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有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

カテゴリ:超分子

Bartosz Lewandowski, Guillaume De Bo, John W. Ward, Marcus Papmeyer, Sonja Kuschel, María J. Aldegunde, Philipp M. E. Gramlich, Dominik Heckmann, Stephen M. Goldup, Daniel M. D’Souza, Antony E. Fernandes, David A. Leigh*
Science 11 January 2013: Vol. 339 no. 6116 pp. 189-193

 ☆ロタキサン上でのペプチド合成
 カテナン・ロタキサンの分野で、毎度斬新なアイディアで楽しませてくれるLeigh教授の最新作。ロタキサンの輪っか部分が鎖の上を移動しながら、アミノ酸を「刈り取って」、輪の上でペプチド鎖を作っていくという論文です。ごちゃごちゃ言うよりも、動画を見ていただく方が早いでしょう。
 動画で、アミノ酸を「刈り取って」ゆくのはシステイン残基で、ここからN末端のアミノ基に転位してペプチド鎖が伸びてゆきます。よくこんなにうまくいくものだと思いますが。

 このシステムは、リボソームにおけるタンパク質合成を思わせますが、ペプチド以外の化合物も理屈の上では合成可能なはずです。さて次はどういう展開があるか、Leigh教授の次の一手に注目です。

Yoko Sakata, Shuhei Furukawa*, Mio Kondo, Kenji Hirai, Nao Horike, Yohei Takashima, Hiromitsu Uehara, Nicolas Louvain, Mikhail Meilikhov, Takaaki Tsuruoka, Seiji Isoda, Wataru Kosaka, Osami Sakata, Susumu Kitagawa*
Science 339, 193-196 (2013) DOI: 10.1126/science.1231451

 ☆形状を記憶する「分子のスポンジ」
 多孔性配位高分子 (PCP/MOF)は、配位結合によって組み上がるジャングルジム状の物質で、様々な機能を持たせうる新素材として注目を集めています(こちら)。京都大学の北川進教授は、UCLAのO. Yaghiと並ぶこのジャンルの第一人者で、90年代からPCP/MOFの科学を先導しています。

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 PCP/MOFのモデル。球が金属イオン、棒は配位子を表す。

  PCP/MOFの魅力は、設計次第で内部に様々な物質を取り込めることです。通常、PCP/MOFは変形しない剛直な構造であることが眼目ですが、今回の研究では比較的柔らかく変形するものを用いました。こうした網目では、分子を取り込むと網目が広がり、除くとまた閉じます。しかしPCP/MOFのサイズをナノメートルレベルに小さくしていくと、取り込まれた分子を除いても網目が閉じなくなることがわかりました。網目は、加熱することによって閉じ、分子取り込みでまた開きますので、自在に調整可能です。

 サイズによってこのように性質が変わることを示したのも重要ですし、構造を記憶させ、消去できる物質を人工的に作り出したのも面白い点です。次から次へと新たな可能性が出てくるので、このジャンルは本当に目が離せません。

 ・京大プレスリリースはこちら 
 ・参考書籍

Nandhini Ponnuswamy, Fabien B. L. Cougnon, Jessica M. Clough, G. Dan Pantoş, Jeremy K. M. Sanders
Science 338, 783-785 (2012) DOI: 10.1126/science.1227032

 ☆自然に結ばれる分子
 ナフタレンジイミドが3つ連結し、両端にメルカプト基(-SH)がついた化合物を合成。これを空気中、水に溶かして撹拌していると、3分子が連結して自然に三つ葉のクローバー(Trefoil Knot)のように結ばれた構造が出来上がる。
NDI
Tricoloring

  メルカプト基からジスルフィドへの酸化は可逆なので、行き来を繰り返して自然に最も安定な結び目構造に落ち着くというしかけ。こうした結び目を持つ分子は今までにもあったが、有機分子のみで実現に成功した。動画はこちら(短いけど)↓

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