2018年08月14日

#日本経済入門

本書の著者は、早稲田大学ファイナンス綜合研究所顧問、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏で、本書は2017年3月に講談社(講談社現代新書)より発行されている。

 

本書タイトルからすると、日本経済についての単なる入門解説書かと思ったが、どっこい、表層的・総花的なものではなく、エッジの効いた問題提示・解決型の教科書となっているのが面白い。

 

例えば、

  •  90年代以降に世界経済が大きく変貌したこと。
  •  その大きな変化に、日本の産業構造が適切に対応できず、その結果、日本経済の位置も大きく異なるものになったこと。(例えば、一人当たりGDPで見た日本の地位は低下)
  •  貿易立国が難しくなっており、日本の消費者物価は、輸入物価によってほとんど決定されること。(円安政策は本当に国民のためになるのか?)
  •  日本の高齢化によって労働人口が将来激減すると予測されているにもかかわらず、移民の受け入れに消極的であること。

 

などなど、ストーリーが明確でメリハリのある解説がなされている。

 

個人的には、1)日銀の異次元金融緩和政策の失敗と、2)膨張を続ける医療・介護費に対し警鐘を鳴らしている点について共感できた。

 

ただ、本書を読むと、若い人は特に海外移住を真剣に考えるかもしれないと思った。(ヤバイ)



chikointernational at 12:41|PermalinkComments(0)

2018年08月09日

#ハプスブルク帝国

本書の著者は、近世ハプスブルク史専門の京都産業大学外国語学部准教授 岩崎周一氏。

 

本書は2017年8月に講談社より発行(講談社現代新書)されている。

 

本書は弱小城主から元祖「日の沈まぬ帝国」の皇帝へと、広大な版図と多種多様な民族を支配下に置き、1000年の命脈を保った世界史上にも比類のない大帝国の歴史を扱った本だ。

 

奇人皇帝ルードルフ2世から悲劇の皇妃エリザベートまで。あるいは、音楽の都、世紀末芸術の都としてのウィーンから、サライェヴォの銃声に始まり敗戦と帝国瓦解に終わった第一次世界大戦に至るまで。様々な人物とエピソードに彩られたその歴史が1冊の通史として本書に収録されている。

 

個人的には、民主主義の原型とも言える君主諸身分(シュテンデ)間の(議会制による)合意形成システムが、12世紀以降に発生・発展して行ったことを知りヨーロッパの歴史の重みを感じた。

 

本書は、ヨーロッパの歴史を理解する意味で、門外漢には特に良い手助けとなる本だと思う。



chikointernational at 10:58|PermalinkComments(0)歴史 | 岩崎周一

2018年08月06日

#未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること

本書の著者はジャーナリストで「週刊現代」編集次長の近藤大介氏で、本書は講談社より本年7月に発行されたばかりの新刊(講談社現代新書)だ。

 

近藤氏は、講談社入社後、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークとし、現在は明治大学講師(東アジア論)も兼任されているそうだ。

 

本書は「人口」という観点から中国の未来予測をしたもので、データを示しながら現在(2018年)から中国建国100周年を祝う2049年頃まで以下の様に年表形式(目次)で未来予想をしている。

 

·     2018年:中国でも「人口減少時代」が始まった

·     2019年:首都・北京の人口もごっそり減る

·     2020年:適齢期の男性3000万人が「結婚難民」と化す

·     2021年:中国共産党100周年で「貧困ゼロ」に

·     2022年:大卒が年間900万人を超え「大失業時代」到来

·     2023年:世界一の経済大国となり中間層4億人が「爆消費」

·     2024年:年間1200万人離婚時代がやってくる

·     2025年:「中国製造2025」は労働力減少を補えるか

·     2035年:総人口が減少しインドの脅威にさらされる

·     2049年:建国100周年を祝うのは5億人の老人

 

近藤氏は、中国への留学や駐在経験もあり、帰国後も定期的に中国に出かけ現場を回られているジャーナリストだけに、生きた情報が本書には満載されている。

 

同僚の青木肇「現代新書」編集長から、本書の執筆を依頼された際に次のように言われたそうだ。

 

「中国の政治や軍事はブラックボックスも同然で、経済指標もなかなか信用できませんよね。でも『人口』という観点からみると、かなり正確な分析や予測ができるのではと思うんです。つまり、『人口はウソをつかない』ということです」

 

チャイナ・ウォッチャーには必読の書で、是非お勧めしたい本だ。



chikointernational at 10:52|PermalinkComments(0)未来予測 | 近藤大介

2018年08月01日

#日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業

本書の著者は経営コンサルタント&経済アナリストの中原圭介氏で、本書は2018年4月に講談社から発行されたもの。

 

以前、東洋経済ONLINE「中原圭介の未来予想図」

で著者の名前を知り、今回、本書タイトルに惹かれて本書を手にした次第である。

 

本書では、2020年以降の日本がどうなるかについて、マクロからミクロまで上手く落とし込んで読者に提示している。

 

本の章立ては次の通り。
 

1.世界金融危機「再来」の可能性

2.日本経済を蝕む最大の病

3.2020年以後の日本の雇用

4.2020年以後の日本の企業

5.2020年以後の日本の賃金

6.生き残る自治体と転げ落ちる自治体

 

「日本の国難」 とは上手く言ったもので、本書を読むと、少子高齢化、グローバル化、ITAI技術の進化などを背景に、我々の目の前には難題が積み上がってきているのがよくわかる。

 

中原氏は、さすが経営コンサルタントらしく、課題整理と問題解決への方向付けが上手い。

 

本書には厳しい話ばかりが続くが、本社機能の地方分散を通じ、少子化対策と地方創生に貢献中の国際建設機械大手企業「コマツ」の事例を読むと元気が出てくる。

 

国難だからと言って皆んなで嘆いてばかりはいられない。知恵と行動力が必要だ。



chikointernational at 19:52|PermalinkComments(0)未来予測 | 中原圭介

2018年07月27日

#財政破綻後

本書は慶應大学経済学部教授 小林慶一郎氏を含む7名の経済・財政・社会保障のエクスパートにより執筆・編集された専門書であり、本書は2018年4月に日本経済新聞社出版より発行されている。

 

日本の財政運営が、このまま永続できる可能性は低い。政府債務は増加を続け、人口減少は本格化する。財政破綻が起きる可能性は、ゼロではない、と著者らは言う。

 

財政破綻が起きた時、日本に何が起きるのか。そこから、どう社会制度を立て直すのかーーーが、本書のテーマで、本書には、その詳細が学術的に論じられている。

 

「経済成長が先、財政再建は後」と言う政策決定(社会保障制度の拡充、財政出動や減税の実施、財政再建の先送りの決定)は過去30年以上も前から行われており、現在もそれが進行中である。

 

ただ、2018年現在、景気は戦後最長の拡大局面にあって税収も増えているが、政府債務の増加を止めるには至っていない。

 

手遅れになる前に、財政再建に着手して財政の将来不安を解消しようと言うのが小林氏らの訴えである。

 

ギリシャで起こっているような財政破綻の痛みを将来世代に先送りするのか?それとも、現在世代が財政再建コスト(痛み)を引き受けるのか?が、強く問われている。



chikointernational at 11:09|PermalinkComments(0)未来予測 | 小林慶一郎