Stephen L. Bearne* J. Chem. Educ., 2015,92,1566.

 磁石を利用したスターラーは、Arthur Rosingerという人物が1944年に特許を取ったものなのだそうです。以来70年以上にわたり、ノーベル賞化学者から筆者のような者に至るまで、あらゆる実験化学者がスターラーと撹拌子のお世話になってきました。

Stirrer


  この撹拌子というもの、反応の最中はよいのですが、終了後の処理の際にしばしば問題を引き起こします。フラスコから中の溶液を移す際に落下してガラス器具を割ったり、大事な溶液を跳ね飛ばしたりといった悲劇は、誰しも経験したところでしょう。

 柔らかいテフロン棒の先に、やはりテフロンで覆われた磁石をつけた「撹拌子取り出し棒」も売られていますが、これも 撹拌子が大きくなると落下&フラスコ破損の恐れがある上、溶液内に突っ込むため汚染の危険もあります。さらにいえば、2リットルくらいの大きなフラスコになると、この取り出し棒をフラスコ内に落っことし、ミイラ取りがミイラとなる惨劇もなしとしません。

  この論文で著者らは、新たな撹拌子の取り出し法を報告しています。引き出しのツマミのような形をした、冷蔵庫にメモを貼り付けるための希土類磁石を利用して、フラスコの外からガラス越しに撹拌子をくっつけて固定し、その間に液体をフラスコから出して処理するというものです。日本であれば、100円ショップなどでもネオジム磁石が売られていますので、これを利用する手もありそうです。 

 これに対し、同じJ. Chem. Educ.誌で、S. L. Bearneからコメントがありました。彼らは、壊れたハードディスクからネオジム磁石を取り出し、これを撹拌子固定に使っているということです。こちらも、取り出しさえできるなら安上がりな方法です。

 こんなの至って普通じゃん、という方も多いと思います。こんな情報でも論文になるのだなあと面白く思ったので、取り上げてみました。自分の研究室ではもっといい方法を使っているぞという方がおられたら、ぜひ投稿してみてはいかがでしょうか。