March 28, 2006

クラッシュ

ポール・ハギス監督

二人の黒人少年は、富豪カップルが自分たちを差別の目で見たと言い、車を奪う。強奪された車と同じ車種に乗っていたパーティ帰りの黒人カップルは、巡回中の市警察官により辱めを受ける。一方、イラク人と誤解された雑貨店のペルシャ人店主は護身用の銃を手に入れようとして口論に。日常会話程度の英語しかできない彼は銃に相応しい弾を購入することができず、娘が棚の中から選ぶ。
アメリカはLA。様々な場所で様々な人間がぶつかり、苛立っている。そんなある冬の夜、翌夜までの36時間の話。

描かれている人種差別について、自分に深い実感がないからかもしれませんが、
差別はモチーフではあるけど、それだけが本題ではないように感じました。

これは、どこででも起こりうる「人と人との衝突」の話なのではないかと。

人が何人かあつまれば、当然考え方の違いが浮き彫りになります。

相手を思い込みで判断することもある。
気分によって自分の行動が左右される。
相手の反応を深読みしたり、勘ぐることもある。
無意識の言葉が、相手を傷つけてしまう。
逆に、意味なくひねくれてしまうこともある。
誤解が傷を広げ、そして他人との間に亀裂がうまれる。

本映画では、ある夜に起きた出来事が、
翌朝にはいろんな場所でいろんな風に発展していました。
一日の間に、登場人物たちがそれぞれ動いて、
その日の夜には、昨夜とはまったく違う人間模様を描くことになります。

それぞれの心の中で解決した問題もあれば、
新たな火種も生じる。
残酷な現実を突きつけられた人もいれば、
奇跡のような幸運に恵まれた人もいる。

でもそれは、一人一人が変化したというより、
人には色んな面があるということを告げられたようでもあります。
特に二人の市警の辿った道は……。

「今」を切り取って投げてみました、とでもいわんばかりのラスト、空中からのショット。
あとは観た人がそれぞれの受け取り方で受け取ればいい、と
そんな風に感じました。

とさて、ところで以下、ネタバレ↓↓

甘いかもしれないけど、
やはり例の「マント」のエピソードは、感動でした。
劇場予告編で、その手前の「BANG!」シーンがありまして。
正直、観ると辛くなりそうだなあと思って、監督には興味があったものの(「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家です)二の足を踏んでいたんで。
一気に緊張が解け、ほっとしました。
弾に関する伏線は憎いばかり。
このエピソードがラストの悲劇エピソードに
清涼感を持って立ち向かってくれたような印象。

マット・ディロンが好きな友人は、「いい役」が付いてよかったと言ってましたが、
わたしは久しぶりにブレイダン・フレイザーが観れて嬉しかったです。
色んな役ができる俳優さんだと思っているので。
(雑誌「スクリーン」によると、子供のために仕事を控えていたとか?? ホント?)
ちょいと恰幅のいいエリート、という今回の役もなかなか。
もう少し出番が多く、偽善の色を強く出してさらなるドラマを作ってくれれば、
ファン的にはもっと良かったけど、話としては際限がなくなるかな。

chikachan112 at 00:01│clip!映画 |   【か行】

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この記事へのコメント

1. Posted by YOSHIYU機   March 27, 2006 23:03
またTBさせていただきました。

透明マントの話は、感動的でしたね。
でも、透明マントが必要なアメリカ社会は
哀しいなとも思いました。
2. Posted by ちか   March 28, 2006 19:41
>YOSHIYU機さま

続けていただいたTBが、偶然にも「ある短い時間で人生が絡まる話」だったので、こういうのがお好きなのかなあ、なんて思ってしまいました。(わたしは好きです)

マントの話、少女の無邪気な笑顔もあって、心打たれました。必要でない時がくればいいですよねえ。