ChemASAP

有機化学を中心に、興味ある新着論文の情報を提供してゆきます。

タグ:COF

Suman Chandra, Tanay Kundu, Sharath Kadambeth, Ravichandar BabaRao, Yosesh Marathe, Shrikant M. Kunjir, and Rahul Banerjee
J. Am. Chem. Soc. 2014, 136 (18), pp 6570–6573 DOI: 10.1021/ja502212v

 タイトル中で(-N=N-)と強調されているのも珍しいと思いますが,アゾベンゼンというと光異性化機能に注目した研究が多い中,今回の研究ではリン酸とアゾ基の反応が話のポイントとなっています.

 金属イオンと多座配位子から成る「MOF」の科学が大きな注目を受けていますが、一方でCOF(Covalent Organic Frameworks)というものも登場しています。こちらは、全体が有機分子の共有結合だけで成るネットワーク状の材料です。この論文は、そのCOFをプロトン伝導材料に応用したというものです。

 まず,以下のような反応によって,非常に安定性の強い3D構造のCOFが作られます.実際のCOFは、この六角形が並んだハニカム構造のシートが、多数積み重なった構造です。実際に構造をPC上で一つ一つの結合を描いていくと,どこか一か所反転してもとん挫することが実感できるので,このようなCOF構造が自然に組みあがるというだけでも驚きです.

Kamitsubo35_fig1


 この構造に対してリン酸を作用させると下図に示したように空間にドープされ,これは高いプロトン伝導機能を示すことがわかりました.-N=N-の代わりに-C=C-のスチルベン誘導体を用いた場合はこのドーピングが起こりませんし,ドープされていない構造のままではプロトン伝導度はほぼゼロです.

Kamitsubo35_fig2

 また,著者らは,2次元構造ではなく3次元構造であることも,高い性能を示す重要な要因であるとしており,今後の材料開発において役に立つ知見がいくつも得られたといえます.

<補足> *この研究の着想となった論文を引用しています. Halasz, I.; Luvic, K.; Vancik, H. Acta Crystallogr. 2007, C63, o61.
*プロトン伝導度測定について,Supporting Informationにて写真も含めて説明されています. 
*プロトン伝導材料としてはナフィオン膜がベンチマークとされていますが,コストがかかることや,燃料電池における作動温度で機能が下がることが欠点として挙げられ,克服するための研究開発が行われています.

Dr. Atsushi Nagai, Xiong Chen, Xiao Feng, Xuesong Ding, Dr. Zhaoqi Guo, Prof. Dr. Donglin Jiang*
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.201300256

 ☆混ぜて煮るたけの多孔質材料 
 多孔質のジャングルジム状高分子PCP/MOFは、化学分野の中で最も注目されるジャンルのひとつになっています。 金属イオンと配位子が結合し、自己組織化で組み上がるため、複雑な合成段階を踏まなくてよいのが大きなメリットです。

 一方、金属イオンとの配位結合でなく、共有結合だけで組み上がる「共有結合性有機構造体」 (Covalent Organic Framework, COF)というものも発表されています。ホウ酸エステル結合など、可逆的な結合を利用し、PCP/MOFと同じような構造体を有機分子のみで作るものです。

 このCOFに新顔が登場しました。四角酸(squaric acid)のアミド結合を利用したものです。4-アミノフェニル基を持ったポルフィリンと、四角酸を混ぜて加熱するだけで、平面的網目構造が出来上がります。
squaricAPP
材料となる四角酸と、テトラキス(4-アミノフェニル)ポルフィリン
COF
 比較的簡単な化合物同士をまぜて加熱するだけで、ユニークな材料が得られるのは非常に魅力的です。今回は平面的なネットワークですが、同じ手段で3次元方向への展開も期待されるところです。

 ・関連書籍

このページのトップヘ