2008年08月26日
煮こみやなりた



「ねぇねぇ。GW明けの水曜日、空いてる?」
晩春のある夜、いきなりの友人からの電話。
「空いてますが、どこに行くの〜?」
「『煮込みやなりた』の予約が取れたの。19:30から私の名前で3名で予約したから
それじゃ、よろしくね」
「は〜い、了解〜」
相変わらず、用件のみの電話である。
「そうそう、基本的には、ボトル半分以上飲めるのが条件のお店だから、そこんとこもよろしく
じゃあね〜」
…ボトル半分以上飲める事が条件のお店?…
煮込みやという名前だが、モツ煮込みのお店ではないのだろうか?
それとも、意外にビーフシチューが名物の居酒屋さんなのかしら?
そんな風に勝手な想像を膨らませながら、予定を入れる。
恥ずかしい事に、まだ私はこのお店が名前とメニューがまるで一致しない
お店である事は、まだ知らなかったのである。
さて、のんびりと過ごしたG.Wも瞬く間に終わり、
巷の日常が繰り返される頃に
いよいよその日が近づいてきた。
〜そう言えば、お店に直接集合だったから、場所をチェックせねば…〜
思い出した様に、こちらで店名を入れて検索してみると…
おお、しっかりと登録はされていた。
が、しかし!
驚いた事に、livedoorグルメに口コミがないのである。
登録情報を見てみると、ワイン居酒屋とあるが、他の情報は得られない。
これは…
ますます興味津々の私、早速ググって調べてみる事に。
出てきた出てきた、“煮込みやなりた”♪
何と、この様な単純な名前であるにも関わらず、
このお店が、ワインを楽しむためにそれに合ったお料理を出すビストロである事が判明!
“なりたりあん”なるコアなファンまでいて、なかなか予約の取れない人気のビストロ…
(正確には、ワイン居酒屋と言うべきであろうか…)
さらに検索すると、ほとんどがブログ。
素晴らしいポーションの画像やお勧めのメニューも書かれている。
記事も、そのコストパフォーマンスの良さを絶賛しているものばかりである。
とにかく、アポイントと予約を入れるだけでも本当に大変な様だ。
う〜む、恐るべし「煮込みやなりた」
「これは何をおいても伺わなくてはっ!」
画像で拝見した、素晴らしい盛りの
「砂肝のコンフィと生ハムの乗ったサラダ」
に釘付けになりながら、すっかりこの未訪のお店に心捉われてしまうのである。
さて、いよいよ当日となった。
連休後の怠惰な、それでいて慌しい激務の合間を縫って、
これから「恋人」にでも“逢い”に行く様なそわそわした気持ちで
代々木駅へ…
改札を出て、新宿タカシマヤ方面に進み、踏切を渡って一歩路地を入ると、
表通りとは空気の異なる様な、
ちょっと怪しく、それでいて昔懐かしい飲み屋街の様な一角がある。
独特の雰囲気があり、駅に向かう近道なのか、ビジネスマン風の人の往来がかなりある。
そのすく傍らに、摩天楼の様な某携帯会社のビルが聳えていて、そのアンバランスな風景が印象的だ。
初夏の日中の汗ばむ様な陽気と変わり、宵の口の夜風がひんやりと心地よい。
群青から濃紺、そうして漆黒へ…この時期の夜の空の色はあっという間に変貌している。
路地を曲がるとすぐに判る
の言葉通り、白字に赤のサッポロビールのマークの看板があり、
黒字で“煮込みや なりた”の文字が…
ビニールのテントで仕切られた所には、最大で8名で一杯といったテーブル席があり
後は、L字のカウンターが10席、厨房をぐるりと囲む様に配されている。
奥には2人掛けのテーブルが一席、それに並んで座るカップルシートが1席の
細長くも狭い店内である。
でも、お客様で一杯のご様子。
予約した友人の名前を伝えながら席に通される。
カウンターの一番右隅である。
目の前には、なぜか焼かれた鴨の胸肉が、山盛りになっている。
厨房には、白いコックコートを着たシェフがいて
ホールは独特の風貌の、それでいてとても渋い声の男性…
この2人で切り盛りされている。
単に居酒屋を改装しただけなのかしら?
程度に思っていたのだが、ちゃんと洋風に改装されていて、良い雰囲気である。
「こんばんは、お早いお付きですねェ〜」
等々、当たり障りのない挨拶を交わしつつ、他の同席者を待ちながら
小さな黒板に書かれたメニューを拝見。
「キャベツのクミン風味」の300円に始まり、
「トリッパのトマト煮込み」800円、「砂肝のコンフィと生ハムのサラダ」1000円…と、
前菜系の殆んどのメニューが1000円前後
メインのお料理も、
「鴨のコンフィの詰め物」1500円、「鮭のパートカタフィ包み」が1500円
名物の「仔羊のメンチカツラタトゥイユ添え」1500円、
一番高い「牛ステーキのフライドポテト添え」が1800円…
どれも2000円を超えない魅力的な内容。
周辺の方々のお皿のボリュームも素晴らしいポーション
〜これは…〜
すっかり期待に心が震える。
取り敢えず、キャベツのクミン風味をつまみながら、もう一人が到着するのを待つ。
カウンターから窺い知れる厨房では、色々なお料理が相当なボリュームで盛られていく。
こうして、カウンター内から厨房が見れるのも、とても楽しくて嬉しい。
キャベツのクミン風味は、浅漬けキャベツにクミンを加えてマリネしたものであるが、
キャベツの食感が良く残り過ぎていて、これは好き好きといった感じである。
そんな風にして待っていると、本日の首謀者…誘ってくれた友人が到着…
挨拶もそこそこに、まずは泡(スパークリングワイン)で乾杯。
乾いた夜風の中で、程程に冷えた泡は格別なものがある。
早速、3人でメニューを見ながらあれこれと今日の献立を考える。
結構ボリュームがある事を想定して、前菜1、お魚1、お肉1…足りなければ追加…と
まずはこれだけ決めて、そこから選定に。
それぞれの意見は様々だったが、
やはりここは「砂肝のコンフィと生ハムのサラダ」は欠かせない。
これに、お魚は
「鮭のパートカダィフ包みゴルゴンゾーラソース」
お肉は、先ほど目の前に積み上げられていた鴨が気になったので、厨房のシェフにご質問。
〜この鴨はどうなるんですか?〜
〜そのままではつまらないですからねぇ、詰め物して網で包んで蒸し煮か焼くか〜
「鴨のコンフィの詰め物」
想像するだけでも美味しそうなので、こちらをお願いする事に。
もっと色々頼みたかったのだが、そのあたりは胃袋とご相談という事にして
後はゆっくりお料理が来るのを待ちながら、飲んで待つ事に。
紙ナプキンに、ナイフとフォーク、それに取り皿と一緒にパンが運ばれてくる。
このパンは追加は課金(300円)されるので、急がず焦らず頂かなければならない
お料理は自分達で取り分けというスタイルで、隣の席との間隔はそれほどないのだが、
逆にそんな感じなので、こちらも気取らずに楽しく頂けるのが嬉しい。
それにしても、狭い店内…人気店らしく、ほぼ満席で、本当に良い意味で賑わっている。
お行儀悪いのだが、周囲の盛り上がりについ視線が言ってしまう。
外を通り掛かる人が気になって覗いているのだが、丁重にお断りしている。
やはり予約は必須、それでも2巡目辺りで空いた席を狙うのも手かも知れない。
勢いよく、最初の泡のボトルが半分以下になった頃、
「砂肝のコンフィと生ハムのサラダ」
が、運ばれてくる。
画像通り、と云うよりもそれ以上の素晴らしいボリューム!!!
温かな砂肝に、トマト、レタス、クレソン、ルッコラ等の葉野菜を中心とした山盛りのサラダ。
3人で取り分けてもたっぷりの量。充分過ぎるボリューム。
砂肝は柔らかく、サラダも程良いドレッシング具合が良い感じで、
オリーヴオイルにウォルナッツオイルの風味が加わってとても美味しい。
トマトもしっかりと甘くて、これだけでも幸せな気持ちに…
そうして、次のお料理まで泡を飲んで楽しむ。
こうなるとエンジン全開になり、次の白を注文。
こちらのワインは、価格をきちんと説明してくれるのが嬉しい。
おなじみのものから、珍しいものまで、3000円代から用意されているので
心配なく次のボトルをお願いする事が出来る。
〜さすが、飲み屋…である〜
既に、次の「鮭のパートカダイフ包みゴルゴンゾーラソース」の前にボトルが空になったので
ついついまた白をオーダーしてしまう…
さて、鮭だが、本当にパリパリとしたカダイフ生地と、ボリュームのある肉厚の鮭に
ゴルゴンゾーラソースがぴったりと合っていて美味しかった。
実は、いわゆるゴルゴンゾーラは苦手なの方なのだが、
こちらのソースはとても優しく穏やかな味でとても嬉しかった。
さて、これだけ食べておきながらも
〜まだ、食べられそう〜
と、いう事になり、さらに
「仔羊のロースト」
まで頼んでしまう私達…
そうして、勿論お肉となれば、赤ワインをまたまたボトルで注文…
メインも、飾りというものは皆無で、がーんと大きいポーションで登場。
…鴨も羊も素敵なボリュームで大変美味だった事は申し上げる必要もないでしょう…
この日、結局は1人ボトル1本
“お1人様、ボトル半分以上は召し上がって頂く”
この条件はしっかりと満たし、
さらにお料理もしっかり頂いて、一人当たり約6000円程度でございました…
胃袋は満足、お財布に優しいお店でございました。
メニューはその時々で色々と替えているのですが、魚は少なく、お肉が主体といった感じで
お肉好きの方にはとても喜ばれる内容。
カウンターがメインとは言え、20席を厨房1名、ホール1名でやっているので
申し分ないサービス…とは言えない。
また、どうしても狭い、騒がしいのが苦手という方にもお勧めできない。
でも、その辺りは、お店の持つ雰囲気や人柄で十分に補えてしまう事もあるのだと思う。
さて、すっかり気に入った一行は、さっさと次の予約に走る。
このお店、来店時に次の予約を入れてしまわなければならない気持ちに駆り立てるものがある。
それは、美味しいものを美味しく食べるだけでなく、
そのお店の持つ何かの魔法の様なものが加味されているに違いないのである。
驚く事に、次の予約は1ヶ月先でしか取れないとの事…
〜恐るべし、煮込みやなりた〜
勿論、それでもしっかり予約をした事は云うまでもない。
〜ご馳走様でした〜
〜ああ、幸せ♪〜
すっかり満足し、お店の方に見送られて外に出ると
ひんやりと初夏の夜風が心地よく、ほろ酔いの身体を通り抜けていく。
ここが都心えある事をうっかり忘れそうな薄暗い路地を抜けると
新宿の高層ビルや華やかなネオンが空を照らしていた。
ふっと、現実に帰る様な気持ちになる。
振り返った路地は、やはりどこか懐かしさを秘めてゆっくりとそこに佇んでいた。
…しかし、その後、この行っては予約の連鎖は続き、
月毎にメンバーを入れ替えては、ここで弾ける事になろうとは、
まだこの時は予想だにしなかったのである…
そんな魔法に掛ってしまった者を、巷では“なりたりあん”と呼ぶ…
らしい。
このコメントを読む
店名:煮こみやなりた
最寄駅:代々木 / 南新宿 / 千駄ケ谷
料理:欧風料理 / ワインバー
評価:★★★★
一人当たりの支払額(税込み):ディナー5,000円〜10,000円
用途:友人・同僚と
