ChemASAP

有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

カテゴリ:保護基

Keisuke Yoshida, Ken-ichi Takao
Tetrahedron Letters 55 (2014) 6861–6863 DOI:10.1016/j.tetlet.2014.10.087

PPYO

 シリル基(R3Si-)は、1972年にCoreyによって報告されて以来、アルコールの保護基として最もよく用いられるものの一つです。ケイ素上の置換基のサイズによって、外しやすさを制御できる点が、この保護基の大きなアドバンテージでしょう。

 通常のシリル化は、イミダゾールを触媒として(あるいは当量)用い、塩基存在下で各種シリルクロリドをアルコールに作用させて導入します。ただし、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基などのように大きな置換基を持つものでは、立体障害の大きいアルコールへの導入は難しくなります。こうした場合、シリル化剤としてシリルトリフラート(R3SiOTf)を用い、2,6-ルチジンを塩基として使用する方法がよく用いられます。

 今回著者らは、 触媒として4-ピロリジノピリジン-N-オキシド(PPYO)を用いると、スムーズにTBDPS化が行えることを報告しました。条件としては、TBDPSClを1.3当量、PPYOを0.2当量、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を1.5当量、塩化メチレン中室温で反応させる、というごく温和なものです。
silylation

 他の立体障害の大きな二級アルコール類も、スムーズにTBDPS化されています。PPYOでなく、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いた場合は8%、4-ジメチルアミノピリジン-N-オキシド(DMAPO)を用いた場合は71%しか生成物が得られていませんから、その差は明らかです。他にも応用が利きそうですし、記憶に値する手法ではないでしょうか。

Shino Manabe,* Masanori Yamaguchi, and Yukishige Ito*
Chem. Commun., 2013, Accepted Manuscript DOI: 10.1039/C3CC43968B

 ☆優しくしないと外れない保護基
 ヒドロキシ基の新たな保護基としてスルホニルカーバメートが報告されました。保護はスルホニルイソシアネートと室温で30分~1時間混ぜるだけ、また脱保護もピリジンとメタノールの混合溶媒中で少し加熱するだけと、どちらも温和な条件かつ簡便な操作です。また立体的に嵩高い第三級アルコールも問題なく保護可能で、官能基共存性もよいようです。
protect

 この保護基の性質は「弱塩基に弱いけど強塩基には強い」。上記のようにピリジン溶液で外れるのに、水酸化ナトリウム水溶液や、DBU/MeOHなどには耐えます。一見すると不思議な感じがしますが、トリックはN上の水素にあるようです。弱塩基性条件だとカルボニル基への求核攻撃により脱保護されますが、隣接のスルホニル基の影響でN上水素の酸性度が上がっているため、強塩基性条件だとカルボニル基への求核攻撃より先にN上水素の脱プロトン化が起こり、求核攻撃が抑えられると筆者らは考察しています。実際に筆者らはN上をアルキル化した場合、強塩基性条件でも脱保護ができることを示しています。

 また筆者らはBz基、Bn基、シリル基、チオアセタールといった様々な保護基を持つ糖を用いて、スルホニルカーバメートのorthogonalな反応性を示しています。スルホニルカーバメートの着脱は他の保護基に影響はなく、またその逆も然り。ただしFmoc基だけはスルホニルカーバメートの脱保護条件で先に外れてしまうようです。

 しかし、よく糖類の合成問題になる保護基の転位が観測されていないこと、脱保護の時にカルボニル基のα位のラセミ化が起こらないこと、酸化反応やGrignard反応などの官能基変換反応にも耐えることなど、スルホニルカーバメートは合成化学上好ましい性質を充分備えていると言えます。今後、天然物や糖などの合成に多大な威力を発揮しそうです。

・関連書籍

このページのトップヘ