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有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

Pei Chui Too, Guo Hao Chan, Ya Lin Tnay, Hajime Hirao,* and Shunsuke Chiba*
Angew. Chem. Int. Ed. 55, 3719 (2016). DOI: 10.1002/anie.201600305
(オープンアクセス)

 ☆NaHでヒドリド還元
 水素化ナトリウム(NaH)は、アルコールなど酸性度の高いプロトンを引き抜く試薬として、日常的に用いられる試薬です。このNaHだけで、アルコールの酸化が行えるという謎の論文が2009年のJACSに掲載され、有機化学界が騒動になったことをご記憶の方も多いと思います。 結局論文は撤回され、何だったんだあれはという話になってしまいましたが。

 そしてこのほど、今度はNaHで還元ができるという報告がなされました。著者はシンガポール・南洋工科大学の千葉俊介および平尾一らのグループです。

 ことの発端は、NaHでジフェニルアセトニトリルのα位プロトンを引き抜き、メチル化する実験から始まりました。この時、目的としたメチル化体の他に、シアノ基が脱離した1,1-ジフェニルエタンが25%生成していたのです。
NaHred1

 この発見を元に条件を最適化していったところ、NaH2当量、NaIまたはLiI1当量の存在下で、ニトリルが還元されて水素に置換されることがわかりました。ただし、α位にフェニル基がついている基質であることが必須です。反応は遅くなりますが、LiIを触媒量(0.2当量)に減らしても反応は完結します。LiIの代わりにLiClやLiBrを添加するのでは、全く反応が進行しません。

 還元されるのはニトリルだけではなく、アミドやラクタムもアルデヒドへ還元されます。ただし、アルデヒドやエステルは還元がうまく進行せず、複雑化してしまうようです。

NaHRed2

 論文ではメカニズムの考察などもなされています。条件はマイルドなので、他の還元剤が使えないケースなど、検討してみる価値がありそうです。しかしどこの実験室にもありそうなシンプルな試薬に、まだこうした新しい反応性が見つかってくるわけで、有機化学にはまだ気づいていないことがたくさんあるのだなと思わされます。

Patrick J. Moon, Heather M. Halperin, and Rylan J. Lundgren*
Angew. Chem. Int. Ed., Early View DOI:10.1002/anie.201510558

 ☆C-C結合も作れるあの反応
 芳香族アミンやエーテルを作る反応としては、古くからUllmannカップリングが用いられてきました。ハロゲン化アリールとアミン(あるいはフェノール)を、過剰量の銅粉あるいは銅塩とともに加熱するというもので、強い条件を必要とする上に精製が面倒であるなど、欠点の多い反応でした。

 しかし1998年、Chanら、Evansら、Lamらの3グループは同時に、この反応の優れた変法を報告しました(総説)。ハロゲン化アリールの代わりにアリールボロン酸を用い、Cu(II)塩の存在下反応を行なうというもので、Ullmannカップリングよりずっと温和な条件で進行する上、処理も楽であるなど優れた反応です。求核剤としては、アミンやフェノールの他、ヘテロ環やアミドの窒素、チオールなども利用可能です。筆者も現役時代、よくお世話になりました。

CEL

 この報告から18年を経て、この条件がC-C結合生成にも使えることが報告されました。下図のように、マロン酸エステルのエノラートを求核剤に用いて、アリール化が行えるのだそうです。30℃、48時間で収率は86%と良好です。銅塩はCu(OTf)2、塩基はトリエチルアミンが最も適切で、酢酸セシウムなしでは収率が低下します。

C-C

 収率はやや低下しますが、2-アルキルマロン酸エステルでも反応は進行し、4級炭素が構築できます。α-スルホニル酢酸エステルなど、電子求引基のついたエステルも利用可能です。

 生成物のフェニルマロン酸エステルは脱炭酸によって、合成する手段が少ないアリール酢酸へと変換できますから、非常に有用な反応といえそうです。今後、さらに適用範囲が広がることを期待したいところです。

Anamitra Chatterjee, Hendrik Mallin, Juliane Klehr, Jaicy Vallapurackal, Aaron D. Finke, Laura Vera, May Marsh and Thomas R. Ward*
Chem. Sci., 2016,7, 673-677 DOI: 10.1039/C5SC03116H

 ☆人工酵素で鈴木-宮浦カップリング
  パラジウム触媒と酵素は同じ触媒といいながらまるで縁遠いと思えますが、この両者を融合させ、鈴木-宮浦カップリングを触媒する人工酵素「スズキアーゼ」を創り出したという報告です。

 タンパク質の一種ストレプトアビジンは、ビオチン分子と極めて強く結合することが知られています。 この際、ビオチンのカルボン酸部分は、ストレプトアビジンの外部にはみ出す形になります。そこで、このカルボン酸に各種官能基を導入して利用する手法は、ケミカルバイオロジーの分野でよく用いられています。

 
biotin
 著者らはこれを利用し、ストレプトアビジン表面にパラジウム錯体を結合させ、不斉鈴木-宮浦カップリングを行なえる触媒を作ることを考えました。下図のように、軸不斉を持ったビナフチル骨格を作る反応です。

Suzukimiyaura

 著者らはパラジウム錯体をビオチンと結びつけたものを用意し、ストレプトアビジンと結合させて鈴木-宮浦カップリングを行なって不斉収率などを調べています。数種のパラジウム錯体を用いた他、結合部位周辺のアミノ酸を変化させたストレプトアビジンと組み合わせて検討し、最適の触媒を選び出しています。結果、90%ee、TON(触媒の回転数)50という「スズキアーゼ」を創り出すことに成功しています。

suzukiasecore
「スズキアーゼ」触媒中心部分。青緑色の球がパラジウム、オレンジがリン。

 こうした反応では、タンパク質が変性しない反応条件でなければなりませんし、コストや管理の手間など、いろいろ制約がありそうではあります。また、触媒を最適化するための合理的な戦略を立てるのも、現状では難しそうです。とはいえコンセプトとしては面白く、生体内で働く人工触媒という夢に近づくための、重要な武器ともなりそうです。

Stephen L. Bearne* J. Chem. Educ., 2015,92,1566.

 磁石を利用したスターラーは、Arthur Rosingerという人物が1944年に特許を取ったものなのだそうです。以来70年以上にわたり、ノーベル賞化学者から筆者のような者に至るまで、あらゆる実験化学者がスターラーと撹拌子のお世話になってきました。

Stirrer


  この撹拌子というもの、反応の最中はよいのですが、終了後の処理の際にしばしば問題を引き起こします。フラスコから中の溶液を移す際に落下してガラス器具を割ったり、大事な溶液を跳ね飛ばしたりといった悲劇は、誰しも経験したところでしょう。

 柔らかいテフロン棒の先に、やはりテフロンで覆われた磁石をつけた「撹拌子取り出し棒」も売られていますが、これも 撹拌子が大きくなると落下&フラスコ破損の恐れがある上、溶液内に突っ込むため汚染の危険もあります。さらにいえば、2リットルくらいの大きなフラスコになると、この取り出し棒をフラスコ内に落っことし、ミイラ取りがミイラとなる惨劇もなしとしません。

  この論文で著者らは、新たな撹拌子の取り出し法を報告しています。引き出しのツマミのような形をした、冷蔵庫にメモを貼り付けるための希土類磁石を利用して、フラスコの外からガラス越しに撹拌子をくっつけて固定し、その間に液体をフラスコから出して処理するというものです。日本であれば、100円ショップなどでもネオジム磁石が売られていますので、これを利用する手もありそうです。 

 これに対し、同じJ. Chem. Educ.誌で、S. L. Bearneからコメントがありました。彼らは、壊れたハードディスクからネオジム磁石を取り出し、これを撹拌子固定に使っているということです。こちらも、取り出しさえできるなら安上がりな方法です。

 こんなの至って普通じゃん、という方も多いと思います。こんな情報でも論文になるのだなあと面白く思ったので、取り上げてみました。自分の研究室ではもっといい方法を使っているぞという方がおられたら、ぜひ投稿してみてはいかがでしょうか。

Emily G. Mackay, Christopher G. Newton, Henry Toombs-Ruane, Erik Jan Lindeboom, Thomas Fallon, Anthony C. Willis, Michael N. Paddon-Row*, and Michael S. Sherburn *

 ☆幻の炭化水素、合成さる
  ラジアレンと呼ばれる一群の分子があります。下図に示すように、環を成した炭素全てから、オレフィンが外へ向けて突き出したような分子です。放射状(radial)の構造であるため、この名があります。

radialenes

 これらラジアレン類のうち、3員環のものは1965年に、4員環のものは1962年に、6員環のものは1976年とかなり昔に合成されていました。 ただひとつ、5員環の[5]ラジアレンだけが難物で、長くその合成は実現していませんでした。合成しようとすると、互いに結合してポリマー化してしまうため、純粋な分離は不可能だったのです。

 著者らはこのほど、初めて[5]ラジアレンの合成に成功しました。ジエン2ヶ所を鉄カルボニル錯体として保護した上で環化し、骨格を形成した後で酸化的に鉄を脱離させ、目的物を得ています。生成した[5]ラジアレンは極めて不安定で、-20℃で30μMという低濃度でも、半減期16分で壊れてゆくため、NMRなどでも全くピークは観測できません。結局、-78℃で反応を行なうことで、NMRでの観測に成功しています。

 論文では、[5]ラジアレンのコンフォメーション、ポリマー化のメカニズムなどについても詳細に考察しています。[5]ラジアレンはフラーレンの部分構造とみなすこともでき、その性質の解明は炭化水素のみならず炭素クラスターの化学にも影響を与えそうです。

岡本太郎・著 光文社

◆芸術とは何か?
本書は、前衛芸術家として知られる岡本太郎 [1] 氏が1954年(おおよそ60年前)に記した著作である(1999年に文庫化)。芸術とは何か、をこれほどに明瞭に語った著作は他に類を見ないのではないかと思う。

 さて、芸術とは何であろうか?諸説あるが、芸術とは何らかのものづくりを介して、ものづくりをする者とそれを鑑賞する者との間で相互作用することで、何らかの精神的・物的な変動を得ようとする活動を示すものとされる。我々サイエンティストやエンジニアにとって、以上の定義は中々に難解なものである。

 例えば、誰もが知るであろうゴッホやピカソの創作物を見ると、何が良いのか分からない、我々の専門外の専門家と称する者が良いというのであれば(多分)良いものであろう、と思う者が多いのではないだろうか。ゲイジュツは難解で、天才的な人物(あるいは狂人)が、感性の赴くままに行うもの、一部の者にしか分からない深遠なもの、と思うのは無理もない。そもそも科学や工学といった体系と芸術の体系が目的とするものは異なるため(共通する点もあるかと思われるが)であろう。

 科学とは、我々を取り巻く世界を支配する理(ことわり)が何かを紐解く手法の開発と理論の構築が目的で営まれ、工学は科学で得られた知見を利用して何らかの利得を得ることを目的に営まれているのに対し、芸術は何のために営まれているかが明確に定義できないのである(定義すること自体が、自由をベースとする芸術の在り方に反するものであろう)。

 我々は芸術との向き合い方を学校では教わることは無かったし(本書にもあるが、学校における美術という教科で芸術を学ぶことは難しいし、そもそも芸術は教わったり、教える類のものではないかもしれないからである)、それを日常の生活で実践する場は非常に限られている。また、美を定量的に判断する明確な基準は現状では存在しない。定性と定量という概念を明確に使い分ける習慣があるサイエンティストやエンジニアにとって、芸術と相互作用することは難しいのである。

 本書は、そんな難解な芸術とは何かを清々しいほどに語り、言い切っている。それが何かであるかは、読者個々人によって様々な解釈があるであろうし、読者の解釈が岡本氏の考え(信念ともいえる)と一致するとも限らないため本書の記述にゆずるが、筆者(RouteYOSAKU)が本書を読んだ感想として、サイエンティストやエンジニアが芸術をどこか遠い国の話のように扱うことは非常にもったいない話ではないかと思った。以上から、本書評を書くに至った次第である。

◆美と科学・工学の関係
 かつて柳宗悦 [2] という美学者が民藝運動を提唱している。日常生活における生活道具を民藝といい、美術品に匹敵する美しさがあると提唱し、美は生活の中にあると語ったとのことである。以上をまとめて、「用の美」と表現したとのこと。

 私はこの話を聞いて、“工場萌え [3] ”であるとか空気抵抗を減らすための“流線形”の美しさなどに思いを馳せた。機能を突き詰め、無駄な部分を徹底して省くと、なぜか最終的には美しいものに仕上がるのである。その美しさは科学的、工学的理論に根差したものであるため普遍的なものであろう。そういった科学的、工学的創作物が人々に美しさという感情を惹起させるというのは実に興味深いことではないだろうか。

 さて、逆に「美の用」はあるのだろうか。色々と伝説的な話を聞くと、どうも「美の用」は存在するようである。例えば、BINAP触媒を開発した野依氏は、BINAP分子が非常に美しい分子構造であるために高い機能があるはずであると決めつけ、それにこだわって研究を進めた結果、ノーベル賞の受章に至るほどの高性能の触媒の開発に至ったとのことである [4] 。新幹線の開発にあたって、高性能な形状の車両は見た目に美しい流線形であるはずという信念があったとの逸話もある [5] (高性能なものが美しい形だった、ではなく、美しい形状のものが高性能なはず、という開発である)。

 これは個人的な話であるが、とある百戦錬磨のプラントエンジニアに聞いた話では、真に高機能的なプラントは見た目にカッコイイものになるはずであり、不格好なプラントを提案されたらその時点で再設計の検討を命ずるとのことであった。

 少し話は逸れたものとなるが、自然界においても、設計するという“意図・意志”があったかどうかは別にして、結果的に自然淘汰を経て、我々が見て美しいと感ずるポルフィリンやフラーレン [6] といった分子が何食わぬ顔で存在している。美は用たりうるのである。

 私は以上の事実を考えるに、サイエンティストやエンジニアであっても芸術的な素養は必要なものであると思う。科学や工学を利用した芸術といったものは以前よりみられた動きであるが [7] 、芸術的な感性に基づくセレンディピティを起点とした科学や工学があってもいいのではないか。現にそういったこだわりが画期的な成果を生んだことあったことは先述のとおりである。

 科学の発展には限界があるのではないかとの説 [8] があり、シンギュラリティ [9] に人類が直面するかもしれないという昨今、ものごとのとらえ方、考え方、感性はますます重要になりつつあるように思われる。 以上のような美的感性を醸成するという点において、本書は極めて有用なものと思う。是非とも本書を読み、美術館に行って難解な芸術品と格闘し、新たな感性を醸成して、研究に挑んでみてはどうか、と考える。

◆脚注
[1] “太陽の塔”などの創作で知られる芸術家。「芸術は爆発だ」といった流行語を残したことでも知られる
[2] 明治から昭和時代にかけて民藝運動を起こした思想家、美学家
[3] コンビナートや工場などの重厚な構造に美を見出す動きのこと。近年、観光等で注目されている
[4] 参考:時代を画した「美しい分子」(佐藤健太郎、「化学と工業」2012年2月号、PDFファイル) 
[5] 参考:プロジェクトX 挑戦者たち 執念が生んだ新幹線 〜老友90歳・飛行機が姿を変えた〜 [DVD]
[6] 参考:http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/65778
[7] 芸術の世界ではモダニズムやデザインといわれる領域。大学では芸術工学部などで学ぶことができる
[8] 参考:http://www.nature.com/nature/journal/v508/n7495/full/508186a.html
[9] 技術的特異点と訳される。狭義では、2045年にコンピュータが人類の知能を超えるということ

Bruno C. Barista and Oliver Steinbock
Chem. Commun. 2015, Advanced Article DOI: 10.1039/c5cc04724b

 ☆「化学の植物園」の作り方
タイトルのChemical gardenという言葉を見かけて,それは一体どのようなものだろうかと興味を持ったので,取り上げることにしました.Silica gardenという言い方もあり,本来は核となる小さな塩の粒を,ケイ酸塩溶液(いわゆる水ガラス)に置くことよって得られる,植物のような形をした構造体を意味しています.銅,鉄,ニッケル,コバルトなど各種の遷移金属塩を用いることで,色とりどりの枝を成長させることもできます.


ケミカルガーデンのタイムラプス動画

近年ではもっぱら教育目的で作られることが多いそうですが,コロイドと溶液における沈殿やゲル膜透過などの現象として追うことによって金属の腐食やセメントの加水などについての理解が深まるため,工業的な意義もあるといいます.

この論文では種々の金属イオンと水酸化ナトリウムを反応させることで,ケイ酸塩がなくてもChemical gardenを作製することができるという新たな知見を報告しています. 作製方法はいたってシンプルで,金属塩の溶液に水酸化ナトリウム溶液を細いテフロンチューブから一定流速で上向きにインジェクトするだけです.

本研究で作成されたチューブ状の金属水酸化物の構造体のいくつかの例のイラストを下に示しました.なかでも詳しくは説明されていませんが,バナジウムについて振動現象(溶解と成長を繰り返す)が観察されているのは特に興味深いことだと思いました.ただし,全体的に成長の反応過程について流速を変化させたり溶解度を考慮するなどして評価を試みているものの,なかなかすっきりとした系統的な結論には至っていないようです.

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理解するのは容易でない反応によって作られる構造体ではありますが,以下に挙げた参考文献にも多種多様(一種異様?)なChemical gardenの色とりどりの写真が掲載されています.安価に入手できる一般的な試薬ばかりを使った実験ですし,日頃つい忘れそうになる化学ならではの遊び心を思い出させてくれます.

<参考>
L. M. Barge, et al., Chem. Rev. 2015, DOI: 10.1021/acs.chemrev.5b00014.
J. H. E. Cartwright et al., Langmuir, 2011, 27, 3286-3293.

Jeremy D. Griffin, Mary A. Zeller, and David A. Nicewicz *
J. Am. Chem. Soc., ASAP DOI: 10.1021/jacs.5b07770 

 ☆触媒的脱炭酸
  カルボン酸(R-CO2H)を脱炭酸し、R-Hに変換する反応としては、Barton脱カルボキシル化反応が有名です。カルボン酸を、N‐ヒドロキシ‐2‐チオピリドンのエステルとし、ラジカル的に還元するという手法です。

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Barton脱カルボキシル化

   この方法は広く使われてきましたが、毒性のあるスズ化合物を使うこと、試薬がどうしても1当量以上必要であることなど、欠点もある反応です。今回の論文で著者らは、金属化合物を一切使わず、触媒的に脱カルボキシル化を行なうことに成功しました。

  反応のミソになるのは、2004年に福住らが報告したアクリジニウム誘導体です。この化合物は、光の照射により、長寿命のラジカルを発生します。これがカルボン酸部分と反応してラジカル(R-COO・)を発生し、二酸化炭素を脱離した後、共存するジスルフィドの作用によって還元され、脱炭酸体を与えます。

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  アクリジニウムを5mol%、ジフェニルジスルフィドを10mol%、DIPEAを20mol%加え、450nmLEDを照射しつつ、CF3CH2OH中撹拌することで、容易に脱炭酸が起こります。広い範囲の基質に適用でき、実験操作も容易なのはメリットです。記憶に値する反応ではないでしょうか。

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