第8話  私を許してください

の、続きです。

私の「旅の本当の理由」を聞くための問いに用意されていた、彼女の言い分はこうでした。


「すみませんでした。まずは、謝りたいと思います。

実は私は主人と別れるつもりなど最初からありませんでした。
今から思えば、むしろ「主人との関係をやり直したい」為にここへ来たんだと思います。

こんなお恥ずかしい話をするなんて思ってもいなかったんですが、ここまで来たら話すしかありません。

私の主人は、どうやら他の女性と関係をもっているようだったんです。

いわゆる、浮気と言うことですよね。

私はそれが許せないのと同時に相手がどんな女性か知りたかった。

バカな事に、探偵を雇い調べてもらったんです。。その結果、相手がフィリピンパブの若い女性だと言うことがわかりまして。。私は客を装い、そのパブへ友人の男性と出掛け、色々話を聞き出したんです。

レイテ島なんて、それまで聞いたことのない場所だったのですが、彼女がその島の出身だと知り、、よく調べもせず、最近、素っ気ない主人に当てつけの意味で「レイテ島へ旅するから!」と言い捨て、ここへ相談に来たんです。


助産婦さんの話は、でっち上げです。
テレビ番組でアマゾンかどこかにそう言う日本人女性がいらっしゃるのを見て、話が嘘っぽくならないように付け加えちゃいまして。。

それに、、、相談後、1週間たった頃に、この依頼はキャンセルしようと思ってたんです。

それなのに、井上さんが本当に真剣にこの件に取り組んでくださって、しっかり調査されているのを知り、途中でこんな話をいい出せなくなってしまって。。。


しかも最近、わかったんですが
主人、その女性とはそれほど深い中だった訳でなく、彼女がレイテ島の出身だと言うことさえ知らなかったんです!だから、私が「レイテ島に旅行したい」と言った時も、別段驚いた様子もなく「それ、どこにあるの?」って逆に聞いて来たんです。。
あぁ、、本当に良かった。。

あ、でもごめんなさい。
井上さんにはとても迷惑を掛けてしまって。。相談料はもちろん払います!


ほんとに今回はすみませんでした。

こんな私を、、許してください。ね!


(`・∀・´)

と言う訳で、この回では相談のみ。
実際に行かれることがない旅相談でした。

あしからず。。







第7話  ジャングル探検どころじゃない2

の、続き

そんなレイテ島の一件で得た情報データは『自分がするかもしれない旅の予想スケジュール』ファイルに残してあった。

やはり私は生粋の旅好きでありながら手配のプロなので、行く?!となったらすぐに工程を作りたくなるのです。
それにしても行かなかったのに残しててよかった!


だから、彼女の予算や希望日程に沿って資料作りをするのに意外と時間がかからないはずだった、、が、やはりそこは普通の旅先ではなかった。

まず、彼女が言う洞窟が私が調べていた防空壕と同じものなのかが問題だった。
助産婦さんについては、ネットで調べてみたものの行き着かず、皆目検討も付かなかった。

次に、たとえばその防空壕にいくにしろ車両やガイドにどれだけ予算がかかるのかを調べるのに(以前調べたのは10年前。事情は変わってるはずなので)現地の旅行会社に問い合わせると、まず
「なぜ、その女性はそこに行きたいのか。どういう目的なのか」を執拗に聞かれ、それに納得させる理由を探すのが困難だった。

確かに。
僻地へ行く場合、もちろん車をチャーターし、その地に詳しいガイドを付ける事になるのだけれど、僻地であればあるほど、ただのガイドではなく報道系や研究者に対応する特殊ガイドが必要とされる。もちろん値段だって安くはない。
確たる理由がなければ、ガイドだってわざわざ大変で危険な場所へふらり観光や遊びに着いて行くわけにはいかない。

時々彼女に連絡を取りながらも、遅々として進まない状況に、私までもが「ここまでして、この人が現地に行く本当の理由をまだ聴けていない」事に焦りを感じ始めて来た。


妊娠の可能性、虫歯の可能性で彼女の度胸も試しながら、ある時私は強めに問い詰めてみた。

「この旅は、貴女にとって一大事を起こす可能性があるんですょ。人生やり直すのも簡単な事じゃないとは思いますが、それより何より、まずこれだけの危険を冒してまで「そこ」へ旅しなきゃいけない理由。まだちゃんと聴かせてもらってないですよね?ここまで来たら、それを聴かなきゃ進まない気がするんです」


電話の向こうで「はっ」と言う息を吸う音がして暫く沈黙があり、それから丁寧に彼女は話し始めました。


の、続き。長くなるから次回から最後の「話」だけをリンクさせよう。笑


事務所に戻ってからと言うもの、その後の仕事は全く手につかず、その頃アルバイトに来てくれていたSさんにさっき聞いた話をしてみた。

彼女の見解はこうだった。

「まさか!そんなの行くはずないじゃないですか。なんなんですかね、その人。
もう、井上さんまでそんな興奮して話しないでくださいよ。行く気になってるみたいじゃないですか!
まぁでも結局、行かないですよ。井上さんは。ははは。」


ಠ_ಠ   むっ

(以下、心の声。↓)
なんで私が行くはずないってことになるんかな。

なんで最終的に行かないってこと決めるのかな!

ಠ_ಠ  ムムッ


しかし。
結果的に彼女の見解は正しかった。
しかも「ははは」の部分もあながち間違いではなかった。。。



その後、私はレイテ島について、かなり様々な調査をした。
戦争の歴史はもちろん、飛行機のスケジュールや費用、聞いた範囲で、レイテ島に着いてから目的地までのアクセス方法や所要時間などなど。時間を作り、好奇心に任せて。

それによって、日に日に行く気が湧いてきたかと思えば、現地情報がリアルに分かれば分かるほど萎えてきたり、、なんとも「気持ち」が忙しかった。


そこへ届いた彼からのメール。
それは、、
なんともあっさり全てに決着をつけてしまうことになるものでした。


『先日は突然、一見おかしな話を持ちかけて失礼した。今回はあの時、いい忘れていた事を伝える為にメールしました。

井上さんは今、妊娠はしていませんか?
失礼かもしれませんが大事なことです。

あと、むし歯の治療をしていたりしませんか?

実は以前、我らと同行したもので本人が気づいていなかったようですが三ヶ月の妊婦がいまして、それが現地で怪我をし、感染症にかかり、また、あまりの生活のハードさに耐えきれず強制帰国させたが流産したことがあった。

また別の時、虫歯を持つ者が居て、現地で痛みが出て、そこから菌が入り悪化。歯を全て失うことになった上、他の持病も悪化して、そのまま亡くなってしまったものがおりました。

なのでまぁ、なるべくこの二つは気をつけてもらいたいと思います。』


 
( ̄(工) ̄)

『なのでまぁ、なるべくこの二つは気をつけてもらいたいと思います。』


(´・∀・`)

『なのでまぁ、なるべくこの二つは気をつけてもらいたいと思います。』

私は今、悲しいことに全く妊娠の傾向も素因も無いのだけれど

むし歯(・Д・)
の治療を始めたばかりであった。

はい。むし歯です。
私は「むし歯菌」を持っとります。

「むし歯」は悪化したら、現地では
大変なことになるやも?!

と、そのように書かれているわけです。
ここには、このメールには

「むし歯菌保持者には
コノタビキケン」と。

それは、、行くべきでは無いと言われたも同然。。


そう。
結果、私はこの強行旅には行けず、またそれにより、何かがポキンと折れた。(ちなみに折れたのは歯ではないです。笑)

それを悟ったのか、なぜか彼からもそれ以降、連絡が途絶えてしまった。

とまあ、私のレイテ島知識が備わった経緯はこれでおわかりになっていただけたと思います。

ここからは、例の「レイテ島へ行きたい」と相談してきた女性の話に戻りますね。

続く

↑このページのトップヘ