2017年12月04日


今年は予選を全く見に行っていませんでした。
簡単に各組の感想を。
今年は次にネタをやるコンビをその場で「笑神籤(えみくじ)」を引いて決めるというルールが導入されました。

・ゆにばーす 泊まりの営業
トップバッターながら全ウケ。どのボケもツッコミも予想をきちんと超えてきて、動きがありつつも無理やり盛り上げている感じがなくて楽しく面白い。トップバッターでなければ……ということが悔やまれる出来でした。
得点は626点。89点平均なので、きれいに基準点というところですね。大吉さんが「トップバッターだと付けられるのは最高で92点だから92点にした」という趣旨のことを言っていましたが、基準点の範囲内で最高の評価をされるべき出来だと思います。一方、松本さんが「お客さんが良すぎるだけなのかもしれない」ともコメントしていて、この時点ではそれはどうなのかなとも思いましたが……。

・カミナリ 一番強い動物
ロジックはきちんとしているし、方言で言うことで面白くなるワードも盛り込まれているし、忙しかったこの一年でもちゃんとパワーアップしたのがすごいと思います。後半の、たくみくんが自分で喋りながら次のツッコミどころに気付いて頭を叩くタイミングがまた完璧なんですよね。流れに乗って気持ちよく笑えます。
ただゆにばーすの後だけに…ということで少し下げられた結果、618点。上沼さんの「頭は叩かなくてもいい」というのは無粋なコメントにも見えますが、どつき漫才にする必要がないほどロジックやワードで笑いを取れているという評価と言えないこともないと思います。

・とろサーモン 旅館
これまで実に9回も準決勝で敗退してきたとろサーモンがついに決勝に。ブラックさや突拍子のなさを円熟味で包み込む、とんでもない手練れの漫才になっています。とろサーモンはずーっと面白いですが、ここまで来たことによっていろんなものが「味」になるようになったのかもしれません。
得点は645点。92点平均と大きく上げてきました。この流れでこういうネタだと点数が付けやすいんですよね。それでもまだ序盤だから様子を見るのもあってこの点数に落ち着いたのかなと。

・スーパーマラドーナ 合コン
敗者復活戦からの勝ち上がり組。はっきり言って敗者復活戦ではダントツの出来だったので、これは3位に入るかなと思ったのですが、敗者復活戦とはネタを変えてきました。勝負ネタは温存したのかもしれませんが、その分期待を下回ってしまった感じが。みんなウケているので、点数を付けるにあたってはウケ以上のプラスアルファを求めざるを得なくなるんですが、このネタだとそれがあるとは判断されにくいかなと。
結果は640点。敗者復活戦の仕上がりからするともっと高得点を予想していましたが、この出来だととろサーモンを上回れないですね。

・かまいたち 学校の怪談
賞レース準決勝常連の彼らがキングオブコントを制し、そのままの勢いでM-1でも決勝に進出。コントをそのまま漫才にするのではなく、がっつりと喋る漫才ができるというとんでもないコンビです。このネタも本当にウケています。
が、スーパーマラドーナと同じく、ウケ以上のプラスアルファがあるかとなるとちょっと厳しい気がしました。おそらくかまいたちがこれまで数えきれない回数準決勝で敗退してきたのは、そこのプラスアルファがないと判断されていたからじゃないかと思うんですよね。それがここでも出たんじゃないかなと。
結果は640点。点数でもちょうどスーパーマラドーナと並びました。

・マヂカルラブリー 野田ミュージカル
かなり早い時期から注目されてきた彼らも初めてM-1決勝の舞台へ。どう引っかき回してくれるかなと思ったのですが……。
同じボケを何度も引っ張るという構成で、でも期待を超えてこないので大きな笑いが起きにくい。こうなると巻き返せないですよね。あと手を挙げるところが何度もあるので、野田さんの脇汗が目立ってしまっていました。やっぱり緊張するよなあと。
結果は607点。87点平均です。ここまでみんなウケている中で、こういう構成のネタでこのウケ具合だと、下げるしかないんですよね。おそらく最低点は87点ぐらいでというのが審査員の間の暗黙の了解だと思うので、最低評価ということにはなりますが、この流れの中での下げどころだというだけなので、極端に面白くないということではないと思います。
上沼さんが「好みじゃない」と言っていましたが、もっともっと強く否定することはいくらでもできたと思います。それを「自分の好みではないだけ」という言い方にとどめたという点で、むしろ優しいコメントだと思います。笑い声測定器を置くのではなく審査員が採点する以上、審査員の主観は絶対に入ってきます。その主観を信用していいと判断された人が審査員なわけで。

・さや香 歌のお兄さん
完全に初見でしたが、こんなにストレートなのにこんなに面白い漫才ってまだできるんですね。衝撃を受けました。
これは相当行くのではと思ったのですが、得点は628点。ゆにばーすとほぼ同じ。まあ、やっていることがすごくシンプルなのは事実なんですよね。その分漫才としての評価のしどころとなるとちょっと見つからないのかなと。

・ミキ 漢字を教える
こんなにテンションを上げているのに客が置いて行かれない。もうえげつないぐらいすごいですよね。ミキを見ていると、このレベルの若手漫才師って東京の非吉本にはいるんだろうかと思ってしまいます。
審査員にも指摘されていた通り、ボケの内容がすごくオーソドックスなんですよね。でも大阪の若手の漫才は、ボケの内容よりも腕前や見せ方で他と差別をするものという意識があって、それでオーソドックスなボケがあまり気にされないという気がします。
結果は650点。とろサーモンを超えてこの時点で1位。

・和牛 ウェデイングプランナー
カップルの設定じゃないんだ、水田さんが屁理屈言わないんだ……と肩すかしを食らったような気持ちで始まり、中盤までの内容も至って平坦な印象を受けるネタ。これは期待外れかもと思ったところで終盤に入り、怒涛の伏線回収が始まります。それが盛り上がるのなんのって。
期待されていると同時にこすられている屁理屈ネタではなく、ゴリゴリに仕上げた構成で持っていくというそのお笑い脳が怖いです。
果たして結果は653点。文句なしにここまで一番の爆笑です。

・ジャルジャル ピンポンパンゲーム
漫才でもコントでも斬新なネタをいくつもいくつも見せてきたジャルジャル。このネタもまた斬新で、それでいて技術が高くて、ゲーム的な漫才という新しいジャンルを提示しつつも機械的でない笑いの取り方をする。最高に面白いネタだと思います。ミキからの三組が本当にえげつないですね。レベルが異常に高すぎる。
どう評価されるんだろうと思ったら、636点。松本さんは95点と高評価ですが、他がいまいち奮わずという感じでした。結果が出た後の福徳さんの表情が辛くて……。こんなに天才なのに賞レースで一度も優勝できたことがないなんて、残酷すぎます。

これで10組のネタが終わり、上位3組の和牛、ミキ、とろサーモンが最終決戦へ。

・とろサーモン 石焼き芋
少し前に話していた「ミッキーマウスを意識した」のおかげでミッキーにしか見えないw
最初の「流れに身を任せる」のボケが面白すぎますよね。そこでぐっと流れを引き寄せて、怒涛の宗教ゾーン(!)へ。これもやっぱり数年前ならもっと過激に見えてたと思うんですよね。

・ミキ スターウォーズ
これも面白かったです。面白いんですが、仕掛けを入れられるタイプのコンビではないだけに、二本見ると高止まり感があるんですよね。そこはちょっと気になりました。

・和牛 旅館の仲居
一本目を見た時に、これで二本目で屁理屈+伏線回収のネタをやったらえげつないなと思っていたのですが、まさにそれでした。
期待してた屁理屈ネタだ!と思ったのですが、仲居さんとお客さんという設定なんですよね。これだとちょっと水田さんの当たりがきつく見える、というか単に「クレーマー」という言葉で片付けられてしまうんですよね。カップルの設定だと「こんな屁理屈言う彼氏なんて嫌だな」と思いつつも別れられない理由が垣間見えるギリギリのラインを保っていたと思うのですが、こうなると仲居さんがかわいそうに見えてくる。で、後半の伏線回収で仲居さんが反撃するのですが、前半でクレーマーに見えてしまった分の感情はそれでもチャラにならないんですね。
屁理屈ネタだし伏線回収という構成上の武器もある、でも……という、なかなか微妙な仕上がりでした。

これで全組終了。
私が審査員なら、ミキの高止まり感と和牛の若干の食い足りなさを理由に、とろサーモンに一票入れると思いました。でも実際は和牛の勝ちだろうなと。

が、結果はとろサーモン4票、和牛3票で、とろサーモンの優勝!

呆然とする村田さん、両手を広げて紙吹雪を浴びながら「ジーザス」と呟く久保田さんw

「和牛に入れたけど不満はない、そのぐらい僅差だった」と松本さん、めっちゃ泣いてる渡辺リーダー、そして大吉さんは「つかみが速かった」とコメント。

誰もが認める実力派でありながら超苦労人だったとろサーモンの優勝で、今年のM-1グランプリは幕を閉じました。


今回は番組側が客席の雰囲気を良くすることにかなり気を遣ったのではないかと思います。その結果、トップのゆにばーすからみんなきちんとウケて、とてもレベルの高い決勝になりました。

そうなると、審査の基準が単にウケ具合だけではなくなってくるんですね。みんなウケているからみんな93点ぐらいとするわけにはいかない。
では何で差を付けるとなると、審査員それぞれの思う基準にかかってきます。
かけ合いを重視する人もいれば終盤の畳みかけを重視する人もいる、キラリと光るフレーズが一つあればそれをもって高得点を付けていいと考える人もいるでしょう。
さまざまに考え得る基準の中で何を重視して点数を付けるか。それを一言で表すと「好み」という言葉になるのではないでしょうか。
上沼さんが言っていた「好みではない」は結局そういうことなのではと思います。

ネタ順がその場で決まっていく新ルールですが、なかなかよかったのではないかと思います。全組終わってみてもやはりゆにばーすはもったいなかったですが、それはこのシステムのみによるものではないですし、あらかじめネタ順を決めておく従来のルールであっても、トップバッターの誰かは結局不利になってしまいます。
この新ルールのメインは「敗者復活から上がってきた組の圧倒的有利を何とかすること」にあったと思うので、その点では新ルールの目的も果たされたと思います。
順番に出てきてネタをやる以上、どうしてもその順番による有利不利は発生します。たとえばオンエアバトルはトップバッターがオンエアされやすかったですし。
出番順が点数に全く影響しないシステムは存在しないという事実がある上で、どこを落としどころに設定するか。それがルールというもので、その点で今回のルールは落としどころとして一つの答えになっていたと思います。

それにしても、最終決戦のレベルの高さは近年稀に見るものだったと思います。ただそれゆえに、3組ともがいい意味でも悪い意味でも決め手に欠いていたと思うんですね。
私個人の好みで言うと、和牛の「仲居さんとお客さんの設定だと当たりがきつく見える」という点はかなり大きかったです。これだと3組の中から1組選ぶという気持ちになりにくい。
ミキの高止まり感も引っかかったんですよね。まだ完成していない、もう一皮剥ける余地がどこかにあるようにも見える。
となると、とろサーモンかなあと。二本とも面白かったし一本目は出番がもっと遅ければもっと高得点だったかもしれないし、何よりも最初の「流れに身を任せる」のくだりで今日一番笑ったので。
もちろんプロの審査員はもっといろいろなことを考えて票を入れたと思います。でも、本当に本当にレベルが高いと、何かピンと来た一点を理由にしてえいっと票を入れないといけない。そういう境地に達した戦いだったんじゃないかなと思います。

しかしレベルが高すぎて、東京非吉本の漫才師はここに割って入れるんだろうかと不安になったのも事実です。ミキもさや香も、まだ若いのに本当にえげつないほどすごい漫才をしてるじゃないですか。
磁石三拍子流れ星あたりがM-1決勝に行けるぞ行けるぞと言われていた時代は終わってしまって、その後の層がぽっかり空いてしまっているように思います。私はライブに全然行けなくなってしまったので東京の若手に詳しくないというのもありますが、賞レースで惜しいところまで進んでいる、順番待ちの前の方にいそうな若手が純粋な数字として少ないんですよね。
ハライチの岩井さんが「吉本だけの大会にはさせない」と言っていましたが、そうならざるを得ないぐらい、頭数が圧倒的に違うのが現実です。やっぱり劇場に立つ回数が違うのは大きいのかなあとか、いろいろなことを考えました。

今年は予選に全く足を運べなかったのでどうかなあと思っていたのですが、夢中になって見てしまいました。やっぱりM-1グランプリって最高に面白いですよね。
そして優勝してトロフィーや副賞を受け取るとろサーモンのお二人は最高にかっこよかったです。

芸人さん、ファンの皆さん、今年もお疲れさまでした!


(00:47)

2017年02月22日



行ってきました。会場はメルパルクホール、MCははりけ〜んず。
今年は大阪会場との中継はなく、東京のみ。かなり広い会場ですが、ステージ後方には大きなモニターがあって、フリップネタでも後ろの席まで見やすいようになっていました。

・AMEMIYA ご飯のお代わり自由です
トップバッター、かつこれだけネタが知られているわけですが、それでもきっちりウケていました。

・あばれる君 第二ボタン
ファイナリスト経験者ではありますが、タレントとしてのイメージと違ってネタがきれいなんですよね。その分こういう場では爆発しにくい感じ。

・石出奈々子 なんとなくジブリのヒロインっぽい子が大阪に行ったら
よくウケていました。浅井企画だけどナベプロっぽいなーと思ったらナベコメ出身なんですね。

・キャプテン渡辺 バイトの鬼
ネタは前からあるやつ。絶対笑うようにできてるのがやっぱりすごいなあと思いつつ、ちょっと声が聞き取りにくい…。ピンマイクは付けてるっぽいんだけど、会場が大きすぎるのかも。

・西村ヒロチョ ロマンティック
ステージの後ろに学芸会みたいな三色のライトが並んでいて、確かヒロチョさんの時だけチカチカ光る演出がw でも声に比べてBGMが大きくて、全体的に聞き取りにくかった…。

・粗品(霜降り明星) フリップ
一発ネタの詰め合わせというか、フリがないむき出しの笑いどころの連打でこれだけ面白いってどういうことなんだと。

・サンシャイン池崎 ボン・ボヤージュ
客席にはものすごく期待感があったしウケてたんだけど、その期待を超えきらなかった感じが。音響のせいなのか、そこまで声が出ているようにも見えなかったんですよね。石出さんに続いてトトロ要素が。

・中山功太 ラジオCM
功太さんはいつもアイディアとその提示がきっちりしていて、気持ちよく笑えるなあと思います。

・バイク川崎バイク 高校野球
BKBではなく一人コント。それでも尻上がりにウケていました。

・藤崎マーケット田崎佑一 カリスマ居酒屋店員
広い舞台をセグウェイですいすい駆け回る。とにかくセグウェイが欲しくなる。

・脳みそ夫 アラサー縄文人
ここも声がちょっと小さくて、聞いちゃう姿勢になっていたと思います。たぶんもっと小さい会場ならもっとウケていたと思います。

・クロスバー直撃前野 自販機解体ショー
始まる時はすごくわくわくしたけど、何でどう笑わせるのかというのが少し散らかっていて、流れに乗りにくかった感じがしました。

・パーマ大佐 ツッコミアンサーソング
知られている分の期待を上回れるかなという感じの滑り出しでしたが、後半は結構ウケていて、森のくまさん事件に触れたところでドカンと来ていました。

・平野ノラ 幼稚園の先生
これはほとんどの人が見たことあるネタなのでは。

・マツモトクラブ ホームにて
これも見たことあるネタではあるんですが、やっぱり引き込み方が段違い。一段上のウケ方をしていました。

・もう中学生 寿司
笑うとか笑わないとかの次元じゃないですね。宇宙みたいな感じがしました。ていうか終わり方すごすぎる。

・守谷日和 表現力選手権
古坂大魔王さんとかサイクロンZさんのネタと似てると思う人もいるかもしれませんが、アイディアや見せ方は違っていると思います。何がすごいって、「表現力」っていうラベルがこの上なくぴったりなんですよ。

・横澤夏子 ママチャリ
安定したウケ方でした。

・ルシファー吉岡 大化の改新
これはウケてた!そういえば下ネタじゃなかったということに後で気づきました。顔を見ただけで下ネタを見たような印象になっていたということですね。

・ゆりやんレトリィバァ
タイトルが付けにくい…。見た目や見せ方のインパクトはもちろんすごいんですが、ネタの精度が全くそれに負けてないのが本当にすごい。

・藤崎マーケットトキ あえて感謝状
いろんなパターンの笑わせ方を入れてるんですが、その分入り込みにくいというか、流れに身を任せにくかったかなあと。でも田崎さんとそれぞれ全く違うタイプのネタでよかったです。

・ZAZY 転校生
こんなに立派な会場なのにこれがちゃんとウケちゃうのがR-1準決勝のすごいところだと思います。私の中でもう中さんに次ぐ宇宙枠でした。もう理屈じゃないんですよね。

・エハラマサヒロ うたのお兄さん
相当こすってるネタではあるんですが、それでもわりと見られてしまうし間が持ってしまうのがエハラさんの「芸」だなあと。

・おいでやす小田 真に受ける彼女
いやー、さすがとしか言いようがないです。一人コントというジャンルで言うと、マツクラさんと小田さんが群を抜いていると思います。

・紺野ぶるま 占い
どういうネタをやるんだろう…と思ったらきちんとしたネタで、演技もうまかったです。

・アキラ100% 絶対見せないDE SHOW
やったー!めっちゃウケてた!そして全然見えてなかった!知名度ゆえの期待感を超えられない組も多い中、文句なしのウケっぷりと盛り上がりでした。

・三浦マイルド ことば研究家
これだけ面白くてこれだけ勢いがあったら笑わずにはいられません。さすが。

・ニッチェ近藤 日本アラサー大賞
やってることはそれっぽいんですが、全然笑いが起きていませんでした。もちろん私もそうだったわけですが。なんでだろう…。

・パタパタママ木下 バイトをしすぎるとこうなる
キャプテン渡辺さんのネタを逆から見たような感じのネタ…と思ったらちゃんとその点に触れたので笑いやすくなりました。そういうケアがないとお客さんがずっと引っかかっちゃうんですよね。ウケていたし拍手も来てたけど、拍手笑いとはちょっと違う印象なので加点にはなりにくそうな感じ。

・中村涼子 留守番電話
これ、マツクラさんがこの設定で作って演じたらもっともっと面白いんだろうなと…。設定は面白そうなんだけど、何かかゆいところに手が届かない感じがしました。

・ナオ・デストラーデ セールスマン
コンビでやっているネタをピンネタに。湘南デストラーデのどのネタもそうなんですが、テキストがものすごくしっかりしていて、展開も説得力があるんですよね。なので今回も意図通りに笑いを取れていたんじゃないかなと思います。

・とにかく明るい安村 行司風に言うと
裸ネタじゃないとなるとどうしても観客はややがっかりするところからスタートしてしまうわけですが、それでも後半きっちりウケていました。読み方がうまい。

・スリムクラブ真栄田 ラジオ「私の近況」
いやー、これだけ芸風が知られているのにまだこんなに面白いかっていうぐらい笑いました。この前のM-1準決勝もそうですが、やっぱりこのキャラクター性と発想力は舞台で見たら圧倒的ですよ。

・アイデンティティ田島 次回予告
太田プロが誇る正統派漫才師のボケである田島さんが、一年ほど前からやっていた野沢雅子ネタでついにR-1準決勝に。このネタだろうなと思っていたので、田島さんの出番までの怒涛のトトロかぶり(池崎さん以降も誰かいたような)に冷や汗をかいてしまいました。ウケてはいたのですが、準決勝という場になると、ピンネタとしての作りがもっとちゃんとしていないとウケきるところまでは行きにくいのかなーと。それにしても田島さんはクリカンパターンで将来悟空の声をやってもおかしくないと思います。

・まとばゆう アニメのあらすじを手短かに
ピアノがすごくうまいしアレンジも上手。これでピアノがつたなかったら気持ちよく笑えないと思うんですよね。ここでもダメ押しのようにトトロが。

・ブルゾンちえみ 女
たぶん客席が一番期待していた芸人さんのはずですが、まずどうしても「後ろの二人がいない」というところでちょっとがっかりしますよね。で、こうやって舞台で見ると芸歴が短いことが透けて見えてしまうんですよ。だから言っていることに笑いにくい。でも後ろのモニターに映っている姿はやっぱり面白いという不思議な感覚でした。まともな笑いが一回しか起きなかったのですが、まあ今の勢い的には絶対上がるんだろうなという感じがしました。

・ぶらっくさむらい ベスト
これは盛り上がってました。この日の歌ネタの中では一番だったかも。

・レイザーラモンRG ドナルド・トランプ
登場するや「USA!USA!」に合わせて軽やかに手拍子してしまう訓練された我々R-1の客。RGさんがR-1に出始めた頃って、「HGの相方がなんかやってるよー」みたいな反応だったじゃないですか。でも今はもうネタとしてめちゃくちゃ面白いんですよね。もちろん人としても好かれてるし、この何年かでRGさんが全部兼ね備えちゃったっていう。

その日のうちに審査結果が出ました。
決勝進出者とブロック分けは以下の通り。

Aブロック
レイザーラモンRG
横澤夏子
三浦マイルド
復活ステージ3位

Bブロック
ゆりやんレトリィバァ
石出奈々子
ルシファー吉岡
復活ステージ2位

Cブロック
ブルゾンちえみ
マツモトクラブ
アキラ100%
復活ステージ1位

メンツとしては、準決勝のウケ具合でほぼ半分より上の人たちから選ばれているので、そんなにおかしい感じはしないです。M-1の優勝コンビの片方がどんなに滑っても選ばれていたような過去のR-1準決勝の審査よりはよっぽどましなので…。
ブルゾンさんよりウケていた人はたくさんいましたが、今の勢い的には外すことが絶対できないんだろうなと思わざるを得ないし、たぶん彼女のネタが終わって暗転した瞬間、会場のお客さんのほとんどが「これでも上がるんだろうな」と思ったはずです。
たぶんテレビで映える芸人さんだと思うので、本番でそんなに悲惨なことにはならないんじゃないかなと思います。
あとは女芸人を多くしようみたいな裏テーマがあるのかなあと。しかし女芸人さんが4組いて、ブルゾンさんがその一番最後だというのがどう転ぶかも気になります。

ブロック分けの方は、ネタのタイプごとにうまく散らばったなあという感じですね。誰がどうウケていくかは予想がつかないですし、池崎さんや田島さんのようにキャラや勢いのある人が復活ステージで上がってくるとまた流れが変わることも考えられます。

あとは宮迫さんが「アホやなー」「あー、ほんまアホや」をどこで何回言うかにも注目が集まるところです。まずは早速RGさんのところで言うと思うのですが、どうでしょうか。


(00:02)

2016年12月05日


今年はリアルタイムで見られなかったので、情報をシャットアウトした状態で録画で見ました。敗者復活戦は録画し損ねたのでチェックできていません。

歴代チャンピオンのネタを書いている方が審査員を務めた前回とは打って変わって、今回は上沼恵美子さん、
松本人志さん、博多大吉さん、中川家礼二さん、オール巨人さんが審査員を担当。
人選として新鮮だと思ったのは大吉さんですね。華丸さんがR-1ぐらんぷりで優勝してから10年ちょっと。この10年で大吉さんがM-1の審査員になるところまで来たんだなあと。

まずは各組の感想を。もちろん素人目線の感想ですし、解説とか批評ではなく、「このネタがウケたのはこういう理由だったんじゃないかな、審査員が考えるポイントはこういうところだったんじゃないかな」というような理由づけがメインです。

・アキナ 離婚
「ませた男の子」という方向性がわかっても、全部のボケが予想を超えてくる面白さで、的確に笑いを取っていきます。
が、毎回ボケのすぐ後で笑いが来てしまうんですよね。ボケ→ツッコミ→笑いの順番ではなくて、ボケ→笑い→笑い声の中でツッコミが聞こえるという順番になってしまっているという。ボケがツッコミなしでも十分面白いクオリティだからなのか、漫才のテンポがゆったり目だからツッコミの前に笑いが来てしまうのか。
準決勝もこうだったかは思い出せないのですが、決勝という場でこういう形の笑いの起き方になっていると、「漫才として素晴らしい」という評価はちょっとしにくくなって、いいキャラのいいボケが並列で並べられているネタという印象に収まってしまったのではないでしょうか。秋山さんのツッコミも、この場で見ると「漫才のファイナリストのツッコミ」としては少し至らないように見えてしまうのかも。
ウケてはいますが、こういう感じだと基準点以上の評価は付けにくいと思います。点数は446点。89点平均ということで、まさに基準点ですね。

・カミナリ 川柳
初の決勝進出だけでなく、準決勝以上に進むのも初めて、THE MANZAIで認定漫才師になった経験もなしという、数少ない掛け値なしの新星。早速たくみさんが唇を舐めていたので、かなり緊張しているんだろうなと。
こちらはアキナとは打って変わって、全部の笑いどころがツッコミの後に来ます。そういう作りをしているからなんですが、「ボケの言ったことの面白さをお客さんに伝える」というツッコミの機能をこれ以上ないほど効果的に果たす作りになっていますね。
ただ、爆発するというほどウケていないので、審査員としてはアキナよりちょっと上というぐらいにするしかないだろうなと。
点数は441点。上沼さんのみ81点で他の4人は90点平均なので、4人はやっぱりアキナよりは上だけどという程度の評価ですね。こういう風に流れるようにやりとりをせず、セリフを置いていくようなテンポで喋る漫才を漫才としては評価しにくいと考える人もいるので、上沼さんの評価の仕方も好みの範疇だと思います。
巨人さんの「伸びしろがある」という評には同感です。本当にまだ伸び始めの時期で、これからもっともっと面白くなれると思います。って、本人たちは今の時点で全力を出し切ってるだろうから、そう言われる側は大変だと思いますが……。

・相席スタート 振ってまう球
仕組みをわからせる→予想を超えていくボケを続けていって笑いを取る、という流れがきれいにできて、よくウケています。全ウケではないものの、最後のカタルシス的な笑いも大きいです。見ていてカミナリよりは高い評価が付くかな、92点平均ぐらいかなと思ったら、436点でした。
各審査員の採点をカミナリと比べると、大吉さんは-3点、礼二さんは-2点、巨人さんは-4点、松本さん-5点、上沼さん+9点で差し引き-5点という結果。
ウケ方からするとここまで低いというのは意外でしたが、相席スタートのこのネタについて「漫才としての評価のしどころがどのくらいあるか」という点を考えると、まあこうなるかなと思います。
山崎さんは「どこにでもいるように見えるけどいい女」という感じの芸風で、そこに「シュッとしていて達者な山添さんが山崎さんの説得力に呑まれていく」というのが相席スタートというコンビの構図であり、ネタの面白さであると思うんですね。問題は、「普通の山崎さん」「達者な山添さん」という対比が、見た目とか喋り方だけにとどまらず、芸人としての技量にもそのぐらい差がついてしまっているという点です。私は彼らのネタを見るたびに山崎さんの声が聞き取りにくいことが気になっていて、それはこの数年全く変わっていないんですね。声が聞き取りにくい芸人さんはたくさんいますが、山添さんの声が通るだけに対比として気になってしまうんだと思います。
要は山崎さんは芸風として「普通に見えるけどいい女」であるだけでなく、芸人さんの技量としてもちょっと普通の人すぎて、「特別な芸人さん」であるように見えないんですね。アキナの秋山さんが決勝という場に来ると「ファイナリストのツッコミ」としてはやや弱く見えてしまったのと同様に、山崎さんも「ファイナリストのボケ」としては少し弱く見えました。
もちろん山崎さんがこなれてしまうことで彼らのネタの面白さが薄れてしまう可能性もあるし、タレント性はもう十二分にあると思うのですが、こういう場でこのぐらいのウケ方だった場合に、「下げどころ」として見られてしまったのではないかなと思います。もっとウケてたら普通に高得点が付いたと思うので、「そこが欠点だからこの点数になった」のではなくて、「このウケ具合だと、そこを理由にして点数を下げられてしまうのでは」ということです。

ここで敗者復活戦からの勝ち上がり組が発表されました。視聴者投票の結果、和牛がダントツの1位。

・銀シャリ ドレミの歌に統一感を
銀シャリの「ドレミの歌」のネタは既にあるのですが、それとはテーマが違っていて、さらに細かくボケどころを入れまくった感じ。ここはボケでもツッコミでも笑いを取るので、とにかく笑いが起きる回数が多い。畳み掛けもすごくウケていました。
結果は470点。94点平均ですね。大吉さんのコメントの通り、文句のつけようのないぐらいちゃんとした漫才をやっているわけですし、それでこんなにウケていたら高得点を付けざるを得ないですよね。下げどころがないです。

・スリムクラブ 登山
準決勝で爆発的にウケていたのですが、あれはスリムクラブが出てきた時にちょうど帰ったお客さんがいて、それをつかみにしたことが追い風になった部分も大きかったと思うので……。
ところどころ準決勝と内容を変えているような気がします。もっとウケてもいいと思うんだけどなあ。
点数は441点。上沼さんの「ボケが飛び過ぎ」というコメントがありましたが、これもウケていないことの理由を考えるとしたらこれ、という程度だと思います。これで爆発的にウケていたら、「芸風が知られている中で、自分たちのイメージを超えるボケを用意してきた」という評価になるのでは。

・ハライチ RPG
去年も思ったんですが、基本的にお客さんに岩井さんで笑う気がないですよね。最初の「勇者勇者澤部」になぜあんなに笑いが起きなかったのかというと、お客さんがRPGのことを知らないんじゃなくて、岩井さんが面白いことを言っていると思っていないからではないかと思います。
澤部さんが面白い人だと思っていて、岩井さんに対してはそう思ってない。だからボケで笑いが来る→ツッコミでもっと大きな笑いが来るというハライチ本来の流れにならなくて、澤部さんのリアクションにだけ笑いが来るようになるという。やってることはめちゃくちゃ面白いと思うんですが……。
点数は446点。ここまでで流れをかっさらうほどウケた人はいないという感じで、そうなると誰が爆発するのかという期待が高まってきます。

・スーパーマラドーナ エレベーター
いやもう、恐ろしいほど仕上がってるネタですよね。爆発するというほどではないですが、一分の隙もなく笑いを詰め込んで、ぐいぐい笑いを取っていきます。最初に言ったことがネタの最後に回収されるという作りもはまっていました。
点数は459点。松本さんの、「要所要所しんどい」というコメントは、全ウケではないからボケの数が過剰に見えるということではないかなと思いました。ウケてさえいればしんどくはないです。

・さらば青春の光 中学時代
準決勝とは違うネタ。私のブログに残っている限りだと、2014年のTHE MANZAIの二回戦でやっていました。
もう、「能なん!?」の言い方が100点ですよね。このセリフで笑いを取るとしたらこの言い方しかないという、ピンポイントの100点。でも森田さんが言ってると、センスや発想力の塊という印象にはならなくて、リラックスして楽しく笑えるという。
でもこれも爆発するっていうほどじゃなかったんだよなあ……。どの組もそうなんですが、滑らない分、お客さんがフラットに途中で飽きるんですよね。だから全ウケにならないし、笑いのうねりが生まれてこない。こうなると高得点を付ける理由がなくなってしまうんですよね。結果は448点。この辺の点数にごちゃっと固まってしまっていますよね。

・和牛 ドライブデート
立ち位置があるから仕方ないんですが、なんで女の子が外車で迎えに来るのかというのはちょっと気になる。前に別のコンビがタクシーの漫才をやったら、それも立ち位置上外車になってたんですよね。
これも準決勝とは違うネタ。お客さんの食い付きがよく、全体的にウケて後半も盛り上がっていました。
漫才コントでもコントでも、片方が変な人を演じるネタを見ると、「こんな人がいたらもう片方が怒るか無視するかだから会話がまともに続かないでしょ」と感じることがあると思うんですが、和牛がカップルを演じるネタって、「こういう彼氏がいても付き合う人はいそう」っていう説得力があるんですよね。水田さんのボケ方が怖いところがありつつもたまに優しかったりするので、川西さんが振り回されつつも離れられない女性に見えてくるという。これだけうまいボケツッコミの漫才にこういう説得力があったら、そりゃ面白いですよ。
点数は469点。これで最終決戦に進む3組は銀シャリ、スーパーマラドーナ、和牛に決まりました。

・スーパーマラドーナ 一匹狼
これもよくある設定ではありますが、これでもかこれでもかというぐらいに笑わせてきます。
途中、武智さんが田中さんをビンタしたところで悲鳴が起きて、武智さんが「痛くないように叩いてますからね」というものすごくスマートなフォローを入れる一幕も。M-1の二本目という極限状態でこういうセリフが出てくる漫才師ってすごいですよねと思うと同時に、芸人さんにこんなこと言わせるなよという気持ちも。でもカミナリの時は悲鳴起きなかったよなあ。

・和牛 花火大会
こちらは準決勝でやったネタ。これもちょっと悲鳴が……。準決勝とは違って、一本目と同じ逆ギレのくだりを入れてくるという隙のない構成。これもウケていました。

・銀シャリ 雑学
つかみでがっちり笑いを取ったのがすごい。こうなると前の2組を超えてくるかどうかという目で見られると思うのですが、それでもウケていました。全ウケではないものの、漫才を見ているという満足感があります。

3組ともウケているし、こうなると選びようがないですよね。見ていても予想が付かなかったです。

そして最後の投票。
巨人さん…銀シャリ、礼二さん…スーマラ、大吉さん…銀シャリ、松本さん…和牛、上沼さん…銀シャリということで、優勝は銀シャリ!

こうして今年のM-1グランプリは銀シャリの優勝に終わりました。


銀シャリは誰がどう見ても正統派な漫才師で、一流の腕前があってネタも面白い、いかにも賞レースで優勝しそうに見えるコンビです。
こういうコンビは勢いのある組が出てくるとインパクトで負けてしまって最後の最後に選んでもらえないという傾向があるので、以前のM-1で言うところの笑い飯のようになってしまうのではないかと私は思っていました。
が、今回の決勝は全体的に雰囲気がよくてどの組もウケていたものの、勢いで爆発してインパクトでかっさらうコンビもいなかったんですね。それが銀シャリの優勝につながったのではないかと思います。個人的な予想ですが、敗者復活で上がってきたのがミキだったらまた違った結果になっている可能性もあります。

インパクトでかっさらうコンビがいなかったというのは、他の部分にも出ていると思います。「今回はコントみたいなネタが多かった」という感想をわりと見かけたのですが、それはおそらく漫才コントのことを言っているはずです。漫才の形としてごくごく一般的なはずの漫才コントが「コントみたい」に感じるというのは、変化球のネタをやるコンビがいなかったことで相対的に漫才コントがコントに近く見えたということだと思うんですね。
もしアルコ&ピースが決勝にいて準決勝の「トイレの花子さん」のネタをやっていたら、「アルコ&ピースのネタは漫才じゃない」の嵐が吹き荒れて、漫才コントが普通の漫才に見えていたはずです。でもさらにもっとぶっ飛んだネタをやるコンビがいたら、今度はそちらが槍玉に上がるはずで。
要は「漫才っぽいかどうか」という印象は相対的なイメージによるところが大きくて、普通の漫才コントが多いのに「コントみたいなネタが多かった」と思われる今回の決勝は、それだけ変化球のコンビがいない、正統派が集まった決勝だったと言えると思います。

あと、審査員のメンツが発表された時に見られた意見として、「関西の芸人ばかりだ、関東の人も入れてほしい」というのがありました。
これは人間として当然の欲求というか、要は自分の利益代表者を送り込みたいという考えですよね。
「村のことを決める寄合に出る代表者を何人か選ぼう、でも今の寄合は村の西側の人間ばかりだぞ、俺が住んでる東側の人間も一定数入れてもらわないと東側の事情が無視されてしまうかもしれないぞ」みたいな。
関東の笑いで育ったお笑いファンにとっては関東出身の審査員に対する信頼感は大きいし、関西の審査員に対しては「自分の好きな笑いはこの人には理解されないのでは」という不信感があるということだと思います。
個人的には、いい審査員というのは「実績に伴った自分なりの審査基準で審査できる人」のことであって、「自分と同じ感覚で採点してくれる人」のことではないと思います。なので、関西の人ばっかりとか吉本ばっかりという風には思わないです。

あと、「一般人に審査させるべき」というのもよくある意見です。おおむね、「大御所芸人なんて今の笑いを知らない」「よく知ってる若手がいたら高得点を付けるに決まってる」みたいな理由からだと思います。
では、一般審査員100人に審査をしてもらうと仮定しましょう。審査形式は、オンバトのように一人一票でもいいですし、以前のキングオブコントのように持ち点10点を与えてもいいかもしれません。この時に出てくる問題は何でしょう。「関東出身の人と関西出身の人の比率を偏らせないようにするべきか」「男女の比率はどうするべきか」「今のお笑いライブに通っている人を中心にするべきか、それともお笑いに興味のない人を中心にしてフラットに審査させるべきか」「特定の芸人の知り合いや濃いファンをどう排除すべきか」……さっきの「俺が住んでる東側の人間も入れてもらわないと」と変わらないですね。結局、重要なのは「自分と同じ感覚で審査してくれる人」を送り込めるかどうかという話になってしまって、その点では大御所芸人が審査をする今のシステムと変わらなくなってしまうんですね。
このように、審査員の属性の比率の問題はどうしても付きまとうわけです。だったら、決勝の審査員はネームバリューのある大御所芸人にして(去年のような歴代チャンピオンが審査するのもいいと思います)、敗者復活は視聴者投票で……という今のシステムが、落としどころとしてはある程度バランスが取れていると思います。

ただ、審査員の人数として5人というのは少ないと思います。
一本目の採点の時に一人一人の採点の幅が全体に影響する度合いがやや大きくなるのもありますが、最終決戦の投票で同率1位が出る可能性が高くなるのはあまりよくないと思うんですね。7人が1組を選んで1票3票3票になる確率よりも、5人が1組を選んで1票2票2票になる確率の方が高いんじゃないかなと(計算してないので違ったらすみません)。
同率1位が出た場合は一本目の点数で優勝が決まるので、審査員が5人だと妥当でない結果が出るというわけではありませんが、たった3人の審査員に選んでもらえば優勝が決まるし、場合によっては2票でいい場合もあるというのはちょっと引っかかります。今のキングオブコントも審査員は5人ですが、あれは2本の点数の合算で決まるので特に問題はないかなと。
もっとも、今回のM-1には7人にしようと思ったら誰かに断られたという事情があるのかもしれませんが。


あとは、審査員の出身構成とは別の問題として、出場者の側に関東と関西の格差があるのではないかという危惧があります。個人的にはこれが理由で「関東からも審査員を出して」とは言いにくい部分もあります。
今年は準決勝しか見ていないのですが、銀シャリ、スーパーマラドーナ、和牛、学天即といった大阪のコンビの仕上がり具合がとんでもなくて、見ていて「この4組に対抗できるコンビって東京のライブシーンで育っているんだろうか」と思ったんですね。この4組(決勝に進めなかった学天即を除いて3組でもいいですが)をなぎ倒して優勝できるコンビがいるかと考えた時に、その差は審査員が関東出身だから関西出身だからという問題でどうにかなるものではないのではないかと思います。
準々決勝以下の予選を見ていないので、有望株が途中で落とされてしまっていた可能性はもちろんあります。それでもこのぐらいネタを仕上げてこられる漫才師が東京に3〜4組いるかとなると、ちょっと難しいのではないでしょうか。

とはいえ、準決勝は本当にハイレベルだったし決勝もみんなウケていたので、今後もM-1という大会は面白さを保ちつつ続いていけるはずだと思います。まさかカミナリが決勝に行けるとは去年の誰も思っていなかったはずですから、これからの一年で誰がどう伸びていくかは誰にもわからなくて、それがまた面白いところですよね。

最後に、ネタの好みというものについて。
審査員の人数が少なかったとはいえ、最終決戦で審査員の票がこれだけ割れるほど僅差の結果が出ることはなかなかないと思います。一本目のネタもそこまで点数に差が付かなかったですし。
決勝でネタをやった9組はどれも面白かったしウケてましたよね。レベルとしては本当に遜色がない、その中で誰が一番面白いと思ったか、誰に優勝してもらいたいと思ったかということこそ、皆さんそれぞれが持っている笑いの好み、感性そのものです。
この記事ではネタの感想としていろいろ書いていますが、どれも「今回の結果を説明するとしたらこう」というだけのもので、どれがウケてもおかしくなかったし、ウケ具合によっては説明も全く変わってきます。そのぐらい、どれも面白いネタでした。

「なんで○○は面白かったのに点数が低いの!」と憤っている人がもしいたら、自分はその漫才のどういった部分を面白いと思ったのか、自分が面白いと思ったその部分があるにも関わらず点数があまり付かなったのにはどういった理由が考えられるか、憤るところから進んで一歩考えてみると、お笑いがもっともっと面白くなると思います。そこまで明確なお笑いの好みがあるのなら、結果に憤るほどお笑いが好きなら、「審査員が関西だから」「吉本だから」とかで済ませてしまうのはもったいないです。お笑いとは、あなたが自分の感性で選んだネタを、そんな簡単な理由で否定してしまうような単純なものではありません。何十年という歳月をお笑いにどっぷり浸かって芸歴を重ねてきた審査員の人たちが審査にあたって背負っているものも、そんな簡単な理由で説明がつくものではありません。

あなたがそのネタを面白いと思ったのと同じように、他のネタについても面白いと思う人、面白いと思う理由がいるわけで、そういう多様な好みがある中で、より多くの人の好みにはまって爆笑を取れるようにと試行錯誤しているのが芸人さんたちです。
芸人さんの見せる笑いにはいろんな種類があって、それを見るお客さんの好みにもいろんな種類があります。それが巨人さんの言っていた「日本のお笑いはトップクラス」ということの証です。

お笑いを見ることは娯楽であって、戦争ではありません。お笑いの賞レースは「自分の好きな笑いが評価されて自分のセンスが認められる、自分にとっての正義を実現してくれる場」ではなくて、「自分の好きな笑いとはどんなものなのかを知る、カタログとしての場」だと私は思います。
今回のM-1でたくさんの人たちが自分の好みを知って、それがさらにもっと好きな漫才を見つけることのきっかけになればいいなと思います。

今年もM-1グランプリは面白かったです。皆さんお疲れさまでした!


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