別に産経新聞さんばかりじゃないけど、このところ三菱さんの客船と併せて、IHIの愛知での海洋構造物の失敗、川崎重工のブラジルでの造船合弁での損失話をまとめて、3大話風に仕立て、「日本の重工業の劣化」を指摘して、悦に入っているメディアが多いですね。でもこれら3社の物語って、なんか共通性ってあるんですかね。

 というより、メディアの劣化。つまりステロタイプ化した問題の取り上げ方しかできないメディアさんの勉強不足を見せつけられているようで、唖然とします。
 もっと突っ込めよ。全部物語が違うじゃないか? しっかり掘り下げないと、3重工の問題の共通性だって浮き彫りにならんよ!なんて思いますね。

 でもですね。5日付の産経さんには面白い談話がありました。三菱の鯨井さんの話を引いて、「顧客と仕様を決めずに、あいまいなまま建造をスタートさせたのがまずかった」と語らせています。
 こういう談話って、今までありましたかね? 僕もそうなんではと感じていたんですがね、しっかり顧客、つまりAIDAさんと仕様を詰めないうちに、建造作業を始めて、一定程度仕事が進んでから、「違うぞ!」となった。
 昨日引用したAIDAの失敗についての三菱さんの言い訳と並べて、SRtPについての三菱技術陣の論文を読んで行くと、そんな風景が見えてきますね。

 でも、実際、契約に基づいてと、思い込んで設計の展開を進めてしまい、鋼材のカッティングや資材の発注、資材納期の設定ーーなんて具合に進んじゃったら、分刻みで設定していた工程はズタズタになります。
 でもって、設計の最初からのやり直し…。損失が底なしに膨らむ…。でもって、最後まで挽回することもできずに、ズルズルと。ほんとなんですかね。これって。

 客先とともに本船の先進的な要求仕様を確認・追求していく

 こんな反省文が出て来たのが、着工から1年3カ月後! つまり本来契約前に完了させ、いや百歩譲って、遅くとも着工までには完了させておかねばならない、「客先と要求仕様の確認」を、一年も工事を進めてからやっているんでしょうか? 信じられませんね。

 で、そうなった原因を想像するに、SRtPに答えを見つけるというのは、うがちすぎなんでしょうか。
 2010年に三菱技報で技術者さんたちが指摘していた、新しい時代の客船建造に係わる注意事項は、契約当事者や、建造現場にはフィードバックされていなかった? のかと。
 
 さらに気になるのは、この産経さんの記事でもねえ。相変わらず、紋切り型に「(日本は)中国、韓国の追い上げで、コスト競争力で負ける」なんて三菱の関係者???(って誰? 本当にいるのこんな人?) なんて方の談話を引いてきて、日本造船業の状況を書き切った文面にしています。
 でもねえ韓国だって中国だって造船はメタメタ、どんどん企業がつぶれています。まるで中韓が隆々とし、日本は、くたくたみたいなイメージで書きますがね。実際は東アジアの造船業は本当に危機的なんですよね。

 でもって日中韓の競争力にしたって、例えばバルクなんかだったら、今治造船なんかに適う韓国の造船所なんてないですからね。といってもバルクキャリアの造船所に果たして未来はあるのか?
 なんて、また脱線していますがね。あまりにもステロタイプな見方は、企業の未来戦略を誤らせる!

 はい。中韓との競争に遭遇した日本造船業は何を間違ったのか? ですがね。
てっとり早くやったのは、「コスト競争力の強化」の掛け声のもとに「無駄の削減」「不要な研究部門の閉鎖」「生産分野の絞り込み」みたいな。
 まったく余裕を失った「ひとつ覚えの経営戦略」だけで事足れりとしてきたような。

 我が国造船業界の戦略的な勘違いに要因はある、と思うんですがね。
 つまりバルクやコンテナみたいな量産品をいかに安く造るかばかりを追いかけたら、技術陣はいらんし、人員数も社員のサラリーも切り刻んで行くことが可能ですからね。
 これが経営だ! ぐらいに考えて来た経営者に問題があると思います。

 つまり余裕を失っている。でもって、余裕を無駄だと切り捨てる中で、一番大切なものを捨てていたことに気付かなかったような。
 欧州は、とっくにバルクの製造を捨て、コンテナを捨て、タンカーも諦め、まったく違う分野の客船で生き、客船を独占しています。造船業全体の売り上げ規模だって日本や韓国を凌駕している。

 三菱さんのドイツ船での失敗を、自らの問題として反省するべき。ってまた上から目線ですが。
 客船を切り捨てるのは容易いですよ。海洋を諦めるのも簡単かもしれない。でもねえ。

 「俺たちに明日はない」なんて言わずに、一旦立ち止まって、なんて思うんですがね