October 07, 2008

トウキョウソナタ

黒沢清監督

東京郊外で一軒屋に住む佐々木一家。平均と平凡を絵に描いたようなごく一般的な四人家族だが、内部ではそれぞれが軋みを発していた。ゆっくりと歪んでいく家族、やがて幾つかの事件が起き、その末に家族は……という話。

リストラで職を失ったが家族に言えない父、
存在をないがしろにされている母、
日常から希望を見出せず、アメリカ軍へ入ると言い出す兄、
そして家族に内緒でピアノ教室に通う次男。

四人家族というのはいわゆる世間様が標準とする家庭だし、
それぞれの抱く秘密や願望というのも、身につまされはするものの、
さほど「物凄いもの」でもない。

つまりは、どこにでもある、誰の身にも起こるかもしれない歪み。

昔風の「オレが家長だ」という強権な父。
彼の元で暮らしてきた家族たちがかみ合わなくなってくるのは、もはや仕方のないことだと画面から見えてくる。

そして絵に描いたようなリストラ劇とその後。
家長の権威はもはやないのに、まだその形に縋っているオトウサン。
彼の虚しい姿は笑いを生むのだけど、
でもどうしたら解決に向かうのかはわからない。

幾つかの事件が起きて、取ってつけたようなラストシーンがあって、
家族は再生する……ようには見えるんだけど、
本当に再生? と訊ねたくなる。

「ああ、よかったねー」では、終われない。
単なる家族回帰の話にはみえない。

「静かに滅びへと向かっていくこの国」を、ホラーの形式で語ってきた黒沢監督が、
家族ドラマの形式で語っているように思えた。


とはいえ。
現実は諦念と区切りの積み重ねだと、
小泉今日子演じるオカアサンが体当たりで表現していて、

では解決策はその積み重ねの上の「容認」にあるのかもしれないと、
少しだけ思わされた。


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この記事へのコメント

1. Posted by 健太郎   November 09, 2008 19:11
4 こんばんは。
すっかり忘れてましたが、何故か仙台では9月に監督のトークショウ付で上映されてました。

>家族の再生と崩壊
この手の映画は大抵のこの用に評価されるのですが、私はそうは感じませんでした。
ただ単に「元々あったものに気づいただけ」にしか感じませんでした。
特に父親が。

監督のトークは大変興味深く、色々な意味が込められているそうですが、脚本が日本の方ではないのが驚きでした。
2. Posted by ちか   November 09, 2008 22:50
>健太郎さん

TB&コメントありがとうございました。

トークショー付き上映だったとのこと、映画本編だけでは知りえない裏話が聞けたんじゃないでしょうか。
いいですね。

脚本は外国のかたなんですか。
リストラ後にじたばたするシーンなどは、以前からニュースなどで見聞きする内容で、イメージ優先というか、アリモノを持ってきて使ったように感じました。
その分、いかにもな印象で、笑えたんだけど。
3. Posted by 健太郎   November 14, 2008 21:29
4 又来ました。TB&コメントありがとうございました。

監督のお話はどれも面白かったです。
黒沢清監督って静かな方でして、話がとても聞きやすく、内容もわかりやすくて聞いててあきません。

映画への思いも節々に感じました。
4. Posted by ちか   November 14, 2008 23:51
>健太郎さん

監督のトークショーは三回目なんですか?(健太郎さんのブログのコメントの返事になってすみません)
きっと仙台が気に入ってらっしゃるんですね。

わたしが聞いたことのあるトークショーで「穏やかで真面目な方だなー」と感じたのは是枝監督です。
「DISTANCE」の時でした。目力ありました。
反対に「ぶっとんでるなー」と感じたのは園子温監督です。素敵な酔っ払いでした……。