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2006年02月06日

ラテンアメリカの知人への手紙

955fb453.bmpラテンアメリカに関する力作を拝見いたしました。日本語で、現在のラテンアメリカを概観した文章を読めることを大変、嬉しく思います。仕事の合間に知的作業を共有していただいてありがとうございました。基本的に、述べられていることに同意いたしますが、3点ほど、私が異なる考えかたを抱いている点を述べさせていただければ、と思います。「ラテンアメリカと中国の関係」、「ペルーとチリの比較」、そして「アメリカのラテンアメリカ移民の選挙行動」の三点でございます。少々、長くなりますがご容赦願えますでしょうか。

1) ラテンアメリカと中国の関係
中国の投資・貿易によって、ラテンアメリカの開発が進むことを米国政府は、脅威とするよりは、むしろ歓迎しているとご指摘の点は、一般的には正しいと思われます。実際のところ、特に中米においては、援助、貿易、投資のいずれにおいても、まだ台湾のプレゼンスの方が中国より大きい状態です。中国が台湾を追い越す日は、近いかもしれません。しかし、50%以上の貿易相手国である米国に対して、中国の貿易が現在の1−2%から、5%に伸びたとしても、米国にとっては、脅威でないものと思われます。

一方で問題とされるのが、エネルギー貿易だと思われます。特に、ベネズエラと中国・インドの首脳レベルでの近年の頻繁な接触とエネルギー協定は、アメリカの中南米政策だけでなくグローバル戦略に影響を及ぼすものと思われます。

中国・インドの旺盛なエネルギー需要は今後も続くものと思われます。ベネズエラにとって両国との提携は、大口の長期安定輸出先を確保することになり、石油価格の高値安定にもつながります。

それは、米国にとって、「テロとの戦い」と「エネルギー戦略」のバランスを取る上で難しい要素となります。現在も、米国はベネズエラから石油を調達し、南部諸州の製造業は、それに依存しています。そのため、米国の政策として一枚岩になりきれず、ブッシュ政権のチャベス批判は、言葉の上では厳しくなっても、実効力のある制裁を取れていないのが現状です。

2) チリとペルー
チリもペルーも天然資源依存型で、ともにアジアとの貿易の比重がラテンアメリカの中では、比較的高いと言う点において、共通点を有しています。ただ、チリが優れているのは「インセンティブに基づいたガバナンスが効いている」点ではないか、と私は思います。

周知のように、チリの銅公社(CODELCO)は、売り上げの10%が軍部予算となるため、軍部は、銅の生産性向上に躍起になりました。銅鉱山の開発に際しても現場の治安を維持し、外資誘致に一役買いました。ピノチェト時代の軍部による人権侵害は問題ですが、それは軍部の暴走でなく指示体系が整然としていたことが、特徴でした。

また、私はかつて「チリの年金改革とコーポレートガバナンス」に関して調べたことがございます。80年代の年金運用の民営化は、軍部と警察を除いた国民に適用されました。(ただし、導入初期は、選択の余地あり)年金運用機関は、独立性が高かったものの出資元を調べると、チリの有力な「5大家族」に集中していました。また、政府も年金を民営化したもののその運用先については、厳しい規制を加えました。最初の4年間は、チリ国債の購入しか、原則として認めていませんでした。その後、徐々に規制緩和を始めますが、チリ株式市場への投資を認めた90年前後からも、294の上場企業のうち、一定基準を満たした10の企業への投資しか認めませんでした。つまり、この年金改革のお金の流れを辿ると、なぜ、裕福層が、ピノチェトを支持したのか、また、自由化がどのようなものであったのかが、見えてきます。

一方、このことを好意的に見ることもできます。比較的高い貯蓄率と年金改革による国内資本の調達に成功したチリは、国内の有力産業に集中してそれらの資本を投資誘導したとも言えるわけです。現に、そのことで安定した経済成長をチリは90年代から続けています。ただ同時にそのことが、製造業の下請け企業に及ぼすようなトリックルダウンは、引き起こしませんでした。それが、現在の高い失業率の一因にもなっていると思われます。

3) アメリカのラテンアメリカ移民の選挙行動
アメリカのラテンアメリカ移民の選挙行動について、「あまり移民が、対ラテンアメリカ政策に関心がない。なぜなら日頃の生活に追われているから。」というのは、一般化できないのではないかと思います。

米国へのラテンアメリカ移民(7割がメキシコ移民)も歴史が深まり、世代差、地域差が大きくなってきたように見えます。特にカリフォルニアにおいては、The Economist誌も指摘していたように、ラテンアメリカ移民(メキシコ移民)の米国における中産階層への社会移動が報告されています。ただ単に移民の数が増えただけでなく、そうした社会的影響力も踏まえたうえでのヒスパニック系のカリフォルニア州知事や閣僚の誕生があるのだと思われます。実際、カリフォルニアにおけるヒスパニック移民の政治意識はえらく高いものがあります。

また、移民が米国の対ラテンアメリカ政治に大きく選挙行動を影響されないとしたら、それは彼らの多くが(不法移民でなければ)二重国籍を持っていることと、関連すると思います。メキシコをはじめ、多くのラテンアメリカ諸国が、海外在住の国籍保持者に選挙権を与えています。そのことが、母国の政治に目を向かわせ、米国政府に対しては、米国での自分たちの生活保障や社会保障を要求している、と読めるのではないでしょうか。

長くなりましたが、お読みいただいてありがとうございました。また基本的に、こういった作品を投稿してくださったことに感謝しております。どうもありがとうございました。今後とも、よろしくお願い申し上げます。



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2006年01月29日

ラテンアメリカ史研究会出席

d47001aa.jpgラテンアメリカ史研究会出席

本日(2006年1月29日)、ラテンアメリカ史研究会が、東京大法文2号館で開催されたので、出席しました。中米専門の狐崎 知己 教授が、ボリビア大統領選挙において米州機構(OAS)が実施した選挙監視団に日本政府からの派遣員として参加されたということで、ボリビアのモラレス政権誕生の背景を解説してくださいました。題して『「左傾化」した中南米を読む:ボリビア・モラレス政権誕生を手がかりにして』また、恒川 惠市 教授が、ラテンアメリカ全体の中で今回のボリビアをはじめとする南米の左翼政権誕生の意味を開設されました。

午後2時から5時までの予定だったのですが、僕は、迂闊にも1時間遅れてしまいました。そのため、肝心の孤崎先生のプレゼンの大半を聞き逃してしまったのが、残念でした。僕が、到着したときには、ローカルガバナンスにおける地方自治体と住民コミュニティーのキャパシティー・ビルディングについて話していらっしゃいました。結局、全体を通して話が聞けたのは、恒川先生の解説された部分だけだったのですが、その要旨をまとめてみます。

ラテンアメリカの90年代以降は、以下の3点でまとめてみることが出来る。1)新自由主義経済、2)民主化、3)先住民運動。新自由主義による経済政策によって、インフレ低下を経験し、国民が生活向上を実感できるようになった。そして、新自由主義を推進する政策または政党支持に傾いた。だが、その一方で失業増加や、雇用が生み出されない状況で、あらためて新自由主義が、多くの国民の生活を改善しないという判断が、一般的になってきた。面白いのは、かつては階級による組織が進んでいたのだが、現在民族による組織化が進行している。

また、新自由主義の代案が見つからぬまま、とりあえず、新自由主義に反対する左翼政党に投票する勢力が過半数を占める。しかし、こうした左翼政権が興味深いのは、かつてのポピュリストと異なり、財政規律を保っている点である。その一方で、資源の国有化という形でのナショナリズムが進行している。

ベネズエラのチャベスに関しては、ナショナリスティック、ポピュリスティック、ストロング・リーダーという3点で特徴付けられる。しかし、これらを維持するには、財源が必要となる。OPECメンバー国でもあるベネズエラの場合、原油高が、そうした強気な政治姿勢を支えている。インド、中国と言った大国のエネルギー需要が続く限り、こうした傾向はしばらく続くかもしれない。

ラテンアメリカ全体について言えば、アジア諸国に対して、雇用の広がる製造業の競争で遅れをとっているのに、新自由主義導入で効果があるのかどうか、が問われている。現在では、天然資源依存とオリガルキーだけが進行している。

大まかに言えば、上記のような話だったと思います。ところで今回は、日曜日だと言うのに150人もの人たちが、学会に集合していて驚かされました。ラテンアメリカに興味がある人がこんなにいるんだという心強い思いがしました。学生、商社マン(ウァマン)、研究者、開発関係者など、さまざまな分野から出席していました。しかし、質問の時間になると、皆の関心がボリビアの細かい話に集中して、ラテンアメリカ全体にとっての意味や、グローバリゼーションにおける意味といった大きい枠組みの議論には、なりませんでした。あ、あと慶応で教えている友人のY君に、久々に会いました。





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2005年05月09日

SME: Entrepreneurship - Gateway for the global market

March 30, 2005

SME: Entrepreneurship – Gateway for the global market

FRIDAY WORLD: Financial, Private Sector, and Infrastructure (FPSI) Group

Takao Kikuchi

I. Executive Summary

Under the accelerated globalization, one of the key issues for private sector development lies on the linkages between local community and global market as well as linkages with regional market and national market. For instance, infrastructure literally connects two remote areas while FDI and trade promote inflow of technology, information, and skills from industrialized countries to developing countries.

Some big countries like Russia, India, and China (BRICS) have the advantages to attract FDI and trade compared with the other small and less developed countries. In Latin America, it is the case for Brazil and Mexico. Chile and Costa Rica, on the other hand, can also leverage the quality of public institution, human development, and geopolitical condition for the further development whereas their small domestic market.

Other countries, however, don’t seem to have a clear strategy to hasten the further access to global market. We, therefore, present ‘SME: entrepreneurship policy’ as a recipe for medium income countries, especially for Latin America.

Different from the other developing countries, Latin America has an advantage of access to the U.S. market. Three pillars of competitiveness like macroeconomics policy, public institution, and technology have been significantly improved from the 90s. These conditions will work more effectively if they are combined with the entrepreneurial policy which is based on local community development.

Entrepreneurs can be a bridge between local community and global market. They make economic growth more beneficial for the local people of developing countries. Public institutions also benefit from the information and tax revenues which entrepreneurs bring. Local community receives employment, skill - up training, and the future plan.

The good point is even small countries can improve the competitiveness of the country with the leadership of entrepreneurs. Central government can support entrepreneurs by offering management services and incentive structure. (‘incubator’) Agglomeration such as vertical integration of value added chain and horizontal integration of entrepreneurs will improve the efficiency. (‘cluster’)

(Key words: entrepreneur, incubator, cluster, local community, competitiveness, industrial policy, linkages, global market, UN Global Compact)

II. Best Practices

Incubator in Israel
In the 90s, Russian Jewish scientists fled to Israel. They had knowledge of an advanced military science technology. Israel government offered well designed services for these scientists to convert their knowledge into competitive commodities and services. In the incubator the government of Israel offered management services, finance as well as child and women care. Israel government also supported entrepreneurs to merchandise the commodities and services for the U.S. government. As a result, these scientists grew up as successful entrepreneurs. Keys of success was found in basic infrastructures, well educated labor forces, and the effective supports in whole supply chain.

Cluster in India
Information and Communication Technology (ICT) experts returned from the U.S. to Bangalore, India. They brought technology, business practice, and market information from the U.S. These experts got united and cooperated in Bangalore, and they connected Bangalore with the U.S. market. They were successful because they enter the growing global value linkage chain.

III. Policy Recommendation
Public institution, access to finance, human development, and infrastructures are key factors of SME and entrepreneur supports. In addition to this comprehensive approach, there are two different approaches such as poverty reduction economic management and private sector development.

1) Poverty Reduction Economic Management (PREM) approach
This approach is more local community oriented. This focuses on the majority of ordinary entrepreneurs which are labor intensive rather than technology intensive. (eg. Handcrafts and souvenir industry) The most important point is to find or create who connects entrepreneurs with the market. Due to the weak capability of the entrepreneurs, they cannot connect themselves to the global market without external support. Intermediary or catalyst, therefore, is required to support the linkage between entrepreneur and the global market. For instance, NGOs and merchants of the industrialized countries can be helpful and reliable partner for the entrepreneurs of developing countries.

2) Private Sector Development (PSD) approach
This approach has more emphasis on the systematic impact from entrepreneurial success. Elite entrepreneurs can be globally competitive if they receive necessary support. These entrepreneurs are technology intensive rather than labor intensive. (eg. ICT) Key issue of this approach is how to transfer the technology from the industrialized market. People, academic institutions, value chain linkage, FDI, and licensing would be the alternative for the access to cutting – edge technology.
Both approaches have different strategy and different targeted entrepreneurs. While PREM approach targets low tech grass – roots entrepreneurs, PSD approach focuses on more competitive entrepreneurs with high technology. In both ways, domestic link and global link must be set up carefully.

3) Public Institution

Efficiency of public institution can be improved by entrepreneurs. As World Economic Forum indicates, macroeconomic stability, quality of public institutions and technology are the key words of competitiveness. Information which entrepreneurs bring from the global market is useful for the public institution to improve efficiency.

In fact, UN Global Compact (GC) suggests the importance of mutual improvement between private sector and public institution. It is a development proposal with the cooperation of three partners; government, private sector and civil society. GC is implemented at two levels (i.e. international level and local level). In order to achieve GC, entrepreneurs are key players to connect these two levels by selling products or services to global market. Only when entrepreneurs connect to the global market, they can acquire current internal information of the market.

4) Microfinance

It is necessary to keep strengthening microfinance institutions (MFIs) and commercial banks dealing with SME. These financial institutions often need to improve their funding and managerial capacities including the ability to offer more flexible lending schemes while maintaining financial sustainability. On the other hand, providing adequate regulatory framework is also important to make MFIs more transparent. The governments can help strengthen MFIs and establish a better regulatory framework by making use of international development cooperation in the form of direct fund provision and of technical assistance.

5) Technology Transfer (Licensing)

Technology, a critical factor for developing country’s industrialization, can strategically be transferred through licensing agreement (LA). While foreign direct investment brings in various soft technologies, e.g. management skills, marketing ability, etc., as well as hard technologies via spillover effects, LA is a pure purchase of hard technologies. LA is particularly effective when a licensee country prefers to avoid foreign control over domestic firms.

Japan, in its developing period (after Meiji restoration – post WWII), aggressively promoted purchasing foreign technologies. Some of the major success factors include: (1) Japan had adequate capacity to adapt and even improve the imported technologies; (2) Japan had clear policy focus towards which government and business worked closely together (i.e. shipbuilding, automobile, machineries, electronic appliances, etc.); (3) many Western countries were tolerant to license out their technology despite Japan’s stringent measures/restrictions on its technology policy, believing there was a huge technology gap between them.

6) Infrastructure (PPP, Water)

Infrastructure building makes an important contribution to the activity of entrepreneurs as well. Stable and cheap electricity supply enhances efficiency of their production, which is intimately connected with competitiveness. Improved transportation greatly helps reduction in transaction costs, which is another source of increasing competitiveness. Public-private partnership (PPP) in infrastructure, which means division of roles in infrastructure provision, is an effective way to strengthen the services. In general, private competition based upon the market system makes the service provision efficient. Private investment can fill in gaps of public investment, while the public sector can play a crucial role in regulation of the market in order to ensure the free entry. Public service is provided also in the small market where competition does not work.

(Example of Water management)
Sustainable, sufficient water supply and its infrastructure highly depend on its management and maintenance. In some areas private sector intervention is extremely difficult. The water manager has to make an effort to offer an affordable water rate and let the citizens to pay internal and external water charge. A successful example could be found in Chile’s voucher system, and bulk water in Mexico.

7) 7) Human Development
As a study on Human Development, Japan’s postwar experience in secondary technical vocational education and training (STVET) was examined to show the importance of the engagement in STVET as a counterargument to international trend emphasizing general education and primary education. STVET (esp. vocational education at upper secondary schools) in postwar Japan worked effectively to produce a large amount of skilled workers which contributed economic development. Five elements which made STVET successful in postwar Japan are as follows: strong commitment by the government; public-private partnership and involvement of citizens; effective, generalized and localized curriculum; effective certification systems. To universalize the arguments on STVET here, further study is needed.





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Cheel
ラテンアメリカ研究者。民間セクター開発専門家。趣味は歌・絵画・小説・旅行・スポーツ全般。5言語(英語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、日本語)を駆使して仕事を行う。現在アンゴラ、ルアンダ市在住。
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