有機化学

2008年12月02日

ベンゼン2

ベンゼン環を持ち、CとHだけで構成される物質を、芳香族炭化水素といいます。
芳香族炭化水素の仲間を見ていきましょう。


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・トルエン
トルエン





ベンゼン環に、メチル基 -CH3が付いたのがトルエンです。
シンナーの主成分です。
混酸によってニトロ化されると、TNT(トリニトロトルエン)、そう爆薬になります。

・キシレン
キシレン












メチル基が2つ付いたのがキシレン。
キシレンは、メチル基の位置によって、3種類の異性体が出来ます。
このような異性体を、位置異性体といいます。

2つが隣同士に付いたのが、オルト-キシレン(o-キシレン)
1つ間が空いたのが、メタ-キシレン(m-キシレン)
反対側にあるのが、パラ-キシレン(p-キシレン)

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<芳香族炭化水素の酸化>
芳香族炭化水素の重要な特徴は、過マンガン酸カリウムによる酸化反応が怒ることです。

トルエン→安息香酸
キシレン→フタル酸

詳しくは、★芳香族カルボン酸で説明します。

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フェノール

フェノール

ベンゼン環に、ヒドロキシ基が付いた化合物をフェノールと言います。

チョコやワインに含まれているポリフェノールは有名ですね。



<特徴>
アルコールと似ているもの
・Naと反応し、H2発生

似ていないもの
・酸性(炭酸 H2CO3より弱い)
塩化鉄(III)水溶液を加えると、紫色を示す
・ベンゼンより置換反応が置きやすい

<製法>
1.クロロベンゼン経由
2.ベンゼンスルホン酸経由
3.クメン法

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2008年11月25日

ベンゼン1

不思議な六角形の構造(ベンゼン環)を持った物質を
芳香族化合物と言います。

桜餅のクマリン、バニラのバニリン、シナモンのシンナムアルデヒド、アーモンドのベンズアルデヒド……etc
みんなベンゼン環を持っています。

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・ベンゼン C6H6

化学工業の基本となる物質です。

実験室的には、アセチレンを、
500℃まで加熱した鉄管に通すと付加重合が起こり、
ベンゼンが生成します。
アセチレン付加重合









これだと書くのが面倒臭いので、↓のように略して書きます。
ベンゼン環







ベンゼンは平面構造です。

また、このベンゼンのCの構造を、ベンゼン環と言います。

単結合のほうが二重結合より長いのに(→★単結合と重結合
どうして六角形になるのでしょうか?
実は、ベンゼン環の一辺の長さは、
実際には単結合と二重結合の中間、いわば1.5結合の長さなのです。
それを単結合と二重結合で便宜上表現しているに過ぎません。


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<置換反応>
ベンゼンは置換反応が起きやすい物質です。

本来なら、ベンゼン環に付いているHは省略できますが、
分かりやすくするために、置換されるHを生やしてみました。

・ハロゲン化
17族元素(ハロゲン)とベンゼン、触媒となるFe(鉄)を混合すると
ハロゲンが置換されます。
塩素の場合を例に、反応を見てみましょう。
ベンゼンのHと、Cl2が置き換わったのが分かります。

C6H6 + Cl2 → C6H5Cl + HCl

置換反応によって、クロロベンゼンと塩化水素ができました。
Br2(臭素)では、ブロモベンゼンになります。

ベンゼン・クロロ化








・ニトロ化
濃硝酸(HNO3)と濃硫酸(H2SO4)の混合液(混酸)を作用させます。

C6H6 + NO2OH → C6H5NO2 + H2O

置換反応によって、ニトロベンゼンができました。
-NO2はニトロ基でしたね。→★官能基

ベンゼン・ニトロ化








・スルホン化
ベンゼンと濃硫酸(H2SO4)を加熱すると、
Hがスルホ基に置換されます。

C6H6 + H2SO4 →C6H6O3S + H2O

ベンゼン・スルホン化







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<付加反応>
ベンゼンでは、付加反応より置換反応の方が起こりやすいのですが、
無理をすれば起こすことができます。

・塩素付加
紫外線をあてながら、塩素を付加させる

・水素付加
高圧かつNi(ニッケル)触媒下で、水素を付加させる

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ベンゼン2に続く

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2008年11月24日

エステル

エステル基




注意:エステル基の右端には必ずCが連結します!
もしHだと、カルボキシ基と同じになってしまいます。

<特徴>
・中性
・揮発性
・芳香性(果実臭)

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・エステルの合成と加水分解

エステルは、カルボン酸とアルコールを脱水(縮合)して出来たものです。
そして、この反応は可逆反応(行ったり来たりできる反応)なので、
エステルに水を加えれば(加水)、カルボン酸とアルコールに分解できます。

エステルの合成と加水分解






→合成は、濃硫酸(H2SO4)を加えると反応が促進されます。

←分解は、酸orアルカリを加えると反応が促進されます。
(酸:希硫酸・希塩酸など、アルカリ:水酸化ナトリウムなど)

さらに、アルカリを加えた場合、カルボン酸は中和されます。
このことを鹸化(けん化)といいます。
詳しくは後ほど、★油脂と石鹸で説明します。

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カルボン酸

カルボキシ基



第1級アルコールの酸化(→★アルコール1)によって、
アルデヒドを経てできる物質でした。

<特徴>
・水素結合→沸点高い
・弱酸(ただし、炭酸より強い酸)

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・酢酸 CH3-COOH
エタノールを酸化して出来る物質(→★アルコール2)で、
食酢の主成分です。
融点は16.7℃なので、冬季にはシャーベット状の"氷酢酸"になります。
氷酢酸








・蟻酸(ギ酸) H-COOH
メタノールを酸化して出来る物質(→★アルコール2)です。

ギ酸






図のように、アルデヒド基とカルボキシ基の双方を持っているため
両方の性質を示す物質です。
つまり、アルデヒドなのでフェーリング&銀鏡反応も示すし→★検出反応
カルボン酸なので酸性でもあります。
アルデヒドは中性なので、つまり酸性のアルデヒドは蟻酸だけ!

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てぃーぶれーく
蟻酸とは、読んで字の如し、
元々は蟻(アリ)から生成された物質でした。

蜂(ハチ)や蟻の毒針に含まれている物質で、
刺激性があるため肌がただれることがあります。
ただし、蟻と言っても、全ての蟻が蟻酸を持っているわけではありませんし、
普通の蟻は刺さないから大丈夫。

蟻酸を摂取した場合、体内で代謝されにくく、
血液が酸性に偏ってしまい、
視神経に致命的なダメージを与え、最悪の場合、失明します。

とにかく、毒性があるわけですから、
家畜の飼料に防腐・抗菌剤として混ぜられたり、
殺虫剤として用いられています。

また、繊維製品の染色の補助剤や、
皮革製品の皮をなめすのにも用いられています。


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・マレイン酸とフマル酸 C4H4O4

異性体(→★有機化学の基礎4)で登場した、マレイン酸とフマル酸。
これも、-COOH基を持っているので、カルボン酸です。

これは具体的な性質より、構造異性体(シス-トランス異性体)であり、
-COOH基の-OH同士がより近い(*図では省略しています)、
シス形のマレイン酸では脱水反応が起きることが大切です。
フマル酸とマレイン酸

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2008年11月23日

ケトン

ケトン基




ケトンは、第2級アルコール(→★アルコール1)を酸化すると得られる物質でした。

<特徴>
・中性
・還元性なし


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・アセトン CH3-CO-CH3

<特徴>
無色・常温で液体・揮発性・有機溶媒など。
マニキュアの除光液の成分です。

ヨードホルム反応を示す→★検出反応

<製法>
工業的には、酢酸カルシウムの乾留で作ります。
実験室的には、2-プロパノール(第2級アルコール)を酸化します。
2-プロパノール→アセトン




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2008年11月22日

アルデヒド

アルデヒド基



第1級アルコールの酸化(→★アルコール1)によってできる物質でした。


<特徴>
中性(例外は蟻酸 →★カルボン酸

還元性
還元性あり=還元剤になる=酸化されやすい=電子を失いやすい

この還元性の性質を活かして、アルデヒドを検出するのが
フェーリング反応銀鏡反応です。
これらは別に説明します→★検出反応


では、アルデヒドの代表的な化合物を見ていきましょう。

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・ホルムアルデヒド HCHO

<特徴>
水溶液はホルマリンと呼ばれています……
そう!生物の標本を漬ける、あの液体です。

常温で気体・刺激臭・消毒剤など

<製法>
メタノールを(第1級アルコール)を酸化。→★アルコール2
工業的には、メタノールの蒸気を銅・白金等の触媒に触れさせると
メタノールは酸化されて、ホルムアルデヒドの蒸気が発生します。
メタノール酸化






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・アセトアルデヒド 2CH3CHO

<特徴>
フェリーング&銀鏡反応に加え、
ヨードホルム反応も示す(重要! →★検出反応

常温で液体・刺激臭・防腐剤などに利用


<製法>
2CH2=CH2 + O → 2CH3CHO

エチレン(CH2=CH2)を酸化。
具体的には、触媒となる塩化パラジウム水溶液に
エチレンと酸素を吹き込むことで生成します。

もともとは、アセチレンに水を付加していました。→★アルキン
が、その途上で生じる有機水銀が水俣病等の悲惨な公害を引き起こしたため、現在では行なわれていません。

そして、エタノール(第1級アルコール)を酸化しても作ることが出来ましたね。
硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液を加えて加熱し、発生した気体を冷却します。(名前だけ覚えておきましょう)
エタノール酸化







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★検出反応がすごく大事なので、
そっちも必ず見てね。

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エーテル

エーテル基



CとCの間にOが挟まれたものを、エーテルと呼びます。
Oが1個増えただけなので、分子式ではアルコールと同じになります。

アルコールとの区別は★アルコール1で説明しましたが、
簡潔にまとめてみましょう。

・金属Naとの反応
○:アルコール
×:エーテル

・沸点
高:アルコール
低:エーテル

・性質
水溶性:アルコール
有機溶媒:エーテル

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アルコールにH4SO4(濃硫酸)を加え加熱すると、
130℃〜140℃の低温の場合、分子間脱水が起こります。
★アルコール1


C2H5OH(エタノール)で分子間脱水を起こした場合、
ジエチルエーテルと水が生成します。
エタノール分子間脱水130-140




ジエチルエーテル CH3-CH2-O-CH2-CH3
無色・揮発性・沸点低い(34℃)・引火性強い・麻酔性あり

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アルコール2

アルコール1から続く

アルコールの性質については、★アルコール1で扱いました。

今度は、具体的な物質から見ていきましょう。

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・メタノール CH3OH

<製法>
CO + 2H2 → CH3OH

一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合気体(水性ガス)を
高温高圧で反応させるとメタノールができます。

<酸化反応>
メタノールは第1級アルコールなので、次のように反応します。
蟻酸(ギ酸)とは昆虫の毒の成分のこと。★カルボン酸で詳しく説明します。
メタノール酸化







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・エタノール C2H5OH

<製法>
C2H4 + H2O

エチレンに水を付加させます→★アルケン
エチレン水付加






<酸化反応>
エタノールは第1級アルコールなので、次のように反応します。
エタノール酸化





この二つの酸化反応は有名なので、絶対暗記!

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てぃーぶれーく
お酒には「アルコール○%」とか書いてありますね。
このような場合の"アルコール"とは、
エタノールのことで、お酒の主成分です。
そのため、エタノールを"酒精"と呼ぶこともあります。

上述のように、体内で酢酸(=お酢)へ分解されます。
"お酒に弱い人"というのは、この処理能力が低いということ。
これは治りません。
大人になったらお酒を飲む機会があると思いますが、
苦手な人への無理強いは絶対ダメですよ。

一方のメタノール(メチルアルコール)は、
体に有害な蟻酸(=昆虫の毒)になってしまいます。
"目が散るアルコール"なんて言われることもあり、
飲むと失明してしまう危険があります。

そういえば漫画「北斗の拳」の前半に、
メチルアルコールを飲んで死んでしまう人が出てきました……

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アルコール 1

ヒドロキシ基

アルコールと言えば、お酒。
あとはアルコールランプや、注射の消毒液等、とても身近な物質ですね。

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<アルコールとエーテルの区別>
アルコールとエーテルは、炭化水素にOが増えただけなので
化学式は同じになります。

アルコールの-OH(ヒドロキシ基)は、
分極によってH+に近い状態、つまり単体になって安定したい状態です。
そこで、Na(ナトリウム)を加えると、H2(水素)が発生します。
エーテルでは、H2は発生しません。

2R-O--H + + 2Na → 2R-O--Na+ + H2

*2R-O--Na+(ナトリウムアルコキシド)


アルコールは中性かつ水溶性
お酒は水や炭酸飲料で割ることができますよね。

そして、各分子の-OHが引っ張り合う(水素結合)ので、
沸点はエーテルより遥かに高くなるのです。

性質の違いを覚えて、区別しましょう。

<名称>
アルコールの名称には規則性があります。
CH4(メタン)にOがプラスされたら…
CH3OH(メタノールorメチルアルコール)
と、炭化水素の語尾に「○○ノール」か「○○○アルコール」にすればいいだけ。

<価数での分類>
-OHのついたC原子に、
いくつの炭化水素が結合しているかを見ます。
1つなら第1級アルコール、2つなら第2級、3つなら第3級になります。

(例)
アルコール級数




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では、本題に入りましょう。
アルコールは、反応性に富んだ物質です。
反応のため加えた物質に注目して見ていきましょう。

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・H4SO4(濃硫酸)→脱水反応

H4SO4(濃硫酸)を加え加熱すると、温度によって反応が異なります。
C2H5OH(エタノール)の場合を見てみます。

130℃〜140℃の低温の場合、
図のように、二つのエタノールの-OH基からH2O(水)が取れます。
これを分子間脱水と言います。
この結果、ジエチルエーテルが生成しました。-O-がエーテル結合でしたね。
エタノール分子間脱水130-140






160℃〜170℃の高温の場合、
図のように、一つのエタノールの-OH基から水が取れます。
これを分子内脱水と言います。
できたものは、おなじみエチレンです。
エタノール分子内脱水160-170





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・酸化剤:K2Cr2O7(二クロム酸カリウム)、KMnO4(過マンガン酸カリウム)など
酸化反応

酸化反応は、
アルコールのC-Hの間にOが割り込み、
OHが2つの不安定な状態(gem)になった後
すぐに脱水されC=Oの形に変化します。

要するに、Hが2つずつ取れていくということです。


第1級アルコールでは、1回目の酸化でアルデヒドになった後
まだC-Hがあるので、2回目の酸化でカルボン酸になります。
第1級アルコール酸化






第2級アルコールでは、1回目の酸化でケトンになり、
もうC-Hはないのでこれ以上酸化されることはありません。
第2級アルコール酸化






第3級アルコールでは、そもそもC-Hが存在しないため
酸化反応は起こりません。
第3級アルコール





・まとめ
第1級アルコール→アルデヒド→カルボン酸
第2級アルコール→ケトン
第3級アルコール→酸化されない

では、次に、それぞれのアルコールが
具体的にどんな性質を持っているか見ていきましょう。

アルコール2へ続く

chemical_star at 18:00|PermalinkTrackBack(0)