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 マックで飯を食っていたら、同宿中のジョージア人にばったり出会う。
 しばらく「どこから来たんだ」「どこへ行くんだ」などと当たり障りのない会話をしていたのだが。

「これから、私のしている活動についてお話しします」

 ……と、唐突に切り出され、身構える私。
 警戒心を表に出さず、「どんな活動ですか?」と質問する。
 内心では宗教の勧誘か、それともシーシェパードみたいな環境保護活動か、あるいは反政府デモとかやってる運動家か、何となく面倒くさそうなやつだなと色々想像力を膨らませていたのだが――

「私はマックで働いています。3日後にお金がもらえるので、私に宿代として30ラリをください」

 ただのたかりだった。

 マックはブログ記事や小説の執筆が捗るので積極的に来るのだが、彼が働いているところを見たことがない。
 しかし私も鬼ではない。

 彼のスマホを担保に、貸して差しあげてはどうか。

 ……などというささやきが、頭の中で聞こえた。
 無論踏み倒した際にはスマホを売っぱらって穴埋めするために、ロックは解除してもらう。

 銀行などでも見ず知らずの人間に金を貸すのに担保をとるのは常識だろう。
 金貸しには当然踏み倒しというリスクが付きまとう。
 そのリスクに備えるのは当然のことだ。
 
 彼が使っていたのはおそらく旧iPhone SEと思われるので、売っぱらえば5000~6000円くらいにはなると思われる。
 うまく行けば30ラリどころか数倍になって返ってくるぞうっひっひ、などと悪徳闇金業者のようなことを考える私。
 
だが――

 私に残った人間としての最後の良心が、その邪な考えを棄却した。

 人の弱みにつけこみ、金を儲けるなんて人として最低だ! と。
 ――しかし、現状彼がマックで働いていることは確認できない上、3日後に金が返ってくるという保証もなく、口約束だ。
 ボスニアで乞食に施しをして恩を仇で返された忌々しい記憶が蘇る。

 知りあって2日程度の人間にそんな施しをするやつがあるか、と、結局丁重にお断りした。
 お人好しが損をするのはその善性ではなく、世間を見る眼の甘さに起因するのだ。