Cine

2006年01月18日

映画時評スタンドアップ(North County)

85942dc9.jpg映画時評スタンドアップ(North County)

今日、映画「スタンドアップhttp://wwws.warnerbros.co.jp/standup/」を見てきました。これに関しては、珍しく日本語の表題訳「スタンドアップ」の方が英語の原題(North County)よりも優れているように思います。スタンドアップ(少数意見であっても臆せず、真実を述べる。)こそが、テーマであって、North Countyという地味なタイトルよりも魅力あると思います。いずれにせよ、いい映画でした。

これは、鉱山で初めて採用された女性労働者の男性社会からの差別との戦いを描いた映画です。主人公は、高校時代に教師にレイプされて出来た息子ともう一人の娘とともに、暴力夫のもとを逃げ出し、実家に戻ります。そこで、家族を養うために「男の職場」とされていた鉱山労働者となります。

そこで彼女は、数限りないセクハラの嵐を浴びます。困ったことに、それに対して共闘できる仲間が見つかりません。少数派の女性たちも、自分の仕事を守ることに精一杯で、リスクをとって戦うより、迎合する道を選びます。労働組合も名ばかりです。表面的に理解を示した経営者も、不満の表明に対して、辞職勧告をして牙をむきます。それにも関わらず真実を告げる彼女を救ったのは、友人であり、家族でした。

この映画の良いところは、時代背景をきちんと描いているところです。1980年代。米国はレーガン政権で自由化を進め、外国から安い鉱物が輸入され、米国の鉱山労働者の労働条件にしわ寄せがきました。しかも、最高裁の判決で、鉱山も女性を雇うことが義務付けられます。そんな中、男たちは、女性を自分たちの仕事を奪う脅威と見て、迫害するので、その差別の根は単なる性的好奇心よりも深いものがあります。また、当時のセクハラ告発者として名を馳せたアニ−タ・ヒルの画像がテレビで流れるなど細かいところも配慮が行き届いています。

主人公は、私のもっとも大好きな女優シャーリーズ・セロン。(Charlize Theron http://www.charlizetheron.com/)私のBLOGをLIVEDOORでご覧の方は、左脇にも、彼女のサイトへのリンクを見つけられるかと思います。美しいのはもちろんですが、演技力がいい。年をとっても魅力が薄れない女優だと思います。そして、僕の人生の折々の時代感を感じさせてくれる女優です。高貴な女を演じてよし。下品な女を演じてよし。

ある意味、彼女独特の重い人生もパーソナリティーに影響を及ぼしていると思われます。子供の頃、アル中の父が暴れた時に、彼女の目の前で母親が身を守るために、銃で父を撃ち殺したのだそうです。また、南アフリカ出身の彼女は、母国語がアフリカーンス語ですが、とても流暢な英語を話します。その理由を問われたときに、彼女は、とにかくテレビや映画をたくさん見て聞いて、その発音を真似たと言います、ひたすらに。 



cheelend at 23:04|PermalinkComments(5)TrackBack(0)

2005年12月27日

2006年米国公開映画

ce5d8068.jpg2006年米国公開映画

2006年に、米国で公開される映画の中で是非、僕が見てみたいと思う映画を何点か御紹介させていただきます。タイミングを合わせて、ロスアンゼルスまで行ってまとめて見に来ようかな、とも思います。

‘Why we fight’ by writer/director Eugene Jarecki
アイゼンハワー元大統領が残した言葉、「軍産複合体(military - industrial complex)」。今日、4分の3兆円に昇る米国の軍事費が、どのように政治に、そして国民に跳ね返ってくるかを示す映画です。軍需産業は、巨額の政治献金を政治家に送り、政治家は軍需産業保護の道を探ります。一方、軍需産業が雇用を創出することから、政治家に対して選挙区の市民もその政治家に投票を続けます。

‘Looking for comedy in the Muslim World’ by Albert Brooks
3億人以上のムスリム人口に通じるギャグを求めて、監督自ら主演して、インド・パキスタンの主要都市や、山の中をまわります。果たして、アメリカ人コメディアンが、9・11以降、イスラム圏で通じるギャグを示すことが出来るのか、が見せ場です。

‘After innocence’ by director/co-writer Jessica Sanders
レイプ疑惑で冤罪を蒙った43歳(現在)の元陸軍兵士デニスのドキュメンタリー映画。19年、監獄で過ごした後、DNA検査によって、疑惑が晴らされました。しかし、こうした冤罪が晴らされた後も、社会的偏見は根強く、仕事、住居、結婚など人生の基礎を築くのに困難を伴います。場合によっては、犯罪記録から自分の名前がなかなか抹消されない行政手続の落ち度のためでもあります。

米国には220万人の囚人がいますが、数え切れない冤罪で苦しむ人たちがいます。性犯罪者のうち、DNAを受けられるのは、まだ全体の20%に過ぎません。性犯罪被害者の心の傷は、もちろんまず最初に手当てされるべき問題ですが、性急な捜査による冤罪とは他の被害者を生み出しています。ものごとはこうして多面的に見るべきだと教えてくれる映画だと思います。

‘The World’s fastest Indian’ by writer/director Roger Donaldson
「羊たちの沈黙」のロスター教授など、癖のある演技と味のある渋さで定評のあるアンソニー・ホプキンス主演。ニュージーランド出身の実在したバート・ムンロをもとに作られた映画です。ムンロは、自作のクラシックインディアンスタイルのオートバイを完成させ、レースに臨みます。年老いた彼の挑戦に対する周囲の嘲笑を他所に、彼は1967年に世界スピード記録を樹立しました。2005年12月現在、それはいまだに更新されていません。

‘The Sun’ by Alexandr Sokurov
1945年8月15日までの1週間の日本の天皇陛下周辺の動きを追った映画。43編の映画作品中、4本しか、商業的に流通していない伝説のロシア映画作家ソクロフによる映画。尾形イッセー演じる昭和天皇が、細部を似せることによって、天皇に近づけるのでなく、彼の解釈で演じたことが天皇にリアリティをもたらした、と評される演技を是非見てみたいです。

日本にいても、面白い映画が見られるのですが、どちらかというとアジア各国の映画が多いように思います。また、日本の若手映画作家も数多く育っているのですが、政治面で深く切り込んだり、社会面でのドキュメンタリーの名作はテレビの方が映画よりも進んでいる気がします。


cheelend at 12:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年05月22日

Star Wars Episode III

cc936465.jpg映画時評 VI「Star Wars III シスの復讐」

9部作のうち、最後にまとめられた第3部。4部から順に5部、6部…と、9部まで話が、進んだあと、1部に話が戻り、今回の3部でSTAR WARSは、完結した。まだ、今作品を見ていらっしゃらない方も多いと思うので、そういう方は、是非、この記事を読み飛ばしてください。それでも、つい読み進めてしまった方のために、少しぼかした表現で、話をしようと思います。

全体を見終わった感想は、ベストアルバムを聞いたあとのような感じ。もしくは、懐かしのオリンピック総集編を見終わった後のような感じ。特に新しいことは、ないのだが、どうしても見たかったあの名シーンをまとめて見られる快感とでも言えば、よいのでしょうか。既に、9部のうち、8部を見ていて、しかも今後の展開もわかっているわけだから、真新しい話が出てくるわけでは、ありませんでした。

それでも、映画館は、大熱狂の渦。夜10時半からの開演に6時半から、人が並び始めていました。中のトイレにも、売店にも、長蛇の列。映画予告の段階から、会場全体が異様に盛り上がり、久々に映画館で見る映画のよさを味わいました。皆の大好きなキャラクター、ヨーダ(緑色の小さいおじいさん)が活躍したりして、盛り上がる場面では、観衆が喝采を送り、固唾をのむ場面では、大騒ぎした全員が、静かに画面を見つめるといった具合で、楽しくマナーのよい観客とともに、ダイナミックに映画を楽しみました。

2時間半の映画が終わったあとは、拍手の嵐。これは、ジョージ・ルーカスをはじめとするスタッフに20年以上もの間、楽しい作り話を見させてくれてありがとう、といったニュアンスの拍手でした。確かに、文字通り世界中の人々に対して、新作が出るたびに、高まる期待に応えて、これだけ長い間エンターテインメントをつくりだしてきたことは、偉業だと思う。

レイア姫とルークスカイウォーカーの誕生、ダースベイダーに改造させられるシーン、シス(ダークサイドの力で、宇宙制覇と統一を目論む狩猟)の正体、もっとも発達したテクノロジーを仕える本作エピソードIIIと、最初の作品である20年以上前のエピソードIVをつなげるときに、IVが古臭く見えないためにどう工夫するのか、ナイスな脇役(類人猿のチューイや、ヨーダなど)の前歴などが、次々に明かされていきます。

でも、こうしたシーンを見ないでも、全体の話は既に明かされてわかっているので、自らの想像力で話を膨らませた方が楽しいと思われる向きは、見ないのも一つの手か、と思われます。

最後に、一つ、注文をつけたいと思う。ダークサイドの力(怒りや、嫉妬、悲しみなど)の方が、ジェダイ(聖戦士)の用いるポジティブな力よりも、強くなりうるというのは、わかるのだけれど、強い力を求めるアナキンが、ジェダイからダークサイドに、引き込まれていく過程は、もっと丁寧に描いてほしかったと思う。特にアナキンが、方向感覚を失い、盲目的に力にあこがれていく様子は、もうちょっと説得力ある描き方があったと思う。


cheelend at 05:11|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年05月08日

ENRON (Portuguese version)

In order to practice languages I have learnt, I tried to write movie comment for 'ENRON' in Portuguese. If you know Spanish, it may be interesting to try to read it. I guess that you can understand 80 % of the measning. You may also be surprised seeing the similarity between Spanish and Portuguese.

ENRON (Portuguese version)

Hoje foi a cine pra ver uma pelicula d´Enron que aproveitó absencia de vigilanca effectiva.
El tema pode ser interessante, mais essa película no foi tão divertida como eu esperava.
O que é que pasa é que não explicou bem acerca de tema esencial. Somente falou de fenomino superficial. Eu acho que o diretor não posso ter tempo pra profundizar o tema. Espeiro que próxima vez
ele analiza a situação melhor.


cheelend at 08:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

映画時評「ENRON]

映画時評4「ENRON」

映画「ENRON」を見てきました。予想通りのアプローチで、失望もしませんでしたが、感動もしませんでした。ENRONスキャンダルは、なぜ、起きたか、という問いに対して、ざくっとした大雑把な答えしか、出せていないのが、その理由です。経営陣、会計担当者、担当弁護士、担当アナリスト、トレーダーが、皆、ENRONの株価が、上昇し続けることによって、利益を得るため、本来の役割を果たさず、チェックアンドバランスが、働かなかった、と言います。では、なぜ、それが、ENRONで、長期的に続いたのか、問題の本質は、何か、という深い切り込みは、なかったように思います。

映画では、将来の架空の数字を皆が信じ、一握りのカリスマ経営陣の言葉を皆が信じ、考えることを止めてしまったことが、原因だと、いいます。しかし、それが、なぜ、起きたのかが、よくわかりませんでした。カリフォルニアの規制緩和および民営化に乗じ、同州の電力を握ったENRONは、取引実績を挙げたいエゴから、故意にトレーダーが、停電を起こし、市場化された電力価格を吊り上げました。インドでの投資案件が明らかに失敗だったにも関わらず、それを伏せて、いわゆる架空の「大本営発表」を流したにも関わらず、皆がそれを信じ、または、受け入れ、あるいは、利用して実態と離れ、株価は、一人歩きして行きました。

そうしたことが、まかり通ったのは、チャップリンが、「独裁者時代」で言ったように、嘘は大きいほど、ばれないからなのか。規制緩和をしたカリフォルニア州政府は、なぜ、それを止められなかったのか。または、どのような規制緩和であれば、ENRONの再来を防げるのか、そうしたことは、映画からは、わかりませんでした。市場価格が、実際の成長のためのファンダメンタルズとかけ離れたことが、問題だったのか、先物投資のもつ投機性が、問題だったのか、疑問はつきません。

こうした疑問が尽きない原因の一つは、これが、ENRON個別の問題ではなく、もっと大きな市場経済のデザインそのものに関わる問題に見えるからです。しかし、この映画から、言えることは、人間、欲には、弱いのう、ということと、もっとも被害を蒙ったのは、カリフォルニア住民とENRON労働者であった、という点だと思います。あえて、もう一つ、この映画の貢献をあげれば、考えるための素材を与えてくれたことだと思います。こうした映画こそ、続編で、より深く突っ込んで、その映画の真価を高めて欲しいです。




cheelend at 05:16|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年05月02日

SEVEN SAMURAI

映画時評3「SEVEN SAMURAI(7人の侍)」

米国では、映画が、2時間を超すと、客の集中力が、落ちるうえ、収益上も、客の回転数が下がってしまいます。そのため、よっぽど成功が、見込める続編物の映画以外は、2時間以内にカットされてしまいます。この「7人の侍」は、3時間半の大作ですが、間に休憩をはさんで、きっちり、上映してくれたのには、頭が下がりました。さて、中身についてですが、恥ずかしながら、私にとって、今回が、「7人の侍」を最初から最後まで通して見るのは、初めてでした。そこで、もう、ご存知の方も多いとは、思うのですが、あえて、概略をご紹介します。

年貢の取立てに加え、飢饉、旱魃、そして盗賊の襲撃におびえる山間の寒村。収穫を前に、予想される盗賊の襲撃に対して、侍を雇うことで、村を自衛しようとします。だまされたり、馬鹿にされたり、苦労しながらも、何とか、7人の侍を食事と宿を無償で提供するだけの条件で、集めてきます。
侍のリーダーの人柄に引かれてくるもの、貧しい農民を救いたいとの義に燃えるもの、戦いそのものが、好きなものなど、動機も経歴も、さまざまな腕の立つ7人が、村人を鍛え、守りとなる壁を作り、知力と体力を尽くし、何の褒章もない盗賊との戦いに挑んでいきます。

映画としての構図、配置などに関しては、故伊丹重三も、語っていたし、いろいろなところに書かれているので、今回は、省きます。「世界のミフネ」と少なくとも、日本では、言わしめた三船敏郎ですが、役どころが、おいしい、花をとりやすいと言うことも、評価に加える必要が、あります。しかし、それでも、あふれんばかりの暴れっぷりで、彼が、出てくると白黒の映画なのに、急に、ばっと、画面が、明るくなります。役の上でも、映画の深みを増すためにも、内容が、小さくまとまろうとすると、三船扮する菊千代が、「農民っていうのはなあ、せこくて、汚くて、びくびくして、卑屈でずるくて、そんな神聖なものじゃ、ねえんだよ。でも、一体、誰が、そうさせたんだ。」などの問題発言で、いい意味で、物議を醸します。

リーダーである志村喬が、「若いうちは、戦で名をあげ、世に出て、そのうち、一国一城の主になることを考えたがるものじゃ。しかしな、そうやって、夢を追っているうちに、親は、なくなり、家族とも離れ、気がつけば、ほれ、この通り、髪に白いものが、混じっている。ここにいるやつらは、皆、そうしたことに覚えがあるはずじゃ。お前は、まだ若い。そうした夢を見るのも良いが、何も死に急ぐことは、なかろう。」と言ったり、日本の侍といった特殊な条件を越えて、滋養のあるセリフが、たくさん出てくるところも、魅力の一つだと思います。

http://www.landmarktheatres.com/Films/films_frameset.asp?id=9268




cheelend at 02:24|PermalinkComments(0)TrackBack(1)

WALK ON WATER

映画時評 2「Walk on Water」

本日は、イスラエル映画「Walk on Water」をご紹介しようと思います。映画は、イスラエルの情報エージェント、「モサド」の凄腕EYALが、ハマスのリーダー格を暗殺するところから、始まります。次のミッションは、ナチスの残骸が、アルゼンチンに流れ、生存しているという情報を確認することです。彼の孫のうち、姉は、イスラエル在住で、弟は、ベルリンに住んでいます。主人公は、弟が、姉をイスラエルに訪ねてくる機会を捉え、旅行代理店のサービスを装って、諜報活動に入ります。

常に、自爆テロの脅威にさらされる一方で、暗殺を重ねる主人公。そうした重みに耐えかねる妻など、「007」が、すっかり、ギャグ映画になってしまったのに対して、この映画では、きちんと人間が描かれていると思います。スパイ活動が、ハイテクの奇抜さに頼りすぎていないところも、好感が持てました。また、「モサド」というのも、英国のMI6や、米国のCIAが、すっかり、官僚組織として肥大化する一方で、効率的に、情報を政策決定レベルまであげることが、出来なかったのを見るにつけ、興味をそそる組織です。大の大人が、しかも、アカデミックなことを少しでも、かじるものが、こういうことを書くのは、不謹慎のそしりをまぬがれませんが、それでも、やはり、こういったテーマは、わくわく血が騒ぐのを禁じえません。

ちなみに、題字の「Walk on Water」は、映画を見るとわかりますが、「不可能に挑戦する」という意味で、使われています。キブツや、死海、イスラエルのフォークダンス、嘆きの壁など、観光的サービスも満点で、監督の遊び心を感じました。

概要
http://www.landmarktheatres.com/Films/films_frameset.asp?id=43203
http://www.walkonwaterthemovie.com/




cheelend at 02:21|PermalinkComments(3)TrackBack(1)
profile
Cheel
ラテンアメリカ研究者。民間セクター開発専門家。趣味は歌・絵画・小説・旅行・スポーツ全般。5言語(英語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、日本語)を駆使して仕事を行う。現在アンゴラ、ルアンダ市在住。
Recent Comments
Monthly archive
記事検索
livedoor プロフィール