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有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

タグ:ホスファゼン

David J. Bowers, Brian D. Wright, Vincent Scionti, Anthony Schultz, Matthew J. Panzner, Eric B. Twum, Lin-Lin Li, Bryan C. Katzenmeyer, Benjamin S. Thome, Peter L. Rinaldi, Chrys Wesdemiotis, Wiley J. Youngs, and Claire A. Tessier*
Inorg. Chem. ASAP, DOI: 10.1021/ic500272b

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今回は,化合物の構造に魅かれただけでなく,古い研究を再度見直してまとめている点でも気になった論文をご紹介します.上のようなスキームで合成することが知られていた環状クロロホスファゼン化合物のうち,10~18員環に特化して構造決定をしています.16員環については比較検討のために40年以上前の論文のcifファイルを再解析しているということで,この化合物群に対する思い入れの強さが伝わってきますし,‘study’を’勉強する’だけでなく,’研究’とも訳す感覚も分かったような気がしました.

ホスファゼンは難燃剤などとしての利用価値があるものの,合成の前駆体として使われるクロロホスファゼンは,合成の再現性や安定性,コストなどに問題があるため,その理由や解決方法を見出したいとしています.

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NMRのピークについて悩むことがいくつかあったと書かれていることなどから,難しそうな研究対象と格闘している様子が垣間見え,また求めるゴールに到達するために地道な作業を積み上げていることがよく分かります.

<余談> 著者らの研究室ウェブサイトでは,Tessier教授の名前を元素記号で表現したTシャツの写真も見ることができます.

Daisuke Uraguchi , Ken Yoshioka , Yusuke Ueki , and Takashi Ooi *
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP DOI: 10.1021/ja310209g

 ☆キラルな強塩基で遠隔付加
 リンと窒素から成るホスファゼン塩基は、DBUなどを上回る強塩基として知られます。ここにアミノ酸(ロイシン)由来の不斉な置換基を取りつけ、キラルな強塩基触媒として反応を行っています。選択的に1,6-および1,8-付加が起こり、高い立体選択性で付加体が得られています。触媒が比較的容易に合成可能なのもいいところ。大井研究室のキラルホスファゼン関連の仕事は、こちらにまとまっています。
phosphazene
 キラルホスファゼン塩基

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