「広州3 - 懐かしの珠江!変わらぬ沙面!愛しの『広州白天鵝賓館』!」の続きです。
今回の広州最初の夕食を採ったのは、広州白天鵝賓館のメインダイニング『玉堂春暖』だ。店内のあつらえは堂々たる中国様式で、老舗ならではの古風かつ上品な雰囲気が漂っている。
決して安い店ではないが、料理を食べれば納得できるはず。値段に見合った品質の正統派広東料理をきちんと供しているからだ。
懐かしさに身を浸し、席に着いた。最初に頼んだ白茶を飲みながら、ゆっくり注文を吟味。因みに、食事の間はずっとこの白茶でアルコールは頼まなかった。気でも狂ったかと思うかもしれないが、広東料理の場合、僕は特に酒が欲しいとは思わないのである。
さあ、宴のスタートだ。主役を飾るのは、なんといっても煲湯。広東文化の精華とも言える煮込みスープだ。
広東では、スープは食事の最初に飲むもの。お姉さんが小さな両耳土鍋を持ってきて、目の前でうやうやしく注いでくれる。五、六杯分はあるので、旨いものを心ゆくまで堪能できる。
選んだのは福果土猪肚湯(銀杏と豚ガツのスープ)。その他クワイと蓮の実もたっぷり入れて煮込んだ乳白色のスープは、濃にして厚!飲んだそばから身体の隅々に染み渡っていくかのよう。それでいて澄み切った後味。圧倒的だ…!
自分で作る煲湯とは次元が違いすぎる…と心の中で白旗をあげていたのだが、別皿で供された湯料(スープのダシ)を見て納得。あの量のスープにこれだけのダシを入れるなんて贅沢すぎる…!
しかし、ダシを増やすだけでこの味に到達できるなら、安いものだという気もする。今度試してみるか…。うーむ、またも煲湯熱が高まってきたぞ。
尚、広東の煲湯については、以前むちゃむちゃ気合を入れて記事を書きましたので、よろしければご覧ください。一度飲めば魅了されること間違いなしの美味なのです。
お次は、明爐焼乳豬(豚の丸焼き)。広東料理に欠かせぬ焼味(ロースト料理)の中でも王様的存在だ。パリッと香ばしく焼かれた子豚の皮の下には、とろけるような脂。軽やかな皮の食感と共に脂の甘味がじゅわんと広がる。しっとり柔らかな肉も抜群の美味しさで、幸せが詰まった一皿だ。
学生時代の僕は、これを腹一杯食べたくて広州旅行を企画したが、誰も付き合ってくれなかったので、ひとりで飛んだ。あれから二十数年、今は家族と一緒にこれを食べている。感慨深い。
更に、梅子乳鴿。小鳩を紹興酒、話梅、各種中薬で風味良く漬け込んだ冷菜だ。華やかだけど品があり、様々な要素を感じさせるけどそのどれもが突出していないバランスの良い香り。それがしっとり力強い鳩肉にしっかり染みて、骨までしゃぶりつくしたくなる美味。小鳩、大好き。
そう言えば、広東の焼味(ロースト料理)についてもガシガシ書いていました。こちらもご一緒にどうぞー!
炒めものは、芹香琥珀核桃玉帯子。ホタテとセロリとクルミの飴がけをたっぷりの大蒜で炒める。え⁉︎という組み合わせだけど、クルミの甘味と大蒜風味が不思議と合い、柔らかなホタテをセロリとクルミの食感が彩って、見事に着地。様々な食材を組み合わせる広東料理らしい炒め物だ。
順徳煎魚餅。ケンヒーという淡水魚のつみれ揚げで、臘腸(中華ソーセージ)、椎茸、干し海老、葱などが練り込まれている。地味な見た目ながら、香ばしさと控えめの味付けが白身魚の味を引き立ていて、とても美味しい。さつま揚げの原型なのかなあ、と思ったりしている。
これまでの料理を見て、「地味だなあ」と思った人もいることだろう。実際、流行りの高級広東料理店に行けば、もっと華々しい食材を使って見た目も派手に仕上げた皿がずらりと並ぶ。
でもそれは、ものめずらしさにお金を払っているだけだと僕は思う。誰もが知る地味な定番料理を「え、なにこれ美味しい!」と思わせてくれる方に、僕は価値を感じる。
更に主食に進もうかと思ったが、昼の飲茶三昧の影響もあって、お腹がパンパン。というか、スープがあまりにも旨くて飲み過ぎたせいで、水腹になったというのもある(笑)
まあ、焦ることはない。今回はこのホテルに2泊するのだから、明日もくればいいだけのことだ。
そう考えて、ゆったりした気持ちで「买单!」と声を上げた僕なのだった。
<2019年1月>
今回の広州最初の夕食を採ったのは、広州白天鵝賓館のメインダイニング『玉堂春暖』だ。店内のあつらえは堂々たる中国様式で、老舗ならではの古風かつ上品な雰囲気が漂っている。
決して安い店ではないが、料理を食べれば納得できるはず。値段に見合った品質の正統派広東料理をきちんと供しているからだ。
懐かしさに身を浸し、席に着いた。最初に頼んだ白茶を飲みながら、ゆっくり注文を吟味。因みに、食事の間はずっとこの白茶でアルコールは頼まなかった。気でも狂ったかと思うかもしれないが、広東料理の場合、僕は特に酒が欲しいとは思わないのである。
さあ、宴のスタートだ。主役を飾るのは、なんといっても煲湯。広東文化の精華とも言える煮込みスープだ。
広東では、スープは食事の最初に飲むもの。お姉さんが小さな両耳土鍋を持ってきて、目の前でうやうやしく注いでくれる。五、六杯分はあるので、旨いものを心ゆくまで堪能できる。
選んだのは福果土猪肚湯(銀杏と豚ガツのスープ)。その他クワイと蓮の実もたっぷり入れて煮込んだ乳白色のスープは、濃にして厚!飲んだそばから身体の隅々に染み渡っていくかのよう。それでいて澄み切った後味。圧倒的だ…!
自分で作る煲湯とは次元が違いすぎる…と心の中で白旗をあげていたのだが、別皿で供された湯料(スープのダシ)を見て納得。あの量のスープにこれだけのダシを入れるなんて贅沢すぎる…!
しかし、ダシを増やすだけでこの味に到達できるなら、安いものだという気もする。今度試してみるか…。うーむ、またも煲湯熱が高まってきたぞ。
尚、広東の煲湯については、以前むちゃむちゃ気合を入れて記事を書きましたので、よろしければご覧ください。一度飲めば魅了されること間違いなしの美味なのです。
酒徒(しゅと)@shutozennin[お知らせ]月イチ連載「中国全省食巡り」(@80Cjp )、3回目は広東省広州市!「食は広州に在り」すぎで、かつて広州に暮らした僕の筆も大暴走。大増量の3部構成でお送りします。前編のテーマはスープ。広州の歴史と文化が溶け込んだ千変… https://t.co/s5RxoxlzNT
2018/08/20 15:23:02
お次は、明爐焼乳豬(豚の丸焼き)。広東料理に欠かせぬ焼味(ロースト料理)の中でも王様的存在だ。パリッと香ばしく焼かれた子豚の皮の下には、とろけるような脂。軽やかな皮の食感と共に脂の甘味がじゅわんと広がる。しっとり柔らかな肉も抜群の美味しさで、幸せが詰まった一皿だ。
学生時代の僕は、これを腹一杯食べたくて広州旅行を企画したが、誰も付き合ってくれなかったので、ひとりで飛んだ。あれから二十数年、今は家族と一緒にこれを食べている。感慨深い。
更に、梅子乳鴿。小鳩を紹興酒、話梅、各種中薬で風味良く漬け込んだ冷菜だ。華やかだけど品があり、様々な要素を感じさせるけどそのどれもが突出していないバランスの良い香り。それがしっとり力強い鳩肉にしっかり染みて、骨までしゃぶりつくしたくなる美味。小鳩、大好き。
そう言えば、広東の焼味(ロースト料理)についてもガシガシ書いていました。こちらもご一緒にどうぞー!
酒徒(しゅと)@shutozennin[お知らせ]「中国全省食巡り」(@80Cjp )、広州篇の第2弾が公開されました。今回のテーマは、見る者全ての心をとろかす「焼味(ロースト料理)」。広東料理が世界に誇るご馳走ですが、広州人の日常生活に欠かせない身近な料理でもありま… https://t.co/PePBG9aeWt
2018/08/27 12:27:23
炒めものは、芹香琥珀核桃玉帯子。ホタテとセロリとクルミの飴がけをたっぷりの大蒜で炒める。え⁉︎という組み合わせだけど、クルミの甘味と大蒜風味が不思議と合い、柔らかなホタテをセロリとクルミの食感が彩って、見事に着地。様々な食材を組み合わせる広東料理らしい炒め物だ。
順徳煎魚餅。ケンヒーという淡水魚のつみれ揚げで、臘腸(中華ソーセージ)、椎茸、干し海老、葱などが練り込まれている。地味な見た目ながら、香ばしさと控えめの味付けが白身魚の味を引き立ていて、とても美味しい。さつま揚げの原型なのかなあ、と思ったりしている。
これまでの料理を見て、「地味だなあ」と思った人もいることだろう。実際、流行りの高級広東料理店に行けば、もっと華々しい食材を使って見た目も派手に仕上げた皿がずらりと並ぶ。
でもそれは、ものめずらしさにお金を払っているだけだと僕は思う。誰もが知る地味な定番料理を「え、なにこれ美味しい!」と思わせてくれる方に、僕は価値を感じる。
更に主食に進もうかと思ったが、昼の飲茶三昧の影響もあって、お腹がパンパン。というか、スープがあまりにも旨くて飲み過ぎたせいで、水腹になったというのもある(笑)
まあ、焦ることはない。今回はこのホテルに2泊するのだから、明日もくればいいだけのことだ。
そう考えて、ゆったりした気持ちで「买单!」と声を上げた僕なのだった。
<2019年1月>
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