2006年02月07日

小堀杏奴『人生舞台』

先日購入した小堀杏奴『人生舞台』は昭和33年宝文館より出版、
カバーはなかったが装丁は夫の小堀四郎によるもの。
全部きちんと見てないが「杞憂」と「夢と現実」に森茉莉が出てくる。

「杞憂」は昭和32年9月発表で、7月に森茉莉が面疔で入院したときの話。
文中では「息子のJ」となっているが、当時はジャックが頻繁に森茉莉の
アパートを訪ねていたようだ。一人暮らしで安静にしづらいのと、ジャック
が毎日見舞うので「つい喜び過ぎてJや私を相手に盛んに笑ったり話したり」
していたら悪化→オト兄さんに相談→入院 ということになったらしい。
病気は思ったより軽く済むようで入院は長くなかったようだ。
後半はアンヌさんお得意の息子話になってしまい、詳細は分からず。

森茉莉は確かこのことは書いていない……と思う。
昭和32年は森茉莉が『父の帽子』を出してエッセイストクラブ賞を貰っている。

もう一つ「夢と現実」は昭和32年11月発表で、森茉莉の文章「夢」の冒頭を
引用し、妹から見た幼い頃から現在までの姉について9頁に渡って書いている。
以下気になったところ↓

森茉莉が離婚して千駄木に戻ってきたとき、アンヌは若さゆえの潔癖で
山田家に残してきた子供への愛情が薄いように見えて「頼りない感じの
姉を憎らしく思う心さえあった」という。

でもそんなアンヌに対する母親しげの台詞↓
「姉さんは平気のように見せているが、あれで決してそうじゃないんだよ、
小さい子供の出てくる活動を二人で見ていたら、泣いて泣いて、もう吃驚する
くらいひどく泣いていた」

『記憶の絵』他エッセイだとその辺はかなりあっさりしていて
というか出戻ってバカ生活送ってたようなことを書いているのだが
そうよね森茉莉だって辛かったよね、でもお涙頂戴にしない所が
森茉莉らしいと思います。パリに行ったときも船からハガキで、
「ジャックは血色のいい顔をしてゐるでせうか。どうかおたのみします。
どうぞ/\」「ジャックの夢を見ました」などと度々わが子を気遣って
いるのだが(『鴎外の遺産2』より)随筆には書いてないのを思い出す。

それから森茉莉を「枳殻(からたち)のとげとげした緑の枝を這う青虫」
に例え、頼りにする人(山田珠樹→類→ジャック)に影響されてその保護色に
身を包む、というようなことを書いているのが興味深い。
久しぶりに再開したジャックは、若い頃の山田珠樹にそっくりで性格は
森茉莉に似てやさしくしかも頼もしかったそうな。

弟の類も森茉莉についてのエッセイを書いているけれど
(文春文庫『誕生日のアップルパイ』掲載)、アンヌのこの文章は
森茉莉の「夢」を読む上でも、エッセイに書かれない森茉莉の姿を
知るうえでもかなり面白いと思います。喫茶店邪宗門にはアンヌの
本も何冊かあるけど、この本はおいているだろうか。

chiwami403 at 22:55│Comments(0)TrackBack(0)森茉莉 | 森茉莉

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