ロスジェネ心理学―生きづらいこの時代をひも解くロスジェネ心理学―生きづらいこの時代をひも解く
著者:熊代 亨
販売元:花伝社
(2012-10)
販売元:Amazon.co.jp


熊代亨『ロスジェネ心理学―生きづらいこの時代をひも解く』・・・8点(10点満点中)
※著者様のご厚意により献本いただきました。ありがとうございます。

この本は「はてなダイアリー」やblogosでもおなじみのブロガー「シロクマ(@twit_shirokuma)」氏による初の単著である。「ブログ発」ということなので目次を広げてみると以前見覚えのあるタイトルが並ぶが、それらのほとんどはタイトルのみ拝借した形でほぼ全面的に書き直されている。で、そこで何が語られているかというと、著者も連なる「ロスジェネ世代」を中心とした世代論を精神科医という立場で再解釈したものである。
この本の論旨をごく簡単に言えば、現代(2010年代)は空前の各人が個人的な自己愛を必要とする社会、つまり、集団(ムラや会社)への所属を通した自己愛ではなく、個人的な成功やキャラクター消費によって自己愛が充足される社会である。しかも、そうした自己愛の充足方法や要求水準が年齢相応に成長していかないという問題を抱えがちである、という問題点を示したうえでその解決法(察しの良い人ならわかると思うが、「分相応に年を取れ」という解決法である)が提示される。そして、その過程で明らかにされるのは我々ロスジェネ世代(70年代後半から80年代初め生まれの世代)の「梯子を外された」様子である。つまり、金銭的・社会的な成功によって自己愛を充足させやすいバブル世代と、キャラクター消費によって自己愛を充足させやすいゆとり世代との間で、「バブル的な規範を内面化させながら、それを実行することが極めて難しい」という位置にいるのが我々ロスジェネ世代である。

本書においてはいわゆるブログ文体は極力使われず、汎用性の高い描写がされており(そのため、アニメやゲーム個別の批評はほとんどない)、この本を広く世に問いたい、という意気込みが伝わってきた。また、精神科に対する予備知識はほとんどなくともかなり面白く読むことができた。
本書を読んでいて思い出されるのは赤木智弘『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』(2007年)だった。ロスジェネ世代の「梯子を外された」「こんなはずじゃなかった」という感覚。おそらくそうした世代の声は新自由主義でも先行世代のせいでもなく、他人の無関心によって「なかったこと」になるだろう。だが、『若者を見殺しにする国』から5年、ようやくまともに応答する本が現れた。それが恐らくこの本だ。

だが、本書が示す解決法がいかにも弱い。「分相応な年の取り方をしろ」というのは理屈としてはその通りだが、解決策としては弱い(そもそも、それならまず先行世代が「引退しろ」という話になる)、またコミュニタリアン的な解決策の提示もそういったものが嫌いな人には如何にもウケが悪いだろう。だが、それらを差し引いても現状分析とそれをわかりやすく提示する手法は見事としか言いようがなく、また「ロスジェネ世代」という敗北が決定づけられた世代によるささやかな反抗の記録として、ぜひ一度読んでみてほしいと思う。

republic1963