『マルコ』 第五話


第六話 ("At My Most Beautiful" / 美咲_2)

 M駅で楠宮しのぶちゃんと別れ、美咲はまっすぐ帰宅した。買い食いや飲食店への立ち寄りは控えるようにという学校の指導が、初めて疎ましく思えるほどの空腹を抱えたまま。
 確かにクリームパンは食べた。しかし、健康な女子高生の胃袋がそれで満たされるわけがない。昼食がパン一個という点はしのぶちゃんも同じだから、彼女が無事帰宅出来たかどうか少し心配だ。
「ただいま」
 玄関を開けて、靴を脱いでいると、
「おかえり、お姉ちゃん」
 リビングから出てきた妹の菜摘が珍しく出迎えてくれた。
「遅かったね」
「ちょっとね。ん?」
 自分がたった今脱いだ靴の真横に、まったく同じデザインの靴が揃えて置いてある。リリアン女学園指定の革靴。サイズは美咲のものより小さい。
「まさか」
 顔を上げて菜摘に視線を送ると、
「アイちゃん、来てるよ」
 美咲の腐れ縁の友である乃田藍子のことを『アイちゃん』と呼ぶのは菜摘だけだ。
「部屋にいる?」
「ううん。私の部屋にいるよ」
「なんで?」
「なんか、勝手に部屋に上がるのはダメだからって」
「えぇ?」
 そんなこと今まで一度もなかったのに、どういう心境の変化だろうか。
 美咲は階段を上りかけて、菜摘を振り返った。
「あ、ごめん、菜摘」
「なに?」
「カップラーメンでいいから、作って私の部屋に持ってきてくれない?」
「えー」
 不満の声をあげる妹。
「お腹減って死にそうなの本気で。お願い」
「いいけどー。だったら
 と言って菜摘は一度リビングに入って、すぐに出てきた。
「これでいい?」
 菜摘が差し出したのは、小皿に乗った三個のおにぎりだった。ふりかけを混ぜて握っただけの簡単なものだが、紛れもなく手作りだった。
「あんたが作ったの?」
 普段は母親の料理の手伝いもろくにしないのに、珍しいこともあるものだ。
「うん。なんか、アイちゃんに作ってあげてって言われて。お姉ちゃんがもうすぐお腹空かせて帰ってくるだろうから、って」
 それで菜摘はリビングにいたのか。しかし、藍子のやつ
「エスパーか」
「はは、すごいよね。はい、どうぞ」
 小皿を受け取りながら美咲は、
「ありがとう」
 礼を述べ、階段を上って行った。

 菜摘の部屋をノックして藍子を連れ出し、隣の自室へ移動する。
 そんなシミレーションを頭の中で組み立てていたけど、階下の話し声が聞こえたのか、藍子はすでに廊下に立っていた。
「おかえり」
「お待たせ」
「いーよ、あたしが勝手に来ただけだし。あ、それ、なっちゃんのおにぎり? 可愛いね」
「なにそれ」
 おにぎりに可愛いも何も、と思ったけど、確かに菜摘の握ってくれたおにぎりは小さくて可愛い、かもしれない。美咲の手で握ってもこうはいかない。
 それは、ともかく。
 美咲は藍子を伴って部屋に入った。ひんやりした空気が出迎えてくれた。まず電気ストーブをつけて、それからスクールコートを脱ぐ。
 行儀が悪いけど制服は脱がず、勉強用の椅子に座っておにぎりを食べる。ほとんど一口サイズだけど、そんなはしたない真似はもちろんしない。 
 藍子はベッドに座ってぼんやりと美咲の食事風景を眺めていた。
しのぶとは会えた?」
 三つ目のおにぎりを咀嚼し終わる頃に、藍子は尋ねてきた。
「会えたよ」
「家まで送ってくれたの?」
「ううん。途中まででいいって言われたから、M駅で別れた」
「それにしては、帰ってくるの遅かったね。どこかでお話してた?」
「うん。落研の部室で」
「そっか」
 藍子は続けて「何の話をしてたの?」とは尋ねなかった。訊いていいのかどうか迷っているのかもしれない。
 だけど、そんな遠慮気味の藍子は、はっきり言って調子が狂うので、
「彼女の転校の件、まだ正式には決まってないみたい」
 美咲はいきなり本題を切り出すことにした。
「え?」
「終業式の日かな。担任の先生ともう一度話して、そこで決めるって」
「ホントっ?」
 目を丸くして、藍子は立ち上がった。その表情には、驚きと喜びの他にほんの少しの戸惑いが交じっているような、そんな気がした。
「あと、ごめん。アンタがまだ諦めていない、ってことも伝えちゃった」
「えっ!?」
 藍子から預かったしのぶちゃんへの伝言は、一緒に帰ろうという約束を守れなかったことに対する謝罪だけだった。美咲はまるで余計なことを言ってしまったことになる。
それで、その、しのぶの反応は?」
 恐る恐る訊いてきた藍子に対して美咲は、
「ノーコメント」
 ピシャリと言い放った。
「ええっ!?」
 不満の声を上げる藍子。
「私の口から聞いて、それで納得できる? 脈はありそう、とか、諦めた方がいいよ、とか言われて」
「もう一度しのぶの口からはっきり聞け、ってこと?」
「まあ、そういうこと」
いいのかな? もう一度しのぶに申し込んでも」
「諦めないんじゃなかったの?」
 今朝M駅の改札口では、ボロボロと泣きながらも「諦めたくない」と宣言していたのに。
「うん。でも、今日一日ずっと考えてたの。あたし、しのぶのこと何も知らないんだ、って」
 姉妹(スール)なんてものは、お互いを知るためになるものだ。
 そんな正論は、しかし、今ここで言っても仕方がない。ましてや、藍子相手に。
「知りたい?」
 だから美咲は問いかける。
「何を?」
「彼女、いろいろ話してくれたよ。クリスチャンになった理由、信仰を失ったきっかけ。それから"お姉さまになって欲しかった人"のことも」
 藍子は丸い目をさらに丸くして、
「話してくれたの?」
「うん」
「すごい。ミサ、探偵みたい」
「ちょっと。無理矢理聞き出したみたいな言い方やめてくれる?」
「あ、ごめん」
 小さな身体を、さらに縮こめて謝る藍子。そんな殊勝な態度を取られても、やはり調子が狂う。
「私は、自分のことをただの伝言役だと思ってるけど」
「え?」
「彼女は、自分のことを知ってもらいたいんだよ。無神経な言い方をすれば、私なんかにじゃなくて藍子に」
あたしに諦めさせるために?」
 藍子のその弱気な発言は、美咲にとって少なからずショッキングなものだった。やはり、今日の藍子はおかしい。
「なんでそんなネガティブなんだか」
うん。自分でも驚いてる」
「でも、そうね。聞きたくないなら、仕方ないか」
 それは、ちょっとベタすぎるぐらいの挑発だと、美咲は思った。
「聞きたくないわけじゃないよ。でも怖い」
「怖い?」
 首を傾げながらも、美咲は内心で「やっぱり」と思っていた。
 話を聞いたところで、しのぶちゃんの過去をどうこすることなんてもちろん出来ないし、彼女の悲しみを癒すことも今はまだ不可能だろう。
 藍子はおそらく、そのことに気づいているのだ。直感的に。
「あたしはきっと何もできない」

 美咲は否定も肯定もせず、ただ視線を泳がせた。
「でも」
 藍子は立ち上がり、
「このまま話を聞かずにしのぶのこと諦めたら、一生後悔すると思う」
 美咲の目をまっすぐ見て、そう言い切った。
一生後悔する、か)
 きっとそれは大げさな表現じゃなくて、本心なんだろう。
「だから、知りたい。聞きたい。話してください」
 カーペットの上に正座する藍子。
「わかった」
 美咲はうなずき、「話、長くなるから」と藍子をベッドに座り直させてから、その隣に腰掛けた。
「すべてを、ちゃんと伝えれるかはわからないけど
 落研部長らしからぬ言い訳をしてから、美咲は話し始めた。

  *

 そして、長い話を聞き終えた藍子は、
ミサは覚えてる?」
 明るい声で、そんな質問を投げてきた。
「何を?」
「あたしたちが昔、姉妹(スール)になろうって約束してたこと」
 何を言い出したかと思ったら。
「そんな初等部の頃の話
「ちょっと、イヤそうな顔やめてよ」
「あ、ごめん」
 つい、謝ってしまった。
「ミサだって、OKしてくれたじゃん」
「だって、あの頃は姉妹(スール)のことなんて何もわかってなかったし」
「うん、そうだね。あたしたちは何もわかってなかった」
藍子?」
 気になったのは、藍子が声のトーンを少し落としたから。
「同級生同士は姉妹(スール)になれないって知った時、ミサはショックだった?」
 ふさげた様子もなく至って真面目な顔で、藍子は尋ねてきた。
 だから美咲は、
ごめん。『そうなんだ』ぐらいにしか思わなかった」
 正直に答えた。
「あたしはショックだったよ。半分本気で留年しようかって考えたもん。それから。それからね、少しだけ、なっちゃんにも嫉妬した」
そう」
「あの頃のあたしはホントにミサの妹になりたかった」

 想定外の『告白』に、沈黙しか返せない美咲を横目に、藍子はぴょんとベッドから飛び降りて、
「さすがにもう吹っ切れたけどね。だから
 くるりと振り返り、明るい声で続けた。
「勘違いしないでね」
誰が」
 藍子の軽口に対して美咲が内心で「助かった」と思ったのは、もちろん内緒だ。
「今はあたし、しのぶ一筋だから」

 いろいろと突っ込みたいのはやまやまだけど、口をつぐむ。
「しのぶ
 再びその名を口にして、藍子は黙ってしまった。そして、再び声のトーンを落として、
「しのぶは、あの時のあたしの何千倍、何万倍も悲しかったんだね」
「それは
 正直わからないし、考えたくない、と美咲は思ってしまった。
 自分には大切な誰かを喪った記憶はないし、”姉妹(スール)になれなかった痛み(のようなもの)”のことは、まだ触れたくない。だから較べるなんて不可能だ。
 だけど、同時に思い出したことがあった。そして、浮かんだ疑問。
「『あの時』って、いつのこと?」
 美咲はその疑問を口にした。
「いつって、そりゃあ」
 答えかけて、藍子は美咲の質問の意味に気づいたようだ。そして、小さく笑って、
「もちろん、初等部時代の、ミサの妹にはなれないって知ったときのことだよ?」
「そう」
「ミサが言ってるのは幼稚舎に入る前のことでしょ? そんな昔のことは、はっきり言って覚えてない」
「覚えてない?」
「うん、ほとんど何も。薄情かもしれないけど。悲しかったのか悲しくなかったのか。泣いたのか泣かなかったのか。ホント、覚えてない。まだ小さかったから、理解できなかったのかも。それか、あたしってホラこんな性格だし、意外とケロッとしてたのかも」

 黙り込んだ自分は、はたしてどんな顔をしているのだろう。美咲は思った。
ミサぁ」
「なに?」
「そんな怖い顔しないでよ
「ごめん。怒ってるとかじゃないの。ただ納得がいかない」
「どこが?」
 不安そうな顔で、美咲の顔を覗き込む藍子。
 美咲はそんな藍子の疑問に、質問を返した。
「藍子は覚えてる?」
「何を?」
「私と初めて会ったときのこと」
「幼稚舎に入ったとき? ううん。覚えてない。ごめんね」
「私は覚えているよ。アンタの第一印象」
それ、訊いてもいい?」
 引き続き不安そうな表情に、若干の喜色を混ぜて、藍子は問うてきた。
 美咲は指を折りながら、
「あの頃のアンタは、とにかく笑わないし、怒らないし、泣かないし、正直、何だか人形みたいでちょっと怖かった」
あたし、そんな暗い子だったの?」
「いや。うん、まぁ、端的に言えば」
 美咲は気を遣って、曖昧にうなずいた、というのに、
「そんな子と、ミサはどうして仲良くなったの?」
 藍子の質問はまるで他人事みたいだった。
「いや、出席番号が隣だったから自然と仲良く、だけど?」
「えー、そんな理由?」
 大げさに肩を落とす藍子。
 美咲は決して嘘はついていない。ただ『自然と仲良く』の過程であったいろいろなエピソードを省略しただけ。理由はメンドクサイから。
 藍子は顔を上げ、
「でも、そっか」
 と、うなずいてから、じっと美咲の目を覗きこんだ。
 美咲は若干戸惑いながらも、目を逸らさなかった。
 藍子は、たぶん、美咲の瞳の中に当時の自分を見つけようとしているのだろう
って、なに? そのロマンティックな発想)
 内心で自分に突っ込む。だけど、藍子が何かを思い出そうとしているのは間違いない、と思う。
「枕、貸して」
 藍子は右手を差し出して、唐突にそう言った。
「何に使うの?」
「いいから」
 美咲は首を傾げながら、ベッドの上の枕を藍子に向かって投げた。
 藍子は両腕で抱きとめるように枕をキャッチして、そのままギュゥっと腕に力を込めた。
「ちょっと」
 藍子の意味不明な行動に、美咲は抗議の声を上げた。
 だけど藍子は耳を貸さず、枕を抱きしめたまま、目を閉じた。
 ため息が美咲の口から漏れた。こうなったら何を言っても無駄だ。経験上美咲はそのことをよく知っている。
 そのまま待つこと実に数分。
 沈黙を破ったのは、やはり藍子だった。
 抱きしめていた枕をいきなり美咲の顔面に投げつけた藍子は、
「おい!」
 美咲の抗議の声を完全に無視して、
「携帯、携帯」
 と言って、カーペットの上をぐるぐる回り始めた。
 どうやら携帯電話を探しているようだけど、この部屋に入った時点で藍子は鞄も何も持っていなかった。荷物は、おそらく先ほどまでいたであろう
「あっ、なっちゃんの部屋だ!」
 思い至った藍子は美咲の部屋を飛び出し、
「なっちゃーーん! ごめーん! あたしの鞄とってーー!」
 隣の部屋の菜摘に呼びかけた。
 程なくして、困惑した顔の菜摘が藍子のスクール鞄を持ってきた。
「はい、どうぞ
「ありがと!」
 笑顔で鞄を受け取った藍子は、中から携帯電話を取り出し、ボタンを操作した。どこかへ電話を掛けたようだが、携帯電話を耳に当てる藍子の姿に、美咲は内心で「まさか」と思った。
 その相手、もしかして
「あっ、パパ?」
 予想は外れだった。
「ううん、何にもないよ。でもね、ちょっと訊きたいことがあるんだ。今は無理?うん、じゃあ、いいよ。パパ、今日は残業せずに帰って来てね。絶対だよ、約束。知らない! 大事な話なんだってば。じゃあ、絶対だからね! 切るよ!」
 一方的に通話を終わらせた藍子は、携帯電話を折りたたむと、美咲を振り返った。
「ありがとう、ミサ。あたし、帰るね」
 ささやかな報復を内心で考え始めていた美咲は、
「そう」
 うなずいて、肩の上に持ち上げていた枕を下ろした。
「なっちゃんもありがとね」 
 菜摘はまったく事態が飲み込めていないようで、「どういたしまして?」と首を傾げてから、姉に説明を求めるよう視線を送った。
 そんなことを頼まれても、美咲は笑って首をすくめしかなかった。
 
   *

 外は陽が沈んですでに暗くなっていた。
 最寄のバス停まで送っていく道すがら。
「ミサは何であの子を妹にしたいと思ったの?」
 藍子は、まったく予想外の質問を投げてきた。
あの子って誰のこと?」
 一応、訊き返してみる。
「ほら、学園祭の時のあの子だよ」
 そう言って藍子は、歩きながら自らの両サイドの髪を掴んだ。
「私、彼女の姉(グラン・スール)にはなれなかったんだけど?」
 これも一応確認しておく。
「あたしだって、しのぶと姉妹(スール)になれるかなんてわからないよ?」
「そういうことじゃなくて。ていうか、何で知りたいの?」
「参考までに」
 藍子の声音から判断するに、美咲のことをからかっているわけではなさそうだ。
 だからと言って、素直に答える義理はないのだけど、
「可愛くいて面白い子だ、って思ったからだけど?」
 ついさっき、M駅の改札前で見た光景が思い出しながら、美咲は白状してしまった。

 藍子からは何も反応がなかった。不審に思った美咲が横を向くと、
ぷッ」
 口元を押さえて吹き出す藍子と目が合った。
「何が可笑しい」
 ちょっとムッとして、問う。
「ごめんゴメン。いや、同じだなぁって思って。すごいね、さすが親友」
同じ?」
「あたしも、しのぶのこと可愛くて面白い子だなって思ったの。だから、ずっとそばで見てたいって思ったんだ」
ああ、そう。じゃあ、それをそのまま伝えればいいんじゃない? 『キミは落研の将来を担うホープだ』って」
「落研? なんで?」
「あ、別に
 放課後のクラブハウスで、鹿野毬江さまにしのぶちゃんを落研入部希望者だと誤魔化したことは、別にここで藍子に伝えることではない。
 ついでに言うと、落研の前部長である梶原信恵さまが美咲を妹(プティ・スール)に選んだ理由も『可愛くて面白い子だって思ったから』だということも、今はどうでもいい。
「ミサは時々おかしなこと言うなぁ」
 瞬間、美咲の頭の中に「アンタにだけは言われたくない」という月並みな反論が浮かんだ。だけど、それは口に出さず、代わりの反撃の言葉を投げた。
「しのぶちゃんも案外、同じこと思っているんじゃない?」
「え? どういうこと?」
「藍子のこと『面白くて可愛い』って思ってるかも」
「えっ、それはなんか心外なんだけど!」
「じゃあ『小っちゃくて可愛い』とか思ってくれてるかも」
「もっと心外!」
「事実なんだし仕様がないんじゃない?」

あ」
 しまった、と美咲は軽く唇を噛んだ。
 藍子は口を大きく開け、呆れたような表情でしばらく美咲を見上げた後、
「ま、ミサがそう言うなら、いいや」
 そう言って、前を向いた。

 その地点からバス停まで約一分。微妙な空気のまま、沈黙が続いた。
「今日はありがとね、ミサ」
「別に」
「試験もあったのに、大変だったでしょ」
「ホントに」
どっち?」
 カラカラと笑う藍子を、バスのヘッドライトが照らした。
いい方向に転がりそう?」
 さっきの『パパ』との電話のことには触れず、美咲は尋ねた。
「わかんない」
 開いたバスのドアの前で振り返り、藍子は首を横に振った。そして、
「でも、もう何があってもメソメソしないよっ」
 と言い残して、バスに飛び乗る。
「そう」
 今朝のM駅での藍子の『ひどい顔』を思い出しながら、美咲は呟いた。
 ドアが閉まり、バスは走り出す。
 笑顔で手を振る藍子を見送り、美咲はため息をついた。

 
 今日は、やっぱり大変な一日だった。

 だけど、最後の藍子の言葉を信じるなら、悪い日じゃなかったのかもしれない。
 なんて、思ってしまった。



第七話につづく
  



※ 「OUT OF TIME」25周年祈念作品のつもりだったのに、「25周年記念」になってしまいました。
半年以上ぶりの更新です。
第一話が一年前という事実に愕然としています。
遅々とした進みですが、必ず結末までたどり着きたいと思っています。
お付き合いいただければ、幸いです。

※この六話の主役『美咲』は同ブログ内の拙作『紅いリボン』の主人公です。
藍子も登場するので、よろしければ。 紅いリボン』第一話へ