2007年02月22日

旧東ドイツの監視社会を描いた「善き人のためのソナタ」

ドイツ映画「善き人のためのソナタ」を観る。
「善き人のためのソナタ」は、冷戦下に東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊する数年前の、社会主義体制下の東ドイツを舞台に、芸術家や反体制的な思想を持つ人々に対する激しい弾圧が行われていた時代の、市民や関係者による密告や、ナチス時代のゲシュタポ(秘密警察)を思わせるシュタージ(国家保安省)による監視を描いた作品で、原題は「Das Leben der Anderen(英題:The Lives of Others)」。
実際に旧東ドイツ出身で、当局から監視された経験を持つウルリッヒ・ミューエが、任務に忠実な寡黙なシュタージ職員を演じている。
反体制分子の摘発という任務に励み、新人に対する教育も担当するベテランのシュタージ職員である主人公は、劇作家とその恋人の舞台女優を監視するように命じられ、昼夜を問わず盗聴し、監視を続けていくが、監視対象の劇作家たちの芸術に対する思いや自由な思想に触れているうちに感化され、劇作家が弾いたピアノ曲「善き人のためのソナタ(Die Sonate Vom Guten Menschen)」を盗聴器を通して聴いたときに、心の中で何かが変わる。
やがて、主人公は、劇作家たちが西ドイツの雑誌に、密かに東ドイツの体制を批判をする記事を匿名で掲載しようとしていることを知るが、上司に報告せず、記事が発表された後も劇作家らを庇って、検挙しようとしない。良心に従って行動した主人公は、故意に劇作家らを見逃したことを上司に知られ、郵便の検閲係という閑職に追いやられるが、数年後、ベルリンの壁は崩壊し、東ドイツの社会主義体制は終わりを告げる。
自らの保身のために、知人を当局に密告するという監視社会は、東西ドイツ統一後も、旧東ベルリン市民の心に傷を残しているそうだ。
「善き人のためのソナタ」は、クロアチア内戦による犠牲者を静かなタッチで描いたスペイン映画「あなたになら言える秘密のこと」と同様に、淡々とした展開で、大きな盛り上がりはないが、主人公の寡黙なシュタージ職員を演じるウルリッヒ・ミューエが存在感があり、見応えがある。
タイトルとなっている劇中曲「善き人のためのソナタ」のピアノの音はとても美しく、劇中の短いシーンでは物足りず、もっと聴きたいと思わせる。

★★★☆☆


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旧東ドイツで反体制的な西側思想の疑いがある劇作家を盗聴・監視する国家保安省の局員を通して描かれる自由と愛を求める人間の姿を丁寧に描いた素晴らしき映画でした。『仕立て屋の恋』と少し似ていて淡々としたすごく地味な作品でしたが、見終わった後には何ともいえない余....
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