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有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

カテゴリ:生合成

Chun-Jun Guo, Hsu-Hua Yeh, Yi-Ming Chiang, James F. Sanchez, Shu-Ling Chang, Kenneth S. Bruno, and Clay C. C. Wang
J. Am. Chem. Soc. ASAP DOI:dx.doi.org/10.1021/ja3123653

 ☆遺伝子を壊して生合成経路を調べる
 糸状菌(カビ)の一種であるAspergillus terreusより単離された化合物Acetylaranotinの生合成が明らかとなったという論文。Acetylaranotinの構造的特徴は、ジスルフィド結合を有するジケトピペラジン骨格(Epipolythiodioxopiperazines)です。このジスルフィド結合は、毒性に関与しているとされており、薬への応用、全合成(Reismanら徳山ら)など多方面からの注目を集めています。

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 ポストゲノムの時代に入り、ネット上に公開されているゲノム情報を基に生合成遺伝子、二次代謝酵素を探索する「ゲノムマイニング」という手法が流行り始めました。現在では、ある微生物のゲノム情報が公開されると同時に、激しい生合成研究の競争が始まります。 このような状況で、生合成研究のスピードは近年爆発的に速くなっています。

 今回の論文で、筆者らはゲノム情報を基に遺伝子破壊実験を繰り返し、生合成遺伝子を特定しました。注目すべきなのは、今回の論文のみではなくClay Wangの一連の仕事です。彼は、公開されている糸状菌のゲノム情報を基に尋常ではない早さで糸状菌二次代謝物の生合成経路を次々に明らかにしています。糸状菌を研究している研究者は、今後もClay Wangに要注目です。

Thilo Winzer, Valeria Gazda, Zhesi He, Filip Kaminski, Marcelo Kern, Tony R. Larson, Yi Li,1 Fergus Meade, Roxana Teodor, Fabián E. Vaistij, Carol Walker, Tim A. Bowser, Ian A. Graham

Science 336, 1704 (2012);


DOI: 10.1126/science.1220757

 
天然の化合物は、いくつもの段階を踏んで生合成されます。骨格が作られ、官能基が付け加えられ、長い工程を踏んで作られていきます。各段階には担当する酵素があり、当然それをコードする遺伝子が存在します。これら遺伝子の「束」を、遺伝子クラスターと称します。

ポストゲノムの時代に入り、データベースの充実 や遺伝子情報の取得が容易になったことにより生合成研究は飛躍的に加速しました。しかし、植物は生合成遺伝子がクラスターを形成していないなどの理由により、カビなどに比べ生合成研究は未だに難しいとされています。


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今回紹介する論文では、植物にも生合成クラスターが存在していたという珍しい例を示し、ノスカピンの生合成を明らかにしました。植物アルカロイドには有用な物質が多いので、今後も研究が進むことを期待します。


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