2018年04月03日

ポーの一族(宝塚歌劇団・花組公演)

もうずいぶん前の話になってしまうのですが、超久しぶりにタカラヅカを観てきました。
去る1月25日、花組の「ポーの一族」を。
これ、上演が決定したときからものすごく話題になってましたよね。
何しろ萩尾望都さんの原作は、伝説といっていいくらいの少女マンガの名作です。さ・ら・に。
エドガーを演じる明日海りおさんのビジュアルが、とにかくもう二次元を超えたといってもいいくらい…原作そのままの美しさで。チラシを見たときは衝撃でしたよ。ああ、そこに、エドガーがいる…。( *´艸`)
そんなわけで、ものすご~く楽しみにしていたのです。
せっかくの舞台、一人で行くのも寂しいので、タカラヅカ初体験の娘をさそって行くことに。もっとも事前にちゃんと原作を読ませて、タカラヅカについても録画してあった「ベルばら」を見せて、一応のレクチャーは済ませておいたのですが。
生協で頼んだチケットは、正直あまりいい席ではなかった(2階席の前から3列目)けれど、それでもまあ全体がよく見渡せてそれなりによかったかな。

そして、いよいよ開幕!
ワクワクどきどきしながら、かたずをのんで見つめる舞台。休憩をはさんで3時間の公演が、本当にあっという間でした。
いやもう、すごかったです。何がどうって、とにかく「すごい」としか言いようがないんです。
明日海りおさんのエドガー、完璧でしたね~。すごかった。もう文句なしに2次元でした。2次元が動いているとしか…。私の語彙では表しきれないのが悔しいですが;;
他の皆さんも、本の中から抜け出してきたかのような美しさ。これぞタカラヅカ! まさに夢の舞台です。衣装の華やかさ。舞台装置の豪華さ。ため息しか出ないわ。。。
私が初めて「ベルサイユのばら」の花組公演を見たときに感じたような衝撃と陶酔を、娘も感じていたのでしょうね。見終わった後の娘の感想は、これまた「すごかったね~」しか出てきませんでしたから(笑)。
明日海さんも、シーラ役の仙名彩世さんも、とにかくものすごく歌がお上手なんですね。特に仙名さんの透き通るような歌声がとても美しくて、聞きほれてしまいました。
肝心のお話の方も、うまくまとめられていたと思います。ただ、原作の色々なエピソードを、どれも大切なものだからというのは分かるのですが、あまりにもいっぱい詰め込み過ぎた感は否めません。
さらに、最初の方の展開が結構早い上に、セリフではなくてコーラスで状況説明されると歌詞が聞き取りにくいため、原作を読んでいないと置いてけぼりになってしまいます。目まぐるしく場面が変わり、大勢の人物が入り乱れるため、物語の背景や人物の相関関係が分かり辛いのです。
まあ、取りあえず単行本の2巻までは読んでから行かれることをお勧めします。
メリーベルの扱い(存在)が原作に比べてちょっと小さかったかなあ…という不満もなくはないのですが、ヒロインがシーラ夫人という感じになってたのでしかたがないですかね。
原作の中の大好きなセリフもいっぱい出てきて、原作ファンとしてはひたすら嬉しかったです。
最後には宙乗り(!)まで出てきて、わああ~~ってなりました。これ、この前テレビで見た「ベルばら」でもやってたよね。ほえ~、今のタカラヅカは宙乗りまであるんやねえ。すごいなあ。
とにかく、興奮と感動の3時間でした。
これ、テレビでやってくれないかなあ。もう一度しっかり見たいよ。
明日海りおさん、ホントのホントに、最高でした!!! (^▽^)




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chika3594 at 16:16|PermalinkComments(0)シネマ&ドラマ 

2018年03月19日

花散らし

お久しぶりです。
ずっとずっとご無沙汰で申し訳ありません。
あまりに長い間放置しっぱなしだったので、最近ではもう、このブログを開くのも苦痛で;;
今後もあまり更新できないかもしれませんが、時々書きたくなったら書く、という感じで細々と続けていきたいと思っています。



sakura1




その日、ぽっかりと手が空いた俺は、久しぶりに植木屋の離れで病を養っている沖田総司を見舞った。
来るたびに病の陰が濃くなっていくようで、正直、総司のやつれた姿を見るのは辛かったのだが。
季節は春。
ようやく暖かみを帯びてきた日差しが、離れの薄汚れた縁側にも穏やかなぬくもりを添えている。
「土方さん。その花――」
と、俺の顔を見るなり、総司は枕元の文机を指さして言った。
「お琴さんが活けてくれたんです」
「お琴?」
文机の上には、小振りの壺に投げ入れられた桃の枝が、可憐な花を咲かせていた。
「時々見舞いに来ては、三味線弾いてくれたり、小唄を聞かせてくれたり。昨日もね、わざわざ花を持って訪ねて来てくれて」
「そうか」
思いがけない名前を耳にして、俺は少なからず動揺していた。
そんな俺の心を知ってか知らずか、総司は半身を起こすと、真正面から俺を見据えて、斬りこむような口調で言った。
「歳三さん。お琴さんに会ってあげてください。あのひとは、ずっと歳三さんを待っていたんですよ」
「………」
「自分から口に出しては言わないけど、きっと心の中ではあんたに会いたいって思ってるんだ。だから、私のところへも足繁く通ってきてくれるんでしょう」
「お琴……さんは、今も独り身なのか?」
思わず口をついて出た問いに、総司はさもあきれた、という顔をした。
「許嫁のままなんでしょう? 自分の勝手でほったらかしにしておいて、よくそんなことが言えますね」
江戸に戻ってから、総司の雰囲気が少し変わったような気がする。以前は、誰に対しても、これほどずけずけとものを言うような奴ではなかった。
自分の命のあるうちに――。
そう思いつめて、自分の胸の内にあるものを、すべて吐き出してしまおうとしているかのようだ。
「しばらくは品川の吉田屋という旅籠に泊まっているそうです。歳三さん、後生だから、お琴さんに会いに行ってやってください」
「分かった。分かったから、もう横になれ。それにしても、なんでお前がそこまで肩入れするんだ?」
総司は一瞬、視線を泳がせ、それからはにかんだような笑顔を見せた。
「同類相憐れむ……かな。お琴さんと私は、同類なんですよ」
それ以上総司は何も言わなかったが、何となくその言葉の意味が分かる気がして、俺は曖昧な微笑を返していた。
日を追うごとに、総司の笑顔が透き通っていく。同時に、彼の命までもが漂白されていくようで、やりきれない思いだけが募るのだった。

***

こうなったら、総司の願いを無下にするわけにもいかない――。
いつになく殊勝な気持ちになった俺は、その日のうちに、総司から教えられたお琴が逗留しているという旅籠に向かった。旅籠では、もう軒提灯に灯が入っている。
旅籠の主人に事情を話し、夕闇が迫る廊下をお琴の部屋へと向かう。
「トシさん! ほんとに、トシさんなの?」
俺が部屋に入っていくと、お琴はまるで幽霊でも見るような顔で俺を見た。
「どうして……」
言葉が続かない。
次の瞬間、お琴は声にならない声を上げ、くしゃくしゃの顔で俺の胸にすがって泣きじゃくった。
「………」
細い肩をそっと包むと、お琴はぴくりと体を震わせ、新たな涙で頬を濡らした。
「ほんとにトシさんなのね? 夢じゃないのね?」
「お琴――」
とうの昔に捨てて、忘れた女だった。心のどこかに引っかかってはいたが、総司に聞くまで名前さえ思い出さなかった。
それなのに、今こうして自分の腕の中に感じている体温が、なぜかとても懐かしい。お琴の肌のぬくもりは、故郷の風景のように俺の体と心を癒していくのだった。
「お琴さん。すまない。俺はあんたを待たせ過ぎちまったようだ」
俺の言葉に、お琴は一瞬絶句し、そして激しくかぶりを振った。
「いやだ、謝らないで。私が好きでしていることだもの。トシさんは何にも悪くないわ」
とうにどこかへ嫁いでると思ってた――。喉まで出かかった言葉を、かろうじて飲み込む。
今日までずっと、こんな鉄砲玉のような男を待っていてくれた女に対して、それはあまりに失礼だろう。
「私ね、いつまでもトシさんを待っているって決めたの。多摩川の岸で、忘れてくれって言われたあの時に」
お琴の眸子が不思議な情熱を帯びた。
「私には、あなたを繋ぎ止めることなんてできないから……。それなら、いつかあなたが私のところに戻ってくるまで、その日までずっと待ってるって」
――ああ、と俺は不意をつかれた。
誰かが自分を待ってくれている。それがこんなにもうれしいことだったとは。
もう忘れかけていたそんな人間らしい感情が、まだ俺の中に残っていたことを、素直に目の前の許嫁に伝えてやりたい。だが、言葉にならなかった。
俺は黙って、もう一度お琴の体を抱きしめた。


「また、行ってしまうんでしょう?」
行燈の薄明かりの中で、女は寂しげに微笑する。
「すまない、お琴さん。俺はやっぱり、あんたの所には戻れそうにねえ」
頭を下げる俺に、いいえ、いいえ、とお琴はかぶりを振った。
「今、こうして、あたしに会いに来てくだすったじゃないですか。それだけで、あたしは嬉しいの」
涙ぐんでいるのか。つい、と顔をそらしたお琴は、立ち上がって、宿の小窓をからりと開けた。
一陣の風とともに、淡い薄紅の花びらが舞い込む。
窓の外。手が届くほどの距離に、早咲きの桜の枝が揺れていた。
舞い散る花びらの中で、振り返ったお琴の眸子は妖艶な色をたたえている。
「明日の朝には、歳三さんを笑顔で見送るって約束するわ」
だから、その前に――、と女は言った。
「これから先、ずっとあなたを待ち続ける女に、せめて一夜の形見をくださいな」
「お琴……」
満開の花を散らすように、激しい風が吹き荒れる。
春の夜の、どこか朧な霞の中を漂いながら、俺は初めてお琴の唇に触れた。
ああ、と朱唇から切なげな声がもれる。
その吐息を聞いたとき、俺は急に腕の中の女が愛おしくなり、悲しくなり、胸が痛くなった。
「歳三さん……ずっと、ずっと、待っています」
もう二度と会えないかもしれない。
俺もお琴も、そのことを予感しながら、互いの体を重ねていく。


花散らしの風がどれほど強く吹こうとも、そしてその嵐にすべての花弁が散り果てようとも。
次の春、桜はまた咲く。
たとえこの命が消えても、お琴の中で俺は生き続けるのだろう。
今宵。俺の生きた証を、お前の心に、体に、刻み付けて――。
俺は逝こう。


◇◆◇

この小品は、実は一昨年の自サイト開設11周年記念企画に書こうと思っていた連作のうちの一編です。
我が愛しき男たちを花にたとえて、それにちなんだSSや詩を書こうという企画でしたが、結局3人も積み残してしまって;;
すでに11周年でも何でもないのですが(爆)、せっかく考えたお題と企画なので、なんとか桜の季節に間に合わせようと頑張ってみました。
土方歳三のイメージといえば、これはもう何を置いても「桜」。彼ほどこの花が似合う人はいないでしょう。その生きざまも死にざまも、まさに鮮烈な桜の花のようで。
さて、今作では久しぶりに、土方さんの許嫁であるお琴さんが登場します。
彼女がその後どんな人生を送ったのか、ぐうたらな私は調べていません。でも、もしかして、ずっとトシさんを待って待って、待ち続けて暮らしていたのかな。そうだったらいいなあ…切ないけど素敵だなあ…って思って書きました。(^^)
きっと、それくらいしても後悔しないほど、歳三はいい男だったはず…なんです、たぶん。
なお、ふたりのこれまでのいきさつについては、前作「翠雨の頃」をご一読いただければ幸いです。



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2017年07月18日

超久々に、薄桜鬼MADです。。。

この前ラジオを聴いていたら、やなわらばーの「夢を見た」が流れてきまして…。
あ、これ平助の曲(あくまでも私の中のイメージソング)だ!って、うわあ~~~ってなって、懐かしさのあまり大好きなMADを見直したら、もう朝から号泣してしまいましたよ。
やっぱり平ちゃんはいいなあ。かわいいなあ。かっこいいなあ。切ないなあ。ううう;;;
で、ひとしきり薄桜鬼の動画をあさったりしてしまいました。
そんな中、以前に大好きでブログにもアップしたんだけど、消されてしまっていた土方さんの動画を発見!
これは…ぜひとも皆様にも見ていただかなければ。

当時の記事はというと…

「ようやく土方さんルートをクリアしました!
ああ、長かったぜぃ…。
さすがメインルート、九章まであるんですもの。新選組の道のりを最初から最後までおさらいしました、っていう感じですね。
いやぁ、切なかったです。(T_T)
やっぱり新選組って…何から何まで悲しすぎますよね。 
もはや、何も語る気になれない。歴史の厳しさに打ちのめされました…。
プレイの感想などは、もうひとつのブログ「気まぐれ日記」の方にアップしています。

土方クリア記念MADをどれにしようか…と、いろいろ迷ったのですが、曲がすごくよかったのと、三木さんのステキボイス満載だったのとで、こちらを選ばせていただきました。
曲は星村麻衣さんの「ひかり」という曲です。
しみじみと聞いていると…涙腺が崩壊しました。(T_T)




実はこの後、立て続けに風間ルート、ノーマルルートもクリアしたのですが、このゲームは本当にマジでやばいっすね。
何といっても、製作者の方(シナリオライターさん?)が新選組ファンの心情をよく分かってくださってる。ただ単に甘いだけの乙女ゲーでは、コアなファンは納得できないんですよ。
もちろん、乙女ゲーをプレイし慣れている人からすると、いろいろと不満な部分もあるのかもしれませんが、私自身はかえって糖度が足りないくらいの方がしっくりするのかもしれないなぁ…と思ってみたり。
だって、あんまりあの時代、あの状況で、女の子とラブラブっていうのもなんだかなあ、と思いませんか。
その点「薄桜鬼」は、ストーリーもそこそこ史実に添っていますし、現実と乖離していなくて本当によかったと思います。 いつだって、乙女ゴコロは切ない系に弱いのですよ。(^^)」

なんて、勝手なことを書き散らしておりました。
今改めて聞くと、やっぱり三木さんボイスってすごく素敵!
もう長いこと離れてしまっているけれど、もう一度プレイし直してもいいなあ>薄桜鬼。
ただ、プレステ2って横長テレビだとうまく映らないんですよね。途中で画面サイズが変わったりして。それさえなければリプレイしてみたいかも。(^^;)





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chika3594 at 11:12|PermalinkComments(0)薄桜鬼LOVE 

2017年07月17日

「三国恋戦記 魁」もうすぐ発売ですね。

「三国恋戦記 魁」、買おうかどうしようか、正直あまりその気になっていなかったんですけれど。何というか後略対象が、あまりにも乙女ゲーらしくないというか;;
娘も乗り気じゃないし、発売日が延期になるってあまりいい傾向じゃないし、まあしばらくは様子見かな~って思っていたんです。
そんな中、先日公開されたOPムービーを見てみると、さすがに気分が盛り上がるといいますか、(いやあ、もしかしてこれは、かなりいいのでは?)ってなってしまいました。(^^;)
シナリオも前作と同じ方だし、期待できるかも。欲を言えば、もう少し攻略キャラを増やしてほしいところなんだけど…。ぶっちゃけ、一番興味があるのが董卓(仲頴)なんだけどね。あの極悪人がどんな乙女ゲーキャラになっているのかと。(たぶん、魂消ると思われる)
もしかして、このゲームがそこそこ売れたら、次はもっと後半の時代のゲームも作ってくれたりしないかなー。もちろん、そこは姜維でっ!!! そのための投資なら、このゲーム買ってもいいわん(笑)。







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chika3594 at 00:00|PermalinkComments(0)三国志LOVE 

2017年06月26日

ガルパンはいいぞ~♪




「ガールズ&パンツァー」、娘がレンタルしてきたのを一緒に見てました。
戦艦の次は戦車?!(^^;)
最初の方はそれほどきちんと見てなかったんですが…話が進むにつれて引き込まれていき、最後はもう目が離せず大興奮。すごく面白かったです。
設定(世界観)がイマイチよく分からない部分もあるとはいえ、ストーリーは至極真っ当なジャンプ的王道スポ根アニメでしたね。
さらには、出てくる子たちがみんないい子で。主人公とその仲間たちはもちろん、敵キャラの子たちも決して意地悪な悪役ではなくてよかった。
見終わった後に爽やかな気持ちになれる作品でした。ストーリーの面白さ、展開のスキのなさ、やっぱり監督の水島努さんがお上手なのでしょう。
作画も丁寧で、CGも違和感なく…というか、よくまああれだけ細かく動かせたなあ~と感心しました。
私も娘も戦車のことは全く分からないので、ミリオタの息子に解説してもらいながら、「へえ~」とか「ほお~」とか言いながら見てました(笑)。知ってる人が見たら、もっと楽しめるんでしょうね。
作っておられる方の(戦車、そして作品に対する)愛の深さを感じる良作です。
「パンツァー フォー!」(≧▽≦)





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chika3594 at 22:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0)アニメ 

2017年06月20日

FGOやってます!

お久しぶりでございます。
何とか生きております。(^^;)

最近(…でもないけど)ハマっているもの。
「Fate/Grando Order」
はい、スマホゲームでございます。
先にやってた娘にしつこく勧められ、去年の12月からやり始めました。
そしたらこれが、めちゃくちゃ面白い!
なんかもう、時間が空いたらやっております。充電ゴリゴリ減らしながら(笑)。
取りあえず、新宿のステージまで一応クリアしました。いや~、メインストーリーの6章・7章の難しさときたら!!! 戦闘しながらお肌がヒリヒリします。胃がキリキリします。でも、クリアした後の充実感がすごい。さすが那須きのこさんの脚本ですねー。
いろんな英霊が出てくるのですが、どの子もみんな素敵でカッコよくて…。ストーリーを進めると、本当にみんな大好きになってしまいます。
いろいろ諸々いっぱい語りたいことはあるのですが、それはまた後日。
今日のところは、カッコいいPVを載せておきますねっ!









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chika3594 at 16:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)ゲーム 

2017年02月10日

SHIROBAKO

SHIROBAKO Blu-ray プレミアムBOX vol.1(初回仕様版)
木村珠莉
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2016-11-23



近頃はあまりアニメも見ていないのですが、そんな中ですごく良かったのが「SHIROBAKO」です。
​実は、ずっと前にレンタルで見始めたのですけれど、なぜかそのお店には12話までしか置いてなくて、ずっと続きが気になっていたのです。そうこうしているうちに、先日からキッズステーションで放映が始まり、ようやく全部見ることができました。


「シロバコとは映像業界で使われる白い箱に入ったビデオテープの事でありひとつの作品が完成した際に、制作者が最初に手にする事が出来る成果物である。イラストや写真等で華やかに作られている販売用パッケージと比べれば、白い箱に入っただけのテープは地味かもしれない。しかし、そこにはクリエーター達の想いが詰まっている。
この物語は、5人の夢追う女の子を中心に、シロバコの完成を目指し奮闘するアニメ業界にスポットを当て日々起こるトラブルや、クリエイティブな仕事ゆえに起こる葛藤や挫折、集団で作るからこそ起こる結束や衝突といったアニメ業界の日常を描いた群像劇作品である。」
公式ページより)


​高校時代にアニメーション同好会の仲間だった5人の女性が、アニメ業界に入ってそれぞれの夢を追いながら作品の完成を目指して奮闘する、というお話。まったく門外漢の人にも業界の内幕がよく分かりますねー。(^^;)
​実はン十年前、アニメの制作に関わりたいと思っていた私。。。あの当時も、決していい職場環境とは言えない(つーか劣悪な環境の)制作現場でしたが…。
なんかこのアニメ見てると切なくなるのよね。あの頃から全然変わってないというか、いやむしろ悪化しているのでは…と。
ブラック企業どころの騒ぎではありません。安い賃金、過重労働、フリーのクリエイターさんなんて社会保障もろくすっぽないわけだし。あるのはただ個人の情熱だけ…。それっておかしいでしょ、と心から思います。
だいたい近頃のアニメって、粗製乱造が過ぎるんじゃないでしょうか。ほんとにびっくりしたんだけど、2016年の秋アニメだけでも、(私なんか名前も知らない作品がほとんどだけど)<こ~んなに>あるんだぜえっ。どう見ても異様じゃないですか。これだけの数の作品を限られた人数で作るんだから、そりゃまあ手抜きになったり無理なスケジュールで「落ちる」こともあるわなあ。(^^;)
​どこに原因があるのか、難しいことはよく分かりませんが、もう少し、原作を含めた作品そのものや、制作現場の人たちや、ファンを大切にしてほしいと思うのですが。

​…などと、堅苦しい話はさておき、「SHIROBAKO」とってもいい話でした。自虐ネタを扱いながら(爆)作品そのものは本当に丁寧で、作っておられる方たちのアニメ愛がひしひしと伝わってくる良作でした。
主人公の宮森あおいがめちゃくちゃ出来るコで、こんな新人だったらどこの職場でも欲しい人材なんじゃないかなー。他のコたちも、悩んだりへこんだりしながら、それでも必死で前に進もうとしている。若いときに夢を持つこと、そしてその夢に向かって努力することができるって、本当に幸せなことです。…な~んてね、老境にさしかかった身にはあおいたちの若さと情熱がうらやましい限り。(^^;)

私的には、前半よりも後半の話の方が面白かったなあ。特に、23話~最終話への怒涛の展開がまさに神でした! こうしてたくさんの人たちの力がひとつになって、初めていい作品が生まれるんだなあ…と。
何より印象に残っているのは、23話のラスト。声優志望でありながらなかなかデビューできなかった親友の坂木しずかが、ようやく役をもらってアフレコしている姿を見て、制作進行のあおいが感極まって涙するシーンです。ここ、本当にすばらしくて、見ているこちらまでもらい泣きしてしまいました。
ああ、いい友達ってほんとに宝物だなあ、って。
彼女たちの夢と友情に乾杯!
そして、アニメ業界の未来がより明るく良い方に向かうことを願って。
より多くの人たちに見てほしいアニメです。




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2017年01月18日

托生-奇しき縁(えにし)-

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魏の嘉平元年(蜀漢の暦では延煕十二年)。
征蜀護軍の地位にあった夏侯覇仲権が、突如、魏を出奔して漢中に亡命した。
それは、魏にとっても蜀にとっても青天の霹靂だったが、知らせを受けた姜維伯約の胸は、わけもなくざわついた。
魏の重鎮として関中を守っていた夏侯覇とは、これまで幾度も戦場で干戈を交えてきた仲である。颯爽と指揮を取る夏侯覇の勇姿を思い起こし、姜維は複雑な思いにとらわれずにはいられなかった。その境遇が、いやでもかつての自分の姿を思い起こさせたからだ。
蜀漢の丞相 諸葛亮孔明が起した魏討伐の戦。当時姜維は、魏の中郎将として、太守とともに天水を守っていた。
その攻防戦のさなか、太守に内通を疑われ、敵中に孤立した姜維は、自分に従う将兵たちの命を救うべく、やむなく諸葛亮に投降したのだった。
(あのとき私は、死を覚悟していた――)
諸葛亮とは不思議な縁があり、以前から心の師と仰いでいた姜維だった。それでも、一旦魏に仕えると決めた以上は、一命にかえてもこの地を守り抜かんと、固く心に誓っていたのである。
その身に、あろうことか謀反の疑いがかけられるとは。
昔日の深い絶望と虚無感を、二十年たった今でもはっきりと覚えている。

***

やがて夏侯覇は、わずかばかりの部下とともに、姜維のいる南鄭城に護送されてきた。
とりあえず一党を城内の一角に落ち着かせてから、姜維は心尽くしの宴を開いて夏侯覇をもてなした。
「夏侯覇どの、よく参られた。これからはここを我が家と思うて、遠慮なくお過ごしくだされ」
「かたじけのうござる」
傷心の降将は、感情のない声で礼を述べ、淡々と頭を下げた。逃亡戦の際に負ったと思われる傷痕が痛々しい。
「どのような事情であれ、あなたが我が蜀漢を選んでくだされたこと、うれしく思います」
「別に、選んだわけではない。こうするしか、道がなかったのだ」
「………」
宴席に沈黙が落ちる。
己の身に起こった不幸な運命を、彼は未だ受け入れられずにいるのだ、と姜維は思った。
「私ごときが何を申し上げても、将軍のお心のなぐさめにはなりますまい。見え透いた世辞は申しません。今はただ、何もかも忘れ、お心を静めて、ゆるりとご逗留なされませ」
魏の明帝(曹叡)の死後、宮廷の実権を握ったのは、宗室に連なる曹爽だった。しかし、やがて彼は、対立する司馬懿のクーデターによって政権の座を追われ、一族すべて滅ぼされてしまう。
この「正始の変」以後、魏帝の力は目に見えて衰退していくのである。
夏侯氏は、魏国では曹氏と並ぶ地位にあり、夏侯覇もまた、縁戚に繋がる若き俊英として順調に出世の階段を上っていた。彼の父は、建国の功臣 夏侯淵である。名族中の名族といっていい。魏帝の地位を簒奪しようと企てる司馬懿にとって、夏侯覇の存在は邪魔なものでしかない。
突如、都への召還命令を受けた彼は、身の危険を悟り、わずかな手勢を連れて関中を脱出する。魏を追われた彼が落ち行く先は、昨日までの宿敵、さらには父夏侯淵の仇敵である蜀の他にはなかった。


次の日の夕刻、姜維は夏侯覇の宿舎を訪ねた。
特に用があったわけではないが、昨夜の彼の様子が、何とはなしに心にかかって離れなかったのだ。
夏侯覇は、夕闇が迫る部屋の中で、一人ぽつねんと座っていた。憔悴しきった顔で、ただ茫然と己の手を見つめる姿に、姜維の胸が疼く。
(あの日の私も、こんな顔をしていたのだろうか――)
苦い思いを胸の奥で噛みしめながら、姜維はできるだけ穏やかな表情で声をかけた。
「ご不自由はありませぬか? 何か足りぬものがあれば、遠慮なくお申し付けくだされ」
「―――」
不意の訪問者に向けられた夏侯覇の視線は、何の感情も表していないように見えた。その顔で、ふっと小さな溜息をつくと、彼は薄い笑みを片頬に刷いた。
「姜維どのか。あなたとは、なぜか他人のような気がしないな」
それは、聞きようによっては嫌味とも取れる。
「はい。将軍もご承知でしょうが、私もかつて魏に仕えておりました」
夏侯覇の横に腰を下ろした姜維は、淡々と言葉を継いだ。
「姜伯約の名は、魏国では、不義不忠の裏切り者、忘恩の大罪人として聞こえておりましょう。ですがそれは、ここ蜀漢にても同じこと。たとえどのような理由があったとしても、一度武士(もののふ)としての道を踏み誤った者には、世間の目は冷たいものです。あなたには、その屈辱を耐え忍ぶ覚悟がおありですか?」
夏侯覇の体がこわばる。ぎり、と奥歯が軋んだ。
構わず、姜維は畳みかける。
「私のようなとるに足りぬ者ならいざ知らず、夏侯将軍ほどの地位と名誉のある方にとって、此度のことは筆舌に尽くしがたい屈辱でありましょう。まして蜀は、将軍にとっては父上の仇、不倶戴天の仇敵。これに膝を屈するご無念はいかばかりかと推察いたします。しかしそれ以上に、裏切り者の烙印を一生背負っていかねばならぬ辛さは、耐え難いものと言わねばなりませぬ」
『裏切り者』という言葉に、夏侯覇はひどく動揺したようだった。
己が忠誠を捧げてきた故国。その簒奪者に対して反旗を翻すことが裏切りになるとは、どう考えても理不尽ではないか――。
夏侯覇は、苦渋に満ちた沈黙を破り、大きなため息をついた。
「私は、何を間違えたのであろう? 我が一族が命を懸けて守ってきた魏の国が、まさかこんなことになろうとは……」
「世の中とは、常に理不尽なものです、仲権どの」
失意の夏侯覇に、姜維はあえて字で呼びかけた。
「あの時、私も今のあなたと同じように、すべてを失った絶望に自失しておりました。後先のことなど考えることもできず、ただただ後悔と慚愧に苛まれ、己の生きる意味をも見失っていました。けれど、その時私には、幸いにもこの身を導いてくださる偉大な方がいらっしゃったのです。その方のおかげで、私は再び立って歩き出すことができた――」
「諸葛孔明どのか」
「はい」
誇らしげにうなずく姜維の顔を、夏侯覇がまぶしそうに見つめる。
亡き恩師のことを語るとき、姜維はいつも我知らず饒舌になるのだった。

――諸葛丞相と出会い、私は初めて自分が生きる意味、進むべき道を知った。
――丞相に、この命、いやこれから先の己の生き様のすべてを捧げようと思った。

「仲権どの、あなたは宿縁というものを信じておられますか。その人と出会うことで、己が運命が決まってしまう。それを宿縁というのなら、私が蜀の諸葛丞相に降ったことこそ、宿縁だったといえるでしょう」
そうして姜維は、屈託のない眸子で夏侯覇に微笑みかけた。
「願わくば、将軍にとってこの出会いが良き宿縁になれば、と思います」
「………」
あざやかすぎる笑顔に、夏侯覇は一瞬言葉を失い、そっと視線をそらした。
すっかり暗くなった部屋の中、座がしんとする。彼のために紡ぐべき次の言葉が見つからない、と姜維は思った。
これ以上ここにいても、夏侯覇の負担になるだけだろう。
「今日はこれで失礼いたします。明日はぜひ、拙宅へお越しくだされ。ささやかながら成都から取り寄せた酒肴を用意しておきますゆえ」
姜維は、燭台に灯を入れるように人を呼んだ。そして、できるだけ明るく振る舞いながら、その場を辞したのだった。

***

その夜。
夏侯覇はなかなか寝付けなかった。
突然我が身を襲った不幸。訳も分からぬままに過ぎた逃避行。怒り、悔しさ、情けなさ。様々な思いが胸の内に渦巻いて、いつしか彼は獣のような唸り声をあげていた。
その時ふいに、脳裏に浮かんだ顔がある。

――将軍にとってこの出会いが良き宿縁になれば、と思います。

屈託のない姜維の笑顔が、暗闇の中であざやかによみがえった。
真摯に己の過去と現在を語ってくれた彼の言葉が、夏侯覇の荒んだ心にさざ波を立てる。
かつて、自分と同じ絶望に打ちのめされたであろう彼。姜維ならば、わが胸のこの痛み、この闇を分かってくれるのだろうか。
姜維は、諸葛亮との出会いを運命と信じ、その宿縁のために己のすべてを捧げると言った。
(あの男を、これほどに突き動かす情熱とは、一体どのようなものなのだ? それが分かれば、私ももう一度、あの男のようにまっすぐなまなざしで生きられるのか――)
空が白む頃まで、ひたすら己の心と向き合い続ける夏侯覇だった。


やがて、成都の蜀帝劉禅から、夏侯覇を都に上らせるようにとの使いが来た。
「仲権どの、大丈夫。何もご心配にはおよびません。陛下の皇后様(張飛の娘)は仲権どのの縁戚にあたられるお方です。宮廷でもさぞかし歓待されましょう」
その日も姜維は、いつも通りの穏やかな表情で、夏侯覇と酒を酌み交わしていた。
漢中に留まること十日余り。ようやく胸襟を開いて語り合うことができるようになった二人である。
夏侯覇には、酔いとともにしだいに昂ってくる思いがあった。おもむろに居住まいを正した彼は、姜維の前に向き直ると、
「私はあなたに礼を言わねばならん」
深々と頭を下げた。
「何を――?」
「言わせてくれ。あなたに出会えた僥倖に、この宿縁に、心から礼を言う」
「仲権どの……」
「これから先、裏切り者がどのような末路を辿るのか、それは誰にも分らぬ。だが少なくとも、絶望の底で立ち上がることはできた。何も見えなかった暗闇の中に、ひとつの灯りがともった。あのまま生ける屍となり果てるしかなかった己の魂を、あなたが救ってくれたのだ」
それならば、と夏侯覇は、初めて見せる晴れ晴れとした顔で言った。
「己が生きる道はひとつしかない」
濁りのないまっすぐな視線が、姜維に向けられている。
「姜伯約どの。これより私は、あなたを我が標としよう。あなたの夢を我が夢としよう。あなたが孔明どのにすべてを託したように、私はあなたに、我が生を託しましょう」
夏侯覇の言葉に、遠い日の自分自身の誓いがよみがえり、姜維は目蓋を熱くした。
「………」
「今日この日より、夏侯仲権、この命を蜀と伯約どのに捧げまする」


二人の男の奇しき縁が、ここに始まる――。


◇◆◇

毎年1月になると、心がざわつきます。
姜維伯約の命日(1月18日:旧暦)に、何か書きたいと思い続けて、ようやくできあがったのがこのSSです。放置しっぱなしの拙サイトが、久々に更新できました。
夏侯覇は、私のイメージではちょっと寡黙な大人の男性という感じ。直情径行で感情に走ってしまいがちな「うちの姜維」を、黙ってそっと抑えてくれる役回りですかね。
なので、無双の覇ーたん(笑)のキャラにはちょっとびっくりしたんですが、それでもこの二人の絡みが結構好きです。
命日とは全く関係のない内容になってしまいましたが、これからも姜維と夏侯覇のコンビはいろいろ書いてみたいなーと思っています。




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2017年01月07日

七草

皆さま、遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
ほとんど放置状態…な拙ブログですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。m(__)m
我が家では「七草がゆ」などというものをついぞ食べたことがないのですけれど、サイトの片隅からこんなSSを引っ張り出してきましたので、よろしければご賞味くださいませ。

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年明けの賑々しさも一段落し、今日は七草粥の日。
佐和山の城では、島左近が縁側に立って、うっすらと雪化粧した庭を眺めていた。
「今朝はやけに冷え込むなあ」
そう言えば……と、左近は眉間にしわを寄せ、厳しい表情になった。
「殿は大丈夫だろうか」
左近の主、佐和山城主である石田三成は、昨夜から腹をこわして臥せっている。
もちろん左近は寝ずの番をするつもりだったのだが、三成が無理やり引き取らせたのだった。
「さて、ご機嫌伺いに出向くとしますか。おっと、その前に――」
左近は、下女たちが朝餉の支度をしている台所へと向かった。


一方。
(寒い……)
三成は、布団の中で震えていた。火桶に炭を入れ、布団を二枚重ねても、まだ寒い。
時折襲ってくる腹痛と下痢のため、昨夜はほとんど眠れなかった。ようやく痛みは治まったものの、体全体が自分のものではないように頼りない。
(左近はどうしているかな)
無理やり自室に下がらせたことを怒っているだろうか。
三成にしてみれば、腹痛に苦しむ自分の姿を左近に見られたくはなかったのだ。見栄っ張り、は生まれついての性分である。
そんなことを考えながら、ぼんやりと天井を見上げていたとき。
「殿、入りますよ」
当の左近の声がしたかと思うと、縁側の障子がからりと開いた。
「左近!」
三成は声を上げ、目を見開いた。
たった今、思い浮かべていた人物の顔をそこに認めて、思わず視線をそらす。胸の奥が、少しだけとくんと小さな音をたてた。


「お加減はいかがです?」
「うん。もうだいぶよくなった」
「そうですか。それじゃあ、これを召し上がってください」
「―――?」
左近が三成の枕元に差し出したのは、ほかほかと温かな湯気を立てている粥だった。
「今日は七草の日ですから。これなら腹にも優しいし、ぬくもりますよ」
「左近が作ったのか?」
「台所を借りて、ぱぱっとね」
「器用だな」
三成がにこりともせずに言うと、左近は粥を椀によそいながら、あははっ、と豪快に笑った。
「いやあ、粗野な暮らしが長かったものでね」
三成は、勧められるままに粥を口に運ぶ。一口食べるごとに、腹の中からぬくもりが染み渡っていくようだ。いつの間にか、寒さも忘れていた。
「うまい」
「お口に合いましたか」
深く大きく自分を包んでくれる左近の優しさが、体中に広がっていく。三成は、少年のような笑顔を見せた。
「左近の味がする」
「お、これはどうも」
最大級の褒め言葉に、左近は薄っすらと微笑した。


「雪景色は嫌いではないのだが――」
子どもの頃から冷えるとすぐに腹をこわしてしまうのだ、と三成は苦笑した。
「だが、そのときは、こんなにうまい粥を作ってくれる人が傍にいなかったのでな。辛いだけの思い出だ」
「これからは、殿が腹をこわされたら、左近がいつでも粥を作ってさしあげますよ」
「ああ。それなら……、腹をこわすのもいいかもしれぬな」
雪をまとった琵琶湖の風景を愛でながら、主従は温かな笑みを交わし合う。
「それでは殿、後で雪見酒としゃれ込みましょう」


佐和山の城には、何よりも強い主従の絆で結ばれた主と家臣がいるという。
風雅を愛する二人は、無類の酒好きでもあったそうな。
花の頃には花を愛で、月に酔い、雪に遊ぶ。
ほらね。
戦国は今日も、佐和山日和――。


◇◆◇

以前、「今日のワンフレーズ」でもご紹介した佐和山主従のSSです。
昨年は「真田丸」効果で、空前の戦国ブームでしたが、へそ曲がりの私は結局見ませんでした。三谷さんの脚本がちょっと肌に合わないといいますか…。
らぶりんの大谷さんは興味あったんですけどねー。(^^;)
岡田准一さん主演の「関ヶ原」はどうかなー? 誰が左近を演じるのか、これが大問題なんですけど。
私的にはとにかく無双の佐和山主従が大好きなので、あんな感じの二人だったらいいのになーと思っています。

◆イラスト提供:「十五夜」




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2016年12月25日

散り椿、雪に咲く

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慶応三年一二月九日。日本は大きな転換点を迎える。
この日、王政復古の大号令が下った。
将軍職を辞した徳川慶喜は大坂に退き、会津をはじめとする幕軍も潮が引くように京を去った。
新選組もまた京都守護の任を解かれ、伏見奉行所に移ることになった。
情勢はなお混沌としている。いずれ薩長を中心とした討幕派と旧幕軍の間に戦が起これば、伏見は最前線になるだろう。


明日は京を出て伏見に向かう、というその夜。
不動堂村の新選組屯所は、ひっそりと静まり返っていた。
局長近藤勇が、全隊士に一晩の休暇を許したからである。ほとんどの隊士は、それぞれに最後の京の夜を過ごすべく外出し、屯所に残っている者は数えるほどしかいなかった。
「静かだなあ……」
自室の天井を見上げて、沖田総司はぽつりとつぶやいた。
自分の声が思った以上に大きく響いたのも、静寂すぎる夜気のせいだろうか。

――再び、この王城の地に戻ってくることはないんだろうな。

若者らしい感傷に胸が締め付けられ、ふいに目蓋が熱くなった。
京で過ごした五年間の思い出が、あざやかによみがえってくる。楽しいばかりの日々ではない。辛く、切なく、悲しい出来事の方がはるかに多かった。
それでも。
今は、何もかもが懐かしい、と思える。
過ぎ去った時間は二度と帰ってはこない。京での日々こそが、自分にとっての『青春』だったのだろう。
そんな感慨に沈んでいるとき、
「総司。気分はどうだ?」
からりと障子が開いて、土方歳三が顔をのぞかせた。
「なんだ、土方さんか」
「なんだとは、なんだ。お前がひとりで寂しがって泣いてるんじゃねえかと心配して来てやったのに」
「………」
本当に涙がこぼれそうになり、総司はあわてて寝間着の袖で目蓋をこすった。
「静かな夜ですね」
「ああ。幹部連中はみんな出払っちまったし、人気がなさすぎるのも落ち着かねえもんだな」
土方は総司の枕元に座ると、火鉢に炭を足しながら、この男にはめずらしい優しげな笑顔を見せた。
「土方さんには、別れを惜しむひとはいないんですか?」
「そんなもの――」
必要ねえ、と土方は不愛想に吐き捨てた。
「薩長の奴らなんざすぐに蹴散らして、またここに戻ってきてやるさ」
相変わらず威勢がいい。総司はくすりと忍び笑いをもらした。
総司の知る限り、土方は京へ来て以来弱音を吐いたことがない。それがこの男の取柄でもあったが、今夜の土方は少しばかり多感になっているようだった。
総司を相手に、とりとめのない世間話や江戸の頃の話を一人でしゃべっている。
やがて話のネタも尽きたのか、所在なさげに火鉢で手をあぶり出した。
静寂が戻った部屋で、炭のはぜる音が小さく響く。
総司は布団の上に半身を起こし、黙り込んでしまった土方を見つめた。
「朝になっても、帰って来ない人もいるかもしれませんね」
「こんなご時世だ。仕方ねえさ」
やはり今夜の土方は、いささか妙だ。
「そんなしおらしいことを言って。負ける気なんてないくせに」
「違えねえ」
総司の揶揄に対して、土方は楽しそうに破顔した。


やがて部屋を出た土方が、何を思ったか、雨戸を一枚開けて庭先を見ている。
「やけに冷えると思ったら、雪か」
雪、と聞いて、総司も布団を起き出して廊下へと出た。
前栽の生垣の上に、音もなく白い雪片が降り敷いている。
「今夜は積もるかもしれませんね」
「そうだな」
京を去る最後の夜が雪模様というのも、なぜか特別なめぐりあわせのように思われて、二人は黙って降りしきる雪をながめていた。
その時。
生垣の奥に植えられた紅い椿の花が、身じろぎするかのようにぽとりと落ちた。
(ああ、椿が――)
積もり始めた雪の上。
白い大地に咲く、あざやかな朱の色は、まるで血のようだ。
総司には、その紅が己の命の証にも思えて、愛おしかった。

私もこの椿のように、真っ赤に燃えて散りたい。
あと何年、何か月、何日……あなたのために生きられるのだろう。
たとえ残された時間がほんのわずかでも、私は最期まであなたのために、あなただけのために、この命を燃やし尽します――。

「総司」
土方が隣の総司を振り返り、しみじみとした声で言った。
「京の最後の夜を、お前と過ごせてよかった」
総司には土方の表情は見えなかったが、あるいは泣いていたのかもしれない。
土方には彼なりの、京への思いがあるのだろう。
こうして、師走の夜は静かに更けてゆくのだった。


◇◆◇

今年のサイト開設記念に書いたSSです。今の時節、こちらにもアップしてみました。
気がつけば、今年も残すところあとわずかになってしまいましたねー。毎年振り返っては、自分の怠惰さに情けなくなるのですが、今年もやっぱり、サイトもブログも思うように更新できずに終わってしまいそうです。(^^;)
こんな管理人ですが、今年1年お付き合いくださってありがとうございました。来年もお見捨てなく、どうぞよろしくお願いいたします。m(__)m

◆イラスト提供:「十五夜」




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