こんにちは！佐渡の本間です。
５月６日晴。朝、写真を撮るだけということで下久知（しも・くじ）にある八幡宮へ車に乗せてもらって訪れた。前日は、両尾の宇賀神社から夷の諏方神社まで歩いたが、久知八幡宮はそれと関係ありそうで この機会に取り上げたかった。以前、９月１５日恒例の例祭を見に行き記事にした（０６年９月１５日号「佐渡の祭２：久知八幡宮例祭」）。その神事芸能をさらに一層深めたいと思い、今年見たい祭りの一つとなっていた。今回、「神社」がテーマ。
１．久地八幡宮の風景
２．久知八幡宮の概要
�…炭唾蓮�両津市大字下久知７８０番地
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主祭神：誉田別尊（応神天皇）、比�彗膺澄聞／澄法�息長帯比売命（神宮皇后）
相殿神：白山大神（伊弉諾尊、伊弉冉尊、菊理比売尊）、熊野大神（須佐之男尊）
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応和元年（９６１）山城国（京都府）男山の石清水八幡宮より分霊、久知郷国見峠に遷座。往古より久知郷の総鎮守として崇敬をあつめてきたといわれ のち宝徳２年（１４５０）下久知荒城の地に奉遷されたものと伝えられる。（筆者：宝暦「佐渡国寺社境内案内帳」に応和元年と御神体に書付之有、宝徳２年当地へ遷座とある）
久地地頭歴代の崇敬は極めて篤く、多くの寄進田をもって社領としていた。
近世、天領の時代は２９石の除米が交付され、佐渡奉行の巡国の際には幣饌を捧げることを恒例としたという。明治７年には、郷社に列せられている。
現社殿は、昭和２６年に竣工、昭和３６年には鎮座１０００年祭がとり行なわれた。
例祭は９月１５日であるが、これは応永１２年（１４０５）の久地給分帳にみえる「８月１５日八幡御事」にあたる。祭礼の諸行事は地頭時代の久地郷の祭りの姿を伝えるものとして知られている。当日の神前神事、氏子奉納芸能は無形民俗文化財として指定されている。
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久知八幡宮祭礼神事は本殿では神前行事、境内では御輿渡御・流鏑馬（やぶさめ）等の神事が行われる。城腰地区からは花笠踊（県指定無形民俗文化財）、野崎地区から刀刀（とうとう）、下久知地区から鬼太鼓が奉納される。このように郷内各地から奉納していた祭りは、中世の祭礼神事の名残を留めていて、歴史的に見ても貴重なものである。「花笠踊」は天文年間(１５００年代）より伝承される民族芸能で、久知6代の地頭「本間下総介時泰」の命により京畿で舞修行を積んだ「城ノ腰」の住人「武左エ門」が完成させたといわれている。
毎年９月１５日に行われる「久知八幡宮」の祭礼には、花笠をかむり早乙女姿の衣装をまとった地元の子どもたちが、太鼓、笛の音に気合いのかけ声をまじえ調子をとりながら城ノ腰から八幡宮まで行進した後、境内にて「花笠踊」を奉納する。
踊りは社殿にしつらえた埒(らち)の内で演じられる奏楽や地謡にあわせて、その周囲をまわる輪踊りで、農事を祝う意味を持つ。この稚児踊りの他に「小獅子舞」、「鬼太鼓」、「法問答」など演目がつくのも珍しく、佐渡の民族芸能の一典型を示している。
（以上、資料：境内「案内板」）
�ナ姪�（神社の管理者・管理寺院で基本的に世襲）
下久知の真言宗・石清水山 正覚寺。享徳元年（１４３２）創建で、経塚山長福寺と号していたが 正徳３年（１７１３）に下久知八幡宮の別当となり改号。例祭には主座を勤めていた。一年を通じ八幡宮の清水が境内庫裏脇の瓢箪池に注がれている。
�Φ彙糧�幡宮と地頭・久知本間氏
１）雑太本間氏の一族であった本間直泰は、久知郷と宮浦郷とを譲られて分家。それが久知本間氏の始まりで、久知郷への入部は『久知軍記』によれば康暦２年（１３８０）。なお、後に宮浦城で隠居生活をした。
２）久知本間は、初代・直泰から高泰、秀泰、時泰、正泰、泰時、季泰と続いた。
天正１７年（１５８９）の上杉景勝の佐渡攻略時上杉側につき同盟を結ぶ。時の当主は本間泰時（？〜１６３２）。上杉氏の攻略後は越後へ移され、その後景勝の会津への移封に伴い会津へ赴く。慶長５年（１６００）佐渡へ戻る。泰時の子が季泰。
（参考：上杉景勝の佐渡攻略に味方した久知城主本間泰時・沢根城主本間左馬助・潟上城主本間秀高・雑太城主本間憲泰は、景勝の攻略後所領を没収されたが、代わりに越後で領地を得た。そして、景勝に従い会津へ移る。のち潟上と沢根の本間は、景勝に従い更に会津から米沢に移った。なお、上杉の佐渡攻略に際し事前に景勝と連絡を取っていて自ら佐渡勢と交戦したのは、潟上と沢根の本間であった）
３）久知本間が上杉側についたのは、久知本間が、本家の雑太本間や河原田本間、隣の潟上本間 いわば「国仲連合」と長く戦った（時泰の時の天文６年（１５３７〜））ことによるものだろう。
a．国仲の本間本・分家だけでなく、加茂歌代を拠点とする渋谷氏（本間氏と共に鎌倉から来た）の分家 吉住渋谷や梅津渋谷とも戦っている。
b．久知本間は、東海岸・前浜地区に勢力を伸ばした。『佐渡国略記』にある領分は、２０ヶ村。
下久知（地頭屋あり）・同川内・城腰（久知本間の居住地）・川崎・大川・椎泊・両尾・羽二生・水津・片野尾・強清水・多田・川内・丸山・松ヶ崎・赤玉・立嶋・蚫・立間・瓜生屋（地頭屋あり）
c．佐渡に唯一の軍記物である『久知軍記』には、久知本間氏が各地の豪族と戦いながら服従させ勢力を伸ばしていった事が描かれている。
（資料：佐渡の城址 http://homepage3.nifty.com/yogokun/）
d．『久知軍記』の「五代直泰公の御事」から、久知本間の家系は好戦的であったことが窺える。
「秀泰公の一男御先祖の御名を取 直泰公と申奉る 則御家督御相続被遊候 此殿は太刀打物剣しゆつ達者にわたらせ給ふ 京都将軍の御前にて 久知は剣しゆつの達者と聞 定而鑓（やり）も達者ならん 見物せんと被仰ける かしこまりて鑓をつかひ給ふに手向ふものなし 将軍かんし給ひ 佐渡雑太 河原田 加茂 吉井は皆鑓千本の格也 汝は五百本也 此度千本の格にいたすへしとて 則鑓五百本被下 都合千本に成御帰国被成 御悦ひかきりなし」
４）『久知軍記』に「久知八幡宮の御事」の記事がある。
「八幡宮の神主小野民部をめし被仰けるは将軍の御前にての力わさ ますます神力ならては叶かたし 此度社頭御こんりう可致也と被仰けれは 民部かしこまり抑八幡宮と申は応和元年の開基也 其昔は久知山国見峠といふ所に宮居し給ふ 其比米山より尾伝ひを夜な夜な黒雲まひさかり 久知村の人民をなやます 様々きとう札守なといたせとも更に化生しりそかす 仍而相談いたし 国見峠の御神を此所へうつし参らせけれは 化生二度きたらす 人民有難思ひ 国見峠の御敷地を田地にいたし それより久知川内の田地開発いたし 御供米に備へ奉る也 此度京都へ御申有て御神体申くたし給はは可然と申上る 尤成とて則民部京都へさしのほせ 男山より御神体申くたしけるに 其舟強清水村（小木半島にある）へ着給ふ それより八幡宮へもり奉りける強清水にて石の上に置奉る 其下に清水有 八幡水とて今も大切に仕候 扨（さて）久知山三川内の田地より６０俵御社領米 今も有之候 八幡宮社頭御こん立成就し 御一代御安全に在城３３年 御年７９才 永正１１年甲戌８月２６日御死去 御名は本間加賀守新左衛門尉秀泰公と申奉る 法名は岱顕宗岳大戸居士と申ける」
３．まとめ
�〃概�物など、せいぜい半値八掛ニ割引と見なした方が物事を誤らせない。
１）半値八掛二割引を文字通り計算すれば３２％。すなわち６８％＝２/３超の割引。久知軍記』（以下、「軍記」）の一部を読んでわかった。
a．このことは、例えば頼朝や信長・秀吉・家康などの先祖・生い立ちのエピソード・武勇伝・美談に及び、さらに神社・仏閣の勧請・開基・宗祖の事柄にまで及ぶ。
b．情報公開が制限されしかも伝達手段に事欠く昔は、記録されたものが唯一の拠り所となり証明となる。嘘であっても、後世それしか無ければまかり通る。
c．わが先祖をたどれば、天皇・貴族・源氏など（元々は、地方の一豪族）に至るとしたり時の権力者からお墨付きをもらった記録があれば、権威付けになり、尊厳を保ち治安は安定。それが、後々にまで及ぶ可能性は高いといえる。従って権力が大きくなればなるほど必要となってくる。そのため、皆必死に神話・伝説を創り上げた。
２）信用度はゼロでなく１/３くらいは、その中に事実・真相が隠されている。
例えば、
a．「軍記」の中の「雑太 河原田 加茂 吉井」。これは、当時久知にとって、ライバルであったことを示唆している。
b．同じく「強清水」の地名。京都・男山から八幡の御神体を乗せた舟が強清水から着たというようなことが書かれている。強清水は、建武３年（１３３６）羽茂本間と吉岡本間の間の領地をめぐる宿根木戦争に羽茂本間が勝ち、１５８９年の上杉氏の佐渡攻略まで羽茂本間の統治下にあった集落。
ァ．久知と羽茂の戦いの記述はない。久知は、雑太と河原田との抗争は明確であるから、羽茂とは良好な関係を築いていたとみてよい。互いに敵は同じであった関係にある。
佐渡本間の中の羽茂と河原田は二大勢力でライバルで相争ってきた。これが、上杉氏による佐渡支配への原因・口実であった。
ィ．「強清水」という地名からの「石清水」物語は、真実性に富み説得力がある。これが、創作した人の才能。
c．夜な夜な黒雲が久知村の住民を悩ましたので八幡宮を久知に遷座という伝説の類型は、全国に史実としてある。
ァ．明治政府になって神仏分離令が敷かれ天皇家から仏教を外したが、国家鎮護のため聖武天皇時代奈良に大仏が造立され、地方鎮護のため６６カ国に国分寺が建立。頻繁であった遷都は、それと類似した縁起を担ぐ理由に基づく。
ィ．鎌倉に幕府を開いた源頼朝は、源氏の氏神・石清水八幡宮を鶴岡八幡宮に分霊。八幡権現は神仏習合によって八幡大菩薩として崇められたが、明治に入り仏教色の濃い「菩薩」は「八幡」から切り離された。
�⇔鯊紊竜彙里療騨佑蓮�武芸・舞楽を奨励。
１）椎崎・諏訪神社境内前の広場は、演武場と伝えられており、椎崎から居住地である城腰へ至る道は、「久知殿道」と呼ばれその地名が現存している。
久知八幡神社例祭には、流鏑馬（やぶさめ）・刀刀（とうとう）の芸が行なわれるが、それらは鎌倉武士であった本間家が佐渡にもたらしたといってよい。久知本間の支配地・赤玉には、槍おどり・白刃おどりがあった。
（流鏑馬は、神馬に乗って矢を的に目掛けて射る。刀刀は、二人が互いに向き合い刀と刀、刀と薙刀（なぎなた）、薙刀と薙刀で交互に攻撃・防御を行なう）
２）久知河知にある長安寺の観応２年（１３５１）の記録に、本間貞泰が長安寺に舞楽の興行を行なわせるため田地を寄進したとある。
寺に舞楽の興行があるべきとの意向はあっても、踏み出す者がいないためそのままになっている。ここは本間が、舞楽を皆の者が望んでいる間は続くよう支援する。各々の者が心を同じくして力を合わせるならば、現世に神慮の利益が得られ、子孫にも功徳を及ばせるべきものとしている。
３）観応年間（１３５０年代）「園中将」という人が都落ちして長安寺に住み、舞楽を教えたという伝承がある。
４）県の無形民俗文化財・久知の「花笠踊り」は、天文年間（１５３２〜１５５４）久知六代の本間時泰の命によって上方で舞の修業を積んだ城腰の武左エ門が完成させたとされる。
a．花笠をかぶり早乙女の衣裳をまとった地元の稚児・児童が、太鼓・笛の音に気合を掛けながら城腰から久知八幡宮まで行進。
b．境内で踊りが奉納される。
５）９月１５日恒例の久知八幡宮の祭では、いろいろな芸が披露される。
a．今年の豊作を祈願しての予祝の意味がある。
b．当日は、神輿渡御・鬼太鼓・流鏑馬・刀刀・花笠踊り・小獅子舞・鬼舞い（鬼太鼓とは異なる）・法問答が行なわれる。
久知八幡宮祭りはまさに芸能の祭典。
以上
