2010年04月29日
劇団唐組「百人町」
心から失望し、うなだれて帰路についた。土日に観劇が続き、物理的に体力を消耗したのは事実だが、それよりも精神的な打撃の方が大きく、3日間仕事をするのがやっとの有様だった。
故郷に意気揚々と帰ってみたら、繁栄していたはずの我が家が荒れ果てた廃墟と化していたという感覚。ここで言う廃墟は唐作品に登場する、エネルギーに満ちた廃墟ではなく、荒れ果てたただの抜け殻。
それらしいキャラクターが登場し、それらしい台詞を言うのだけれども、かつての唐十郎の作品にみちみちていた少年の夢の輝きがない。大がかりな仕掛けもない。最後、テントの向こうが開いても、あれでは幕は下りないでしょう、というカタルシスのない幕切れ。
大がかりな仕掛けは、楽しみのひとつだけれどもどっちでもいいと思う。唐十郎自身が老いていくのは自然の成り行きなのだからいつまでもエネルギーほとばしる形態のものを作っていかなくても、ちんまりした小作品でいいと思う。唐の創作意欲や内なるのものを表現できる方法というのは、時代によっても唐本人の人間の成熟度によっても変化していくのが当然だし、むしろそうあるべきで、いつまでもテント芝居にこだわっているのに無理があるのかも知れない。
年2回の公演で常に新作を（最近は秋は旧作を上演することが多いようだが）上演し続けてきた40年間はすごいと思う。80年代でも年によって当たりはずれはあった。しかし、今回の出来は、その「当たりはずれ」のレベルを大きく逸脱している。
「故郷は遠きにありて思うもの」なのかなあ。
「あんたにはもうＯＳＫしかないんだよ。戻るところなんてないんだ」と宣言されたようで、大事に大事に抱えていたバイオリンケースを開けてみたらそれは空っぽだったという唐作品の名作「ジョン・シルバー」のヒロイン小春になったような気分。
確認のために来年も見るかも知れない。秋に旧作をやるのであれば見に行くかも知れない。でももう友人は誘わない。自分1人で故郷の行く末を受けとめていきます。
今後の予定覚え書き。自分で把握するために。
・5月1日（土）17:00「あほやねん好きやねんライブ」ＮＨＫ大阪ホール
公開録画入場券当たったのです。友人は全員近く撃沈したみたいで、それを知るまでそんなに当たりにくいものだと知らなかった…。もうこれで一生分の運を使い果たしていたらどうしよう。しっかり見てきますね。といいつつ高世貴公子のお顔しか見えなかったらすみません。
・5月9日（日）14:00 「縁あって乙女文楽 吉田光華の世界」太閤園ダイヤモンドホール
・5月15日（土）18:00 ルート66公演「What a Wonderful World」道頓堀ZAZA
・5月23日（日）13:30 「宝塚男子部が集う〜半世紀ぶりに�牴山擲惺鮫瓩悄彿�塚文化創造館
・5月28日（金）18:30、29日（土）12:00，15:00，18:00、30日（日）12:00，15:00「バンディット!霧隠才蔵外伝」大阪ビジネスパーク円形ホール
結構5月も埋まってますね。それぞれ楽しみです。
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この記事へのコメント
「意気揚々と故郷に帰ってみたら廃墟だった」という脱力感は、とてもよくわかります。
私自身も今まで生きてきた中で、そういう感覚を覚えた場面が何度かありますので…。
ましてや二十数年ぶりの故郷。作り手もそうですけど、観る側も自覚のあるなしは別にして、やっぱり変化しておりましょうから、こういう感覚が生じる事もあるかもしれないですね。
個人な話で申し訳ないのですが、私自身はＯＳＫが解散、事業譲渡、独立…と不安定な状態に陥るたびに、次の公演は廃墟と化してるんじゃなかろうか、と気を揉みながら出かけるんですが、
実際には以前と変わらない心躍る舞台が観られると申しますか、より一層の熱気が感じられるのが本当に嬉しくて有り難いです（不安定な状態の方が良いという訳では全くないです）。
文学座はそう言えば地声でした。前方席だったので余り意識してませんでしたが。
そう言われれば芸術センターで上演される演劇はみんなマイクを使ってないです。
集客じゃなくて作品で使い分けてるんですねぇ。初めて知りました。
連休でしっかり気力・体力ともに充電なさって５月の怒涛の御観劇にお備え下さい（笑）。
私はラピュタ阿佐ヶ谷で「冴えない日常」をしばし忘れたいと思います。
根本的な解決になってないところがツラいところではありますが。
連休中は早大博物館、当然の事ながら休館で今回も残念です。
寺山修司さんの脚本集はお蔭様で読了しました。
意味はよくわかりませんでしたが、台詞の一つ一つは面白くて結構ハマりました。
花園神社で。
「チケットぴあ」は残席わずかになってましたけど、「才蔵」のチケットを買う時に、まだ残ってたら買って行ってみます。
以前、コメント欄でレビューファンにはエグいかも、というアドバイスを戴きましたが、何事も勉強です？
挑戦してみたいと思います。「冴えない日常」の方にこの積極性があったら、道も切り開かれただろうにと考えないでもないですが…
ここはワンマン劇団だから1人の主宰者によって作品が変わってくるわけですが、人が入れ替わっても同じものを貫く「伝統」って本気ですごいと思います。
刺激は強いわ、しぶきは散るわ（しぶき除けのビニール有り）、役者さんのツバもちょこっと降ってくるわで、スゴかったですけど、
それ以上に初めて観るテント芝居に大興奮いたしました。
繁栄していた大邸宅を知っていたら、また違った感想を持ったかもしれませんが。
私はもっとシリアスなものだと考えていたんです。テント芝居って。
かなり荒唐無稽なのですね。懐かしい曲調の歌もそこかしこに散りばめられていますし、ちょっとしたミュージカルみたいな感じです。
チケットと整理券の交換とかちょっと面倒くさいですし、整理番号順の入場で少し早めに行かなくてはならなかったりと、観る手続きが煩しいですけど、
時間に余裕があったらまた行ってみたいです。
手作り感にあふれているところは案外私好みです。
業界ぽいお客さんもチラホラいらっしゃるのはさすがは東京ですね。
それにしても３０年前に観ればよかったですねぇ。
調子に乗って…「大駱駝艦」まで観てしまいました。専用劇場です。
生は物凄い迫力ですねえ。
床で擦れるからでしょうか、ダンサーの方に擦り傷が…
体を張ったこのお仕事も大変です。
昨年、情報センターで映像特集のあった、「唐十郎」と「大駱駝艦」。
本物を観る事ができて、大満足のＧＷになりました。
トイレは出てきましたけど、妙にロマンチックな台詞が散りばめられておりましたね。
大駱駝艦は全体芸的集団舞踏ですし。舞踏しながら丸太で家（というと大袈裟ですが）の骨組みみたいなのを組み立るパフォーマンスもあって、床を転がる振りばかりではない事がわかりました。
こちらも登場の仕方とか結構レビュー的です。
万障繰り合わせて、という程ではないにせよ、両方とも案外気に入りました。
自分自身の認識不足を恥入るばかりです。
都合がつけばまた観たいという感想を持ちました。
ただ、私なんかは頻繁に東京に行けるという境遇ではありませんので、行ったら親の仇みたいに、あれを観たい、あそこに行きたいというのがテンコ盛りにあるんですね。
良席確保の為には引き換え時間よりかなり前に並ばなければならない（大駱駝鑑は１時間前から並んで１番でした）というのは、ちょっと辛いです。
ところで、大駱駝鑑の皆さんは終わったら、すぐに顔を出してとてもフレンドリーにファンの方々とお話になるんですよ。
たぶん、私が話かけても丁寧に対応して下さると思われます（無理ですけど）。
皆さんに南座のチラシを差し上げたい衝動にかられました。
あと１０日でルート６６。私は６６期生に結構お気に入りの方が多くて（紫穂さん、飛鳥さん、千原さん、など）
今回出演されない方も多いですけど、楽しみにしています。
ルート66、どんなでしょうね。私は66期の皆さんが活躍する頃にはＯＳＫをあまり見なくなったのでNewＯＳＫで活躍されていた洸弥和希さん以外あまりなじみがないのですけれど、約4年ぶりに洸弥さんを拝見できるのでちょっと興奮しています。ぶつっと退団されましたから。楽しみです。
