日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は19日の定例記者会見で、東日本大震災に伴う国内自動車生産などの減少で、「(JFEスチールでは)鋼材の在庫が積み上がっている」ことを明らかにし、製造業の生産回復が遅れるなら「(粗鋼の)減産を考える必要が出てくる」との見方を示した。ただ「(在庫が)危機的状況ではなく、4月中に(自動車メーカーなどの生産計画を)見極めた上で判断する」としている。

 また、林田会長は震災の影響で3月の粗鋼生産は約100万トンのマイナスになるとの見通しを示した。鉄連では2011年度の粗鋼生産見通しは10年度並みの1億1000万トンと想定していたが、「製造業への影響が深刻で、復興需要があったとしても下振れするだろう」と述べた。復興需要については「足元で仮設住宅用の需要が出ているが現段階ではそれほど大きくない」とし、「(護岸工事などの復旧需要は)夏以降に本格化するとみられるが、どの程度の規模か予測がつかない」と語った。

 政府が大口需要家に対して今夏の使用電力の25%削減を求めていることに対し、鉄鋼業界ではIPP(独立系発電事業者)や自家発電、共同火力などをフル稼働することで、電力供給の取り組みを強める方針だ。電力需要の抑制策としては「生産の夜間シフトや東京、東北電力管内以外の地域に生産を移すことも考える」(林田会長)。鉄鋼業界としての節電計画案は今月末までに策定する。

 一方、鉄連では、福島第1原発の放射能漏れに伴う鋼材の風評被害にからみ、溶鋼など生産段階から放射線量を測定すべきだとの考えを会員各社に通達した。放射線量の基準は各社の判断に任せるが製品の安全性アピールにつなげる考えだ