2007年06月24日

戦後日本を舞台にした社会派サスペンス「日本列島」

今年5月23日に76才で死去した熊井啓監督の追悼企画でリバイバル上映された映画「日本列島」を観た。
映画「日本列島」は、吉原公一郎氏が昭和38年(1963年)に発表した、戦後の日本社会をめぐる米軍やCIAの関与を窺わせる様々な疑惑を小説に仕立てた“小説日本列島”を映画化した昭和40年(1965年)公開のモノクロ作品で、寺尾聡さんの父、宇野重吉さんや、“特捜最前線”の特命課長役でお馴染みの二谷英明さんが出演している。
昭和34年(1959年)、妻を米兵に殺された過去を持ち、在日米軍のCID(犯罪調査課=憲兵隊)に通訳主任として勤める宇野重吉さん演じる主人公は、上司である米軍中尉から、一年前に起きた米軍兵士の変死事件を再調査するよう命じられる。
主人公が調査を進めていくと、死んだ米兵が戦後日本に暗躍する贋札作りの一味に関わっていた疑いが浮上し、一年前の事件当時、担当した警視庁の刑事や元検事らと共に、さらに調査を進めていくと、アメリカの謀略機関が関わっているのではないかという疑いを持つが、突然、上司から調査の打ち切りを命令され、妻の死に関しても釈然としない思いを抱いている主人公は、勤務先を辞職して独自に調査を続けていくうちに、事件の渦中に巻き込まれていく。

映画「日本列島」に主演している宇野重吉さんは、長男の寺尾聰さんととてもよく似ているが、ひょうひょうとした雰囲気で、夏八木勲さんにも似ている。
松本清張原作の「霧の旗」「鬼畜」でも刑事役を演じ、「その壁を砕け」にも出演している鈴木瑞穂さん演じる警視庁の警部と、松本清張原作の「砂の器」では捜査一課長を演じ、同じく松本清張原作の「疑惑」では判事を演じている内藤武敏さん演じる元検事の弁護士が、宇野重吉さん演じる主人公と協力して事件を調べていく。
そして、松本清張原作の「砂の器」「ゼロの焦点」「内海の輪」「鬼畜」などの他、野村芳太郎監督の「恋の画集」「背徳のメス」「白い巨塔」「動脈列島」などにも出演している加藤嘉さんが、米軍の壁に阻まれて日本の警察が思うように捜査できない現状に苛立つ刑事部長を演じている。
また、「その壁を砕け」「首」、松本清張原作の「鬼畜」「迷走地図」、リメイク実写版の「キャシャーン」などにも出演している大滝秀治さんが、謀略組織の日本側のボス役を演じ、松本清張原作の「波の塔」や、大岡昇平原作・野村芳太郎監督の「事件」などにも出演している3代目水戸黄門役でお馴染みの佐野浅夫さんが、元謀略機関の一味だった男を演じている。
松本清張原作の「影なき声」でも新聞記者を演じている二谷英明さんが、映画「日本列島」でも新聞記者を演じ、宇野重吉さん演じる主人公が事件の真相に迫ったために謀略機関によって消された後を次いで、一連の事件の全容解明を決意するところで物語は終わる。

映画「日本列島」は、ストーリーそのものは、吉原公一郎氏のオリジナルで、米謀略機関が関わっているのではないかという推測の元に、様々な実際の事件を絡めて描かれているが、下山事件や松川事件など戦後の日本で起きた数々の不可解な事件について松本清張氏が研究して昭和35年(1960年)に発表したノンフィクション「日本の黒い霧」などで書かれている“推理”と同様で、また、「日本列島」で描かれている“旧日本軍による贋札作りを受け継いだ組織”などは、松本清張氏が昭和35年(1961年)に発表した「黄色い風土」とそっくりで、さらに、松本清張氏が実際に起きた事件を元に推理を進めて小説「黒い福音」として昭和34年(1959年)から35年に発表した、容疑者の外国人牧師に捜査の途中で出国されて未解決となった“スチュワーデス殺人事件”も取り上げていて、松本清張氏の作品を原作としているのかと思わせる。
映画「日本列島」は、講和条約の発効によって占領政策は解けたものの、まだ“占領下”の色濃い昭和30年代を背景に、実際に起きた不可解な事件を織り交ぜながらドキュメンタリー・タッチで描かれていき、非常に見応えのある社会派作品だった。
初代「ゴジラ」などの音楽を担当している伊福部昭氏による、どことなく“ゴジラのテーマ”を思わせる重厚な音楽もよかった。

★★★★☆


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