話しましたよ、という証拠に過ぎず、主張とは別」などの内容)

斎藤弁護士 では主張されないということか。

馬場弁護士 陳述書を元に証人尋問を行い、立証できた内容を最終準備書面で主張すると言うことだ。(註 これは民事訴訟の常識)

斎藤弁護士 被告側がこちらの求釈明に答えられないので、確認したまでだ。

馬場弁護士 そもそも原告の求釈明に答える必要はないわけで。裁判所からの求釈明であれば話は別だが。

清水弁護士 こちらではもう、主張は尽くした。原告さんの反論のあとは証人尋問をしていただければ。

竹田裁判長 もう、主張内容はかわることはないということね。では原告さんはそれを踏まえて、反論、ご主張の準備をしてください。

次回は来年1月21日午後2時から、第9回口頭弁論

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北海道警察v.s.北海道新聞 第12回 第7回口頭弁論 北海道警察VS北海道新聞

 第7回口頭弁論が、平成19年9月10日午後3時から、札幌地裁民事第一部5号法廷で開かれた。原告席には、いつものとおり原告佐々木友善の代理人齋藤隆広弁護士のみ、原告佐々木友善は傍聴席。被告席には、北海道新聞の代理人馬場正昭弁護士、講談社、旬報社の代理人弁護士、被告の佐藤一記者とその代理人清水勉弁護士、本訴の補助参加人で反訴の原告大谷昭宏とその代理人市川守弘弁護士。傍聴席には、道警OBが20数人、北海道新聞からは経営企画室のメンバー、何故か常連の「市民の目フォーラム北海道」の原田代表の顔はない。今回も北海道新聞の裏金取材班の記者たちのほとんどが傍聴にきていない。その他、取材の記者が数人。
 
 まず、冒頭に北海道新聞側の準備書面を陳述があった。

◎被告道新・高田・佐藤準備書面6(2007年8月27日付)要旨

 ●仮定抗弁である本件摘示事実の真実性についての具体的主張
  1 佐藤一が「わかるでしょ。理解してよ」を聞いたのは2003年11月下旬から12月中旬までに開催された道警と記者クラブとの懇親会等である。(従前主張をこの範囲で修正する)
  2 サブキャップの訴外Nが11月下旬の懇親会で「領収書なんて全部ペンネームだ。本名なんて書けるわけがない。当然でしょ」などと話すのを聞いている。
  3 佐藤一は上記の期間に同様のことを聞いてはいるが、Nからの報告を受け、直接の経験と混交してしまったので時期は現時点では明確ではない。なお、12月11日の夜回りの際、佐々木友善から直接「わかるでしょ。理解してよ」と同趣旨の発言を聞いた。
  4 取材によると佐々木友善が芦刈本部長に叱責されたのは、12月12日午後4時以降で、場所は道警本部庁舎内である。
  5 こちらとしては、仮定抗弁である真実性について、これ以上具体的に主張する予定はない。ただし、証人尋問前にさらに詳しい道新関係者の陳述書を提出予定である。(註 仮定抗弁とはこの場合、「そもそも名誉棄損なんて成立しないんだけど、万が一、仮に名誉棄損が成立するとしても、記事には真実相当性がある。それを説明するための反論」の意味と解釈してよい)

 その後、裁判所と被告側弁護団との間で以下のやり取りがあった。

竹田裁判長 道新側はこれ以上主張する予定はない、とのことだけど、どういう趣旨なの? ここまでの原告の求釈明に一部は答えているが…。細かいところまではわからない、というならしょうがないんだけど。

馬場弁護士 今回の書面は、(前回の)裁判所からの求めに応じて答えたものだ。細かいことについては確認作業が必要になる。関係者の1人はロンドンにいるし。さらに申し上げると、これは立証の裁量の範囲内なのかなと思料する。

竹田裁判長 いや、要はこれからさらに、もう少し細かいところまで主張していくということなのか、その辺をはっきりしたいわけです。尋問の直前に陳述書を出すというけど、もし、さらに主張があるというのなら、早くご準備いただきたい。やらないならそれを前提に裁判を進めるが、あとからまだ、細かいことが出るというのであれば、裁判の予定が立たない。陳述書を出すというのであれば、早めに出していただきたい。

馬場弁護士 わかりました。

清水弁護士 言った言わないの話しはここまでの主張で十分だ。「叱責」の部分については、あまり細かいことをやると、取材源の秘匿の問題が出てくる。あまり細かいことまでやると、取材源が絞り込まれてしまうので、難しい部分がある。

竹田裁判長 それについてはわかる。ただ、新しい主張、細かい話がこれ以上出るのかどうか、そろそろめどをつけて欲しいんです。次回弁論までに「これ以上は細かいことを出さない」という部分を固めていただきたい。どこまでご主張されるのかはお任せしますが。

 その後、佐々木友善の準備書面が陳述される。

◎ 原告佐々木友善側第6回準備書面(2007年9月5日付)要旨

 ●本訴について
  1 道新はこちらの求釈明に答えていない。もし、問題の論点について自らの主張が正しいなら、十分釈明可能なはずだ。
  2 なぜ答えないか。それはぼろが出て、困るからだ。仮定抗弁だから反論の必要がない、との主張は理由がない。
  3 求釈明に答えず、代わりに尋問直前に陳述するというのは後出しじゃんけんで卑怯だ。こんなやり方がまかり通るなら、原告に一方的に主張をやらせ、それを効果的にたたきつぶすという攻撃防御がまかり通ることになる。これは原告の攻撃防御の機会を奪い、裁判所に偏った心証を抱かせようという手法で、断じて許されない。
  4 改めて釈明を求める。これに応じられないのなら、1,2の理由で回答しないものとみなし、さらに主張立証する。

 ●補助参加人の主張について
  1 補助参加人は原告の社会的評価が下がったかどうかについては、裏金問題の真相を解明しなければならないと主張しているのかもしれないが、本件訴訟と全然関係ない。
  2 そもそも、名誉棄損は一般読者の読み方を基準として判断すべきもので、補助参加人のような特定の人物の見地から行うものではない。なので、補助参加人の主張は関係ない。
  3 よって、いずれの主張も理由がない。

 ●反訴での宮崎・大谷の主張について
  「被告の抗弁に先立ち、抗弁の積極否認を原告に求めるもので、これは主張の放棄だ」という主張だけど、趣旨が不明だ。そもそも、こちらの主張がそうでないことは明らかである。

 次回期日を「11月12日午後2時から」と決定後、清水弁護士から確認が1つあった。

清水弁護士 原告(佐々木友善)側は今回の準備書面で、名誉毀損の構成要件として「一般読者の読み方を基準」と主張されているが、これは従前の主張と異なる。これは主張を変更された、と理解してよいか。

竹田裁判長 原告側、どうなの?

斉藤弁護士 (首を横に振る)

竹田裁判長 だからさ、要は一般読者の読み方を基準とするというご主張と考えていいわけね?

斉藤弁護士 (首を縦に振る)

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