無残さん? 同世代ですか? んなわけないか。
 私は御年66歳、現役を引退して4年になりますもんねえ。

 そういえば、長崎造船所を訪ね始めて、何年目のことだったかなあ? まだ40代だったですかね、いつもは造船担当の副所長どまりのインタビューだったんですが、その時は相川所長が出てこられてインタビューに応じてくれた。史料館に初めて行ったのもその時でした。爆発したタービンの残骸のことを話題にされて、三菱・長崎はこういう苦労をしながらも…。みたいな話をされていましたね。今なら、産業歴史遺産だったら、こっちだろうという感じかな? 
 今思うと、原動機部門が長崎を支配したことを宣言するようなインタビューだったのかなあ? その後も、造船部門出身の社長さんは生まれていませんしねえ。

 ですが、そのあとだったかに、エレベーターの中で見たポスターに「全製品一流化」。そしてその後、会社の方針として「全部門黒字化」みたいな標語が掲げられるのを見て、あんまりいい気分じゃなかったですね。
 えええ、すでに三菱の屋台骨を支えていたのは原動機!でしたし、造船は、オイルショック以降、ほとんど「お荷物事業部」という状態が続いていましたからね。
 でもって若い人と呑んでも、「歴史的に見れば、まだ船舶が会社に果たした収支は黒だぜ」なんてオダ上げていました。つまり会社の長い歴史は、造船が支えたんだ。だからあんたの事業部もあるんじゃないの? みたいな反論ですね。もう視野は社内しかなくなっていたかのような?

 まあ全事業部黒字化なんて言われたら否定できませんからね。でもそれぞれの産業状況や環境を無視した黒字化って? 事業部間の競争を煽るような事業方針を表に向かって語る理由って?
 一体、誰に向けて話しているんだろう? なんて思いましたですね。

 全事業部黒字化! こう掲げられたら、売り上げの増加を見込めない事業部は、新しいことに挑戦しなくなる? とか、開発費を削る?とか。まあそれでも、戦略的思考は残っていたんですね。客船建造に果敢に突っ込んでいった三菱と長崎の気概は、尊敬に値するものだったと思いましたけど…。

 でも当時、造船大手各社が合従連衡に動いているのに、国土交通省の造船再編プランは、「三菱重工を除く、大手5社を2つに」みたいな方針で。もちろん三菱さんのご意向を入れての産業政策ですわね。一応別格に見られていたことに、心地よさを感じていたんでしょうかね。
 でもってモンロー主義を貫いたまま、今日に…。
 事業部制って、当面の事業収支だけから、未来戦略を立てるんですかね? まあ戦略性はどこに? なんて言っても、なかなか他の事業部の事情もあるし、下から突き上げて、社内を説得してといっても、なかなか戦えないですわね。
 でもって、高付加価値船建造、客船こそ事業高度化の…、なんて風に、準備不足のまま事業部の外から方針が出て来ても、もう。
 クリハモを造るとき、郵船さんだけじゃなくて、三菱さんのスタッフさんもどんどん海外の客船に出かけて、船を見ていた。欧州の調達ルートを構築するために駐在体制を再編したし。建造が始まる前に実物大のモックアップを造ったり…。
 今は昔…。
 でも、気概だけは、どこかに残し続けていただきたいですね。