2004年07月22日

西村京太郎原作、田村正和主演「この声なき叫び」

リバイバル上映で、映画「この声なき叫び」を観た。
映画「この声なき叫び」は、1964年に発表された推理作家・西村京太郎氏の初出版作「四つの終止符」を、1965年に田村正和さん主演で映画化した作品。
西村京太郎氏は、今ではトラベル・ミステリーで有名だが、デビュー当初は、社会派ミステリーを中心に執筆していて、映画版「恋人はスナイパー」の原作ともなった「華麗なる誘拐」も1978年に発表された社会派ミステリーで、当時、小説を真似たのではないかと言われる「青酸コーラ事件」などが起きて話題となった。
映画「この声なき叫び」は、殺人の嫌疑をかけられた聾唖(ろうあ)の青年を取り巻く社会派ドラマで、田村正和さんが演じる耳の聞こえない青年の、病身の母親が栄養剤に混ぜられた砒素を飲んで死亡して、青年に疑いが向けられる。
やがて、青年は母親殺しの疑いで逮捕され、必死に無実を訴えるが、聞き入れられず裁判にかけられる。
青年が慕っていたバーの女給(ホステス)だけが、青年の無実を信じ、女給は、バーのママと、「聾唖者による殺人事件」を社会問題として取り上げようとする新聞記者と協力して、事件を調べ直し、やがて意外な真相を探り当てていく。
耳の聞こえない青年に優しく接するバーの女給を香山美子さん、バーのママさんを南田洋子さんが演じている。
青年が暮らす長屋のおかみさん役の菅井きんさんと、南田洋子さんは、約40年経った現在とほとんど変らない。

西村京太郎氏の「四つの終止符」は、大原秋年氏が主宰する手話を取り入れた異色の劇団「GMG(現・鼓舞指座)」によって舞台で上演され、1990年には劇団GMGによって映画化もされている。
劇団GMG版の映画「四つの終止符」は、モノクロで制作され、耳の聞こえない主人公の孤独感を表現するために、警察の取り調べシーンでは、音声が消え、刑事たちの言葉を字幕で表わし、無音の世界を体感させるという独特の演出方法がとられていた。
劇団GMG版の「四つの終止符」は、シリアスなテーマを扱った社会派作品のため、かなり重苦しい雰囲気に仕上がっているが、非常に見応えのある作品だった。
田村正和さん主演の映画「この声なき叫び」は、原作は同じ「四つの終止符」だが、人気スターを起用したメジャー作品のためか、良質なドラマだが、全体に深刻さを薄れさせている。
田村正和さん演じる主人公の青年は、耳が聞こえず、言葉も不自由なはずだが、劇中、ほぼ普通に喋り、相手の口の動きを読めるため耳が聞こえなくても話が理解できるということで、手話通訳なしで複雑な会話も成立していて不自然さは否めない。
耳の聞こえない青年が、無音の中で、教えられたとおり木琴を叩き「月の砂漠」を演奏するシーンは印象的だった。


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