chikumaonline

ミニコミ『奇刊クリルタイ』の公式ページ。お知らせやメルマガ「週刊メルマガクリルタイ」の過去記事を掲載していきます。

greengoke

greengoke流なんでも読書評『水木しげるのラバウル戦記』篇

Clip to Evernote このエントリーをはてなブックマークに追加
第2回目の書評は『水木しげるのラバウル戦記』です。

水木しげるのラバウル戦記 (ちくま文庫)水木しげるのラバウル戦記 (ちくま文庫)
著者:水木 しげる
販売元:筑摩書房
(1997-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


本書は水木しげるの絵と文章で綴ったエッセイと、物語のその中間のようになっていて、昭和25年ごろに書いた部分とその後「娘に語るお父さんの戦記」からとった部分で構成されています。水木しげるは昭和18年に徴兵されて、その後南太平洋にあるラバウル基地のあるニューブリテン島に上陸します。そして水木しげるの部隊はラバウルに到着できた最後の部隊のひとつになってしまいました。水木しげるの部隊は終戦後まで初年兵として扱われて、古兵にさんざんビンタを食らったことやいじめを受けたことを書いています。もうこの頃には日本の陸・海・空軍の継戦能力が著しく落ちていたがわかるエピソードです。この話を読んだ時、先輩だから後輩に対してなにしてもいいとか、とにかく精神論でなんとかしようとしていることとか、戦後から指摘されてきたことが現代日本でもそれほど変わっていないことに嫌になって気持ち悪くなりました。しかし水木しげるはそんなことも意に返さずといった感じで戦場へ行軍しました。戦記ものというとエースパイロットの話や陸・海軍の将軍が語った戦争判断に関する証言、戦争は悲惨だったという体験記などが多い中、本書は二等兵として味わった体験を、時にはビンタされ、時には死にものぐるいで前線から逃げながら、そして時には周囲に住んでいる原住民(水木しげるは土の人という親しげな意味で土人と読んでいます)とのコミュニケーションを楽しむなど、戦争に対する悲壮感や絶望感がほとんどなく実に前向きに戦場での日常を描写していきます。水木氏は自分のことを珍しいことを面白がる性格といっていますが、戦場に行って風景や動植物を楽しみ、原住民の人たちとの交流を積極的におこなって楽しめる人はまずいません。以前水木しげるの貸本大全を読んで、自分のブログに水木しげるは妖怪だと言ったのですが、本書を読んでもやはり水木しげるは人間離れしていることを確信してしまいました。僕のようにいろんなことを考えてしまう人や、自分の人生をシニカルに見つめる人には、一度でもいいですから水木しげるの作品を読むことをおすすめします。水木ワールドの奥深さにはどことなく達観した落ち着きがあるので、水木ワールドに触れることで人生に前向きになれると自分は思います。

greengoke

greengoke流なんでも読書評『ル・オタク フランスおたく物語』篇

Clip to Evernote このエントリーをはてなブックマークに追加

ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)
著者:清谷 信一
販売元:講談社
(2009-01-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


本書は1998年に出版されたものに一部加筆を加えて2008年に再出版されたものです。オタク文化が世界に広がっている!と世間でも言われ始め、それまでネガティブな評価しかなかったのが一転して普段の生活に馴染み出し、オタク趣味であっても迫害されない市民権を得たのはここ数年ですが、本書の実質な執筆時期は1998年ということで、まだまだオタクと言うことが世間から恥ずべきこととして扱われていた時代です。
一方で海外でのオタクな人たちの実態はどのようなものだったのでしょう。フランスでアニメが始めて放映されたのは1974年でアニメのタイトルは『サファイア王子』、日本では『リボンの騎士』と呼ばれた手塚治虫原作のアニメです。とりわけフランスの子どもたちに衝撃を与えたのは、78年夏に放映された『ゴールドラック』(UFOロボ・グレンダイザー)でした。このアニメの影響力はすさまじく、スペインやイタリアの子供たちまで巻き込んで一大ブームを作り上げました。これを視聴した子供たちが後に第一世代のオタクたちになっていったのです。
本書では1985年創立の「トンカム」というフランスやベルギーのマンガ(バンデシネ)と日本のマンガを中心に扱う本屋が登場します。この店を経営するのがドミニクというフランス人で、彼は早くから日本のマンガは売れると自身をもち、彼の一流の経営センスで80年代から日本のマンガを売る努力をしますが、様々な規制や嫌がらせを受けていました。そのような逆境をはねのけて、「フランス・オタク界のボス」とまで本書で書かれるような人物になりました。

98年当時フランスのオタクの第1世代は『ゴールドラック』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』などを視聴していた世代で、ドミニクもこの世代です。第2世代は同人誌を作ったり声優ファンが多い世代です。特徴としては自ら日本語を学んでいく行動力の高さです。第三世代は『北斗の拳』のような刺激の強いアニメやゲームに影響をうけるローティーンだそうです。この世代も日本に対する興味が強いようです。
最終章は2008年に書かれていますが、フランスのオタクについてそれほど掘り下げて書かれていません。こういう事件があって、こうなったというような書き方がほとんどです。しかもあとがきでこれ以上オタク文化は広がらないだろと予想しています。しかし著者はオタク文化が世界で日本の現代文化として扱われるようになったことに満足しているようです。変人扱いされ、迫害された時代を知るオタク世代には、オタクとその境目がよくわからなくなり、いろんな方向に分散している現在の状況に満足しているか、それともオタクは死んだという認識でしょう。新しい時代のオタクは、日本も海外もオタクという言葉からはみ出していくような気が僕にはします。

greengoke
記事検索
メールフォーム
facebookページ
twitter
週刊メルマガクリルタイ
メルマガ購読・解除
livedoor プロフィール
奇刊クリルタイ既刊本
奇刊クリルタイ課題図書
お買い得商品










Amazonリンク
マイクロアドBTパートナーでおこづかいゲット!
Links
20120513185125 comic
  • ライブドアブログ