Ying Yang and Marek W. Urban*
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.201407978

 ☆空気と水で自己修復するプラスチック
 プラスチックは、長く環境に残り続ける物質の代表のように言われますが、やはりあらゆる物質同様、長い年月が過ぎれば朽ちてゆく宿命です。 紫外線や機械的な力などを受けることで、プラスチックを作っている原子間の結合が切断され、徐々にネットワークが破壊されていくのです。

light
紫外線を浴び続けて破れたネット

 そこで、壊れた部分が勝手に治ってゆく「自己修復プラスチック」が注目を集めており、すでに実用化もされています。いろいろな形式がありますが、pHや酸化還元など、傷口部分への化学的条件の変化が引き金になってポリマー鎖を再形成し、傷を治すものが多いようです。

 今回著者らは、空気中の水分と二酸化炭素を材料に、傷を修復するプラスチックを開発しました。ベースとなっているのはポリウレタンで、 イソシアネートとポリエチレングリコールが重合した構造のものです。
polymer
用いられたポリマー

 自己修復という不思議な作用のミソになるのは、ポリマーに加えられたブドウ糖の誘導体(メチルグルコピラノシド)と、スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ)です。ブドウ糖誘導体は、ポリマー鎖同士を橋渡しする修復の材料、スズ化合物はウレタン結合を作り直す触媒として働きます。

 ポリウレタン鎖が破壊されると、ウレタン結合が切れて一級アミンや一級アルコールが露出します。 スズ化合物は空気中の二酸化炭素を捕らえ、アミンやブドウ糖誘導体のOH基などと反応して、ウレタン結合を再形成するのです。論文では、切れ目を入れてから30分ほどで、傷がずいぶん回復している様子が見て取れます。

 自己修復材料は数多く提案されてきましたが、この樹脂は光や薬品を用いず、空気中の成分だけで修復が可能という点で優れています。自己修復材料の開発に、新たな指針となる研究なのではないでしょうか。