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有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

カテゴリ:抽出

Sayed M. Badawy, A. A. Nayl, R. A. El Khashab, M. A. El-Khateeb
J. Mater. Cycles Waste Manag. Online first articles DOI: 10.1007/s10163-013-0213-y

 ☆携帯電話からコバルトを回収
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 筆者の幼少期には影も形もなかった携帯電話やスマートフォンは,いまや驚異的な進歩を遂げ,私たちの生活に密着したツールとして定着しています.

 それを支えるバッテリーの正極材料,LiCoO2が今回のテーマです.コバルトはレアメタルの一つで,ザンビアのコバルトなどは紛争鉱物とも呼ばれているため,リサイクル方法の開発は大変重要だといえるでしょう.そのコバルトを,使用済みバッテリーから抽出しようという試みです.

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 上図右に示したキレート樹脂を合成し,左の手順でコバルトを実験室スケールで回収しました.アルカリ金属やアルカリ土類金属は取り込まないため,選択性が高く,コスト的にも良い方法だと分かりました.酸性条件での樹脂の安定性が低いことが難点なので今後これを解決していきたいということです.

 先日,日本でも海水中からリチウムを回収する技術が開発され,話題を呼びました(こちら).元素は決して生み出し得ない資源であり,こうした回収技術はさらに脚光を浴びてゆくと思われます.

<参考> *学研の図鑑 世界をかたちづくる「基本」がわかる!美しい元素 ,学研教育出版,2013,p26-27.

Michele Galleta, Stefano Scaravaggi, Elena Macerata, Antonino Famulari, Andrea Mele, Walter Panzeri, Francesco Sansone, Alessandro Casnati* and Mario Mariani*
Dalton Trans. Advanced Article DOI: 10.1039/c3dt52104d

 ☆ランタノイド・アクチノイドを分ける
 この論文の緒言には,本研究が使用済み核燃料処理を視野に入れたものであると書かれています.興味深い背景についても述べられていますが,ここでは化学的性質が似ていて,分離困難なランタノイド/アクチノイドをキレート抽出・分離するというテーマを,基礎的な観点から垣間みる目的で,ご紹介したいと思います.


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 具体的には硝酸水溶液中のAm(III)とEu(III)を分離抽出する方法について検討しています.今回,新規に合成した配位子を上図に示しました.Am,Euともに有機溶媒中に錯体(構造は推定)として取り込まれますが,分離は両者の分配係数に差が生じることを利用します(Amの方がより高い分配係数).

 特に配位子1のとき,他の報告例に比べてpHの低い条件下での選択性がかなり高くなることが分かりました.これはソフトなドナーである窒素とハードなアミドやエステルを組み合わせて取り入れたことが功を奏したと著者は考えているようです.

 また,本筋とは多少ずれますが,特徴的な試薬が使われていることに気づきます.一つはSynergistic agentという,有機溶媒中における金属錯体の分配係数を高める働きをするもので,下図のBr-Cosanというものが放射性元素の分野でよく使われるということです(New J. Chem. 2010, 34, 2552-2557.).

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 もう一つは溶媒で,o-ニトロフェニルヘキシルエーテルという,やや馴染みの薄いものを使っています.実用には適しませんが,通常使われるケロシンやオクタノールより,こちらの方が良く分離できたので,スクリーニングの際利用しています.こうした脇役に目を向けてみるのも面白いものです.


<他の配位子による検討の例>
1. M. R. S. Foremann et al., Solvent. Extr. Ion Exch., 2005, 23, 645-662.
2. M. D. Reshetova et al., Mendeleev Commun. 2008, 18, 336-337

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