Charles N. Birts, A. Pia Sanzone, Afaf H. El-Sagheer, Jeremy P. Blaydes, Tom Brown, and Ali Tavassoli*
Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 2362 (オープンアクセス)

 ☆人工DNAからタンパク質を作る
 先日Chem-Stationに、人工DNAに関する記事が掲載されました(DNAに人工塩基対を組み入れる人工DNAから医薬をつくる!)。こちらにもあります通り、DNAの類縁体を作る研究は昔から数多く行われており、核酸塩基部分を置き換えたもの、リボース部分を他の環に変えたもの、リン酸エステル結合を他の官能基にしたものなど、ありとあらゆる変換が行われてきています。

 しかし現在に至るまで、二重らせん鎖を成す部分を改変した人工DNAで、細胞内で遺伝子として機能する――すなわち、RNAに転写され、翻訳されてタンパク質を作る――ようなものは、ひとつも知られていません。DNAの遺伝情報読み出しは極めて精妙な系であり、少しでも違う官能基を持ったものは受け付けられなかったのです。

 しかし今回著者らは、初めてこうした人工DNAを創り出したとしています。その構造は、DNAのリン酸エステル結合を、1,2,3-トリアゾールで置き換えたものです。これは、クリックケミストリーの代名詞ともいうべき、アルキンとアジドの[3+2]付加環化反応で作れる置換基です。

DNAs

 mCherryという蛍光タンパク質(黄色~緑色の励起光を照射した時、赤色に光る)をコードしたDNAを合成します。このDNAのうち、フルオロフォア(蛍光を発する原子団)部分に当たる部分の1ヶ所は、リン酸エステル結合でなく、上記のクリック結合で結びついています。これを組み込んだプラスミドを大腸菌に取り込ませ、発現させると、mCherryの赤色蛍光が観察されました。つまり、クリック結合したDNAが、間違いなくタンパク質へと翻訳されたということです。

 クリック結合がリン酸エステル結合を肩代わりできるということは、いろいろな面で興味深いと思われます。ひとつには、本物のDNAのリン酸エステル結合を作るのは面倒ですが、官能基許容性の極めて高いクリック結合であれば、いろいろにモディファイしたDNAの化学合成が簡便に行えることがあげられます。また、大きなDNAのフラグメント同士を結合させることなども、より容易になることでしょう。さらに、クリック結合で作ったDNAを鋳型にして、本物のDNAを作る可能性も開けてきます。

 と、いろいろと面白そうですので、ちょっと前の論文ですし、専門外ではありますが紹介してみました。今後、いろいろな応用が出てきそうです。