2008年09月

2008年09月22日

大岡昇平「イカリの尾崎」に若き日の小島女史

囲碁対決について書いた尾崎一雄の「ボヤキの大岡」に
対抗して大岡が発表した「イカリの尾崎」から引用。

ところが心ある人のヒンシュクにもかかわらず、この小説が案外
評判がいい。普段雑誌を読まない小林秀雄まで、
「おい『ボヤキの大岡』っての読んだか。あいつの根性がよく出てるぞ」
と今日出海にすすめたそうだし、ぼくのところへ来る編輯者は大抵読んでいる。
「ゲーラゲラ笑っちゃいましたわ。大岡さん、あんなにお弱いんですか」と
『新潮』の小島女史はいうのである。
「きみ、ほんとにあれを読んで、尾崎よりぼくの方が弱いと思うかい」
「ええ、あたし、碁のことわかりませんけど、お負けになったんでしょう」

(作品社 日本の名随筆別巻1「囲碁」中野孝次編)

まあその私も囲碁のことは全然分からないんですが。
たぶん昭和31〜32年頃? の話と思われます。
作品社のこの本には尾崎一雄の「ボヤキの大岡」も載ってます。

大岡昇平は明治42年生まれ。
フランス文学部だけど、辰野隆・山田珠樹がいた東大ではなく
京都大学仏文の出身。
大岡は鴎外の作品「堺事件」を批判したので、『マリアの気紛れ書き』
ではそのことについて言及してます。

大岡の『成城だより』の最初のほうの巻で、鴎外研究の国文学者からの
反論は想定していたが、娘の森茉莉から反論が来るとは全然考えてなくて、
みたいなことを書いてた気がする。手元に本がなくてうろ覚えですが。

森茉莉本人よりも、元夫の山田珠樹と長男の山田じゃくとのほうが
付き合いがあった。

『成城だより』は全部読んでないけど、森茉莉の長男山田じゃく
(ジャック)は同じ成城の住人として、作中に時々名前が出てきます。
「イカリの尾崎」の頃は大磯在住でした。尾崎一雄の下曽我とご近所。

あとジャックの著書『フランス文学万華鏡』(白水社)によると、
山田珠樹は大学でスタンダールの講義をしていたことがあるので、
同じくスタンダールを研究している大岡昇平が、東大を辞めて鎌倉
に移り住んだ山田珠樹を訪れていたらしい。

神奈川近代文学館の年表を見ると昭和11年にこのような記述が。
この年表、作家名で検索するとよく引っかかるけど面白い。

3月下旬  大岡昇平(27)、鎌倉に行き、扇ケ谷の小林秀雄の家の近くの
米新亭に下宿する。鎌倉在住の先輩友人たちを連日訪問し、「大岡アイドル氏」
の異名をつけられる。翌年8月、父の死で東京に戻る。「鎌倉通信」。

(『大岡昇平全集』年譜 )


chiwami403 at 20:32|PermalinkComments(0)森茉莉 

2008年09月12日

「細い葉陰への愛情」の最後の部分

2008-09-07 - 神保町系オタオタ日記 「森茉莉とファーザー・コンプレックス」

で『精神分析』という雑誌に森茉莉が書いた随筆について。
文章の最後の部分が、

『ユリイカ』の森茉莉特集に再録したもの(『文学』昭和11年6月号掲載)
とほぼ同内容であるが、若干の異同がある。


とのことで引用されていますので、リンク先ご覧下さい。
全集やユリイカをお持ちの人は訂正前と後を比べてみても。

『精神分析』に最初に文章を掲載した昭和8年は、ルゥルゥ本を
出版し、劇評を書き始めた年。翌9年は妹杏奴が結婚し、前年に
続き劇評や随筆を発表。
『文学』に発表した昭和11年は、4月に母しげが死去している。
それまで海外作品の翻訳を主にやっていたのが、この3年の間に
劇評や随筆の発表の機会が増えている。

chiwami403 at 22:34|PermalinkComments(0)森茉莉 

2008年09月07日

『おんな作家読本 〔明治生まれ篇〕』に森茉莉の章

ポプラ社の『おんな作家読本 〔明治生まれ篇〕』(市川慎子)
に森茉莉を解説した章があります。森茉莉の章の目次は下記の通り。

◎美の世界の女王 森茉莉
作家森茉莉のこと
人生いろいろ(略年譜)
美しき森茉莉ワールド―『私の美の世界』
自惚れお茉莉―『ベスト・オブ・ドッキリチャンネル』『マリアの気紛れ書き』
茉莉による茉莉のための文学
『婦人画報』の「令嬢茉莉子の君」
手紙魔茉莉―『ぼやきと怒りのマリア ある編集者への手紙』
茉莉のお気に入り
こぼれ話


他の章で取り上げている作家の解説にも、
「森茉莉との意外なつながり」「対談で森茉莉作品に言及」
が出てきます。

著者のサイト:海月書林 ○。くらげしょりん
※詳しい目次と、ページを開いたところの画像も掲載
ポプラ社のサイト:おんな作家読本 〔明治生まれ篇〕 :市川 慎子 | ポプラ社

「泣く泣く収録をあきらめた」作家に円地文子もいて残念。
長谷川時雨はモノクロ2ページでの紹介だけど、似顔絵がちょっと
怒った感じ? 岩波文庫掲載の写真の印象が強いのかしら。
紹介された作家で気になったのは中里恒子の『日常茶飯』。
神奈川ゆかりの作家ということで、随筆と『忘我の記』は今後読むかも。

chiwami403 at 20:30|PermalinkComments(0)森茉莉