ある先輩の話。

その先輩との初対面は・・・

もう覚えてない。

だけど、再会は鮮明だ。

その時、僕は身体からプラズマエネルギーを放出できるけど、

扱いが下手なミュータントの役だった。

その時、先輩はテレパシーがつかえて、

力のコントロールの仕方を教えてくれるミュータントのボスの役だった。

僕の役名はアレックス・サマーズ。またの名を、ハボック。

先輩の役名はチャールズ・エグゼビア。またの名を、プロフェッサーX。

この作品は全3部で構成されて、足かけ3年くらいの付き合いになった。

「ファーストジェネレーション」

「フューチャー&パスト」

「アポカリプス」

そう、X-MEN。

X-MENは出演で来て光栄だった。

「出る側」になる以前、様々な形で触れた事がある作品で、

思い入れもあるからだ。



その先輩と、ファーストジェネレーションの収録時はチラッとだけお目に掛かれた。

フューチャー&パストの時は全く会えなかった。

アポカリプスの時はしっかりと絡めた。

ハボックとプロフェッサーの再会のシーンがあり、

このシーンは僕のお気に入りだ。

プロフェッサーは若いミュータント達相手に講義中なんだけど、

アレックスがやってくると授業を切り上げ、とっても素敵な笑顔で

「アレックス、会えて嬉しいよ」

と、声をかけてくるんだ。

日本語になった「アレックス」のセリフが今でも忘れられない。

ファーストジェネレーション以来、やっと再会できたんだ。

ハボックがプロフェッサーXに。

鶴岡聡が内田夕夜さんに。

出番的にはアッと言う間に終わったけれど、

収録の帰り、なぁんか気になる先輩だなぁと思っていた。

それから1年くらい。

「ピーキーブラインダーズ」という作品の収録に行った。

イギリスのギャングの話で、僕はトム・ハーディ演じる、

敵対勢力のボス、アルフィー・ソロモンズの吹き替えを担当。

主人公であるピーキーブラインダーズのボス、

トーマス・シェルビーの吹き替え担当は・・・内田夕夜さんだった。

役者という生き方を続けていられれば、様々な役で再会する機会はある。

だけどX-MENを終えた時、僕の中で膨らんだ印象と敬意、

そして「アレックス」のセリフが沁みていたからか、

何だか不思議な気持ちになったんだ。



アルフィーは喋り方に非常にクセのある役で、

以前2度担当した事があるトム・ハーディとは思えない役作りに

随分と悩まされたっけ。



役を作る・・・役へのアプローチ方法は役者の数だけあると思う。

曲者アルフィーを担当する僕は、これまでやった事がない

役の作り方・・・ある種の「賭け」に出た。

本当はいっぱい喋りたかったけど我慢した会話。

本当は心底行きたかったけど我慢した収録後の呑みの席。

もしかしたら感じ悪いヤツで終わってしまうかも知れないけど、

僕は敵対勢力だからという理由で、敢えて内田さんと接する事を控えた。



トーマスとアルフィーが一緒に出てくるシーンは大抵長回しで、

殆どのシーンが7分くらいある。

本当に緊張した。

でも、そこで僕を支えていたのが、内田さんの紡ぎだすセリフと、

あえて接しなかった時間だった。

プライベートでコミュニケーションを殆ど取らない人と濃密なシーンを作る時、

独特の緊張感がある事を知った。

でもその緊張感がトーマスとアルフィーのシーンにハマったと思う。

そしてそれを維持したまま収録を続ける事が出来た。




打ち上げの時、やっとまともにお話が出来た。

X-MENからこれまでの事。

全部。

取り留めもなく思いをぶちまけただけだったかも知れない。

でも内田さんはただ聴いて下さった。

荒れているアレックスをデカい器で受け止めていた

プロフェッサーXさながらに。そしてそれがとっても嬉しかった。

「役作りの方法は色々あっていいし、芝居が好きなんだなぁって思ったよ」

何か、幸せだった。



打ち上げの別れ際。


「他の作品でもまたやり合えたらいいね」


また沁みる一言を頂いた。

嬉しくて嬉しくて僕は「ありがとうございました」と返すのが精一杯だった。

でも、燃え上がるモノがあった。

また再共演をしたい先輩が増えた。

もしかしたら、これも僕が歩み続ける原動力の1つなのかも。



内田夕夜さん。

改めまして、ありがとうございました。

何としても生き残って、また同じ作品を作れる様に励みます。



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