昨日は、ノートルダム炎上ニュースで、気になった記事に突っ込むひまがなかったんですが、はい。
クルーズ分野は、単なるファイナンスだけではなく、周辺への拡がりという可能性を秘めた事業と捉えている。この可能性を自らの得手を活かして新しい取り組みにつなげていきたい

 はい、この発言はアンカーシップパートナーズさんの新社長に就任される篠田哲郎さんが海事プレス紙のインタビューで語った言葉です。つまり郵船クルーズの共同経営者、しかも50パーセントを出資する、まさにパートナーさんの言ですからね、その方が、「クルーズは周辺への拡がりという可能性」を持った事業であると規定しておられるわけで、なんか大いに期待しちゃいますね。

 このところRCLのこととか、カーニバルの投資プランなんかを見ていると、クルーズ事業って、クルーズ客船を造って、客を集めて旅に連れ出すーーそんな事業じゃないよ!とズンズン進みだした観を持っています。
 篠田さんが何をおっしゃっろうとしているのか、具体的なことは想像するよりないんですが、郵船のクルーズ事業に対して、何も「客船建造のファイナンス」をするためだけに、参加するわけじゃないよ!と述べておられるように見えますね。

 確かにクルーズ事業で先行しているアメリカ勢をみていると、クルーズを客船観光会社と規定しているというよりも、未開の地球上を観光開発して行くデベロッパーのようにも見えます。
 かつてであれば「植民地主義」なんて言われたかもしれませんが、アメリカの裏庭。つまりカリブ海の島々そして中米諸国には、クルーズ船という名のアメリカ資本がやって来て、アメリカ人にとって快適なリゾートを展開し、そして翌週には次のアメリカ人が遊びに来るーー。

 確かに現地の人々の生活もそれなりに改善しているんでしょうが…。まあ一時期流行った「新植民地主義」みたいに表現できる世界が展開されていますね。
 でも現地の人々の生活や経済力が、本当に改善しているのかと問えば、メキシコ国境に押し寄せている中米の経済難民をみれば、その実情は分かる。

 まあコロンブスがカリブにやって来て、その後スペインが中米や南米に植民・収奪して行った歴史とアナロジーするつもりはないですがね。
 でも、「クルーズは決して巨大な産業なんかではない」とカーニバルのCEOさんがおっしゃるように、アングロサクソン君たちにとって、今のままのクルーズ産業のイメージでは、「世界に冠たる」なんて胸を張れるような事業じゃないんでしょう。

 世界最大のクルーズ企業であるカ―二バルグループの年間売上高って、180億ドルくらい、つまり2兆円程度ですからね。日本でいえば、パチンコ屋さんのトップ企業のレベル。サービス業としても決して巨大産業ではないんですよね。
 気が付いてみれば、ゲンティンやMSCら、本業で儲けるライバルたちにとって、クルーズなんて新規事業に過ぎないですからね。そんなグループの追い上げを、脅威に思う気も分かりますね。

 ということでアンカーさんの、「クルーズ客船の建造だけを考えているわけじゃないよ!」 という意欲は大いに評価したいですね。
 アンカーさんは70隻の商船にファイナンスしたり、ほぼ保有ないし、船を保有する船主さんたちにディープなファイナンスをしています。 
 で、どこからお金を持ってきているのかといえば、今や経営が揺さぶられている地方銀行も重要な顧客さんですね。かれらは投資先がなくて四苦八苦していますが、船のプロでもない。
 彼ら地銀の本業というか、基本的なスタンスは地元経済の活性化であり、地元振興ですわね。
 そうした地方銀行へのテコ入れも果たせるのが、クルーズーー。

 何も、売上高百数十億円に過ぎない郵船クルーズの株を50%持ったくらいで、そこまでできるんかよ? とも思いますがね。
 どこかで、そう、例えば沖縄や奄美辺りを想定して、まずは500人乗りくらいの客船で定期クルーズ? いや利尻・礼文でもいいか? そんな地方の観光開発とセットでね。いや東シナ海や南太平洋だってーー。

 なんてね。日本の新植民地主義を奨励しているみたいな文章になっていますが、RClさんあたりに奄美の開発を委ねるんじゃなくて、どうせなら、郵船ーアンカー連合に先行して欲しいですね。
 大体、日本列島には「手付かずの自然」(って随分、手垢のついた表現だけどね)がたっぷり残っています。

 海の自然が残る亜熱帯の島々の観光開発とクルーズーーいいですね。このテーマ。
 そう、日本企業がやるんなら僕は賛成です。というよりRCLがやる前に郵船さんにやって欲しいですね。 
 パリより前に瀬戸内へ? 来年の私の旅行先はこれですね。でも家庭内で紛争が起きそうだけど…。どうしようか?