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ドラマ

「フリーメーソン3B」とはなんだったのか-republic1963

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(「週刊メルマガクリルタイ」Vol.082(2011/05/04配信分)の原稿を再掲)

2011年3月27日。
『3年B組金八先生ファイナル「最後の贈る言葉」4時間SP』をもって、ついに『3年B組金八先生』が終了した。1979年から2011年まで、実に32年に渡って放送されたこの番組。だが、その試聴感はけして心地よいものではなかった。
4時間SPをみて一番印象的だったのは、3Bのフリーメーソンのごとき秘密結社ぶりである。問題のある生徒に対して近藤真彦から遊戯王こと風間俊介まで、弁護士から小学校教諭、地域の人々から会社社長までありとあらゆるOBを総動員、どこにいってもOBにつかまり、「金八っつあん泣かしたら3Bがタダじゃおかないぞ」の大合唱。これが秘密結社でなくて一体なんだろうか。そして卒業式に総登場するOBたち。「金八のドラマ的インフレもここまで来たか」と感慨深くなった。
『3年B組金八先生』の歴史とは、そのまま『金八』のストーリーにおけるインフレの歴史でもある。『ドラゴンボール』などのジャンプマンガにおける「強さのインフレ」はよく知られているが、『金八』にストーリーにおけるインフレとはつまり「生徒の抱える問題のインフレ」である。
我々30歳前後の人間にとって恐らく最も身近な『金八』のシリーズは平成年代初の放送となった第4シリーズであろう。その時の主要生徒の一人であった広島美香(小嶺麗奈)は両親の家庭に問題を抱え、入試の日に化粧してきて大問題をおこすのだが、その後の3Bの生徒の面々をから見てみると、いかにもしょうもない問題である。いや、もちろん入試に化粧してくるのは問題は問題なのだ。だが、その後登場する『金八』の生徒たちがそれをはるかに上回る大問題を起こし続けたため、試聴している我々からすると、そんなことは大したことがないように思われている
(この点には恐らくスタッフも自覚的で、ファイナルSPにてPTAの一人に「歴代の3Bの生徒には問題児が多い」と指摘させている)。
『名探偵コナン』の作品世界において世の平和を守るための最高の手段は江戸川コナンがどこにも外出
しない事(外出するとすぐに事件に巻き込まれる!)であるかのごとく、『金八』の作品世界において「3B」と「坂本金八」が存在し続ける限り不幸な境遇に至る生徒は3Bに入学し続けるだろう。

しかも、物語上の致命的な問題として、どれだけ問題を起こしても、生徒たちは桜中学を卒業する事でそこから「更生」してしまうのだ。『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』における宇多丸氏の邦画評に度々登場する「甘やかし」の構図がここにもあるのではないだろうか。つまり、『金八』の作品世界の人々は「悪いことした3Bの生徒」に対して更生として許される度を超えて甘いのだ。毎回3Bに登場する優等生のガリ勉生徒。開栄高校(作中トップの進学校)目指して勉強して
いた彼らは中学卒業後一体何をしているのだろうか。それが描かれる機会がほとんどないのに対して、問題を起こした生徒のその後(しかもそのほとんどが社会の一員として元気に活躍している)だけが繰り返し描かれるのをみると、彼らがおこした問題が極めて軽いものとして扱われているように思える。もちろん、ちょっと不良だった教師と揉めたとかいう程度であればそれほど目くじらを立てるようなことではないだろう。だが、母親を刺したり、ドラッグを吸ったりした人間がそう簡単に更生するのはおかしいのではないだろうか。

これまで述べた「生徒の抱える問題のインフレ」と「生徒に対する甘やかし」の構図によって、『金八』においては本来美しいはずのOBとの関係が極めて薄っぺらで不愉快なように見えるのは私だけだろうか。もちろん、こうした問題点は作り手側もわかっていたようだ。だが、そうした過剰さを排し、
生徒一人一人をクローズアップした第8シリーズは視聴率的に惨敗。結局坂本金八の定年をもってシリーズは終了する事となった。ここで軌道修正をせず、ありとあらゆる問題児を3Bに入学させればシリーズはもっと続いていたのかもしれない。
だが、結果として日本最大の秘密結社になった桜中学3年B組の姿を見る事を我々は望んているのだろうか?

republic1963

「SPEC」は「ケイゾク2」か?

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(「週刊メルマガクリルタイ増刊「dorj」」Vol.4(2010/12/27配信分) の原稿を再掲)

先週、『SPEC』が終わった。
『ケイゾク』原理主義者たるrepublic1963は当然全話試聴かつ全肯定なわけだが、twitter上でスタッフが低視聴率を謝罪だとか半径ワンクリック内で物議を醸したり醸さなかったりしているところもあり、実際のところ、どうだったんだろうか。実はCBCではこの機会に合わせて前作(?)である『ケイゾク』も合わせて放送されていたので、『ケイゾク』『SPEC』合わせて試聴した感想を書いてみたいと思う。

まず一つ言っておかなければならないのは今気になっている人や見ようかどうか迷っている人は安心して見ていい、という事だ。
今回の『SPEC』、とりあえず鑑賞に耐えうる最低限の「SPEC」は満たしている。堤幸彦といえば、近作『BECK』や『20世紀少年』で一部では酷評されており、ライムスター宇多丸氏などに言わせると「堤幸彦こそ、「ともだち(『20世紀少年』のラスボス)」なんじゃないの!?」とまで言われている始末(ちなみに『BECK』は『ウィークエンドシャッフル』中の2010年全映画ランキングワースト6位である)。だが、今回に限っていえば、連続TVドラマとして最低限のクオリティを満たしている…ど
ころかちゃんと面白い! だからこそ「またいつもの」でしょと思っている人ほど是非みてほしい。

だが、TVドラマとして見れるSPECであることと心に突き刺さる作品である事はまるで別である。

今回見直して改めて思ったが『ケイゾク』は物語として破綻していた。『ケイゾク』に登場する毎回のトリックはほとんどが後付け、その場限りの運要素の強いもので、「刑事ドラマ」としての説得力が非常に弱くなっている。毎回、犯人がもっともらしい「動機」を語った後で真山が語る犯人の真の動機。これらは視聴者側の犯人への共感を難しいものにしている。
つまり意図しているかどうかはさておき既存の『ケイゾク』は「刑事モノ」としてハナから破綻している。なおかつ、『ケイゾク』は「なんで朝倉が他人を操れるの?」という根本の疑問から始まり、ストーリー自体も破綻していた。しかも、元々破綻している作品に対して後付けの設定でスペシャルや映画が作られたもんだから、後に行けばいくほど破綻は酷くなっている。
その一方で重きを置かれたのが、その間ちりばめられた小ネタや会話(小芝居)だった。こうした連続ドラマとしてストーリーとしての強度よりも、その合間の小ネタや小芝居といった「ケイゾクの文脈(コンテキスト)」を積み重ねることを優先するという方法は当時それなりに新鮮だった。
そして、結果発明されたのが「事件を解決しなくてもよい刑事ドラマ」である。

11年後の今、『ケイゾク』を見ると、そうした物語上の穴が凄く目立つ。だが、当時の私がそんな事を言う人間がいたら迷わずグーパンチで殴り倒していただろう。つまり、そこで私が熱狂していたのは、その訳のわけのわからなさから派生する熱量であった。そして、そうした破綻や作品上の矛盾点こ
そが作品の魅力として立ちあがっている。ここで私が言いたいのは「クソゲーだって楽しもうと思えば楽しいよ」なんて事ではなく、破綻している部分とそれをカバーする作品自体の熱量が奇跡のバランスで作品として成立させていた、という事だ。賢明なる読者諸君にもわかりやすく一言でいえば、『ケイゾク』とは要するに『魁!男塾』だったのだ。『男塾』において「飛燕死んだけどどうせまた生きてるんでしょ」とか「天挑五輪大武會何回やってんの」とかいう人間がいたら、アホ以外の何物でもないが、それと同じことだ。

でも、『魁!男塾』に『暁!男塾』が作られたように『ケイゾク』には『SPEC』が作られた。『ケイゾク』が『男塾』だとすると『SPEC』はさしずめ『PSYREN -サイレン-』のような作品である。確かに物語上の矛盾点は少なくなった。数々の特殊能力には「SPEC」という設定が付け加えられ、各話における未詳 VS SPECホルダーの戦いにおいても一応それなりに納得感のある設定によって理由が説明されている。その意味で『SPEC』はTVドラマとしては進歩している。だが、一方で物語自体の熱量において『SPEC』は『ケイゾク』のそれには遥かに及ばない。だが、これにはもちろん理由がある。先程述べた通り、『ケイゾク』の面白さとは破綻したドラマとそれゆえ生じた奇跡の熱量であった。つまり、『ケイゾク』とは再現不可能な面白さである。だからこそ『SPEC』を単純な『ケイゾク2』として作ったとしても失敗する事が目に見えていた。それよりは『ケイゾク』の2010年版アップデートとして『SPEC』を作る。そして、その試み自体はある程度成功している。ドラマとしての矛盾点は極力少なくなっているし、5話から8話あたりではストーリーの盛り上がりも最高潮に達し、本当に毎週の放送が楽しみだった。だがそれは恐らく『ケイゾク』の面白さとは異質のものである。
しかも、5話~8話の盛り上がりに比べて最終盤においてはどうしても間延びした印象を受けた。そして何よりも最悪だったのが最終回である。いかにも「映画化決定!?」的なラストシーン、もう何回目だろうか。『ケイゾク』の場合、成立していた奇跡の熱量のおかげでそれすら結果として実現することになったが、ストーリー展開上最大の盛り上がりが5話から8話に持ってきていた『SPEC』におけるそれは単にひたすらうすら寒いだけであった。

『ケイゾク』の方が面白かったという人がいたら、もう一回『ケイゾク』見直してから言ってよ、と言いたいし、『SPEC』は『ケイゾク』の続編として正当かどうか、という質問は問題設定としておかしい。だけど「『SPEC』って面白い?」と言う人がいたら迷いなく「見た方がいいよ!」と断言したい。

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