いい酒場とは不文律で成り立っている。
程よく店内がザワついていて
「コール&レスポンス」という、
いわゆるスピードがいい事が挙げられる。
ファーストオーダーで「とりあえず瓶ビール」で通したら、
早いところだと30秒、
なんなら10秒で出てくるのがいい酒場だ。
神がかった店になると
「後ろからどうぞ」と
セルフで取らされるようになる。
なので私の行く新船橋駅前にある「みみ」というお店の常連は、
まずガラガラとドアを開けて入ってくるなり、
自分で瓶ビールを取って着席。
カウンター前に置いてあるコップと栓抜きを
自分でとって注ぐ。
なんと注文をしないのだ。
ということはハッキリ言って0秒だ。
私が初めてその光景を見た時、
もう自宅か実家じゃんかよ!と衝撃を受けた。
この常連ルールにあやかりてー!と
心から思ったのは嘘ではない。
船橋駅前にたくさんある、
よく分からないチェーン店に入って
「出るの遅っせーなー」とクダを巻いてる若者には、
絶対に辿り着くことのできない聖域といえる。
BGMも重要だ。
最近のガチャガチャした音楽を
流すような余計な味つけはしない。
テレビをただ流すだけだ。
またハイボールや酎ハイなどの割り系といえは
基本的に「硬く」出される。
ほとんど原油じゃねーのかというほどの硬さだ。
自分好みので整えさせるスタイルこそ、
昭和の原点といえる。
昭和生まれなら「かってぇー」と
笑みがこぼれながら呑むのがお作法である。
そんな「いい飲み屋」というのは向こうからやってこない。
いい酒場と言うのは、自ら求め、
自ら手に入れるようなオアシスのような存在だ。
ディズニーとかには並ばないが、
居酒屋には並ぶという呑兵衛共通の認識だといえる。
ミドルとなった昭和52年生まれの我々こそ、
そんないい酒場と、
そこの不文律のルールを
若者に教える立場といえる。
あまり知らんけど。