2011年4月、twitter上でひっそりと、ある企画が生まれました。その名は「ペーパー部」。かつて、同人活動をするオタクたちの間で一般的だった「ペーパー交換」を再現しようという趣旨でした。

 ○ペーパーとは

オタク・同人界隈では「告知や近況を1枚の紙にまとめたもの」を指します。「同人用語の基礎知識」様の説明がわかりやすいので、ご参考になさってください。

10年ほど前まで、ペーパーは、同人活動の情報収集・発信の重要な媒体でした。インターネットがそれほど普及していなかった頃のことです。ファンロード等の読者投稿雑誌、アニメショップのペーパー置き場、そして同人誌・同人グッズの通販時に同封されてくるペーパーが、自分たちの通販情報・イベント参加情報をアピールしたり、好きなサークルの情報を得る貴重な手段でした。経済力がなく同人誌を出版できない中学生のオタクたちが、安い投資で同人活動に加われる、受け皿としての側面も持っていました。
ですがインターネットの普及に伴い、サイトやブログが情報収集・発信の手段となっていき、ペーパーを含む紙媒体による情報のやりとりは、行われなくなっていきました。
「pixiv」や「手書きブログ」等のWebサービスを「告知」等のワードで検索すると、当時のペーパーのようなレイアウトの画像がアップロードされていることがあります。そこからも、各種Webサービスがペーパーに代わる情報発信・収集手段として使用されていることが見て取れます。

 ※「告知」のイラスト・作品検索一覧 [pixiv]
 
 ※手書きブログ - タイトル検索[告知]
 
現在も同人誌即売会等で、ペーパーを出版物に挟んで購入者に手渡したり、机上に積んで「ご自由にお持ちください」としているサークルを目にします。また、商業出版の単行本にも、初回出荷分や書店限定で、作家のペーパーが付録となっていることがあります。ですがこれらのフリーペーパーはいずれも、近況や作品解説を主とするもので、メインの情報発信媒体とされていることは無いと言っていいでしょう。

 ○ペーパー部とは

「ペーパー部」の企画は、twitter上での「20世紀末の同人活動」を懐かしむやり取りから始まりました。インターネットの普及によって失われた「文化」の最たるものが、郵送によるペーパー交換だったからでしょう。有志同士でペーパーの交換ごっこをしようということは、瞬く間に決まりました。
企画の中心となってくださったのは、やり取りに加わっていたうちの1人、せうこさんでした。せうこさんのはてなダイアリーを情報の集約場として、参加者募集や参加要項発表を行っていくことになりました。

 ※ペーパー配布者さま募集部 - シスターポストマンさん
 
 ※ペーパー部参加要項 - シスターポストマンさん
 
 ※せうこさん(twitter
 
集まった参加者は20名ほど。期日までに各参加者がペーパーを作成し、人数分印刷してせうこさんに郵送。せうこさんが1人に1部ずつ渡るよう仕分け、各参加者に郵送する、という方式を取りました。自分で印刷して郵送するのは手間が掛かりましたが、その「面倒くささ」すらも楽しかったです。

 ○ペーパーが届いた!

せうこさんからの「発送のお知らせ」メールを受け取ってからは、そわそわとポストを覗く日が続きました。「自分に何かが届く」というワクワク感も、ペーパー部が思い出させてくれたもののひとつです。届いた封筒を開けると、内容も実際の色彩も色とりどりのペーパー20名分が。
クラフト紙やセロハン紙の風合いを活かしたり、味わいのある凝ったインク色で刷っている方も多かったです。
同人活動をする方々は(やはりと言うべきでしょうか)印刷物の用紙・印刷色へのこだわりが強く、ペーパーはそれらの「こだわり」を端的に見ることができる面白さがあると感じました。(私個人はコンビニの白黒コピーを使ったので、他の方のものを見て、ちょっと恥ずかしかったです……)
内容を読むと、普段Twitterでは語られない趣味や嗜好、現在好きな、あるいはずっと好きなマンガ・アニメ・ゲームの話題に触れられていて、「知っている人の知らない顔」を見る楽しさがありました。インターネットではほとんど目にすることのできない、各参加者の手書き文字を見られたのも、その人の「生身の姿」に触れたようで新鮮な気分になりました。

私個人は懐古は好きではありません。それでも、「ペーパー部」の企画が思い出させてくれた「インターネットがなかった時代」の楽しさは本物でした。
「インターネット爆発して再び紙媒体と郵送の時代が還ってこい」と思っている訳ではありませんが、もっといろんな方の作ったペーパーを読みたいと思うようになりました。
また、インターネットを通じていろんな方と知り合う機会がある今だからこそ、紙1枚に自分のこだわりを凝縮して表現できる「ペーパー」が、オフ会やイベント、郵便でのやり取りの際の自己紹介の手段として「アリ」なのかもしれないとも気付かされました。

「ペーパー部」としての次回開催予定は今のところありませんが、似たような企画は自由に開催していただくことができます。

 ※まとめ - シスターポストマンさん
 
皆さんも、ご自宅のポストに、10年前の新鮮な風を吹かせてみてはいかがでしょうか。

(紫式子)