2007年08月

2007年08月27日

キャレン・パーシング著 「スーツは嫌い」 ハーレクイン A-126

スーツ

文学の中のハープ C. パーシング著 「スーツは嫌い」

あのハーレクイン文庫です! はじめて読みました! 感動しました! 

ロサンゼルス郊外に住むハーピストのキャリーは失敗した結婚の経験から、スーツを着た男とは絶対デートしないと決めていました。そんな彼女が税金申告の相談に行ったとき三ッ揃いを着た会計士と・・・・。この文庫を読んだのは初めてですが、あとは読まなくてもストーリーはわかります。メデタシメデタシ。テーマは恋の駆け引きと行方、それもかなり安易なものだからハープの話はあまり出てきません。

彼女の仕事ですが、レストランやオーケストラなど、口がかかれば何でも引き受ける、という日本にもたくさんいる典型的なフリーランサー。レストランでは7時から11時まで1時間に10分の休憩をはさんでハープを弾いています。つまり50分4回のステージで、これはかなりきつい仕事です。ほかにもオーケストラやコーラスの伴奏、レコーディングでもハープを弾く話は出てくるけど、どんなものを弾いてどうだったのかの記述はいっさいありません。またハープの運送を運送屋に頼むと非常に高いのにそれを負担してくれる雇い主はないそうで、アメリカでは車に載せて自分で運ぶのが普通だそうです(これは本当です)。それにしても彼女、オフの日は一日中デートしていて、いったいいつ練習するんだろう。

しょうもない本と思われるかもしれませんが、この本の中で感動した言葉がありました。主人公は子供のころ、ハープの音を初めて聞いてとりこになり、両親にせがみます。やがて楽器を買ってもらうことになるのですが、支払いのために銀行に信託口座の解約に行くと、銀行は
「ハープなどという非実用的なもの」
のために口座を解約するのに強く反対し、購入が数ヶ月遅れてしまいました。

当社ホームページ内の「ハープの歴史」の中でも、弓からハープを作った人類最初のハーピストが洞窟で皆に聞かせたときに聴衆から、「そんな何の役にもたたないものを作って」、と言われています。この“非実用的”“何の役にも立たない”という言葉は私にとって重要なキーワードとなっています。これについてはいつかまた書きます。


2007年08月20日

ハープのクリーニング

ハープのトラブル 木部のクリーニング

ハープは長年使っていると塗装に艶がなくなり、手垢やペダル付近では靴墨がついたり、細かなところにはほこりがたまって黒ずんできます。これを徹底的にきれいにしようというときに2日がかりで行うものです。

用意するもの
・ネル布 数枚(私は呉服屋さんで1mくらいを購入し、切って使っています。)
・コンパウンド(ホームセンターで購入できます。荒目、中目、細目、極細とありますが、一般的には細目ひとつで結構です)
・シリコン(ピアノ屋さんで売っているピアノ用ポリッシュで結構です)

まずネル布にコンパウンドをつけ、それで木部全体をこすります。よごれた部分はよごれが落ちるまでこすります。布に汚れがついてすぐに黒くなりますので、裏返したりしながらきれいな部分を使います。彫刻の中や隙間などは割り箸のような細い木に布を巻いて落とします。汚れが落ちたら細かな部分にコンパウンドが残っても、気にしないでそのままほっておきます。

そのまま一日おきますと、コンパウンドの残りが乾いて白く浮き出てきます。翌日にそのコンパウンドの拭き残りを新しい布でふき取ります。乾くと拭き残りは粉状になりますので簡単に取れます。彫刻の隙間などは歯ブラシで落とします。これで見違えるようにきれいになります。

次に新しい布にシリコンをたっぷりとつけ、シリコンの膜を張る感じに軽く拭いていきます。楽器が濡れてしまうように見えても心配いりません。木部全体にシリコンがつきましたら、そのまま数分待ち、別の新しい布でこすりながらそのシリコンをふき取ります。力を入れてこするほど艶がでます。これで木部はピカピカになります。

注意:●コンパウンドをかけると塗装をほんの少し削っていきますので、せいぜい数年に一度にしてください。特に響板の装飾はあまりこすると落ちてしまいます。爪で引っ掻いたあととか、傷ついて塗装が剥がれている箇所はコンパウンドで磨いてもきれいにはなりません。またそういった箇所にシリコンをつけると、その後再塗装をするときに塗料がのらなくなります。
●ハープは普通ウレタン塗装がしてあります。家具用ワックスの中にはウレタン塗装に向いてなく、かえって塗装を痛めるものがありますので、使わないほうが賢明です。
●金属や金箔部分にはコンパウンドもシリコンも使えません。

ハープの一般的な問題点を思いつくままに書いているもので、系統だっていません。
ご質問がありましたらコメント欄に書いていただければ、そのコメント欄で回答いたします。


2007年08月08日

ハープと弦

一昨日お見えになったお客様はハープに関するたくさんの資料をお持ちになり、ハープの話をあれこれなさいました。私のほうが勉強になることが多かったのですが、そのお客様が「ホルンガッハのハープは弦が切れやすいそうですね。インターネットに書き込みがあったのを見ました」と言ってプリントしたものを見せてくれました。そこにはホルンガッハについて「音質は キラキラと輝くような音色ですが、 弦が切れ易いのが欠点でしょう。」と書いてありました。私はホルンガッハの肩を持つわけではありませんが、この記述は不正確だと思われます。

弦が切れやすい原因としては設計上張力が強いか、ディスクやチューニングピン、または響板の穴などの楽器に問題があることが考えられますが、私の経験上ホルンガッハが特にそういった問題が多いわけではありません。推測するにホルンガッハは出荷時にピラストロ弦を使っているからだと思われます。ピラストロ弦はガット弦に他のメーカーほど混ぜ物が少ない、羊の腸をにかわでよじっただけの純生ガット弦で、他の弦のように化学物質を混ぜて丈夫にしてありません。それだけに切れやいし、素材を吟味して値段が高くなっているのです。この姿勢はハープ弦に限らずドイツメーカーの長所でもありますが、同時に欠点にもなります。ピラストロ社の出発点は手術用の糸としてガット弦を作っていた会社だと聞いています。

ここで言いたいことは他人の記述に異議を唱えることではなく、ハープを弾く人の弦に対する考え方です。だいたいハープの人は弦に対してわりと無頓着に、そのメーカーが最初に張っている弦(メーカーが推奨する弦)を疑いもせずに使い続ける傾向にあります。ハープ以外のあらゆる弦楽器奏者は、どこの弦を張るかいろいろ試しながら使い続けて理想の音を追求しています。ヴァイオリンではA線とE線に違うブランドの弦を張っても誰も変とは思いません。個々の楽器によって、また演奏者の力量によって使用する弦が変わってくるのは当然です。私も同じモデルの2台の楽器に別々のブランドの弦を張っています。ですから相談されても販売する側からアドバイスはできてもこちらの方がいいですよ、とは決して申しません。極端に言えばGにA線を張ってもいい場合があるかもしれません。自分の楽器に不満があったら弦についても考えてみてください。

2007年08月02日

腕木のトラブル

腕木
ハープのトラブル 腕木の経年変化

腕木のトラブルはあまり目にとまらずに進行しています。腕木は楓のような固い木で作られていますが、木をこのようなS字形に切りますと、何年たっても矢印の方向に前後に縮もうとする力が働いています。ところがグランドハープの場合はアクションプレートで固定されていますので、そこにひずみが出てきます。実際にオーバーホールでアクションをとりはずしますと、一気に3mm以上も縮みます。

これが原因で起こるトラブルは、まず最高音部のアクションプレートが腕木から少し浮いて隙間が出てきます。さらに進行すると腕木とアクションをとめているシャフトの部分(ほとんどが上から2つめのシャフト)から左上のチューニングピンに向かって腕木にひびが入ってきます。ここまできたらオーバーホールをお勧めします。気付かずにいると最悪の場合、腕木は前触れもなく折れてしまいます。腕木が折れずにアクションを曲げてしまう例もありました。どちらの場合も大修理が必要となってしまいます。

以上は目で見て判断できますが、音程にも変化が現れます。♭で正しくチューニングしてペダルを♯に入れますと、♯の音程が低くなります。通常は響板が弦で上に引っ張られて弦長が短くなり、♯が高くなるものですが、腕木がひずむと逆に低くなります。特に高音部で♯系が低いと感じたらこの症状を疑ってください。

腕木のオーバーホールはアクションを取り去り、腕木が縮んだ状態のままアクションをつけ直します。これで腕木のストレスが解消でき、安心してまた何年も使えます。腕木は弦の800Kg にも及ぶ張力を受け止めているのに、音色には関係なく、彫刻もしてもらえず、あまり注目されないかわいそうな存在です。時々いたわってあげましょう。

ハープの一般的な問題点を思いつくままに書いているもので、系統だっていません。一般的な知識としてお読みください。ご質問がありましたらコメント欄に書いていただければ、そのコメント欄で回答いたします。

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高田 明洋 (たかだ...

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