Jay D. Keasling, Abraham Mendoza & Phil S. Baran
Nature 492, 188–189 doi:10.1038/492188a

 ☆合成生物か、有機合成か?
 Nature誌News&Viewsから。 最近、遺伝子組み換えによって細菌のDNAを改変し、特定の化合物を大量生産させる技術が大きく進展しています。この、いわゆる「合成生物学的」生産法と、有機合成による化合物生産のどちらが優れているか、前者をJ. D. Keasling、後者をA. MendozaとP. S. Baranが代表して誌上ディベートを行っています。

VS
 
  合成生物学的手法では、希少な医薬化合物や燃料を作る細菌から遺伝子を取り出し、量産が可能であること、中間体の精製や保護・脱保護の手間がないため環境にやさしいこと、光学的に純粋なものが得られること、最終物の分離が容易であることなどを利点として挙げています。

 一方有機合成では、必要な化合物を必要な量だけ供給する手法が確立していること、天然物をヒントに構造を変換し、より優れた物質を創り出せること、 有機半導体や、超分子化学・ケミカルバイオロジーなどに必要な非天然物を自在にデザインして合成できることなどが挙がっています。

 もちろん両手法はどちらがより優れているといったものではなく、それぞれ一長一短があります。どちらかがどちらかを駆逐するというようなものでなく、互いに短所を補い合いながら発展していく性質のものでしょう。両者の融合したところに、新たな可能性が見えてくるだろうとも思います。

 それにしても、こういう風に比べられるようになってきたか、有機合成を代表して語る人物は大御所たちでなくBaranなのか……と、いろいろ時代の流れを感じる議論ではありました。