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中華料理 に参加中!
今回の成都では、必ず行くと決めていた店がある。
それは、臨江中路の『銀杏川菜酒楼』
「上海のお昼ご飯!」のふじもとさんが、中国大陸で一番とまで絶賛していた店だ。

結論から言えば、1泊2日の日程で2回通うほど気に入った。
成都で最も高い四川料理レストランと言われるくらいだから、旨くて当然と思うかもしれない。
だが、都会で真っ当なものを出そうとすれば、ある程度値が張るのは当然。
高い値段が料理の美味しさに繋がらず、店の儲けや豪華な内装さやハッタリだけの高級食材に
費やされてしまう粗悪な高級店が中国全土に氾濫している中で、この店は真の高級店だった。

↓高そうな店構え。女性店員はみな四川美人(笑)。 ↓店名通り、銀杏の木が窓から見える。
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最初の小菜(お通し)を食べたときから、良い店だとの予感が膨らんだ。
一般的に小菜は作り置きしておくものなので、化学調味料使用の有無、甘さや塩辛さの度合いなど、
その店の味の傾向が誤魔化しなく表れるのだ。
で、小菜で喜ばせてくれる店など滅多にないのが今の中国の高級店なのだが、この店と来たら!
 
↓余計な味が一切しない。美味しい漬物出す店には、当たりが多い。豆自体も良いものだ。
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「これはさすがだね」
「うん。濃い味に見えるこの肉も、意外に抑えた味でビールを呼ぶよ。美味しい」

高級店とは、高級食材を扱う店ではなく、普通の料理を一段上の水準で作れる店のことだと思う。
その意味で言うと、冷菜の麻醤鳳尾は完璧だった。
油麦菜という少し苦味のある青菜に胡麻ダレをかけた、四川料理の冷菜の定番だ。

↓麻醤鳳尾(28元!)。こんな上品なの初めて見た。第一印象は「少なっ」だったのだが(笑)
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中国で生野菜を食べるようになったのは最近のことで、この料理もここ十数年で生まれたものだ。
辛くもない胡麻ダレをかけた料理が何故四川料理なのかと思うかもしれないが、
この店の麻醤鳳尾を食べれば、四川料理の要素をはっきりと感じ取れるはず。

ねっとり濃厚ながらも甘味を抑えた胡麻ソースの影から、辣椒油(唐辛子を浸した油)と
花椒油(同じく中国山椒を浸した油)の辛味と痺れと香りがじんわりと広がってくる。
その絶妙な配分。2口目に刺激を残さず、爽やかな余韻だけが舌をくすぐり、消えていくのだ。

「これはびっくりだなあ。余ったタレを舐めたいとまで思わせるのがスゴイ」
「うん。甘くて濃すぎるタレを落としながら食べなきゃいけない店も多いのにね」

素晴らしいのは、胡麻ダレだけではない。
油麦菜は、苦味が強く出る前の小さい株を選び、しかも一番甘い根元の上の部分だけを使っている。
食感が統一され、タレがよく絡む。これぞ高級店の仕事だ。


これまた四川料理の定番・魚香茄子も、さすがの出来栄え。
酸味、甘味、辛味など、魚香茄子になくてはならない味の要素はしっかり入っているのに、
あくまで主役はとろとろした茄子の甘味とプリプリした挽肉の旨味になっているバランスが見事。

↓魚香茄子(27元)。
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必要な味付けは全て揃っているのだから「薄味」と言うのも違うが、
如何に普段食べている魚香茄子が濃い味なのかを、思い知らされるような一品だった。
  
「素晴らしい技術だ。この魚香茄子は、あの礼州をも上回ってるな」
「茄子と挽肉だけでこんな幸せになれるんだね。いつかこのレベルのを作れるようになりたい」

そして、麻婆豆腐
礼州で人生最高の麻婆豆腐に出会ったと確信していた僕らは、この店のを楽しみにしていた。
果たして「田舎の素朴」と「都会の洗練」のどちらが勝るのか、と(笑)。
レンゲをそろそろと口に運んだ僕は、ひと口食べて、思わず笑い出してしまった。

「わははは、なるほど!方向性はまるで一緒だよ。これもスゴイ」
「面白いねえ。田舎でも都会でも、美味しさを求めると行き着くところは同じなんだね」

↓麻婆豆腐(27元)。
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礼州の記事でも書いたが、旨い麻婆豆腐は、麻辣の刺激だけが全体を覆うことなく、
豆腐の甘味や挽肉の旨味がはっきりと感じられ、甘味・酸味・苦味など様々な味の要素が
それぞれに立ち上がり、口の中で次第に一体化していくものだと思っている。
もちろん、化学調味料によるのっぺりとした単調な甘味と旨味などは論外。

そういう麻婆豆腐に、大都会の成都でも出会えたことに驚いた。
僕自身の好みで言えば、もう少し麻辣が強くてもいいと思うし、礼州と比較した場合、
恐らくは自家製豆板醤による辛味と旨味の奥行きの差で、礼州の方に軍配を挙げるけど、
人生2番目に美味しい麻婆豆腐だった。

これ、最初に他の有名店で麻婆豆腐を食べた後にこそ、試して欲しい一品だ。
最初は物足りなく感じるだろうが、上に書いたことが分かってもらいやすくなると思う。


その他頼んだのは、クスノキのチップでアヒルに燻香をつけた樟茶鴨
肉の質は申し分なく、焼き方も素晴らしかったが、僕の好みを言えば、燻香が弱かったかな。
これだけ旨い肉ならば、もう少しガシッと香らせても、いい具合になると思うのだが。

↓樟茶鴨(78元)。薫香の強い弱いは完全に好みの問題。美味しいっす。
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〆は、担担麺。僕、本場の汁なし担担麺は、香りを食べるものだと思っている。
麻婆豆腐と同じ話になるが、麻辣の刺激を競う料理ではない。
挽肉、芝麻醤、醤油、辣椒油、花椒、芽菜(漬物)、ネギ、ニンニク、といった材料の香りが
熱々の麺とかき混ぜることでぶわんぶわんと立ち昇り、そこを一気にかっこむわけだ。

でも、既製品の芽菜が不味かったり、醤油・芝麻醤・ニンニクあたりが強過ぎたりで、
本場・成都と言えども美味しい担担麺に出会えたことは多くないのだが、ここのは良かった。

↓担担麺(15元)。ひと口サイズなので、1人1つ頼むべし。
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↓混ぜたあと。碗の底からしっかり混ぜよう。     ↓サービスの南瓜湯。上品な甘さはさすが!
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総じて、高い値段の理由がひとつひとつの料理からしっかり感じられる食事になった。
但し、「麻辣の刺激が強い=本場の四川料理」という評価基準だと、この店を楽しめない。
ここより麻辣な料理を出す店はいくらでもあるし、恐らく地元の成都人に聞いたとしても、
この店を「高くてお上品なだけ」と言う人も多いのではないだろうか。
  
四川料理は、「食材の味」ではなく「調味料の味」を食べる料理になってしまいがちだ。
麻辣の刺激は分かりやすい上に中毒的だから、とりあえず麻辣なら四川料理の体裁は整う。
それに化学調味料の甘味や旨味が加わり、食材の質なんて関係ないような濃い味付けの店が
巷を席巻しているのが四川料理の現状だから、この店の味はいわゆる「現地の味」とは違う。

この店では、吟味された食材や調味料を用い、過不足ない調味で一皿一皿を仕上げてある。 
麻辣だけが突出することなく、料理ごとに様々な味の要素が主役と脇役を変わりながら演じ、
互いを引き立て合い、食材自体の味わいと見事に調和している。
全く濃い味付けではないのに、各食材と調味料の香りや味わいがひとつひとつ鮮烈なのが、見事。
四川以外の省にありがちな、ただ麻辣が弱いだけの「なんちゃって四川料理屋」とも違うのだ。

「化学調味料を入れないでください」と頼んだとき、フロア係の青年は笑顔で言ったものだ。
「当店では元々一切使用しておりません」と。多分、豆板醤などの調味料も無化調なのではないか。
食後感も実に爽やかで、満腹なのに胃が重い感じがまるでしなかった。
四川料理もお金をかけて丁寧に作るとここまで深い味になるのか。そう思わせてくれた。

「こういう店で食べちゃうと、次の食事が難しいね・・・」
「少なくとも、前回までの旅で行ったレストランは、全部却下せざるを得ないな・・・」

美味しい店を知ると、こうやって悩みが深くなっていく(笑)


■今日の料理■
麻醤风尾 ma2jiang4feng1wei2
麻婆豆腐 ma2po2dou4fu・
魚香茄子 yu2xiang1qie2zi・
樟茶鸭 zhang1cha2ya1 
担担面 dan1dan4mian4

撮影@『銀杏川菜酒楼』
住所:成都市武侯区临江中路12号
電話:028-85555588
*成都市内にいくつか支店があるが、四川料理メインなのはここだけ。ご注意を。
*品書きには、四川料理以外も多数混じっている。意識して四川料理だけを選ぼう。