東北大学臨床教授 岡山博氏の 焼却処分はすべきではない放射性廃棄物処理の正しい戦略と方法
横浜国立大学名誉教授 宮脇 昭氏 「いのちを守る300キロの森づくり」
福島のお母さん達から瓦礫の受け入れに反対をしてください。 ~福島の母親たちより~


 家の中に信号機がある。
この信号機はいつもフリムン徳さんの運転にではなく、行動に赤青黄の点滅信号送っているなあとうすうす感じていた。フリムン徳さんが病で倒れ、大工仕事ができなくなり、年金で生活するようになり、収入が少なくなったこの頃は、ゴーの青色信号がほとんど出ない。

 少し変わった信号機のようである。結婚期間が長くなると青がなかなか点滅しない。収入が減ると青がなかなか点滅しない。これではなかなか前へ進めない。まともな信号機ではなさそうである。
あれをしたい、これをしたい、これが買いたい、これを飲みたいと言ってもゴーの青色信号が出ない。結婚して間もない頃は、黄色と赤色のない青信号だけかと思われるほど、青信号を出した信号機だったのに、長年経ち、収入が少なくなるとこうも変わるのだろうか。ひょっとしたら青色の電球が切れているんじゃないかと思うことさえある。

 ところがこの信号機にゴーゴーの青信号がつきっぱなしになった。
信号機の故障ではない。嫁はんが孫のベビーシッターで、2週間シアトルへ行った。
その間は赤色、黄色の点滅もない。いつでも前へ突き進めるゴーの青色である。好きなことができるのだ。好きなものが買えるのだ。好きなものが飲めるのだ。自由になったのだ。そう思うと、肩から重たい荷が降りた様な気がして、身軽になった。ルンルン気分とはこんなものか。サンノゼの空港から、飛行機がシアトルへ飛び立ったのを見届けたら、信号機はもうなくなった。

 まっすぐ、サンノゼの日本食料品店「みつわ」へ直行した。
いてまえ!! いてまえ!!  酒だ、肴だ、日本酒を買うのだ。こんなうれしいことがあるかいな。私の住んでいる山の中のブラッドレーでは、刺身になる魚がない。たまに近くのアメリカマーケットで刺身になりそうな魚が並んでいるが、刺身で食べるには勇気がいる。アメリカ人は火を通して食べるから、多少魚が傷んでいて、臭いがしてもいいのだろう。でも私は刺身で食べるから、傷んでいてはいけない。どうしても欲しい時は、店員さんにその魚を指差して、「臭いを嗅がせてくれ」とその魚を鼻に当て、臭いをかぐ。すると、店員さんは「こんなお客は始めて見た」と書いた顔の変な目で私を眺め倒す。えらいすんまへんけど、私は魚を生で食べて生きてきた人間なのです。

 みつわマーケットは新鮮な魚がいっぱい売っている。サンノゼやサンフランシスコへ行く時、たまに寄って日本食良品を買う。今日の私の目標は日本酒としめ鯖である。もちろん、私の身体には日本酒も鯖もよくない。どちらも医者から禁止されている。痛風には鯖と牛肉が一番よくないのだ。こんな時に医者の言うことなんかきけるかい、嫁はんの言うこともきけるかいな。何年振りかに来た民主主義の時である。自由の時である。鯖を酢に付け、酢味噌で食べたら、舌がとろける事まちがいなしや。

 サンノゼを出て家に着いたのはもう夜の10時を過ぎていた。
日頃は寝ている時間なのに、今日は目が冴えている。買ってきたしめ鯖を、うきうき鼻歌気分で、“酒飲むな、酒飲むな、のご意見なれーどーーー”を口ずさみながら、刺身に切った。何回も水洗いしてから、5分もしたら、もうOKだ。若い頃、鯖にあたり、蕁麻疹になり、目が開かないほど顔が腫れて、仕事に行けなかった経験がある。それでも鯖が大好きである。漁師だった野上政平おじいちゃんが「鯖の生き腐れ」とよく言っていた。鯖は身体の一部が腐っていても泳いでいるらしい。鯖は血に毒があるから、血の気がなくなるまで何10回と、水洗いをして、血を洗い落とす。それから、刺身に切って、酢に付けて思い切り唐辛子の利いた酢味噌で食べるのである。小さい時から食べつけたこのおいしい鯖の味が忘れられるかい。

  鯖を肴に夜明けまで一人で飲み明かした。いつ寝たかも覚えていない。カーテンの隙間から差し込む眩しいお日さんの光で、目が覚めたら、昼の12時を過ぎていた。また酒を水代わりにして飲んだ。また鯖が肴である。酒漬けの二日目の夜が来た。二日連続で飲み続けると、どうも身体がおかしくなり、様子もおかしくなった。いつも傍で点滅している黄、赤の信号が点滅していない。目を半分閉じた状態で、周りを見ながら、よく考えてみると、もう、嫁はんはシアトルへ行っておらんのだ。なんだか寂しい、なんだかもの足りない。赤でも黄でも、何でもいい、おるものがおらんと寂しい。

 もう、身体がしんどい、頭が痛い。頭の中から、痛い、痛い、と赤色が点滅して電波が出ているみたいだ。歩こうとしたら、まっすぐに前に進めない。これは、えらいこっちゃ。嫁はんが傍におらなくても、酒を飲みすぎたら、赤信号は点滅する。でも、飲みすぎて、痛い、痛い、と頭の中で点滅する赤信号よりは、傍で点滅する嫁はんの赤信号がよっぽどいいと思った。

by フリムン徳さん
プリムン徳さんはエッセイ本「フリムン徳さんの波瀾万丈記」を出版されています。

2012_03_24-furimunsanbook

とっても面白くて力がでてくるエッセイ本です。
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