February 2009

February 15, 2009

悲夢

キム・ギドク監督

ジンは、別れた恋人を追って交通事故を起こす夢を見た。夢だと思いながらもその場所に行ってみると、現実に事故が起きていて、ランという女性がその犯人だという。しかしランには覚えがない。どうやらジンの夢に呼応してランが現実の行動を起こすようだ。ジンは未練の残る元恋人を夢で追い再会するが、現実のランが会ってしまうのは憎くて別れた恋人。ジンの甘美とランの苦痛が交錯し、ふたりは対応策を模索するのだが……。

オダギリジョーは海外が舞台である映画は撮っているのだけど(これとかそれとか)
海外の監督との仕事は今回初とのことです。
で、本格的なラブストーリーも今回初という謳いでしたが、
本格ってなに?(笑)というか、
「嫉妬の香り」とかいうトンデモドラマで愛に堕ちた男(爆)を見たことがあるぞというか(主演じゃないけどね)、
なかなか奇妙なラブストーリーでした。

夢は自由にならないし、夢でおこることに法則はないけれど、
でも物語にするには、ある程度、納得できるものが欲しいんだけどな。

慣習や感情感覚に違いがあるせいかもしれないけど、
警察の対応あれこれとか、監獄(病院?)でのあれこれとか、家の扉を開けたままあれやこれやをやってることとか、
ファンタジーを含んだ映画として誇張してるのか、一般的なことなのか、頭に疑問符がいっぱい。
なにより、ランの行動が理解外。
なぜあそこまで一方的にジンを責めることができるのか、別れた恋人に対して抱いてるのはどれほどの憎しみなのか、それともまだ愛情があってのことなのか、
単なる身勝手でヒステリックな女性にしか見えないんだけどなあ……。
ジンのほうの感情の流れは、それに反してよくわかります。
戸惑いながらも、水が流れるように、次第にランを大事に思うようになっていったのだなと。

愛しているから憎い、やりきれないから他人に攻撃的になる、寄り添う相手より憎いはずの相手のほうが好き、厄介な相手を愛してしまう、与えられた愛より与えられなかった愛に固執してしまう……

人の気持ちは矛盾に満ちているものだし、上記のような気持ちも感じられたけど、
無理に夢を見させられたような、不思議な映画でした。
(わたしが見た回では、ホントに寝た人がいたみたいで、いびきが聞こえたよ……。「壁男」でも似たようないびきを聞いたんだけど、同じ人なんだろうか)


しかし物語はともかくとして、
ヴィジュアル関係はため息ものでしたね。

ジンとランの関係はネガとポジのようなものだ、白と黒は同一の色だ……という考えが貫かれていて、
ジンは黒のコートで、ランは白の服で登場。

ジンは印章彫刻を作っていて、墨絵の世界に生きているような雰囲気なんだけど、
ランは服飾デザイナーで、部屋は極彩色の布また布。
ジンとランがこの部屋で会話するシーンで、一方を紗の布で隠しておくというのもよかったです。
で、とある夢の中では、ジンが白のコートになり、ランは黒の服になっています。
物語が後半へと進むと、ジンもランも黒の服に身を包むことに。
これは、ネガとポジではなくなってしまった……という暗示なのかな。
そしてラストは白の風景の中。

この白黒、主となる二色に加えて、蝶の藍や、青色を引き立たせる茶色が印象的。


chikachan112 at 11:38|Permalinkclip!映画 |   【は行】

February 14, 2009

20世紀少年<第2章> 最後の希望

堤幸彦監督

第一章、「血のおおみそか」から15年後の世界。世界を救った……はずのケンヂたちは、「ともだち」の策略により、テロリストとして追われる身になっていた。「ともだち」が支配するこの世界において、ケンヂの姪カンナは逞しく生きていた。そんな中、カンナのクラスメイト小泉響子が15年前のできごとを調べたことで「ともだちランド」に研修に行かされる羽目になる。問題児カンナも同様に……。一方、囚われの身であったショーグンが行動を起こす。

原作の右往左往してるとこを切り捨てていると思うのだけど、
すっきりしたというより、端折ってるという印象が強いです。

一番、そんな脚本あり? と思ったのは、
「ともだち」につながるかつての同級生、
「サダキヨ」と「ヤマネ」が、同じようにしか登場しないこと。

つまりどちらも、

怪しげに登場して危機をもたらすかと思いきや、しかし現在は自分を責めていて、重要な情報の一端を教え、謎を秘めたままで死ぬ。

という役割。

つきつめれば、敵方の枝葉にいる人物はそういう役割になりがちなのだろうけれど、
それにしてもあっさりしすぎというか、同じ立ち位置の人間を続けざま二人出してどうするのというか。

こういうのが、長編の物語を映画に縮めた時の問題なんだろうなあ。
要らない人間を切り捨てることができないんだよね。
(二時間というフィルムの中にはという意味での「要らない」ですよ。オリジナルの作品なら役を統一できるはずだから)

ケンヂの同級生たちは相変わらずの名演技。新たに登場した森山未来や小池栄子なども見事。
カンナ役はちょっといただけないなあ。どこも同じテンションで、仁王立ちしてればいいってものじゃない。

とまあ、「こんなものかなあ」という印象だった第2章だけど、
思わぬ拾い物が、小泉響子役の木南晴夏。

原作っぽければいいとはけして思わないけど、でもそっくりの表情にしぐさ。
なにより、混乱極める2章の中において、コメディエンヌとして雰囲気を明るくし、いい繋ぎ役になってました。
(同じ立ち位置の存在として蝶野刑事やブリちゃんたちがいるけど、いまいち華がなかった)

どこかで見たと思ったら、今クールドラマ「銭ゲバ」の三國茜(資産家・妹)でした。
めっちゃ暗い、でもいじらしい役です。まったくカラーが違うのに、どちらもいいなあ。
これはサブキャラ俳優好きとしては注目していかなくては。


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February 03, 2009

アンドリュー・ワイエス ー創造への道程ー

e29f30f7.jpg愛知県美術館で、ワイエスを観てきました。HPはここ

今回の展覧会は、制作過程に焦点をあてるということで、完成品の他にも、その作品を作るまでのスケッチや習作が何枚も展示されていて、面白い趣向でした。
(完成品が持って来れないのか、カラーコピーというものもあったのが残念だけど)

例えば室内のある風景を描くとして、
おおまかな構図を決めたラフスケッチから、
部屋にある籠ひとつひとつ、その網目までこと細かく描いた鉛筆画をいくつか、
ざっくりと色を乗せた水彩画があり、
習作として似た構図の作品があり、
しかし最終的に出来上がったものは、部屋にあった「とある品物」に焦点を当てたものになっていたり。

綿密な準備をしてることが伺えるのだけど、
でも細かく細かく色を重ねたテンペラ画が完成品だったり、
水のにじませ方が大胆な水彩画が最終系だったりと多種多様。
いちばん「しっくり」くる方法を模索しながら何枚もの絵を重ねていったことが感じられます。

今回一番印象的だったのは、光と影のさま。
「幻影」という作品など、光の中に浮かぶ埃まで見せて煌いているかのよう。

水彩画の手法も、大胆と繊細が同居していてため息が出る。
ドライブラッシュという、水と絵の具で紙をかするように描く手法らしいのだけど、筆の穂先を煉瓦の模様に見たてて押し付けたりとテクニシャン。

以前の印象は、画塾の教科書みたいな絵だと思っていたんですよね。
けど、原寸大じゃないと、いや、ナマ絵じゃないと凄さは伝わらないと、しみじみ思いました。
人物画も数多いのだけど、それと対比して風景画などを見ると、時間の流れる重さのようなものを感じます。
特に「火打ち石」などは、荘厳で、動かない物体の強さが迫ってきます。

つい先日の1月16日早朝、自宅にてお亡くなりになったそうなんですよね。享年91歳。会場ではインタビューも流されていて、とても元気そうだったんだけど。
(とはいえ、もともと虚弱体質で学校にも行けなかったらしい)

名古屋は3月8日まで。
東京は終わってて、この後、福島に行くそうな。この二つのHPのほうが情報が多いね。


chikachan112 at 18:56|Permalinkclip!観る 

February 02, 2009

誰も守ってくれない

君塚良一監督

少女ふたりを殺したとして逮捕された兄。それによって平凡な家庭は一変する。世間のバッシングに遭った妹の沙織を守り、供述を得るために、刑事・勝浦は彼女を連れて走り回ることとなる……。

テーマの重さから観ることにした映画なんだけど、
ちょっとあざといという印象でしたね。

もちろん、伝えたいことや考えさせたいことがいっぱいある映画だし、
うまく作られていて続きが気になる面白さだと思いながら観てはいたんだけど、
演出過多というか。

例えば沙織が最初に行くホテル。
マスコミが嗅ぎ付けて扉をどんどん叩いて「お気持ちは?」なんてやってる。
加害者家族に対する行き過ぎた取材姿勢を描きたいのだろうけど、
ホテル側や警察側が、彼らを部屋の前まで行かせるとはとても思えないのだけど。
部屋の外に人員を配置しないわけ? それができないなら場所を移動する意味がないよ。

その前に、犯人逮捕のあたりも大仰で。法人に対する家宅捜索などではあのくらいするだろうけど、個人の(しかも少年の)逮捕だと、あまり派手派手しく入ると逃げられるし起訴前だと人権問題になると思うのだけど……。マスコミが、少年を家から連れ出す前から外に居るのも不思議。
さくっと場所移動して、逮捕後に警察署で記者発表して、そこで身分住所等がわかるんじゃないのかな。
(このケースは近所の少年ということだから、幾人かに目星をつけていたのかもしれないけど)

逃避行の先に選んだ場所も、その相手にこの少女を連れて行って相手の感情を傷つけないわけがないでしょう、という家(ペンション)だし。
案の定、愁嘆場となるわけだけど。

ここまで派手にしないと伝わらないと思ったのかなあ。
でも「ありえんだろ」と思われては、冷めちゃうのではないかな。

とはいえ、役者さんたちは皆、名演技。
ひらめ課長はひらめ課長の顔してたし(佐野史郎)、主演の佐藤浩市も泥臭い刑事で本領発揮の渋さ。松田龍平はロッカーな今時若者で(直前にやったテレビ版の方では相当趣味に走った部屋が映ってた)。
そして志田未来はやっぱり上手いねえ。演技なんだか本当なんだかわからないくらい真に迫ってました。


chikachan112 at 18:46|Permalinkclip!映画 |   【た行】