今さら、その話かよ! なんて言わないで下さいね。
 筆者もあんまり、この話を拡散したいとは思わないんですが、今後こうした事故というかーー報告書を見ると事故というより「事件」ですけどねーー二度と起こして欲しくない。と思うから、少しだけ転載させていただこうかと。

 はい、にっぽん丸が去年末にグアムのアプラハーバーを出港するときに起こした岸壁への衝突事故に対する「事故調査報告書」がまとめられたというニュースをT.Iさんが報じています。
 アメリカ国のNational Transportation Safety Board(=国家運輸安全委員会)(NTSB)が、作成したもので、全文は、これです。
 https://www.ntsb.gov/investigations/AccidentReports/Reports/MAB1930.pdf

 被害総額は、にっぽん丸が45万6080ドル、係船杭が50万ドル以上だったとか。保険でカバーされたんでしょうかね?

 報告書には、離岸してから衝突するまでのマップも入って、この事件の登場人物は、酔っ払い船長とパイロットと、もう一人。このひとも主役ですね、若き三等航海士。彼と船長のやり取りまで、結構詳しく報告されていて、生しいですね。
 お上の報告書って、こんなに生々しく書くもんなんですね。アメリカだから? いや見たことないけど、日本の事故調もこのぐらいドキュメント風に報告するんでしょうね? 

 報告書が指摘する原因は三点。船長の飲酒による酩酊?、(日本の)乗組員の上下関係の硬直さ、そして外国人パイロットとの意思疎通がスムーズでなかったこと。つまり船員の英語力を指しているともとれる、言葉の問題を上げていますね。

 報告書にはーー
 にっぽん丸が米軍の係船杭に衝突するまでに、「三等航海士が船長に、ジョイスティックの位置が間違っていると3回警告した。それでも船長はこうした警告をその都度無視し、ジョイスティックを後進にしたままにしていた。この三等航海士がこのジョイスティックを物理的に制御しようと試み、これを前進に動かしたとき、船長はこれをはねつけ、ジョイスティックを後進に戻したのだった。この三等航海士は、この船長の航海経験のほんの僅かのものしか有していない、同船では最も若い甲板部士官だった。」
 まるでドラマの一場面を見せられているようで。でも、この船には「何も知らぬ乗客」が乗っていて、ノンビリ出港風景を眺めていた、なんてことを思うとき、ちょっと恐ろしくなりますね。
 
 これは日本人船員の問題なのか、にっぽん丸の乗組員組織の体質なのか。いやシーマン職制の問題点なのかもしれませんが、船長と操船の誤りを指摘する航海士の信頼の欠如というか意思疎通のなさによって、物理的な衝突事件があったと。このニュースを配信したT.Iさんは、「アルコールと権力格差」がこの事故の原因と訳していますね。

 この船長は、28年間のオフィサーとしての洋上経験を持ち、6年間の船長経験を商船三井客船で過ごし、アプラハーバーへの入港・操船実績は10回に及んでいるとされるベテランであったこと。そして船長を制した航海士は、わずか1年と4か月の乗船経験しかない若手であったこと。でもってこの酩酊船長との関係は「no good」であったと述べているようです。 

 この日の出航に当たってにっぽん丸は、もちろんパイロットを乗船させ、タグを使い、後部には二等航海士を配置し、パイロットボートからブリッジへの連絡や二等航海士とのやり取りもあったことも書かれており、つまり万全の体制を組んでいた。
 ただ、タグの船長やパイロットとは英語で、日本人オフィサー間は日本語で…。とコミュニケーションのギャップも指摘しています。

 まあこの事故のニュースを聞いた時、最初に思ったのは、「別に船長だけで動かしているわけじゃないだろう」、「パイロットは操船にどこまでかかわっていたのか?」「他の航海士は何をしていたのだろ?」なんて疑問だったわけですが、酩酊船長以外はしっかり対応していた、と。

 出港体制はちゃんと組んでいたのに、酩酊船長が…。というわけですね。
 飲酒量についても、船長の報告には虚偽があった風の書き方で、まあ、これでこの件は幕引きですかね?。 悪いのは船長!ですね。

 この報告書を、長々と引用したのは、こうした事故が起きれば、「すべてが船長の責任なんだよ」で幕が引かれるし、「船長にはそれだけの権限が与えられている」とする「日本船員の常識」で処理されるんだということを、航海士のみなさんはしっかりと肝に銘じておかないと、と感じたからです。
 
 でもね、この文を書いていて、「一等」「二等」という言葉が、もうコンピュータの辞書からは中々出てこないことでした。死語とは言わないけどね。
 ここでは、「上位士官の職域は犯してはならない」みたいな階級意識が底流に流れているようで…。
 とっさに船長と三等航海士がぶつかったとき、もし事故なく済んでいたら? この若者はその後どうなったのか、とも思いますね。
 それに、そろそろ一等とか三等なんて、到底犯すこともできない職域の名称なんてやめませんか? 鉄道だって一等車でなくてグリーン車ですからね。
 って、話はそっちかい?

 いや、港の出入港時には船長が操船しなりゃいけない? なんて、これだけ船のハードが改良されているのに、ヒエラルキーとその職権についての見直ししなくていいの? の話ですよね 
 こんなことが、日本では外航船の女性船長もなかなか誕生しない理由なんてことにも…。

 いや外国客船のマスターって、操船などせずに乗客対応、つまりパーティにでて、酒飲んだりしているのが仕事みたいに思えるけど、そっちはどうなんでしょうか?
 スタッフキャプテンとか? 
 そんなに人は増やせない? 
 いや、そんなの一等航海士を副船長として任命し、操船は若き副船長に任せる! そのくらい…、できないのかなあ? 日本のヒエラルキーじゃあ、ですかねえ?
 
 いいチャンスです。船員諸規定の改定ぐらい論議したらいかがですかね?