Satoru Ito, Satoru Hiroto *, Sangsu Lee, Minjung Son, Ichiro Hisaki, Takuya Yoshida, Dongho Kim *, Nagao Kobayashi *, and Hiroshi Shinokubo *
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP DOI: 10.1021/ja511905f

 芳香族化合物の研究は、有機化学の発祥以来続いていますが、いまだ研究され尽くすということがありません。そのひとつの面白さとして、本来平面であるべき芳香環をひずませたとき、どのような性質が出てくるかという点があります。フラーレンやカーボンナノチューブはその代表というべき物質でしょう。

 しかし、平面から外れた芳香環の合成は、非常に難物です。たとえば、有機合成化学的な手法のみでのフラーレン合成は、いまだなされていません。非平面芳香族化合物を作るには、ひずみエネルギーを乗り越えるための強力な手法を必要とします。

  そうした中、名古屋大学の忍久保らは、大きくねじれたポルフィリン類の合成を報告しました。彼らはすでに、芳香族アミンを酸化的に二量化して、ピラジンを含む多環式化合部tを形成する反応を開発しています(論文)。

Dimer

  この反応をアミノポルフィリンに適用すれば、ピラジンと縮環したポルフィリン二量体が収率よく得られます。この時、メソ位にメシチル基などかさ高い置換基を持ったポルフィリンを用いると、反発を避けて全体として大きくねじれたものが得られます。

twist1

ねじれたポルフィリン二量体。メシチル基は省略
 
 さらにこれを四量体までつないでいくと、全体のねじれは最大298°にも達します。これは、全体が共役系でつながった芳香族化合物のねじれ角として、これまでの記録144°を大きく塗り替える最高記録とのことです。この方法は他の化合物にも広く適用できそうであり、多くのユニークな多環式芳香族化合物がここから生まれてきそうです。