Yu Yamashita, Yoichi Hirano, Dr. Akiomi Takada, Dr. Hiroshi Takikawa, Prof. Dr. Keisuke Suzuki*
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.201301591  

 ☆期待の抗生物質、合成さる
 BE-43472Bは、1996年に万有製薬のグループが最初に発見した化合物で、抗腫瘍作用の他、各種抗生物質の効かない多剤耐性病原菌(MRSA、VREなど)に対しても効果を持つことから期待を受けている化合物です。下図に示す通り、2つのアントラキノン骨格がT字型にくっついたような、非常に興味深い構造を持ちます。すでに天然物全合成の第一人者・Nicolaou教授が2009年に合成を達成しており、解説などもされているので興味ある方はこちらをどうぞ。

BE-43472B

 結合部は極めて混み合っており、この部分をどう作るかが一つの山になります。またもうひとつ、黄色で示した三級ヒドロキシ基は極めて脱離しやすく、この部分は長い工程に耐えませんから、最終段階に近いところで導入してやる必要があります。
 
 アントラキノン骨格同士を立体選択的に結合させるという難題は、鈴木教授お得意のピナコール転位で実現しています。歌舞伎であれば大向うから掛け声が入るところですね。

pinacol

 最後のヒドロキシ基導入も非常な苦労があったようですが、最終的にはNaBH4-PhSeSePhという組み合わせによって、エポキシドを還元的に開くことで解決しています。このあたり、詳しくはぜひ論文の方をご覧ください。

 最終的に27段階、全収率3.0%で全合成が完成しています。 苦労はあったと思いますが、満足行く合成ルートに仕上げた努力に、拍手を送りたいと思います。