森茉莉全集未収録?

2010年01月15日

婦人画報1974年11月号「明治風西洋料理もキャベツ巻き」

この号の特集は「洋食物語」で、「明治風西洋料理もキャベツ巻き」
というタイトルの前には<<私と洋食>>とある。冒頭の文章は

明治何年かわからないが、英国人のコックがわが国の宮廷の
台所に入りこんで西洋料理の技術を伝授し、それが町の中
にも流れたものだらう。


以下気になった点。
・幼い頃連れて行かれた上野精養軒で食べた料理はコンソメ、
 ステェキかロオスト・ビイフ、野菜料理、プディング、珈琲
・ローストビーフとうどの入ったポテトサラダも好物だった。
・鴎外は嫌いだったシチューも好きでよく注文する
・他の西洋料理も入ってきたが、英国風西洋料理が好き
・家でもキャベツ巻き、コロッケ、ポテトサラダなどの洋食を作っていた

最後に森茉莉らしいエピソード引用。

私はくひしんぼうで、自分の皿の上のキャベツ巻きを
アッという間に平らげ、父の分を一つ貰った。



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2010年01月09日

婦人画報1970年1〜12月号「季節の風景」

ファッション誌のネット古書店サイトで見たのは、
10月号の「蝋人形の館」だけだったんですが、図書館でこの年の
婦人画報の目次を見てみたら「季節の風景」という年間連載だった。

目次をめくった次のグラビアページで、左側にヨーロッパの風景写真
(撮影は奈良原一高)その写真と関連づけた400字程度の森茉莉の文章が
右側に掲載されている。ヨーロッパの風景ということで、戦前にフランス
に滞在、周辺各国に旅行していたときのエピソードが多い。
奈良原氏の写真を見て森茉莉が原稿を書いたのだろうか。

1月「太陽」の書き出しは以下の通り。

この写真にはフランスの太陽が写っている。私がマルセイユで、
パリで、ロオマで、トレドで、ブリュウジュで、見た欧羅巴の
太陽である。それらの太陽は、障子に竹の影を水色に映し出す
日本の太陽ではない。


各月のタイトルです。
1月:太陽
2月:白い鳩の胸の血
3月:城(シャトオ)
4月:欧羅巴の幻想
5月:巴里の街の色
6月:馬徳里(マドリッド)のマンダリン売り
7月:運河(キャナアル)の水と、赤い花形
8月:白い彫像の男たち
9月:黄金色(きんいろ)の光の筋の郷愁
10月:蝋人形の館
11月:水色の霧の中の巴里
12月:欧羅巴の街燈

前の記事で紹介した、結婚前の男女について云々の文章よりも
こういう連載のほうが安心して読んでいられる……と思いました。

写真の奈良原氏について。
Nikon | ウェブギャラリー | 2004年11月 | 奈良原 一高(ならはら いっこう)

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2009年12月28日

婦人画報1962年10月号「"少し歩きましょうか"の時代について」

この号は「結婚特大号・婚約時代」という特集でかなり分厚く、
今よりも結婚というイベントにかける情熱と金はすごかったんだろうなあと。

森茉莉の文章タイトルの右上には「婚約時代の純潔」という副題があり、
モノクロ4ページに渡って(うち1ページの半分はワリショーの広告)
書いてるのだけど、文章量のわりには何が言いたいのか要領を得ない
印象。当人も最初のところで

私は原稿をおうけした時、何かかけるやうな気がしてゐたが、
書き始めた今になつて、全く興味ないのに気づいた。


と書いている。文章のほとんどは、当時ありがちな若者の
生活スタイルやデートについて妙に具体的な批判的描写。
冒頭の文章はこちら。

最近妹の娘が結婚したが、妹も実務のやうなことはあまり話さない
ので、そんなことを私は知らなかったが、このごろは式場や宴会場
なぞが申し込んでから六ヵ月待たないと確保できないのださうで、
すべての婚約者たちが所謂「永すぎる春」――いやな言葉だ――
といふ期間を持つことになつてゐるのださうだ。


今とは「永すぎる春」の意味が違うんだなあ。
それに「結婚決めてから半年後に式」も今では普通なんだけど。
むしろそれより短いほうがスピード婚だねーて言われそう。

テーマは「婚約時代の純潔」なのに、この年に『枯葉の寝床』
前年に『恋人たちの森』を刊行しているせいか、最初のページ
では、東京の一流の男性の間にソドミズムが蔓延しているという話
になってて、かなり唐突な印象。同性愛の男の存在が原因で婚約
解消される女が出てくるだろうとまで書いている。

その後に副題に沿った話題に一応変わるのだが、あっという間に
終わり、2ページ目後半からは、型にはまった日本人についての
描写が延々と。

日本の人間といふのは、どの人もどの人も、大体において似てゐて、
人間と人間とが出会ふと、同じ挨拶をし、同じ会話をする。
さうして同じ笑ひ方で笑ふ。

若い婚約者同士がデートでフランスの恋愛映画を見ると
恋愛場面の素晴らしさに二人とも圧倒される。雷に打たれた
のと同じである。それが問題である。
自分がそれを演ずることが可能かどうかは別として、フランス
映画の恋愛場面に驚くやうでは困るのである。
(中略)それを見たのが生れて始めて(ママ)だったとしても、
同じ人間の仕科(しぐさ)として、どこかで響いてくるものが
あって、すでに経験したものでもあるやうな気分になるはづである。


「はづ」って言われてもなあ。
ちなみにタイトルの「少し歩きましょうか」は映画を見た後
喫茶店に入り、短時間で追い出された後に男が言う科白を
指している。昭和の婚約者たちって微笑ましい。

二度離婚して独り身の森茉莉にこういうテーマで原稿を頼んだ
編集者、すごいぞ。


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2009年12月16日

家庭画報1959年11月号「初冬のヴィナス」

ゴージャス奥様雑誌、家庭画報の創刊は1958年と意外と歴史が浅い。
といっても比較対象が明治38年創刊の婦人画報なわけですが。

家庭画報の歴史−雑誌家庭画報 公式サイト

創刊して間もない時代の家庭画報、現在書店で売っているものに比べると
かな〜り薄く、100ページちょっとしかなかった。この頃の婦人画報や
主婦の友など老舗主婦雑誌と比べると見劣りしたのではないだろうか。
今は立派になったんだなあ……

森茉莉の随筆は風間完の挿絵つきでモノクロ1ページ分。
活字がかなり小さく無理やり詰め込んだ感があります。

私の幼い記憶の中で、ヴィナスはいつも片腕で立つてゐた。西洋の本の、
麺麭の匂ひのする滑らかな頁は、或種の大理石のやうに微かな黄色味を
おびてゐた。乳酪(クリイム)のやうな色である。


以上冒頭の文章。
その後結婚して夫とパリを訪れたときに見たヴィナス像のことや、
最近新聞で見た「欠けた腕を再現したヴィナス像」の写真について。
その辺りの文章から一部引用。

私達はどうかすると不均衡なものに、美を感じてゐる。視点の
いくらか不均衡な眼差し。不安定なツボ。絶えず揺れてゐる
不安定な心。さういふものが私たち(ママ)の心を、捉へる。


講談社文芸文庫の年譜を見ると、1959年には「暗い目」「禿鷹」
「濃灰色の魚」を発表、12月に『濃灰色の魚』を筑摩書房より刊行。


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2009年11月27日

ミセス1979年11月号「父の好物 野菜」

モノクロ特集の「父の好物」で最初に出ている森茉莉の文章。
森茉莉の名前の上には「野菜」とタイトルがある。
この年の3月に森茉莉は日赤病院に入院し、5月に退院している。

文章の横には大正5年の鴎外の写真と新潮社提供の森茉莉顔写真。
この文章は旧仮名。冒頭の文章は下記の通りです。

私の父の好きだつたたべものといふと、先づ野菜の料理である。

焼茄子、白瓜や茄子の糠漬、南瓜の煮物、ふろふき大根など。
じゃがいもを茹でたものを輪切りにし、それに醤油をかけたものが
鴎外は好きだったが、森茉莉は「ちつとも美味しくない」と書いている。

そして鴎外の留学期間は「八年もゐたために」と実際の期間の倍設定。
ドッキリチャンネルでも8年と書いているが、森茉莉の頭の中でいつ頃
4年→8年と変化したのだろうか。

後半は、鴎外がドイツの惣菜料理(コロッケやロールキャベツ)
を作らせた話や、漬物に鰹節と醤油をかけて食べるようになった話、
葬式饅頭の話などで目新しいものはなし。

森茉莉の次は、室生朝子が犀星の魚好きのことを書いている。

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2009年11月21日

ミセス1971年3月号「料理控え」

モノクロの記事で「私と料理」という小特集。
冒頭の文章は

――人参のうま煮を自慢する私――大変に残念なことだが、
誰一人として私が料理の名人だということを信じる人間はない。


他のエッセイで読んだ料理やエピソードが多く本当に未収録か疑問。
以下文中に登場する料理やエピソードを列記します。

・入院中の萩原葉子にぬたを振舞った
・編集者に人参の直がつお煮を食べさせた
・キャベツと牛肉を煮たもの
・オムレツにトマトケチャップがかかったものが嫌い
・甘鯛の切身の白味噌漬けを焼いたもの
・白味噌で蜆汁
・ほうれん草の木の芽和え
・ロシア風サラダ
・ムウル貝のサラダ(日本ではアサリで作る)
・トマトのバタア焼き、玉葱のバタア焼き
・皮を剥いて茹でた栗を醤油と清酒で煮る
・輪切りにした固ゆでの卵を醤油と清酒で煮る
・生椎茸で作る茸のボルドオ風
・お芳さんから教わった牛鍋
・麺麭の温菓(ブレッド・バタア・プディング)

最後の文章は

又料理の味は春とか、夏とか、その日その日の天気の加減、
涼しかったり、暑かったり、又、たべる人の気分にも変化が
あるから、匙に何杯、何点の何グラムなぞと杓子定規にいく
ものではないのである。



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2009年11月19日

ミセス1971年10月号「下北沢界隈の店々と私」

今回いくつか未収録作品と思われるものをコピーしてきて
個人的に一番興味深かったのがこれ。モノクロ5ページ分。

冒頭の文章。

どれも、第一に書きたいが、想い出した順に並べると「スコット」である。

以下、バンガロール、蕎麦屋の砂場、鰻の大井川、駅前市場、
古道具屋イトウ商店、森茉莉がもめん屋と呼んでいる布の店
コットンについて書いている。

写真は、下北沢駅前にオープンしたパチンコ屋とチンドン屋、
バンガロールの主人夫妻、駅前市場の3点、あとは編集部作成と
思われる下北沢周辺の手書き地図2点。各店の描写から一部引用します。

スコット:コオンのスウプと鶏肉入りのグラタンが美味しい。
御飯もよく炊けているし、野菜も新しい。番茶と漬物も出してくれるし、
ハムエッグを頼むと、グラタン皿で焼いた儘出るので猫舌の私は一寸困るが、
ハムも上等で美味しい。


バンガロール:この店で私のすきなのは、卵カレエ(茹卵が添えてある)
とビイフ・ピカタ、バンガロール焼きめしである


主人の似内さんは背が高い人で、それについての描写もあり。

砂場:ここの天麩羅は海老が大変に新しいので、天丼、天蕎麦、天麩羅御飯、
どれでも素敵だ。唯一の欠点は番台のようなところに座っているお内儀さんが
不機嫌な面構えで、私が行き出してから十八年有余、一度として笑ったことが
ないことである。


が、猫にやる鰹節を買い忘れたので鰹節を分けてくれとお内儀に
申し出た森茉莉(勿論断られている)も強烈。

大井川:たれに酒が、たっぷり入っていていい。第一、大井川という
名がいかしている。


駅前市場:このマァケットの中に一軒ある、大きな魚屋は冬の大晦日
近い頃なんかに遅く行くと、ビニイルの袋に入った数の子が二百円で買えたり、
夏の夜、閉店頃に行くと、お刺身の新しいのがばかに安く買えたりするのだ。


他に、このマーケットで買った安物の指輪、アメリカ製ニットのワンピース、
マシュマロをチョコでくるんだお菓子、ウールの靴下などについて贅沢貧乏
ぽい描写もあり。

イトウ商店:私が通る度に、ものほしそうに一応のぞく店である。(中略)
ボッチチェリの女神の頸に似合う感じの鎖があって、買ったことがあるからである。


もめん屋:昔この店で、濃い橄欖地に薄い白茶の細かい小紋的な模様のある
木綿を買って、極く薄いクリイム色の裏をつけた掛布団に縫わせたが、まるで
ボッチチェリの画の色調で、自分の顔に似合うと信じていて、気取って寝ていたものだ。


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2009年11月14日

ミセス1970年12月号「芝居と情緒〜16歳の時に見た芝居」

ネット古書店のサイトでは「情熱」となっていましたが、
掲載誌見たら「情緒」が正しかった。
ミセスの白黒ページで、最初の1ページはタイトルと加山又造
のカットのみ、文章は3ページ分です。

冒頭の文章。

昔、岡本綺堂という劇作者がいた。(狂言綺語)の綺をとったらしい
名の、この作者は、黙阿弥なんかとは又ちがった、新しさのある、
一種いうにいわれない清新なものを持った、歌舞伎というより日本古典劇、
といった方が当たっている芝居を書いた。


そして綺堂の芝居に出ていた左団次のことを回想。

ヨーロッパ帰りの左団次が新作歌舞伎で学者などを演じると素晴らしかったこと、
白い歯を見せて微笑うと素晴らしく、父鴎外とどこか似ていたこと、
「鳥辺山心中」など左団次の恋愛劇は、上等の仏蘭西映画のように十六歳の
自分に恋愛の美しさを教えたことなど。


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2009年11月11日

ミセス1969年1月号「杏子のタルトレット」

文化出版局の「ミセス」は森茉莉が「私の美の世界」を連載していた
こともあり、大抵全集に入ってるのですが、いくつか未収録作品と
思われるものがありました。

この「杏子のタルトレット」は「西洋菓子12か月」というタイトルで、
雑誌の目次コピーを見ると1月から12月まで色々なお菓子の名前が出てたから
「これはもしや森茉莉のお菓子エッセイ12ヶ月分?」と血湧き肉躍った
のですが、閲覧してみると森茉莉が執筆したのは1〜2月分だけで残念。
2月は「シュウ・ア・ラ・クレエム」です。『貧乏サヴァラン』に出てるやつ。

見開き2ページで26種類のパイの写真+森茉莉の文章。
このタイトル、作品索引には見当たらなかったのですが、
「パイでなくピー」とかシラノからの引用とか「どこかで読んだ感」
がすごくあるので全集に掲載されてるようにも思えてくる。

私は一匹の肉食獣であって、というと恐ろしいが、他人(ひと)
の好意にも、着るものにも、硝子で出来たいろいろなものにも、
すべて食いしん棒の子供のようによくばりなのである。


以上冒頭の一文。

杏子や林檎が、ねっとりと艶をおびて、外側はこんがりと焦げ、
中の方はムニャムニャしているメリケン粉を焼いた皮の間にはみ出さん
ばかりに挟まっている、あのおいしい焼菓子は、やっぱりパイでなく
タルトレットである。

私は十八世紀の、「シラノ」のような男のいたころのフランスの
麺麭屋の造らえた杏子入りタルトレットが口に入れたい。


パリを褒めちぎった後に東京の菓子屋が作ったアンズのパイは
ノンメルシイとけなすなど、森茉莉の文章にありがちな流れ。

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2009年11月07日

「森茉莉全集未収録?」カテゴリを作ってみた

新たにカテゴリーを作ってみました「森茉莉全集未収録?」です。
これまでも未収録のものはいくつか紹介してきましたが、今回
まとめていくつか紹介するつもりなので。
「?」がついているのは私が6、7巻しか森茉莉全集を持ってなくて、
一応収録作品索引のコピーは手元にあるけど、文章見ただけでは本当に
未収録かどうか分からないから。

「森茉莉」で検索したことある人なら見たことある人多いと思いますが、

古雑誌&古本Re-Make/Re-Model ファッション 音楽 インテリア
デザイン アート など雑誌バックナンバーの古本屋


というネット古書店があって、以前「森茉莉+誰か作家名」で検索してたら
この店のサイトにヒットして森茉莉の名前の横に見慣れないタイトルがあった。
トップページにはありがたいことに検索窓があり、森茉莉で検索したら
森茉莉が執筆してる雑誌が意外とあり、全集の作品名索引と照らし合わせ、
未収録っぽいものをリストアップし、お茶の水図書館で閲覧・複写して
きました。本当はこのネット古書店で買うのがいいんだろうけど、私には
買える値段ではないので……すみませんお店の人。

索引に同じタイトルがなかったので喜々としてコピーとってきたけど、
単行本「私の美の世界」収録時にタイトルが変わっていた、というのもあった。

お茶の水図書館は入館料を払えば一般の人でも利用できるのですが、複写の際
所属や目的を用紙に記入する必要があります。どこにも所属せず、研究者でも
学生でも仕事でもなく単なる個人的な趣味で、と言ったら微妙な反応だった。
そういうケースは少ないのだろうか。複写断られなくてよかったけど。

個人でやってるブログなので全文掲載するわけにはいきませんが、
雑誌名と発行年月、タイトル、冒頭の文章や興味深い点など最低限の
データだけでもネット上にあればちょっとは役立つかもしれない。
もし森茉莉の全集未収録作品を集めたものが出版される計画があるなら
ここのデータはいくらでも利用してほしいものです。
ユリイカの森茉莉特集で全集未収録作品として掲載されたのは、どれもネット
で読めるものばかりだった。探せばまだ未収録作品はあるのに何故。


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